スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係 松本浩典(京都大学理学部) 坂本和(Harvard-Smithonian CfA SMA/国立天文台)、 松下聡樹(Insitute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica) ハワイのSubmillimeter Array (SMA) による観測で、典型的なスターバースト銀河NGC253の中心核近傍に、膨張運動エネルギーが1053ergにも達するスーパーバブルが発見された。我々は米国Chandra X-ray Observatory アーカイブデータを解析し、この膨張分子雲のひとつが、円盤中心部のX線放射の端にいることを発見した。さらに、もう一つの分子雲の中にトランジェント天体を発見した。これは膨張分子雲を形成した大爆発で誕生した高密度天体なのかもしれない。 3.X線イメージ 1.はじめに 図2に中心2分角領域のX線イメージを示す。この図から、SB1は中心部のdiffuse放射のちょうど端(kink)に位置することがわかる。図1の電波観測でも同様な構造が見えており、SBが銀河内のおよびガス分布に影響を与えていることを示唆する。 図1左は、ハワイのSubmillimeter Arayによる、NGC253中心部の12CO(J=2-1)のイメージである (Sakamoto et al. 2005)。速度帯を選ぶと、右図にあるように、2つのバブル構造が浮かび上がる。 1999/12/16 0.3-2keV 2-7keV 1999/12/27 0.3-2keV 2-7keV SB2 2000/8/16 0.3-2keV 2-7keV 2003/9/19 0.3-2keV 2-7keV トランジエント天体! SB1 図2:CXOによるNGC253のX線イメージ。左側がソフトバンド、右側がハードバンド。SBの位置は緑の楕円で示す。1999/12/27の観測の角度分解能が悪いのは、望遠鏡の視野中心が銀河中心から離れたところに向いているため。2000/8/16の観測の角度分解能が悪いのは観測時間が短いため。 図1:SMA分子雲観測で見つかったNGC253のスーパーバブル(SB; Sakamoto et al. 2005)。銀河中心は十字で、SBの中心はアスタリスクで、SBのおおよその形状は点線の楕円で示してある。 さらに、2003/9/19の観測で、SB2の中にはトランジエント天体を発見した。そこでこの天体のスペクトルを power-law mode でfitしたところ、以下のような結果になった(図3)。 表1に各バブルについて求めた物理パラメターを右表に示す。サイズはどちらも~100pcであり、膨張速度は~100km/s。膨張の運動エネルギーは~1053ergに達し、スーパーバブル(SB)と呼ぶにふさわしい。 表1:SBの物理パラメター ベストフィット with 90%エラー 吸収 NH=(2.9+/-1.3)e21 cm-2 Photon Index = 2.0 (fixed) Flux(0.5-10keV) = (9.9+/-2.0) e-15erg/s/cm^2 Luminosity(0.5-10keV) =(2.5+/-0.5)e37 erg/s 図3:SB2内のトランジェント天体のスペクトルとベストフィットパラメター 2.X線観測 表2:トランジエント天体の光度変動 右の表は、他の観測時における上限値とともに、光度の時間変動の様子を示したものである。明るさ、スペクトルから、この天体は中性子星、または恒星質量ブラックホールと考えて矛盾はない。 もしこれらSBが、~0.5Myr昔の大爆発の名残だとすると、その痕跡がX線観測で見えるかもしれない。また、同じく典型的なスターバースト銀河M82にもSBが観測されているが (Matsushita et al. 2000)、これはM82X-1という中質量ブラックホール候補天体を中に取り囲んでいる(Matsumoto et al. 2001)。NGC253 SBにも同様の天体が潜んでいるかもしれない。そこで、我々は Chandra X-ray Observatoryのアーカイブデータを利用し、X線放射とSBとの関連を探った。 Date Lx(0.5-10keV) 1999/12/16 <5.0e36 1999/12/17 <8.6e36 2000/8/16 <2.6e38 2003/9/19 2.0+/-0.5e37 4.まとめ ObsID Exposure Date 969 14.15ks 1999/12/16 790 44.08ks 1999/12/27 383 2.16ks 2000/08/16 3931 83.61ks 2003/09/19 1.SB1はdiffuse放射の端に位置する。これはSB1が銀河系中心部のガス分布に影響を与えていることを示唆する。 2. SB2の中にX線トランジェント天体がいるが、中性子星もしく恒星質量BHと考えられる。 表2: 利用したChandra Xray Observatory アーカイブデータ一覧 5.Reference 1.Sakamoto et al. 2005, ApJ in print 2.Matsushita, S. et al. 2000, ApJ, 618,712 3.Matsumoto, H. et al. 2001, ApJ, 547, L25