国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置MAXI/GSC コリメータ研究 MAXI 吉田研究室 高橋大樹.

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国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置MAXI/GSC コリメータ研究 MAXI 吉田研究室 高橋大樹

全天X線監視装置 「Monitor of All-sky X-ray Image」 MAXI 全天X線監視装置 「Monitor of All-sky X-ray Image」 ● 2008年に国際宇宙ステーション(以下ISS)の   日本実験モジュール「きぼう(JEM)」   の曝露部に搭載予定 ● 従来の全天X線監視衛星の約10倍の感度   1時間~数年のタイムスケールの変動を観測   X線の全天マッピング ● 2種類のX線検出器を搭載    比例計数管 : GSC  (2-30keV)      CCD  : SSC  (0.5-10keV) ● MAXI は 1.5x160度の二つの細長い視野を持つ。   1.  ISSの進行方向   2. 天頂方向 ● 約90分で軌道を一周 → 全天を走査 MAXI GSC×6 SSC

Science 多くのAGNを 捉えられる ★ AGNの長期変動 ★ X線トランジェントの観測 ★ 約1000個のX線天体の   1~2年間の活動をモニタ MAXIが目指すサイエンスについてお話します。 この図は横軸が天体までの距離で単位は光年です。 縦軸は強度で単位はmCrabです。1mcrabはかに星雲の強度の1000分の1になります。 MAXIはRXTE衛星搭載の全天モニタ(ASM)の約10倍感度があり、 1週間で約1mcrabの強度の天体を検出できます MAXIは巨大BHが中心に存在している活動銀河核の長期的変動を初めてモニタする事が出来ます。 これらは既存の望遠鏡タイプのNewton,chandra衛星では出来ないものです。 RXTE ASM One Orbit (30 sources) O n e D a y 多くのAGNを 捉えられる ( 1 s o u r c e s ) O n e W e e k ( 1 s o u r c e s )

位置決め原理 θ φ X-ray slit ●スキャン方向(θと定義) スリット スキャン方向 ●視野方向(φと定義) count 視野 コリメータ スキャン方向 GSC一台の構成はこのようになっています。 スリットと、一次元位置検出型比例計数管が2台。 そしてスリットと垂直な向きに並んだコリメーターからなっています。 こちらの視野方向をΦと定義します。Φ方向の位置決めはスリットと一次元検出器で 行います。 (スキャン方向について)まずコリメータにより視野を1.5度角に 制限しているいます。そして時間とともに天体からの平行X線の入射角が変わることにより、 このような応答になります。 このピークの時間から天体の位置を決めることができます。 また、この形からこの応答を三角レスポンスと呼びます。 3mm ●視野方向(φと定義) count この形から 三角レスポンス と呼んでいる。 φ slit θ -1.5 1.5 45sec 時間とともに入射角θが変わる 1 dimension

コリメーター 64枚 エンジニアリングモデル collimator set = 64sheets 1 collimator unit GSC用コリメータ 材質 : 燐青銅 厚さ : 100μm 間隔 : 3.1mm 枚数 : 128枚 (1カウンターに64枚) 1.5°FWHM 相当 宇宙用品ではまず実際に宇宙に飛ばすフライトモデルの前に、 試作品であるエンジニアリングモデルを作ります。 今回はMAXI/GSC用のコリメータのエンジニアリングモデルを初めて試作しました。 どのようなものかと言うと、 厚さが100μmで、燐青銅で出来ているコリメーターシートを3.1mmピッチで 128枚並べたものです。 ただし一つのカウンタにつき64枚になります。 更にその64枚の構成を詳しく説明します。 まず4枚毎に組まれたコリメータユニットがあり、それを16セット並べることにより64枚を形成しています。 これが実際に64枚並んでいる写真です。 collimator set = 64sheets 64枚 1 collimator unit = 4sheets

MAXI/GSC用コリメータのエンジニアリングモデルの評価 本研究目的 MAXI/GSC用コリメータのエンジニアリングモデルの評価 ● 実際に平行X線を照射しその応答を調べる 有効面積 位置決定精度 ● 設計値との比較 各コリメーターシートの向き 平面度 ピッチ間隔

実験セットアップ - + 宇宙では平行X線を観測 →地上試験でも平行X線が必要 - + side view Φ JAXA beam line その模式図がこちらです。 まず発生装置から発生したX線はスリットを通り、 17mの真空パイプを通ってから直径0.1mmのピンホールを通って出ます。 これにより平行度は約0.2秒角となり、本研究において十分な平行度を得ております。 次にコリメータのセットアップについてです。これは横から見た図ですが、 重力によってコリメータシートがたるまないようにシートが垂直になるようにセットします。 またここに回転軸があり、Φ方向に角度をふる事が出来ます。 こちらは上から見た図です。ここにシータステージの回転軸があり、 シータ方向に角度を振ることができます。 これらにより、様々な角度で平行X線を入射させることができます。 top view 平行度 0.2秒角 - θ +

