星間ダストの起源と量 (On the origin and amount of interstellar dust) 2018/11/20 星間ダストの起源と量 (On the origin and amount of interstellar dust) 野沢 貴也 (Takaya Nozawa) (国立天文台 理論研究部) 共同研究者 田中 秀和、田中 今日子、大向 一行、仲内 大翼 (東北大) 浅野 良輔、竹内 努(名古屋大)、平下 博之(ASIAA)
1-1. 銀河系の星間ダストの性質 〇 銀河系の星間ダストモデル - 組成: 炭素質(グラファイトなど)とシリケイト質 (Mathis, Rumpl, & Nordsieck 1977, Weingartner & Draine 2001, Zubko+2004, etc) - 組成: 炭素質(グラファイトなど)とシリケイト質 - サイズ分布: 冪分布(MRNモデル) n(a) ∝ a^{-q} with q=3.5, a = 0.005-0.25 µm - 存在量: Mdust / MH = 1/120 ~ 0.01 ➜ 重元素のおよそ半分(~40%)はダストとして存在 星間ガスのdepletion 星間減光 赤外線放射 Savage & Sembach (1996) Nozawa & Fukugita (2013) Compiegne et al. (2011)
1-2. 高赤方偏移銀河のダストの観測 高赤方偏移銀河のダスト供給源は超新星?AGB星? 108-109 Msun of dust in SDSS J1148+ 5251 at z=6.4 Leipski+2010 ~2x107 Msun of dust in a normal star-forming galaxy A1689-zD1 at z=7.5 Watson+2015 ~6x106 Msun of dust in a LBG MACS0416_Y1 at z=8.312 Tamura+2018 ~6x106 Msun of dust in a star-forming galaxy A2744-YD4 at z=8.38 Laporte+2017 高赤方偏移銀河のダスト供給源は超新星?AGB星?
2-1. 星間ダスト量の時間進化 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール ③ 分子雲での金属ガス 降着によるダスト成長 降着によるダスト成長 ① 超新星・AGB星か らのダスト供給 - a ~ 0.1 µm - Mdust/Mmetal ~ 0.2 ② ダストガス比 ~0.001 星間乱流中での衝突破砕による0.01 µm以下の小さいダストの生成 Nozawa et al. (2007) Nozawa, Asano Takeuchi, Hirashita (2015) 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール
2-2. ダスト成長のタイムスケール 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール 〇 ダスト進化のコンセンサス 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール 〇 ダスト進化のコンセンサス 星間ダストの総量を説明するには分子雲中でのダスト成長が必要 (Dwek 1998; Inoue 2003, 2011; Zhukovska+2008, 2016; Draine 2009; Michalowski+2010, 2015; Gall+2011a, 2011b; Mattsson 2011; Pipino+2011; Kuo & Hirashita 2012; Valiante+2011, 2014; Mancini+2015; Asano+2013a, 2013b, 2014; Calura+2014; Nozawa+2015; Aoyama+2017; Hou+2017; Hirashita & Nozawa 2017) Mancini et al. (2015)
2-3. 分子雲でのダスト成長は本当に起こるのか? ○ ダスト表面での氷マントル形成? ‐高密度分子雲(n > ~103 cm-3)ではダスト 表面に氷のマントルが形成され、その結果 ダストの成長は阻害される(Ferrara+2016) 〇 宇宙初期ではダスト温度が高い? - Tdust ~ 20 K (Tgas ~ TCMB ~ 30-50 K) ➜ ダスト表面からガスが脱着しやすい (Ferrara+2016) 〇 付着確率は1で良いのか? - 0.01-0.1が妥当? ➜ ダスト成長のタイムスケールは長くなる ダスト 氷 Zhukovska+2016
2-4. 分子雲でのダスト成長は本当に起こるのか? ○ ふわふわのダストができてしまう? ‐結合が弱いと、付着した原子は脱着しやすい 〇 ダストの選択的成長?(Jones&Nuth2011) - Si, Mg, Fe, O ➜ シリケイトダスト - C ➜ 炭素質ダスト H2 Mg Fe H2O C Si 炭素質ダスト シリケイトダスト Jones+2013, 2016, 2017
Q1. 分子雲中でのガス降着によるダスト 成長は本当に起こるのか? 〇 星間ダスト総量(dust-to-metal ratio) 成長は本当に起こるのか? 〇 星間ダスト総量(dust-to-metal ratio) 超新星・AGB星からの供給だけでは足りない 別の星間ダストのソースが必要 ➜ 分子雲での重元素ガス降着によるダスト成長 ‐分子雲中でダストは効率的に成長することができるのか? ‐ダスト成長は観測から導かれた星間ダストモデルと整合的か?
