フェルミ・ガンマ線衛星で見た宇宙 June. 25, 京都産業大学

Slides:



Advertisements
Similar presentations
硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
Advertisements

かなた望遠鏡・フェルミ衛星によ る活動銀河核の多波長同時連携観 測 伊藤亮介、深沢泰司、かなたチー ム、 フェルミ LAT コラボレーション 多色同時観測 広島大学.
ガンマ線バースト (GRBs) 硬 X 線からガンマ線領域で明るい ( keV) スパイク状の光度曲線 継続時間の長い / 短い GRB Seconds since trigger Counts / s GRB GRB GRB 発見 1967年7月2日.
新星は新たな宇宙線の起源 か? 武井大、北本俊二 ( 立教大学 ) 、辻本匡弘 (JAXA) 、 Jan-Uwe Ness (ES A) Jeremy J. Drake (SAO) 、高橋弘充 ( 広島大学 ) 、向井浩二 (NASA) アメリカ天文学会研究報告誌より論文として発表 ( Takei et.
2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
論文紹介06: 最近のγ線観測とGLASTとの関連
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
山崎祐司(神戸大) 粒子の物質中でのふるまい.
ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
GRB 観測 相対論的 Jet の内側を探る 金沢大学 米徳 大輔、村上敏夫 今日のトピックは Inverse Compton
In situ cosmogenic seminar
ガンマ線バースト (GRBs) ガンマ線で明るい ( keV) スパイク状の強度変動 継続時間の長いもの短いもの click
エマルションチェンバーによる 高エネルギー宇宙線電子の観測
数値相対論の展望        柴田 大 (東大総合文化:1月から京大基研).
すざく衛星によるTeV γ線天体HESS J の観測 --dark accelerator?--
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
パルサー星雲を伴うパルサーの 回転進化について 田中 周太 大阪大学 宇宙進化グループ D2 共同研究者 高原 文郎
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
XTE/ASM, PCA, HEXTEの感度と観測成果
超新星残骸から 逃走した宇宙線(e- , p) 大平 豊 高エネルギー加速器研究機構(KEK) 内容 SNRから逃走した宇宙線
内山 泰伸 (Yale University)
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
巨大電波銀河 3C 35 の「すざく」による観測 磯部直樹 (京都大学, kyoto-u. ac
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
(GAmma-ray burst Polarimeter : GAP)
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
FermiによるGRB観測を受けて CTAに期待すること
パルサーって何? 2019/4/10.
CTA報告19: CTA時代におけるSNR研究
ガンマ線連星 LS I 放射モデル 2009/12/14 永江 修(広島大学).
Fermi Bubble における粒子加速の時間発展と放射の空間依存性
鉄輝線で解明したSgr A* の活動性: 京都大学 小山勝二 ブラックホールSgrA*の時空構造を鉄輝線で解明する
電波銀河 Fornax A の東ローブのEnergetics の XMM-Newton による調査
暗黒加速器とパルサー風星雲 --HESSJ とPSR
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
京大他、東大やアデレード大学など日豪の16機関が共同で、オーストラリアの砂漠地帯に望遠鏡4台を建設しTeVγ線を観測している。
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
「すざく」であばく超光度X線源 (P4-7) rikne
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
平成 31 年度 P6 高エネルギー宇宙実験 担当: 物理学第二教室 宇宙線研究室の教員 谷森達 教授、鶴剛 教授、 窪秀利 准教授、
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
超新星爆発.
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
早稲田大学 理工学術院 鳥居研究室 宇宙線の観測 宇宙線はどこから? 電子望遠鏡CALET LHCf加速器実験 卒業生の進路 研究活動
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
Introduction to the X-ray Universe
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ようこそ Hot Universe へ Fes. 馬場 彩 Contents X線天文学とは?
Fermi衛星による GRB研究の成果 Feb. 7, 東工大 (領域シンポジウム)
CHANDRA衛星の観測結果による、 球状星団M4(NGC6121)のスペクトル解析
シンクロトロン放射・ 逆コンプトン散乱・ パイオン崩壊 ~HESS J は陽子加速源か?
研究紹介:山形大学物理学科 宇宙物理研究グループ 柴田研究室
γ線パルサーにおける電場の発生、粒子加速モデル
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
GRBから期待される ガンマ線光度曲線 浅野勝晃(東工大).
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
どんな天体がX線を出すか? MAXIのデータを1年半に わたり集積した全天X線画像
Presentation transcript:

フェルミ・ガンマ線衛星で見た宇宙 June. 25, 2011 @ 京都産業大学 Tsunefumi Mizuno (Hiroshima Univ.) on behalf of the Fermi-LAT Collaboration 『よろしくお願いします』

Contents フェルミ衛星の3年間の成果について紹介 2008年6月打ち上げ フロリダ州 ケープカナベラル基地 3c454.3 『3年間の成果』 フェルミ衛星=宇宙ガンマ線衛星 フェルミ衛星の3年間の成果について紹介 打ち上げは3年前 2008年6月 フロリダ ケープカナベラル基地で打ち上げ 右はおととし発表した全天ガンマ線マップ 世界中の研究者がデータを用いて論文発表 3c454.3 Fermi-LAT 1 year all-sky gamma-ray map フロリダ州 ケープカナベラル基地

Gamma-ray Sky (pre-Fermi) EGRET (1991-2000)によるガンマ線マップ 明るいガンマ線天体と銀河面放射がもやもやと見える Galactic Center Vela Geminga 『前のガンマ線検出器と比較』 フェルミの性能をみるため、前の世代の検出器と比較 EGRET (1991-2000) 銀河座標 銀河面が水平の帯 銀河面放射+明るいガンマ線源:  かに星雲、パルサー  銀河面のパルサー  系外の活動銀河核 が「もやもやと」見える Crab 3c454.3 271 sources (Hartmann+99)

Gamma-ray Sky (Fermi Era) フェルミ衛星による1年間全天ガンマ線マップ 多数のガンマ線源がはっきり見える Galactic Center Vela Geminga 『質の違いは一目瞭然』 おととし発表したFermi衛星による全天ガンマ線マップ 質の違いは一目了然(パタパタ): 多数のガンマ線源がはっきりと見える ガンマ線天体の数は僅か1年で5倍以上に=> 高い性能 Crab 3c454.3 >1400 sources (Abdo+10, ApJS 188, 405)

Gamma-ray Sky フェルミ衛星による1年間全天ガンマ線マップ 多数の新しいガンマ線源がはっきり見える Fermi以前は, PulsarまたはBlazar以外はほとんど(または全く)知られていなかった種族 PSR (radio/X) Vela Geminga 『新しいガンマ線源』 カタログ論文中のガンマ線源の分類 以前は他波長でも明るいパルサーとブレーザー(ジェットがこちらを向いた活動銀河)以外は 知られていなかった Blazar Crab 3c454.3 >1400 sources (Abdo+10, ApJS 188, 405)

Gamma-ray Sky フェルミ衛星による1年間全天ガンマ線マップ 多数の新しいガンマ線源がはっきり見える Fermi以前は, PulsarまたはBlazar以外はほとんど(または全く)知られていなかった種族: 今日の主役 Vela Geminga Radio-quiet PSR SNR Globular Cluster etc. 『新しいガンマ線源』 カタログ論文中のガンマ線源の分類 以前は他波長でも明るいパルサーとブレーザー(ジェットがこちらを向いた活動銀河)以外は 知られていなかった 電波で暗いパルサー 超新星残骸 球状星団 通常の銀河 などがガンマ線を出す: 今日の話の主役 Crab Non-Blazar AGN Normal Galaxy etc. 3c454.3 >1400 sources (Abdo+10, ApJS 188, 405)

Fermi-LAT Instruments まず装置の話 次いで観測成果の紹介

GLAST Launch GLASTはFermi衛星の旧称 Cape Canaveral Air Station @ Florida Launched on June 11, 2008 Science Operation on Aug 4, 2008 Orbit: 565 km, 26.5o (low BG) GLASTはFermi衛星の旧称 5-yr mission (10-yr goal) 『目標は10年』 2008年6月打ち上げ 初期運用でその場に 科学観測を8月に開始, 順調に観測 ミッションライフは5年、目標10年 GLASTはFermiの開発段階の仮の名前 Cape Canaveral Air Station @ Florida 8