データ取得系 timing chart データ取得系について簡単に説明します。 GSCから出力されたプリアンプ出力は波形整形および増幅されたのちADCにとりこまれる。 また波高値がスレッシュホールドを超えたときにデジタル信号がつくられ、 ゲート幅と遅れを調整することによりAD変換に必要なADCstart信号、ADCgate信号が作ります。 こちらはタイミングチャートです。 一番上のアナログ信号はADCによってgate信号の終わりでリセットされるまでピークがホールドされます。 そしてADCstart信号のタイミングで波高値を読んでAD変換されます。

Scan move move φ= 5° X-ray X-ray カウンター 細いX線ビームを様々な角度で照射し、 スリット方向にスキャンする。 (beam径 : 0.1mm ,stage speed = 0.2mm/sec) 使用X線は    energy = 17.4 keV (target : Mo) ①  θ = -1.7 ~ 1.7 deg (0.1 or 0.05 deg step)    の各θでscanする。 ②  φ = -20, -15, -10, -5, 5, 10, 15, 25, 30, 35,     の各Φで①を繰り返す。  energy毎の比較のために、 energy = 4.5 keV (target : Ti) energy = 8.0 keV (target : Cu)   のΦ=5でも測定を行った。 φ= 5° X-ray move カウンター move 天体から平行X線は面光源です。 地上では平行な面光源を再現するのは難しいので、 細いビームをスリット方向にスキャンする事によって 有効面積を求める事にします。 使用したX線ビームの直径は0.1mmで、ステージの移動速度は0.2mm/secです。 X線のエネルギーは17.4keVです。 まず各thetaでスリット方向にスキャンをします。 -1.7度から1.7度でこれを行い、 さらにΦ=-20~35degのΦで①を繰り返します。 これにより各ファイでの三角レスポンスを作る事ができます。 θ X-ray

Scan move move φ= 5° X-ray X-ray カウンター 細いX線ビームを様々な角度で照射し、 スリット方向にスキャンする。 (beam径 : 0.1mm ,stage speed = 0.2mm/sec) 使用X線は    energy = 17.4 keV (target : Mo) ①  θ = -1.7 ~ 1.7 deg (0.1 or 0.05 deg step)    の各θでscanする。 ②  φ = -20, -15, -10, -5, 5, 10, 15, 25, 30, 35,     の各Φで①を繰り返す。  energy毎の比較のために、 energy = 4.5 keV (target : Ti) energy = 8.0 keV (target : Cu)   のΦ=5でも測定を行った。 φ= 5° X-ray move カウンター θ X-ray move

Scan move move φ= 5° X-ray X-ray カウンター 細いX線ビームを様々な角度で照射し、 スリット方向にスキャンする。 (beam径 : 0.1mm ,stage speed = 0.2mm/sec) 使用X線は    energy = 17.4 keV (target : Mo) ①  θ = -1.7 ~ 1.7 deg (0.1 or 0.05 deg step)    の各θでscanする。 ②  φ = -20, -15, -10, -5, 5, 10, 15, 25, 30, 35,     の各Φで①を繰り返す。  energy毎の比較のために、 energy = 4.5 keV (target : Ti) energy = 8.0 keV (target : Cu)   のΦ=5でも測定を行った。 φ= 5° X-ray move カウンター θ X-ray move

Scan profile 開口部分 カウンターの窓枠の陰 コリメータの陰 θ = -1.2 Scan 方向 θ = -0.7 10sec = 2mm スキャンした結果、このようなscan profileが得られます。 横軸は時間で、この部分が10秒にあたり、移動距離にすると2mmに対応します。 縦軸は0.125秒毎のカウント数である。 上からtheta=-1.2, -0.3 , 0 ,0.3 , 1.2度の時のプロファイルである。 ピンクの部分はコリメータの陰で、角度が大きくなると陰も大きくなります。 また緑の部分は開口部分で、各シータでこの部分のカウントを積分してやれば、 有効面積に比例する値が得られる。 各間隔について三角レスポンスを求めた。 ただし、青い部分はカウンターの窓枠の陰になる。 このこの部分は三角レスポンスが作れないので、省いてある。 count / bin [1bin=0.125sec] θ = 0 θ = 0.7 θ = 1.2 time [msec] ×10^2

平均三角レスポンス カウンターの窓枠の影響が無い箇所の平均 (63箇所中の33箇所) 平均のレスポンスでは 限りなく設計値に近く、 ○ : 17.4keV (Mo) × : 4.5keV (Ti) □ : 8.05keV (Cu) こうして求めた三角レスポンスで平均レスポンスを作った。 ○は17.4keVのX線で作成したものであり、 ×は4.5keV,□はCuである。 平均のレスポンスでは限りなく設計値に近く、 有効面積や位置決定精度も要求通りである。 平均のレスポンスでは 限りなく設計値に近く、 有効面積、位置決定精度も 要求通りである。

