小出裕章公開講座・松本、第4回 2017年10月25日(水) 原発(原子力)の歴史 「核の平和利用」と日本の原子力政策 小出 裕章 1
広島原爆の キノコ雲 人々が生きる街で原爆が炸裂 16kT= 1万6000トン 東京大空襲 1800トン 2
広島の町並み 3
坊や、起きてちょうだい! 被爆当日に撮られた わずか5枚の写真の1枚 4 平和博物館を作る会、日本原水爆被爆者団体協議会、「核の20世紀」、平和のアトリエ 4
長崎原爆 21キロトン 東京大空襲 1685トン 広島原爆 16キロトン 5
リトルボーイとファットマン 6
ウラン 天然ウランの組成 燃えないウラン (U-238) 99.3% 燃えるウラン(U-235)0.7% 7 7
ウラン濃縮は大変 濃縮作業に要するエネルギー (30kg高濃縮ウラン分) 50キロトンTNT相当 広島原爆の爆発力 16キロトンTNT 8
プルトニウムの製造 核分裂 ―――> ウラン235 燃えるウラン 核分裂生成物+エネルギー +2個か3個の中性子 +中性子 捕獲 ―――> ウラン238 燃えないウラン +中性子 ウラン239 β崩壊(半減期:24分) ―――>ネプツニウム239 β崩壊(半減期:2.4日) ―――>プルトニウム239 9 9
米国の原爆製造(マンハッタン計画)での2つの道 原爆製造の 中心三技術 ウラン採掘 原子炉 濃縮 再処理 濃縮ウラン 劣化ウラン 減損ウラン プルトニウム 広島原爆 劣化ウラン弾 長崎原爆 10
ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 使用済み燃料 濃縮ウラン 核燃料 サイクル プルトニウム 燃料加工 核燃料サイクル ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 使用済み燃料 濃縮ウラン 核燃料 サイクル プルトニウム 燃料加工 原子力発電所 プルトニウム 高速炉燃料 再処理 ウラン燃料 再処理 プルトニウム 使用済核燃料 高レベル放射性廃物 高レベル放射性廃物 放射性廃物処分 11
原子力はエネルギー源として 意味がない 高速増殖炉計画の破綻 × 十年経つと二十年先に逃げる夢には 永遠に到達できない 意味がない 十年経つと二十年先に逃げる夢には 永遠に到達できない 高速増殖炉計画の破綻 × 高速増殖炉実用化見通しの年度 原子力開発利用長期計画、年度 12
ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 使用済み燃料 濃縮ウラン 本来の核燃料 サイクル プルトニウム 燃料加工 核燃料サイクル ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 使用済み燃料 濃縮ウラン 本来の核燃料 サイクル プルトニウム 燃料加工 原子力発電所 プルトニウム 高速炉燃料 再処理 ウラン燃料 再処理 プルトニウム 使用済核燃料 高レベル放射性廃物 高レベル放射性廃物 放射性廃物処分 13
着々と懐に入れた原爆材料・プルトニウム 14
プル・サーマル ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 MOX燃料 加工 使用済み燃料 濃縮ウラン 核燃料サイクル ウラン採掘・製錬 天然ウラン 天然ウラン 濃縮・加工 高速増殖炉 MOX燃料 加工 使用済み燃料 濃縮ウラン 本来の核燃料 サイクル プルトニウム 燃料加工 原子力発電所 プル・サーマル 熱中性子炉 (サーマル・ リアクター) プルトニウム 高速炉燃料 再処理 ウラン燃料 再処理 プルトニウム 使用済核燃料 高レベル放射性廃物 高レベル放射性廃物 放射性廃物処分 15
核燃料サイクルは実現できない 「もんじゅ」が破たんし、高速増殖炉の夢はつぶれた。つまり、原子力をエネルギー源にするという夢が潰れた。 ところが原子力マフィアは、高速増殖炉ではなく、高速炉を核のゴミの始末のために新たに開発するという。それもまた破たんすると私は思う。
高速炉の役割は超優秀核兵器材料の製造 17
「平和利用」に隠れながら 実質的な核保有国になった日本 実質的な核保有国になった日本 国連(United Nations:連合国)常任理事国の米、露、英、仏、中5か国は戦勝国であるとともに核兵器保有国。 その5か国は核兵器製造の中心3技術(ウラン濃縮、原子炉、再処理)をすべて保有している。 そして、核不拡散条約と国際原子力機関(IAEA)を作って核の独占を謀り、他国にその技術を持たせないようにしてきた。 しかし、核兵器保有国でなく、中心3技術をすべて保有している国が世界に一つある。
