超長寿齧歯類ハダカデバネズミの 老化耐性・がん化耐性を制御する分子機構 セミナーのお知らせ 超長寿齧歯類ハダカデバネズミの 老化耐性・がん化耐性を制御する分子機構 三浦 恭子 北海道大学 遺伝子病制御研究所・准教授 2016年11月25日(金) 15:00~16:00 大セミナー室 ハダカデバネズミ(Naked mole-rat)は、エチオピア・ケニア・ソマリアの地下に集団で生息する小型齧歯類である。「真社会性」と呼ばれる分業制の社会性をもち(Queen, King:繁殖、Soldier: 巣の防衛、Worker: 巣の拡張、餌収集、仔育て等)、 地下にトンネルからなるコロニーを形成して集団生活を営む。ハダカデバネズミはマウスと同等の大きさながら約10倍の寿命を有し(約30年)、これまでに自発的な腫瘍形成がほとんど認められていないというがん化耐性の特徴をもつ。さらに、ハダカデバネズミは地下の約7%の低酸素環境へ適応しており、哺乳類でありながら、低体温(32度)かつ外温性(外気温に体内温を依存)という珍しい特徴を有する。 我々は、日本の研究機関で唯一のハダカデバネズミ飼育室を維持しており、これまでに、iPS細胞の樹立・各種臓器の遺伝子発現情報の取得・3D MRI脳アトラスの構築など、基礎的な研究基盤を整備してきた。樹立したNMR-iPS細胞の解析を進めた結果、がん化耐性齧歯類ハダカデバネズミから樹立したiPS細胞は、多能性を持ちながら腫瘍化耐性である(奇形腫を形成しない)ことが判明し、その分子制御機構を明らかにした (Nature Communications 7, 11471, 2016)。現在は、ハダカデバネズミ特異的な老化耐性・がん化耐性の制御機構について、多面的に研究を進めている。 本セミナーではハダカデバネズミの生態と我々のこれまでの研究内容を紹介したい。