物理学習の視点からみた 青少年の物理離れの実態

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物理学習の視点からみた 青少年の物理離れの実態 (1999.12) 高等学校物理の実態 「パリティ」Vol.15 No.08 2000-08 pp.54-57 ・「“メインタイトル”」という論文についての発表。 ・“自己紹介” ・この論文は物理雑誌「パリティ」にも内容をふくらませて掲載されている。 そちらからも引用しながら発表。 発表者:川村研究室B4 山下 香織

目次 はじめに 調査対象者及び調査方法と時期 分析方法 結果 考察 論文を読んで 発表の流れ

はじめに 理科離れ・物理離れが社会的関心事に 状況 高等学校の教育課程が改訂され、理科のそ れぞれの分野が3科目に 物理離れの改善は見られたのか? 状況 大学入試との兼ね合いでⅠAを学習している 学校が少ない 新科目の設置では解決できない ⅠB・Ⅱの内容の改善が必要 はじめに=研究背景 理科離れ・物理離れが社会的関心事に… これをふまえて高等学校の教育課程が改訂され(平成元年告示、平成6年度から実施)、理科のそれぞれの分野にⅠA・ⅠB・Ⅱの3科目が設置されることに。 特にⅠAは理科離れへの対策として注目されていたが、大学入試との兼ね合いからほとんどの進学校ではⅠA科目学習していない。これより新科目の設定だけでは根本的な対策にはならないということが明白となり、ⅠB・Ⅱの内容を改善するよりほかないのでは(byパリティ掲載文)

はじめに 物理ⅠB・Ⅱをともに学習した高校生の視 点から物理学習の実態と問題点を明らか にする

調査対象者及び調査方法と時期 対象について 京都市及び京都市周辺の6つの国公立普通 科高等学校に通う高校3年生 物理ⅠB・Ⅱともに履修した生徒270人(男 子219名・女子51名) 調査の対象者:調査対象校の在籍者数約2200人中の270人となっており、全体の12%ほど →この数字からも物理離れをうかがい知ることができる。 調査対象校在籍者数の約12%

調査対象者及び調査方法と時期 調査方法:質問紙法 実施時期 1997年12月初旬~1998年1月初旬 学習項目を選出 物理ⅠB全般:16項目 物理Ⅱ全般:9項目 マークシートに回答してもらう 好き嫌いの度合い 理解できたかどうかの自信の度合い →どちらも1~5の5段階で評価 実施時期 1997年12月初旬~1998年1月初旬

分析方法 好嫌度 自信度 とても大好き(5) ~ とても嫌い(1) の5段階で評価した数値から3を引き2で割る 最高値 +1、最低値 -1 とても大好き(5) ~ とても嫌い(1) の5段階で評価した数値から3を引き2で割る 最高値 +1、最低値 -1 自信度 理解できたという自信が持てたかどうかを5 段階で自己評価した数値から3を引き2で割 る

結果 有効回答 ノーマークが10項目以上あるものを無効回 答として除外 有効調査対象者数:244名 (そのうち理系志望:228名)

結果 好嫌度 自信度 +0.4以上:よく好まれている学習項目 -0.4以下:好まれていない学習項目 +0.4以上:理解できたという自信がもてた 学習項目 -0.4以下:理解できたという自信がもてな かった学習項目

結果 好嫌度 各学習項目の好嫌度の結果

結果 好嫌度-好まれている学習項目 ほとんどが物理ⅠBの力学の範囲 +4.0以上になった項目つまり、よく好まれているという項目は一つもなかった。 正の値をとった項目は7項目、ほとんどが物理ⅠBの最初の学習内容、主に力学の範囲 ー自分の考察ー →最初の力学分野は身近な現象として想像しやすいから? →ボイル・シャルルは化学でもやるから?

結果 好嫌度-嫌われている学習項目 波動学習 原子物理学 -0.4以下:とても嫌われている学習項目→ない 少し負に傾いている項目 9,11,12:波動学習 15,16:ⅠBの原子物理学 18,20:高校物理としては高度な内容 21,22,23 原子物理学

結果 自信度 各学習項目の自信度の結果

結果 自信度-自信がもてた学習項目 好嫌度で正の値を示した科目と一致! +4.0以上:とてもよく理解できたという自信のある項目→なし 自信度が正=好嫌度が正 「わかれば好きになる」:理解されやすい授業の工夫が物理好きな生徒の養成につながる(byパリティ掲載文)

結果 自信度-自信がもてなかった学習項目 好嫌度で負の値を示さなかった科目も負に -0.4以下:理解できたという自信がもてなかった学習項目→23,24(青で示した) それに準ずる学習項目(ほぼ-0.3以下) 11,12,16:物理ⅠB 18,20,22,25:物理Ⅱ →これらは好嫌度のほうでも好まれていない

考察 注目する点 好嫌度で負を示していなかった学習項目でも 自信度では負の値を示している →“理科を好きにさせたい”という思いは 大事だが、もう一歩踏み込んだ指導が 必要である 好きになってもらいたいという思いをもって授業をすることはもちろん大事だけれども そこからもう一歩踏み込んで、生徒に学習内容を理解させて自信を持たせるという指導の必要性を うかがい知ることができる ー自分の考察ー つまり授業が教える側の自己満足で終わらずに、生徒の反応を真摯に受け止めつつ常によりよい指導法 を研究していくことが大事なのだろう

考察 物理Ⅱの自信度が低い 高度で十分な理解力が必要 この次の学習指導要領では一部選択制に どちらか一方しか取り上げない 両方の授業を行おうとしても時間数が取れない 課題研究など実験が重要な授業要素となる ので、クラスの人数を減らす、といった具体 的な対応が必要なのでは? パリティ版では物理学習の問題点について挙げている 次期教育課程(平成11年告示、平成15年度から実施)

論文を読んで 自信度という新たな尺度 生徒の反応を真摯に受け止めながら常 によりよい指導法を模索していくことが重 要 「興味・関心を持つこと」と「授業の内容を理 解すること」には関連性があることが明示さ れた 理科離れ対策と受験対策は両立できる可能 性があることを示唆している 生徒の反応を真摯に受け止めながら常 によりよい指導法を模索していくことが重 要