Au蒸着による酸化物熱電変換素子の内部抵抗低減化効果

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Au蒸着による酸化物熱電変換素子の内部抵抗低減化効果 第5回日本熱電学会学術講演会 Au蒸着による酸化物熱電変換素子の内部抵抗低減化効果 2008年8月22日 横浜国立大学 ◎岡村 卓,中津川 博

研究背景 ◆現在使われている熱電材料 ⇒Bi-Te系やPb-Te系の金属材料 融点が低い、有毒元素・希少元素を含むなどの問題点がある。   融点が低い、有毒元素・希少元素を含むなどの問題点がある。 ◆熱電発電システムの実用化には、耐熱性を持ち、有毒元素や希少元素を含まない材料が必要となる。      ⇒酸化物材料が注目されている 実際に、酸化物材料を使用したモジュールも作製されている。

研究背景 ◆これまで、以下に示すような方法でモジュールの内部抵抗を低減したという報告がなされている [1]高温高圧下での接合  [1]高温高圧下での接合  [2]酸化物粉末を混合した銀ペーストを接合材料として使用  [3]拡散接合を用いる P型 N型 TH [K] TL [K] ΔT [K] Pmax [mW] [1] Li-doped NiO Ba0.2Sr0.8PbO3 4対 1164 625 539 34 [2] Ca2.7Bi0.3Co4O9 CaMn0.98Mo0.02O3 8対 1273 - [3] NaCo2O4 ZnO 12対 839 377 462 58 [1]W.Shin et al., Jpn. J. Appl. Phys. 39, pp.1254-1255 (2000) [2]S. Urata et al., Int. J. Appl. Ceram. Technol,. 4, pp.535-540 (2007) [3]T.Souma et al., Proceedings of ICT-2007 (2007)

試料作製 P型:[(Ca0.99Y0.01)2CoO3]0.62CoO2 N型:Ca0.93Bi0.07MnO3 ►原料粉末 : CaCO3, Co3O4, Y2O3 ►仮焼き : 920℃, 12h in air ►焼結 : 920℃, 24h in oxide ×2 ►昇温(冷却)速度 : 100℃/1h ►原料粉末 : CaCO3, Mn3O4, Bi2O3 ►仮焼き : 850℃, 10h in air ►焼結 : 1300℃, 10h in air ►昇温(冷却)速度 : 100℃/1h ゼーベック係数の温度依存性 電気抵抗率の温度依存性

熱電変換素子 作製方法 P N 評価方法 ◆I-V特性の評価 ◆耐久性試験 ◆材料と銀電極の接合部のSEM観察 P N アルミナ板 銀シート 銀シート、アルミナ板を切断 試料を4mm角に切断して金蒸着を施す 4mm P 4mm N 銀ペーストで接合 評価方法 ◆I-V特性の評価 ◆耐久性試験 ◆材料と銀電極の接合部のSEM観察 P N 銀ペースト 大気中、1123Kで10分

p,n型素子の開放電圧 今回作製した素子が、発電素子として正しく機能していることが確認された。 ◆すべての素子で温度差ΔTの増加に比例して、開放電圧も直線的に増加している。 今回作製した素子が、発電素子として正しく機能していることが確認された。 開放電圧の温度依存性

p,n型素子の内部抵抗 N型・・・Au蒸着の有無に関わらず、ほぼ等しい抵抗値を示した。 P型・・・Au蒸着した素子は低い抵抗値を示したが、金蒸着していない素子の抵抗は高くなった。 素子の内部抵抗比較 [mΩ] (TH=373K) 条件 理論値 Au蒸着 有 無 P型 39.4 49.6 399 N型 8.40 8.65 8.89 P型素子の内部抵抗は理論値との差が大きく、特にAu蒸着していない素子は接触抵抗の占める割合が約90%となった。 p,n型素子の内部抵抗

