サプライ・チェイン最適化について 研究者・実務家が知っておくべきこと 東京海洋大学 久保幹雄
本日の内容 数理計画 在庫理論 モデリングのための十戒
数理計画 定式化の強さと多面体論(妥当不等式,側面) 拡張定式化と射影 分解法の基本原理(列生成,Lagrange緩和の理論的背景)
強い定式化 MIP問題 実行可能解の集合 X 多面集合PX がXの定式化 強い定式化
妥当不等式,切除平面,側面 弱い定式化の 制約(妥当不等式) 側面 緩和解 x* 解 x conv (X) 整数多面体 切除平面
最大安定集合問題の多面体表現 問題 整数多面体 conv (X) 次元(アフィン独立な点-1)=3
小数解と側面 緩和多面体 小数解 側面 側面の証明:次元=2
拡張定式化と射影 は X の定式化 = Q は X の拡張定式化
ロットサイズ決定問題 標準定式化のフローモデル 生産量(t) 在庫量(t) 在庫量(t-1) 期 t 需要量(t) 弱い定式化の原因 生産量(t)≦大きな数 “Large M” ×段取りの有無(t) 在庫量(t-1)+生産量(t)=需要量(t)+在庫量(t) 0-1変数
ロットサイズ決定問題 施設配置定式化のフローモデル s期に生産してt期まで在庫される量 期 s 期 t 需要量(t) s期に生産してt期まで在庫される量 ≦需要量(t)×段取りの有無(t) s期に生産してt期まで在庫される量 = 需要量(t)
施設配置定式化と多面体の概念図 拡張された空間の多面体 (施設配置定式化) 射影 オリジナルの空間の整数多面体
定式化のサイズと強さの比較 標準定式化 施設配置定式化 変数の数 変数の数 弱い定式化 強い定式化 =線形計画緩和が 整数多面体と一致 制約の数 制約の数 (S,l)不等式 切除平面 追加した 制約の数 n: 期数 強い定式化
分解(decomposition) Y,Z が容易に解ける(or 強い定式化が可能 or 側面同定可能) Y,Z に対する 1) 強い定式化 2)拡張定式化 3)切除平面法 例:多品目ロットサイズ決定問題 Z 資源制約(単一点フローモデル) 品目ごとに強い(拡張)定式化 ( or 切除平面法) Y
分解(列生成,Lagrange緩和) Y だけが容易に解ける. Z の定式化 => 列生成法,Lagrange緩和 主問題 (Z) Dx≧dに対する双対変数π 解(列) x 子問題 (Y)
列生成法 端点ベクトル 主問題 被約費用が大きい 列はプールから除く 被約費用が負の解を =>双対変数π を算出 すべて列プールに追加 子問題 => 下界と新しい解 x を与える.
Lagrange緩和 ステップサイズ 主問題 :劣勾配法で双対変数π を更新 子問題 => 下界と新しい解 x を与える. 下界 劣勾配法 => 収束遅い & 下界上昇の保証なし => 特に実務では頑強性に注意!
Lagrange緩和と列生成の関係 子問題 端点の中から 最適解を選ぶ 主問題 同値なLP 列生成 = 切除平面の追加 L(π) π
Bundle法 最良下界のπ: 安定化を入れた Lagrange双対問題 安定化を入れた列生成法の主問題
数理計画を使うのための戒め 定式化することと解けることは別物である.特にLarge Mを使用した無謀な定式化は避けるべき. Lagrange緩和で多用される劣勾配法は脆弱であるので,実務には使うべきではない.Bundle法やVolume法を実装する元気がないなら列生成法が良い. できたら強い定式化だけで解けることが望ましい.(研究者は小難しい解法を使いたがる.) 教科書モデルで実務が解けると思うなかれ. 実装+テストを学生,部下,下請けに丸投げするなかれ.言い換えれば,テスト問題例だけを解けるようにチューニングした結果を信じるなかれ.
(安全)在庫理論 新聞売り子モデル 非定常モデル エシェロン(梯形)在庫の概念とその利点 シミュレーションと最適化の融合法 安全在庫配置モデル
新聞売り子モデル 新聞1刊が売れ残ったときの在庫費用 新聞1刊が品切れしたときの品切れ費用 新聞の需要量を表す確率変数 分布関数 新聞1刊が売れ残ったときの在庫費用 新聞1刊が品切れしたときの品切れ費用 新聞の需要量を表す確率変数 分布関数 最適発注量 s* 分布の仮定なし! (正規分布でないといけないという誤解が多い)
非定常モデル(需要過程)
非定常モデル(予測,発注量) 指数平滑法による予測 発注量 リード時間
非定常モデル(安全在庫量) 在庫量 標準偏差 安全在庫係数 安全在庫量
STD[I] L
エシェロン(梯形)在庫
エシェロン(梯形)在庫 通常の在庫費用の計算 エシェロン在庫による費用計算
メタヒューリスティクス データ構造とアルゴリズム(メタヒューリスティクスの選択よりもこれが大事!) 類似の問題に対する過去の研究(全く新しい問題というのはそんなにはない!過去の研究を調べることは研究者としての最低のマナー!)
メタヒューリスティクスのコツ メタヒューリスティクスの数理 (共立出版 to appear)参照 グラフ分割:Tabu Search+戦略的振動 最大安定集合(最大クリーク):平坦探索 グラフ彩色:Fixed-K Tabu Search (+Genetic Algorithm) 巡回セールスマン:k-opt, Lin-Kernighan opt(近傍の制限がミソ) 多制約ナップサック:戦略的振動+critical event Tabu Search or MIPベースメタヒューリスティクス 2次割当:Tabu Search or Ant Colony (差分の計算がミソ) 数分割:差分法