心理学概論Ⅱ 第8講 2011年11月22日(火) 担当:岡田佳子
1月24日(火曜日) 補講 1月31日(火曜日) 試験 補講について 1月8日の休講分の補講を行います。 それにともない以下のように、授業日程および試験日程が変更となるので注意してください。 1月24日(火曜日) 補講 1月31日(火曜日) 試験
授業で取り上げる主な内容(予定) 3.他者への関わり(対人レベル)1回 ⇒人を助ける心理とは・近くに人がいることの影響・・・他? 1.社会的認知/態度と態度変化 (個人・対人レベル)1回 ⇒人をどのように理解・判断するか?態度が変化するのはどのようなとき? 2.社会的影響(集団ベル)2回 ⇒集団や社会、多人数者の意見からどのような影響をうけるか? 3.他者への関わり(対人レベル)1回 ⇒人を助ける心理とは・近くに人がいることの影響・・・他? 4.集団と個人(集団レベル)1回 ⇒なぜ、集団間にステレオタイプや偏見、差別がうまれるのか?
アメリカで実際にあった事件です キティ・ジェノバーズ事件 1964年3月13日午前3時ごろ、ニューヨーク市のクイーンズ地区で仕事を終えて帰宅したキティ・ジェノバーズは、車をアパートの駐車場に止め、アパートの方へ歩き始めた。そのとき、不審な男が近づいてくるのに気づき、彼女は電話のあるところへ逃げようとした。だが、追いつかれナイフで襲われた。彼女の悲鳴で付近の住民は、部屋の明かりをつけ窓をあけた。そのため、男は逃げた。キティは、刺された痛みに耐えながらアパートへ向った。しかし、逃げたはずの男が戻ってきて、再び彼女を襲った。また彼女は悲鳴をあげ、近くの家々の明かりがつき窓が開くと、男は逃げた。キティは、残る力をふりしぼってアパートの入り口までたどり着いたが、またしても戻ってきた男に刺されて、ついて殺されてしまった。
目撃者がたくさんいたのに・・・ この事件の目撃者は38人いた。 ところが、キティが3回にわたって襲われている間、誰も警察に通報もしなかった ましたや、外に出て助けようとするものは居なかった 最初の通報者は、3回目に襲われたあとであり、警察が来たのは最初の悲鳴から30分後だった。
キティ事件のなぜ? なぜ38人もの目撃者がいながら、誰一人彼女を助けなかったのか? 当時多くの識者が「都会人の冷淡さ」と解説した 目撃者の人格の問題なのか?? ラタネらは多くの目撃者がいたからこそ、誰も助けなかったと仮説を立てた
◆傍観者効果 (bystander effect) このように・・・ 援助が必要とされる事態に自分以外の他者が存在することを認知した結果介入が抑制される現象を「傍観者効果」といいます。
ラタネらの傍観者効果の実験(Latane et al.,1969) ①被験者は、「ゲームやパズルに関して、アンケートに答えてもらいたい」といわれて、マーケット・リサーチの会社の1室に呼び出される。 ②女性職員が応対し、「隣の部屋にいます」といって、隣室へ行く。アコーディオン・カーテンの裏で書類を扱っているような物音を立てる。 ③しばらくすると、隣室から、女性職員が棚の上にあるものをとるため椅子に上り、大きな音とともに悲鳴をあげて倒れ、助けを求める(録音されたもの、130秒流す) ④被験者が援助行動をするか。するまでに何秒かかるかが測定される
4つの条件 単独条件:1人で事態に直面する サクラ条件: サクラと一緒。サクラは隣室で何が起きても無関心を装う 赤の他人条件:互いに知らない同士が事態に直面 友人条件:互いに親しい友人同士の被験者が事態に直面
結果 図1参照 援助行動は 単独>友人>赤の他人>無関心なサクラ の順で生起 無関心なサクラが同席する条件で最も強く抑制された
なぜ傍観者効果が生じるのか? ○責任の分散 ○他者からの評価への心配 ○集合的無知 複数の人間がいることを認知すると,介入に対する責任,非介入に対する非難が各自に分散される ⇒例えば、警察すら呼ばない理由 ○他者からの評価への心配 援助して失敗したら恥ずかしい。どうやって援助するべきか迷う。実行をためらう。遅らせる。 ⇒例えば、助けに行かない理由、無関心なサクラ条件で抑制される理由 ○集合的無知 傍観者各自は,自分が最初に過剰反応して恥ずかしい思いをするのを恐れて介入しない。しかし、 他の人が介入しないのは,その事態が介入を必要としない事態だと解釈する。これによって傍観者効果が起こる ⇒例えば、無関心なサクラ条件で抑制される理由
なぜでしょう? 人は群集の一員となっているときには、1人でいるときとは違って、自制心を失い極端で異常な行動をとるように思えることがあるが・・・ ⇒混乱に乗じて店を襲って略奪 ⇒集団リンチ ⇒暴動など
2.没個性化(deindividuation) 群集の中でなどで、名前、年齢、住所、職業といった自分の個性が全く問題にされず、自分自身も自己の社会的役割に対する意識が薄れてしまう状態のこと。 集団・群集状況では個人状況と異なり,平生は抑制されていた行動,特に非合理的,刹那的,攻撃的,反社会的な行動が起きやすくなる。
没個性化を促進する条件 (1)匿名性が保証されている (2)責任が分散している (3)興奮している (4)感覚刺激が多すぎる ⇒このような条件のもとでは、自分自身を評価することをやめてしまう。他の人から評価を受けることへの不安が薄れる。本来なら行動を抑制するはずの、罪、恥、恐怖感が機能しなくなる
実験 匿名性と攻撃行動の関連性 ジンバルドー(Zimbardo,1970) 女子大生が4名1組になって他の女性に電気ショックを与える実験 結果 覆面を着用(没個性群)の被験者は普通の服で名札(個性化重視群)の被験者に比べて、電気ショックを与える時間が長い
没個性化の状態は、これまで見てきたような否定的な側面が連想されやすいが、、、 必ずしも否定的な側面だけではない
2種類の没個性化 (グリーンウォルド,Greenwald,1982) 1.「非社会的な」没個性化 上記の(ジンバルドーが言った)没個性化の状態 2.「社会的な」没個性化 私的な自己意識は低下しているが、他者からの評価への関心(公的自己意識)はむしろ高まっており、集団の秩序ある行動が生み出される
「非社会的な」没個性化の例(1) 暴徒化阪神ファンがタクシーをボコボコ 9月29日夜から30日未明にかけて阪神Vを祝う タイガースファンらが押し寄せた大阪・ミナミで、 一部のファンが暴徒化して御堂筋を占拠、 数十人でタクシーを取り囲み、 ボコボコにする騒ぎを起こした。 日刊スポーツ 2005/10/1/10:57 紙面から
「社会的な」没個性化の例(1) 組織的な千葉ロッテマリンズの応援
没個性化は否定的側面だけではない 匿名性が否定的な行動を生む例 インターネットの掲示板への誹謗中傷の書き込みがエスカレート(おまえうざい、死ね・・・面と向ってはいえないようなことを書き込む) 匿名性の肯定的な面の例 匿名の人々が集まっている場所で親和的行動が増大したことを示す結果も報告されている。
演習 考えてみましょう 自分の身近な体験から、傍観者効果や(非社会的・社会的)没個性化が生じる例を考えてみましょう。