ヤマセ海域のSST変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー

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Presentation transcript:

ヤマセ海域のSST変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 背景の写真は2011年8月1日、ヤマセが吹いた際に弘前で見られたダシ雲の写真です。ダシ雲とは・・・・・・ では、弘前にもこのような影響をもたらしたやませとは  弘前大学 佐々木 実紀

背景① 海洋 →ヤマセ ・・・・  研究が多い ヤマセ→ 海洋  ・・・・  研究が少ない ヤマセから海洋への影響も十分考えられる!!

背景②:冷水渦と暖水渦 表層の暖水が・・・・ ヤマセ後のSSTの変化→内部構造も関係??? 厚い 薄い 冷水渦=表層の暖水が薄い 2002年7月上旬の深さ100mの水温図(℃) 厚い 薄い 0m 100m 冷水渦=表層の暖水が薄い        →SSTも下がりやすい? 気象庁HPより ヤマセ後のSSTの変化→内部構造も関係???

前回の結果 ヤマセが吹くとSSTは低下する ヤマセの吹き出し時に熱フラックスの増加 海洋内部構造も関係 ヤマセ海域において  (暖水渦、冷水渦の存在)

海洋内部構造とSSTの関係 暖水渦 SSTは低下しにくい 結果 冷水渦 SSTは低下しやすい 考察 ヤマセが吹く 表層の薄い暖水がかき混ぜられる すぐ下の冷水が現れ、SSTが低下する 考察

風 目的 風速とSSTの関係 風による海洋のかき混ぜの効果 台風の事例との比較 海洋の熱量の変化 海面からの熱フラックス バルク式(Kondo 1975)

使用データ NCEP/NCAR再解析データ 分解能 6時間(UTC) →気温、風、気圧、湿度 JCOPE2 →水温、海洋の流れ     格子間隔 2.5度             →気温、風、気圧、湿度 JCOPE2              →水温、海洋の流れ 分解能  1日 (UTCで6時おきのデータの平均) 格子間隔 1/12度

使用データ:JCOPE2 JAMSTEC構築の海洋客観解析データ(モデル予報+観測) →精度がかなり良い モデル 観測  POM/POMgcs(プリンストンオーシャンモデル)を基に  構築。 観測   入手可能なすべての観測データ  (人工衛星、ARGOフロート、各種船舶によるデータ)      →精度がかなり良い 格子間隔 水平1/12度(約10Km)           鉛直45層 一日毎の6500mまでの水温、塩分、              海流の予測データ NOAA:OISST(内挿データ) 格子間隔1度 SSTが見れる NOAA JCOPE2

JCOPE2 海面の境界条件として QuikSCAT 風の東西成分 NCEP/NCAR SST ,気温,比湿 観測データ TOPEX/POSEIDON ERS-2 AVHRR CTD,XBT,MBT

暖水渦と冷水渦の位置 暖水渦① 冷水渦① 冷水渦② 暖水渦② 北緯41.5度 東経144.0度 北緯38.3度 東経142.8度 7月30日~8月2日の平均 暖水渦① 北緯41.5度 東経144.0度 冷水渦① 北緯38.3度 東経142.8度 冷水渦② 北緯37.0度 東経141.5度 暖水渦② 北緯40.0度 東経142.5度

台風によって風が強→SST低下 冷水渦①の状況 風がすごい強いわけではないのにSSTが低下 期間05/01~08/31 SST 台風6号 気温 SST 風がすごい強いわけではないのにSSTが低下 風の絶対値 台風6号 台風2号 E S W N 台風によって風が強→SST低下

ヤマセ期間の定義 ヤマセ期間 7月30日~8月2日

台風2号の影響を調べた期間 台風の影響 5月30日~ 台風の経路 NCEP/NCARによる風 台風2号 6/01 5/31 5/30 冷水渦 台風2号 6/01 5/30 5/29 台風の影響 5月30日~

前回の結果 冷水渦① 暖水渦② 南風だと強くてもSSTがさがらない 強い東風 SSTが低下 期間07/25~08/05 SST E E 風向 前回の結果  期間07/25~08/05 冷水渦① 暖水渦② SSTが低下 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 30 28 26 24 22 20 18 16 14 12 気温 ℃ SST 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 風の絶対値 m/s この期間の平均 風向 E S W N E S W N 南風だと強くてもSSTがさがらない 強い東風

かき混ぜ効果の検証 比較 SSTが低下した事象 5月30日に接近してきた台風2号 7月に吹いたヤマセ 表層混合層の変化の様子 熱量を使ったかき混ぜ効果の検討 水温 海面 下層 表層混合層 風が強い Q(熱量)= 密度 × 比熱         海水密度 1025Kg/m3        海洋比熱 3.85 J/kg   熱量が保存→海洋のかきまぜ効果による

台風時のSST偏差 暖水渦 → SSTが低下しにくい 冷水渦 → SSTが低下しやすい 強風が吹き続けた31日に低下 東経144度線での鉛直断面図 強風が吹き続けた31日に低下 暖水渦 冷水渦 水深(m) Before 5月29日 After 5月31日    暖水渦 → SSTが低下しにくい     冷水渦 → SSTが低下しやすい 

水深100mの水温図 北緯38度  東経142.5度 北緯38.3度  東経142.8度 ヤマセ 台風2号 冷水渦で比較し海水の表層混合層をみる

結果 台風2号 SSTが低下=表層混合層の発達 風が強くなった2日目に表層の暖水が消える 東経142.5度の鉛直断面図 冷水渦 北緯38度 結果 台風2号  東経142.5度の鉛直断面図 SSTが低下=表層混合層の発達 水深(m)   冷水渦 北緯38度  東経142.5度 水深(m) 風が強くなった2日目に表層の暖水が消える