GLAST => Fermi 宇宙物理の分野でも名高いフェルミ教授の名を称えて名付けられた. 『フェルミ命名』 打ち上げ後、Enrico Fermiの名を取り「フェルミ衛星」と名付けられた フェルミ・ディラック統計 放射性元素の研究(ノーベル賞業績) 宇宙線のフェルミ加速 宇宙物理学の分野でも名高い物理学者 Fermi衛星=LAT+GBM 以下はLATについて説明 Enrico Fermi (1901-1954) フェルミ統計 (1926) 放射性元素の研究 (1938 Novel Prize) 宇宙線のフェルミ加速 (1949) Fermi衛星=LAT+GBM 9

Fermi-LAT Collaboration France Italy Japan Sweden US Hiroshima Univ. Tokyo Tech ISAS/JAXA Waseda Univ. Tokyo Univ. Nagoya Univ. Aoyama Gakuin Univ. Kyoto Univ. 『フェルミ日本グループ』 日米欧の国際協力ミッション 日、米、仏、伊、瑞 +個人でも参加する著名な研究者有 広大ほか8機関 運用、論文で高いアクティビティ 日本が本格参加した初のガンマ線ミッション 1998年 釜江(東京大学), 大杉(広島大学)がKEKのサポートを受け本格参加 現在では8機関、20名を超す常勤スタッフ ~400 members (日本グループ~20名)

Large Area Telescope Pair-conversion type g-ray telescope 20 MeV- 300 GeV Tracker: Si-strip detectors direction measurement ~200 um pitch => high precision tracking ACD: plastic scintillators BG rejection 『LATの装置』 メインの検出器:LAT 対生成を利用したガンマ線検出器 飛跡からガンマ線の到来方向を e-/e+のエネルギーからガンマ線のエネルギーを 3つのサブシステム ACD: BG除去 TKR: 方向測定 CAL: エネルギー測定 優れた特徴 ACD: self-vetoを抑える TKR: 高い分解能と広い視野 CAL: 高いエネルギーまで測定 segmented tiles => prevent self-veto Calorimeter: CsI scintillators Energy measurement hodoscopic crystals => shower profile

Large Area Telescope Pair-conversion type g-ray telescope Tracker: Si-strip detectors direction measurement 『シリコン検出器が鍵』 シリコンストリップ検出器はLATの鍵 HPK + 広大で開発。加速器で培われた技術 低ノイズ 高い品質 LATの性能を飛躍的に向上 Key-element of LAT, developed by HPK and Hiroshima Univ. Low-noise (~2.5nA/cm2) High-quality (dead strip: <0.01%) ~106 channels in total SSD

Science Breakthroughs of 2009 Fermi is recognized as one of the top science breakthroughs 『2009年のブレークスルー』 打ち上げ直後から科学成果 サイエンス誌「2009年のブレークスルー」の一つ 記事の写し、文言 16個のガンマ線パルサーの「発見」 その他 銀河系内外のガンマ線天体 広がったガンマ線 電子スペクトルなどで成果 Science, December 2009 Discovery of 16 new pulsars

2011 Rossi Prize ロッシ賞: Bruno Rossi (Giacconiと並ぶX線天文学の開祖)の功績を讃えて作られた賞 2011年 Fermi-LATチーム 2001年 A. Fabian & 田中靖郎 『祝ロッシ賞』 もう一つの例:1月にロッシ賞を受賞 ノーベル賞受賞者R. Giacconiと並ぶX線天文学の開祖 1989年神岡、IMB 2001年にA. Fabian&田中靖郎(X線天文の大家) 今年フェルミチーム 1989年 Kamioka & IMB

フェルミ・ガンマ線衛星で見た宇宙 超新星残骸と宇宙線 新星からのガンマ線放射の発見 ガンマ線バースト: 宇宙ジェット 次いで観測の詳細 いくつかのトピックを紹介 超新星残骸と宇宙線 新星からのガンマ線放射の発見 ガンマ線バースト: 宇宙ジェット

Gamma-ray Sky (再掲) フェルミ衛星による1年間全天ガンマ線マップ 多数のガンマ線源がはっきり見える 誰が, どうやってガンマ線をだすのか Galactic Center Vela Geminga 『誰がガンマ線を出すのか?』 おととし発表した全天ガンマ線マップ再掲載 銀河面および上下(銀河の内外)に多数のガンマ線源 誰が、どうやってガンマ線を出すのか? Crab 3c454.3 >1400 sources (Abdo+10, ApJS 188, 405)