3-1. プレソーラー粒子 - 存在量(測定量 by 体積充填率) ・ 始原的隕石中: ~0.01 % ‐ 始原的隕石・惑星間塵(IDPs)中で発見される ‐ 同位体異常を示す ➜ 太陽系物質とは全く異なる同位体組成 ## 太陽系物質の同位体組成は数%で均一 ‐ 太陽系外で(太陽系形成以前に)、超新星や AGB星で形成されたダストの生き残り ‐ 組成 : graphite, SiC, TiC, Si3N4, Al2O3, MgAl2O4, Mg2SiO4, MgSiO3 … - 存在量(測定量 by 体積充填率) ・ 始原的隕石中: ~0.01 % ・ 惑星間塵(IDPs)中: ~0.05 % © Amari, S. Nittler 2003 Nittler+1997 http://presolargrains.net/
Q2. なぜプレソーラー粒子の存在量は 0.01%程度と非常に小さいのか? 〇 プレソーラー粒子 0.01%程度と非常に小さいのか? 〇 プレソーラー粒子 始原的隕石・惑星間塵で発見される星(超新星・AGB星) 起源のダストの生き残り ‐星間ダストが惑星の原材料であるならば、プレソーラー粒子の 存在量はもっと高くて良いはず ‐太陽系物質の同位体組成はなぜ極めて均一であるのか?
4-1. 星間ダストの進化とプレソーラー粒子 分子雲でのダスト 成長は整合的か? プレソーラー粒子の 平均同位体は太陽系 組成と合わない 集積 隕石 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲でのガス降着によるダスト成長 微惑星・ 惑星形成 プレソーラー粒子 存在量 : ~10% プレソーラー粒子をコアとしたマントル組成であるはず 分子雲でのダスト 成長は整合的か? プレソーラー粒子の 平均同位体は太陽系 組成と合わない ©JAXA プレソーラー粒子 存在量 : ~0.01% 原始太陽系星雲で ほとんどのダストは蒸発、ガスとして混合した後に再凝縮 プレソーラー粒子の ふりかけ説 by ゆり本さんなど すべてのダストを蒸発させることは可能か? Sakai+2014, Nakamoto et al.
4-2. 分子雲中でのガス相からのダストの凝縮 星間ダストの 新たなソース 鉄のダストへの凝縮サイト 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲中の衝撃波による ダストの破壊と再凝縮 原始太陽 系星雲 微惑星・ 惑星形成 Sakai+2014 「星間ダストは惑星の原材料」と言える ©JAXA 星間ダストの 新たなソース 鉄のダストへの凝縮サイト 太陽系物質の同位体組成均一性を説明できそう プレソーラー粒子の「ふりかけ」のタイムスケールを稼ぐことができるかも Asano+2014 Bradley+1999
5-1. ダストの凝縮条件 〇 Λon = τsat/τcoll ∝ τcool ngas Nozawa+2015 Nozawa & Kozasa 2013
5-2. 衝撃波後方ガスでダストは凝縮できるか?
5-3. 衝撃波後方ガスでダストは形成されている ○ IIn型超新星のcool dense shell ‐ダスト凝縮時刻:50-200 days ‐間接的証拠が多数 〇 WC-OB star連星系 Tuthill+2008 Tuthill+1999
5-4. 衝撃波後方ガスでダストは凝縮できるか? MC-SNR MC-MC WC-OB SN IIn
5-5. もし衝撃波後方でダストが凝縮できると。。。 5-5. もし衝撃波後方でダストが凝縮できると。。。 (1) 星間ダストの新たなソース ‐超新星1つで最大20Msunのダストを形成 ‐短いダスト形成のタイムスケール(宇宙初期でも可能) ‐星形成活動が活発なほどダストを形成する (2) 太陽系物質の同位体均一性を説明 ‐プレソーラー粒子の希少性 (3) ダスト成長に伴う困難性は緩和 ‐氷マントル・ふわふわダストは形成しない ‐選択的成長も改善される ➜ 温度による凝縮物のソーティング シリケイトの 蒸発・凝縮実験 Matsuno+2011
まとめ 分子雲中で起こる衝撃波後方でのダスト凝縮を考える ことによって、これらの問題を統一的に理解できる! ・・かもしれない まとめ (1) 宇宙初期でも現在でも、超新星とAGB星からのダスト供給 だけでは観測された星間ダスト総量を説明できない (2) 星間ダスト量の主要なソースとして分子雲中でのダスト成長 が考えられているが、その実効性は自明ではない (3) 太陽系の同位体組成は極めて均一である (プレソーラー粒子の存在量は0.01%程度と小さい) (4) WC-OB星型連星系やIIn型超新星など、衝撃波後方でダス トが形成されている例がある 分子雲中で起こる衝撃波後方でのダスト凝縮を考える ことによって、これらの問題を統一的に理解できる! ・・かもしれない