使い分けられてきた言葉 日本では、「Nuclear」という言葉が、ある時は「核」、ある時は「原子力」と使い分けられ、「核」は軍事利用で悪いもの、「原子力」は平和利用でよいものであるかのように宣伝されてきた。 そして「Nuclear Development」を朝鮮民主主義人民共和国やイランが行う時は「核開発」だとして口を極めて非難し、日本が行う時は「原子力開発」と訳して、文明国家としてどんどん進めるとしてきた。 しかし、他人に「Nuclear Development」を禁じるのであれば、自分もしてはいけない。自分がするのであれば、他人がすることも認めなければいけない。
日本政府の公式見解 自衛のための必要最小限度を越えない戦力を保持することは憲法によっても禁止されておらない。したがって、右の限度にとどまるものである限り、核兵器であろうと通常兵器であるとを問わずこれを保持することは禁ずるところではない (一九八二年四月五日の参議院における政府答弁) 20
原子力基本法の改定 2012年6月20日成立 2 前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。 (基本方針) 第2条 原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
横畠裕介内閣法制局長官の見解 「保持」だけでなく、「使用」も合憲!? 「核兵器は武器の一種。核兵器に限らず、あらゆる武器使用は国内法、国際法の許す範囲で使用すべきものと解している」 核兵器使用について「国内法上、国際法上制約がある」としたうえで、「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えていない」 (二〇一六年三月一八日参院 予算委員会での答弁 ) 22
日本は米国の属国 1945年 8月15日 玉音(?!)放送、ポツダム宣言受諾の趣旨 1945年 9月 2日 無条件降伏の調印、日本の敗戦確定 1946年11月 3日 日本国憲法公布 1947年 5月 3日 日本国憲法施行 1947年 9月20日 天皇の沖縄メッセージ 1951年 9月 8日 サンフランシスコ講和条約締結 日米安全保障条約締結 1952年 2月28日 日米行政協定締結 1952年 4月28日 サンフランシスコ講和条約発効 日米安全保障条約発効 日米行政協定発効 1960年 6月23日 現行日米安全保障条約改定発効 現行日米地位協定発効
核=原子力の動向 1953年12月 8日 アイゼンハワー大統領 「平和のための原子力」演説 1954年 3月 3日 原子炉建造予算提出、 翌日衆院通過 1955年12月27日 日米原子力協定発効 1958年 6月16日 日米動力炉協定 1968年 7月10日 旧日米原子力協定発効 1988年 7月17日 現行日米原子力協定発効 2018年7月満期
歴史の巨大な流れ と個人の責任 かつての戦争の時、大多数の日本人は戦争に協力した。 大本営発表しか流されなかったし、戦争を止めることは誰にもできなかった。 戦争に反対し、国家によって殺された人もいた。その上、ごく普通の人々が、よい日本人であればあるだけ、戦争に反対する人を非国民と呼び、村八分にし、殺していった。 戦後、多くの人は騙されたからだと言い訳をした。教室に御真影を掲げ、日本は神の国だ、鬼畜米英だと教えていた教師たちは、戦後一斉に教科書に墨塗りし、民主主義だと言い出した。 核=原子力に対してどう向き合うか、私たちは未来の子どもたちから必ず問われる。
終わります ありがとうございました 26
朝鮮戦争 1950年、開戦 1953年、停戦協定 停戦協定に調印したのは、国際連合軍総司令官・米国陸軍大将・マーク=W=クラーク、朝鮮人民軍最高司令官・朝鮮民主主義人民共和国元帥・金日成、中国人民志願軍司令官・彭徳壊であり、大韓民国関係者すら調印していない。そして、朝鮮戦争は停戦しただけで、いまだに戦争は続いている。 27
日本にある原発の総量 (2017年10月現在、 43基、4205万kWe 13万MWt) 京都大学原子炉実験所の研究炉 朝鮮研究炉(寧辺1号炉) 100万kWe 300万kWt 原発 5MWt 25MWt 28 28
朝鮮が仮想的に持ちうる核兵器の最大量 100キロトン 米国が現に保有している核兵器の量 5,000,000キロトン 29
バーナード・ラウン IPPNW前会長 核保有国が一貫して言ってきたことは『我々がしている通りではなく、我々が言う通りにせよ。我々は核兵器を持って良いが、君たちはいけない。』 30
この国はどこまで卑劣で 愚かなのか? 他人に核兵器を持ってはいけないと言うのであれば、自分も持ってはいけない。 愚かなのか? 他人に核兵器を持ってはいけないと言うのであれば、自分も持ってはいけない。 誰かの核の傘に隠れてもいけない。 米国の属国としてひたすら強いものに媚び、弱い者には徹底的に居丈高になる国、それが日本。 本来なら、朝鮮戦争の終結のために誰よりも責任を果たすべき国が、日本のはず。 31