個々のコリメーター間の三角レスポンス 各板の傾き、歪み等が 原因だと思われるが 詳細に調べてみる必要がある。 ※ 特に個性的な例 collimator ID = 33,34 平均の三角レスポンスの形は 個性が平均化されキレイな形を していたが、個々の三角レスポンスでは個性が大きく出る。 しかし、平均の三角レスポンスは平均化されてキレイな形をしていたが、 各間隔の三角レスポンスでは個性が強くでる。 図は特に個性的な玲で、設計地値から大きくはみ出している。 これらの原因としては各板の傾き、歪み当が考えられる。 しかし詳細んに調べてみる必要がある。 各板の傾き、歪み等が 原因だと思われるが 詳細に調べてみる必要がある。

シミュレーション 板を傾けたり、歪めたりしてシミュレーションをした。 ID=32は-0.1deg傾けた ID=33は-0.05deg傾け、 板を傾けたり、ゆがめたりしてシミュレーションを行い実験値と比較してみた。 今年の土屋氏の卒業研究によると、 シミュレーションにより ID=32,33,34のコリメータは図のような形状をしていると予測される。 この形状にに基づきシミュレーションを行い三角レスポンスを求めてみると この図の赤い設計値と黒い実験地が一致する。 またスキャンプロファイルも実験地とシミュレーション値がよくあい、つじつまがある。 ID=32は-0.1deg傾けた ID=33は-0.05deg傾け、 凹凸を左右0.15mmずつ付けた。 ID=34は-0.17deg傾けた 三角レスポンス、scan profile ともにつじつまが合う。

コリメータの陰の幅 Scan profileのコリメータの陰の幅の変位から 各コリメーターシートの向き、見かけの厚さを出す。 theta= 0 今度は別の解析から各コリメータの向きと見かけの厚さを求める。 方法としてはscanprofiliのコリメータの陰の幅の変位から 各コリメータの向きを見かけの厚さを出すことにする。 図のようにシータが大きくなるにつれて陰の幅も大きくなっていることが分かる。 その結果が次のようになる。 theta= 0.3 theta= 1.0

コリメータの陰の幅 ID=33は約-0.1deg傾いていて、 見かけの厚さは約0.3mm程である。 各コリメーターシートについて この図は横軸がシータで、縦軸がコリメータの陰の幅である。 この逆三角形の頂点のシータの値がそのコリメータが向いている方向といえる。 またこのときの幅が見かけの厚さと言えよう。 この図からID=33,34を抜き出すと、 このようなプロットになる。 緑の部分がID=33で、青いのがID=34である。 これによるとID33の傾きは~~~である。 これは先ほどのシミュレーションでもとめたコリメータの形状と一致する。 実際にコリメータの形状はこのようになっていると考えられる。 次に各コリメータシートの向きの平均を求めると、0.004度で、 見かけの厚さの平均は0.186mmである。 さらに、4枚組のコリメータユニット毎に向きがずれている傾向がある 事もわかった。 右の図では、ID=33,34の組と、ID=20,23の組を載せているが、 組ごとに傾向があるのが分かる。 これはコリメータユニットの取り付け精度によるものであり、改善の余地があるといえよう。 ID=33は約-0.1deg傾いていて、 見かけの厚さは約0.3mm程である。 ID=34は約-0.17degほど傾いていて、 見かけの厚さは約0.2mmである。 シミュレーションの結果とほぼ一致!! 各コリメーターシートについて 向きの平均は0.004deg(σ=0.044deg) 見かけの厚さの平均は0.186mm(σ=0.052mm) 4枚組のコリメーターユニット毎に向きがずれる傾向も発見した。 これはコリメーターユニットを取り付けるときの取り付け精度によるものであり、 改善の余地がある。

有効面積 上から見る effective area θ=0 設計値ではθ= 0, Φ=0の時の有効面積は (スリットの幅3.7mm) となる。ただしΦによりスリットの幅が cosΦで薄く見えるので699.3×cosΦとなる。 三角レスポンスの頂点を699.3×cosΦ[mm2] としてθで積分すると各Φの1orbitの Totalの有効面積となる。 699.3mm2 effective area θ 次に観測上の有効面積を求めてみる。 設計値ではθ= 0の時の有効面積は 699.3[mm2]である。 -1.5 1.5 左図は実験から求めた有効面積である。 しかし頂点がΦ=0にきていない。 Φと有効面積の関係はtan- { d・cosΦ/l }で表されるので、この式でフィッティングすると Φ0=0.5 [deg]になる。 これはカウンターとコリメータの重みで 0.5度ほど前傾している可能性が考えられる。

まとめ コリメーターのエンジニアリングモデルを試験した。 結果 ● 平均レスポンスでは有効面積、位置決定精度など性能面では ● 平均レスポンスでは有効面積、位置決定精度など性能面では    我々の要求を十分に満たしている。 ● コリメータの向きのばらつきはσ=0.044degで、   4枚組のコリメーターユニットの取り付け精度に   よるものである。 ● 平面度はコリメータの見かけの厚さで表せる。    設計値の厚さ0.1mmに対して見かけの厚さは0.186mmと大きい。 ● コリメーターのピッチ間隔は設計値の3.1mmに対して    3.105mmであった。 結論 コリメーターとしての性能は要求を満たしており、 フライトモデルへ移行してよいと言える。