接合部のSEM画像 Au蒸着 有 無 p型 n型 p型酸化物材料 銀電極 n型酸化物材料 銀電極 ◆Au蒸着を施した方は、材料と銀電極がしっかりと接合できていたが、Au蒸着していない方はp型材料と銀電極との間に隙間ができていた。 ◆n型材料と銀電極は、Au蒸着の有無に関わらずしっかりと接合できていた。

研究目的 ◆酸化物材料を使用したモジュールを作製するためには、耐熱性を持った接合材料や、モジュールの内部抵抗を低減するための接合方法が必要になる。 モジュールの内部抵抗が高くなると出力も低下してしまう。 ◆本研究では、熱電変換素子の内部抵抗を低減するための一つの手段として、電気伝導率の高いAuを酸化物材料に蒸着させる。 Au蒸着を施すことで素子の内部抵抗を低減し、得られる最大出力を向上させることを目的とする。

※①、②の条件でそれぞれ5個ずつモジュールを作製 研究方法 モジュールに使用した試料 ①銀シートとの接合面にイオンコーター(エイコー・エンジニアリング)でAu蒸着を施した試料 ②Au蒸着を施してない試料 ※①、②の条件でそれぞれ5個ずつモジュールを作製 N P N P ①Au蒸着あり ②Au蒸着なし 熱電変換素子

素子のI-V特性 素子の性能 (TH=573K) 内部抵抗 [mΩ] 開放電圧 [mV] 最大出力 [mW] 61.0 50.4 10.4 ◆作製した10個の素子の中で一番高い性能を示したのは、Au蒸着を施した素子で、TH=573K、ΔT=276Kのとき、最大出力10.4mWを得た。 ◆p,n型材料を8対用いたモジュールを作製して500Kの温度差を与えれば、計算上は約0.27Wの電力を得ることが可能である。 熱電変換素子のI-V特性

素子の性能比較 ◆Au蒸着した試料を使用した素子は、安定して低い内部抵抗を示し、出力値も高くなってる。 素子の内部抵抗 Au蒸着あり ● ▲ ■ ◆ ▼ 抵抗(mΩ) 60.4 62.2 63.9 62.5 61.0 Au蒸着なし 481 135 126 162 389 TH=573K, ΔT≒276K ◆Au蒸着した試料を使用した素子は、安定して低い内部抵抗を示し、出力値も高くなってる。 Au蒸着していない素子に比べて、出力は最大約8倍高くなっている。 ◆Au蒸着した素子の内部抵抗のうち、接触抵抗が占める割合は約20%である。 素子の出力特性

加熱‐冷却サイクル前後の素子の内部抵抗 [mΩ] 素子の耐久性 加熱‐冷却サイクル前後の素子の内部抵抗 [mΩ] 条件 Au蒸着あり Au蒸着なし 番号 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10 前 60.4 62.2 63.9 62.5 61.0 481 135 126 162 389 後 * 63.6 64.9 64.5 62.1 - 189 433 *接合部のSEM観察のために切断 ◆300℃まで加熱して内部抵抗を測定し、その後室温まで冷却するというサイクルを10回行った。 ◆Au蒸着を施した方は内部抵抗値にほとんど変化が見られなかったのに対して、Au蒸着していない素子は大幅に上昇した。また、No.6,9の素子は測定後にp型材料と銀電極が剥離した。

結論 酸化物材料にAu蒸着を施すことで、素子の内部抵抗が低減した。これは、Au蒸着していないp型材料と銀電極の間には隙間があるが、Au蒸着を施した方は隙間なくしっかりと接合できていることが影響していると考えられる。    Au蒸着を施した素子の内部抵抗は、Au蒸着していない素子の約1/2~1/8であった。また、Au蒸着した素子の内部抵抗のうち接触抵抗の占める割合は、約20%であった。 作製した10個の素子の中で最も良い性能を示したのはAu蒸着を施した素子で、TH=573K、ΔT=276Kのとき、開放電圧50.4mV、最大出力10.4mWを得た。 I-V特性評価のために素子の加熱‐冷却を繰り返した後でも、Au蒸着を施した素子の内部抵抗にはほとんど変化が見られなかった。