結果 ヤマセ 台風に比べ混合層の厚さが薄い →風速の違い 東経142.8度の鉛直断面図 冷水渦 北緯38.3度 東経142.8度 水深(m) 結果 ヤマセ 東経142.8度の鉛直断面図 水深(m) 水深(m)   冷水渦 北緯38.3度  東経142.8度 台風に比べ混合層の厚さが薄い →風速の違い

結果 台風2号での水温の鉛直分布図と熱量 強い風が持続 →混合層が発達 減少 減少 台風2号 熱量が減少 →風のかき混ぜ効果だけではない 結果 台風2号での水温の鉛直分布図と熱量 台風2号 減少 強い風が持続  →混合層が発達 水深0m~50m 日ごとの熱量 5/29 2.91×106 J/m2 5/30 2.87×106 J/m2 5/31 2.76×106 J/m2 6/1 2.74×106 J/m2 水深(m) 減少 5/29 5/30 5/31 6/01 熱量が31日に大きく低下 50m以下は水温変化なし ほぼ同じ温度 熱量が減少  →風のかき混ぜ効果だけではない 水温(℃)

海洋の熱が奪われる 風の絶対値が高い 気温とSSTも低下 →熱フラックスも増加! =海面から熱が放出 水深10mと50mの水温が同じに 北緯38度 東経142.5度 台風2号 05/28~06/05 E S W N 潜熱フラックス 顕熱フラックス 気温 SST 風の絶対値 風向 10mの水温 50mの水温 100mの水温 22 18 14 10 6 2 24 20 16 12 26 8 風の絶対値が高い 気温とSSTも低下   →熱フラックスも増加!    =海面から熱が放出 海洋の熱が奪われる 水深10mと50mの水温が同じに     =表層混合層の発達 熱フラックスは上向きが正

結果 ヤマセでの水温の鉛直分布図と熱量 台風と比べ混合層の厚さが薄い ヤマセ 熱量がほぼ保存されている →風のかき混ぜ効果が大きい 7/29 結果 ヤマセでの水温の鉛直分布図と熱量 台風と比べ混合層の厚さが薄い ヤマセ 7/29 7/30 8/01 7/31 水深5mまでの日ごとの熱量の変化 7/29 0.44×106 J/m2 7/30 0.42×106 J/m2 7/31 0.43 ×106 J/m2 8/01 0.43×106 J/m2 水深(m) 熱量にあまり大きな変化はない 熱量がほぼ保存されている  →風のかき混ぜ効果が大きい 水温(℃)

風速が高くなりSSTが低下 →風の影響が大きい 気温が低下し熱フラックスが増加 =海面から熱が出ていく (SSTの上昇がSTOP) 北緯38.3度,東経142.8度 ヤマセ 07/27~08/07 潜熱フラックス 顕熱フラックス 気温 SST 水深10mの水温 100mの水温 E S W N 22 18 14 10 6 2 50mの水温 風の絶対値 風向 10mの水温 26 24 22 20 18 16 14 ℃ W/m2 m/s 風速が高くなりSSTが低下  →風の影響が大きい 気温が低下し熱フラックスが増加        =海面から熱が出ていく          (SSTの上昇がSTOP) 混合層がみられたのは  7月31日と8月1日

結果 台風2号とヤマセの比較 台風2号において 熱量は 約0.11×106 J/m2 減少 熱フラックスは 結果 台風2号とヤマセの比較 北緯38度 東経142.5度  熱量 (J/m2) 水深50mまで 潜熱 (J/m2) 顕熱(J/m2) 気温(℃) 風速 (m/s) SST 5月29日  2.91×106 -4.09×103 -2.57×103 16.8 8.52 15.6 5月30日  2.87×106 -3.55×103 -3.86×103 13.2 15. 2 5月31日 2.76×106 5.79×103 0.26×103 9.88 10.5 14.4 6月1日 2.74×106 2.67×103 -0.54×103 13.08 6.0 13.9 18.3 台風2号において 熱量は  約0.11×106 J/m2 減少 熱フラックスは  約6.5 ×103 J/m2 海面から放出   熱フラックスだけでは熱量の減少は説明できない 北緯38.3度 東経142.8度 熱量 (J/m2) 水深5mまで 潜熱  (J/m2) 顕熱(J/m2) 気温(℃) 風速 (m/s) SST 7月29日 0.44×106 ‐0.1×103 -0.25×103 22.8 3.5 7月30日 0.42×106 2.08×103 -0.98×103 22.0 6.2 22.7 7月31日 0.43 ×106 0.94×103 1.45×103 21.3 6.5 22.1 8月1日 0.43×106 5.63×103 1.32×103 20.5 4.5

結果 ヤマセでは台風ほど気温低下も風速も強くないが SSTが下降している 表層混合層は台風では厚くヤマセでは薄い 表層混合層の熱量は台風では低下、ヤマセで はあまり変化しない 台風の混合層の熱量の低下は海面熱フラックスで は説明できない

ヤマセの最初のSST低下は海洋   のかきまぜ効果の影響が大きい 下層雲による日射量の減少を検 討する必要がある 考察

今後の課題 JCOPE2データの精度の検討 熱量の計算の正確性を上げる 日射量のデータの利用 (短波放射、長波放射) 台風6号と2012年のヤマセでの事例解析 謝辞 JCOPE2のデータを利用させていただいた海洋研究開発機構の宮澤泰正様、章若潮様、利用にあたりお世話いただいた長崎大学の万田敦昌様に感謝します。