Gamma-ray Sources 様々な天然の加速器がガンマ線を放射する Vela Geminga Crab 3c454.3 立命館大学 『天然の粒子加速器』 ガンマ線源の例 銀河系内天体 パルサー(高速回転する中性子星) 超新星残骸(超新星爆発後、星間空間で加熱・粒子加速) 銀河系外天体 活動銀河核(超巨大ブラックホール) 暗黒物質? 天然の粒子加速器が存在し、ガンマ線を放射する Crab 3c454.3 立命館大学 森研究室のHPより

Emission Mechanism 4つの非熱的プロセスでガンマ線を放射 宇宙線や, 星間ガス・光子・磁場を調べることが可能 シンクロトロン放射 制動放射 (星間磁場) (星間ガス) 逆コンプトン 散乱 核子-核子反応 『放射プロセス』 宇宙線->ガンマ線のプロセスのまとめ シンクロトロン放射(宇宙線電子と星間磁場) 逆コンプトン散乱(宇宙線電子と星の光) 制動放射(宇宙線電子と星間ガス) 核子核子反応(宇宙線陽子と星間ガス) 宇宙線や星間ガス、光子、磁場を調べることができる 宇宙線は磁場で曲げられるがガンマ線は直進 天然の加速器を調べるのにガンマ線観測は必須 (星間光子) 宇宙線は星間磁場で曲げられるが, ガンマ線は直進

ガンマ線天体1: 超新星残骸 超新星残骸(SNR): 超新星爆発でできる殻状の星雲 SN1006 by Chandra 『最初の例:SNR』 最初の例:超新星残骸 超新星爆発に伴い、星間空間にできる星雲 SN1006: 1000年前の超新星爆発による超新星残骸 X線写真 SN1006 by Chandra

ガンマ線天体1: 超新星残骸 超新星残骸(SNR): 超新星爆発でできる殻状の星雲 宇宙線加速源の有力候補 陽子を加速しているか? エネルギー収支 WCR~1040 erg/s WSN~1051 erg/30y~1042 erg/sの1%で賄える 加速理論 超新星の爆風が作る衝撃波で加速 しうる (Fermi加速) ~1000 km/s 『宇宙線の加速源』 宇宙線加速源の有力候補: 高エネ宇宙物理分野でさかんに研究 1:エネルギー収支 銀河の外への逃げ出し 10^40 erg/sの注入が必要 2. 加速理論 模式図 3つの大きな問題 陽子>>電子. 陽子加速? 総エネルギー? 最高加速エネルギー? H. Katagiri 陽子を加速しているか? 宇宙線の総エネルギーを説明できるか? 最高加速エネルギーは?(Eknee)

ガンマ線天体1: 超新星残骸 超新星残骸(SNR): 超新星爆発でできる殻状の星雲 宇宙線加速源の有力候補 陽子を加速しているか? エネルギー収支 WCR~1040 erg/s WSN~1051 erg/30y~1042 erg/sの1%で賄える 加速理論 超新星の爆風が作る衝撃波で加速 しうる (Fermi加速) ~1000 km/s 『3つのテーマ』 3つの大きな問題 GeVガンマ線は、特に最初の2つに答えを出すことができる H. Katagiri 陽子を加速しているか? 宇宙線の総エネルギーを説明できるか? 最高加速エネルギーは?(Eknee)

GeV-emitting SNRs 10以上のSNRをGeVで検出 2つのカテゴリ 若いSNR (CasAなど) 以下観測の紹介 NASAのプレスリリース資料 4SNR: 超新星残骸がGeVガンマ線源であることを確立 既に10以上を検出 2つのカテゴリに分けられる 若いSNR(t<2000yr) 中年齢のSNR. 分子雲と相互作用 10以上のSNRをGeVで検出 2つのカテゴリ 若いSNR (CasAなど) 分子雲と相互作用する中年齢SNR (W44など) (2010 Feb. NASAプレスリリース)

Young SNR: Cassiopeia A 銀河系内で2番目に新しいSNR (t=340 yr) 明るい電波源(宇宙線電子), TeV放射有り Fermi LAT GeVで点源状だが, パルサーとずれた位置 有為なパルスなし GeV γ線はSNRから PSR 『CasAの紹介』 若いSNRの代表: カシオペアA 系内で2番目に若いSNR 明るい電波源(シンクロトロン):宇宙線電子 議論にあたりパルサーからの放射か、星間空間からの放射かを見極める必要 若いため小さく点源状だが、 GeVガンマ線はSNRから Abdo+09, ApJ 710, L92 CA: Funk, Uchiyama

Spectrum of Cassiopeia A ハドロン起源かレプトン起源かは常に議論の的 シンクロトロン電波から, 電子密度に上限がつく 100MeV 10GeV 1TeV 『ハドロン or レプトン?』 宇宙線陽子の加速源となりうるか? ハドロン起源かレプトン起源かは他波長でも議論の的 シンクロトロン電波から、電子の密度に上限がつけられる

Spectrum of Cassiopeia A ハドロン起源かレプトン起源かは常に議論の的 100MeV 10GeV 1TeV 『ハドロン or レプトン』 電子起源とすると、0.1mG程度の磁場(赤のモデル線) より強い磁場:電波シンクロトロンから予想される電子密度は小さく、 ガンマ線放射が足りない X線と相容れない 陽子起源とすると、適当な陽子スペクトルでガンマ線を説明可(赤青) 陽子起源が好ましい 宇宙線のエネルギーは1049 erg. 超新星爆発エネルギーの数% 他のSNRも同程度とすると、宇宙線総量を説明できる Brems+IC B=0.12 mG, We=1x1049 erg (X線はB~0.5 mGを示唆) p0-decay B>0.12 mG, Wp=3x1049 erg (適当な陽子スペクトルで説明可) 陽子起源の方が観測によく合う WCR=(1-4)x1049 erg, a few % of ESN

The Energy Spectra 陽子起源をfavorする物もある エネルギー総量の議論が可能に 年齢による違い: 宇宙線の加速と放出 S. Func @HEAD meeting Mid-aged Young CasA LAT range 『SNRまとめ』 Fermiで見た他のSNRもまとめる 赤系統がCasA含む若いSNR 青系統が中年齢のSNR CasAや中年齢SNRは陽子起源を好む例が多い 宇宙線エネルギー総量の議論が可能に:例数を増やす 年齢によりスペクトルに違い。GeV領域で折れ曲がり=>親の陽子の折れ曲がり 宇宙線加速と星間空間への放出の時間発展も議論できる 0.1 1 10 100 GeV 陽子起源をfavorする物もある エネルギー総量の議論が可能に 年齢による違い: 宇宙線の加速と放出

ガンマ線天体2:新星爆発 新星: 白色矮星と通常の星の連星. 白色矮星にガスが降り積もり爆発的核融合を起こす=新星爆発 V407 Cygni 銀河系では頻繁にみられる: 30-60/yr Enova~1044 erg (太陽の1000年分) 新星がγ線を出すとは考えられていなかった 赤色巨星 (SN: ~1/30yr) (ESN ~1051 erg) 『新種のガンマ線天体』 SNRからのガンマ線は『予想』されていた. 感度の問題 全くノーマークのガンマ線天体はあるか?ある! 新星:WDでの爆発的核融合 はくちょう座V407は赤色巨星(R~100Rsun)とWDの連星系 SNよりも頻繁、小規模。それでも膨大なエネルギー ガンマ線放射は予想もされていなかった White Dwarf

Nova V407 Cygni in Visible Light ~9.5 mag ~7 mag 『はくちょう座V407 発見』 V407 Cyg発見の経緯 去年の3月に、日本人アマチュアが発見. 左->右で10倍に増光 京都大学 花山天文台で確認、全世界に通報 日本人アマチュアが発見, 花山天文台で確認・通報 西山浩一, 椛島冨士夫, 前原裕之(花山天文台)

Nova V407 Cygni in g-Rays ほぼ同時にγ線が増光していたことを確認 新星からのγ線を始めて検出 2010 Aug. NASA プレスリリース Abdo+10, Science 329, 817 『ガンマ線検出』 通報を受けガンマ線データを即座に解析 新星の可視増光とほぼ同時にガンマ線も増光. 左->右(20日ずつ) 新星からの、史上初のガンマ線検出 ほぼ同時にγ線が増光していたことを確認 新星からのγ線を始めて検出

Nova V407 Cygni Light Curves ガンマ線 可視光 X線 『ライトカーブ』 ライトカーブ 横軸は日数 縦軸はフラックス。上からガンマ線、可視赤外、X線 黒はフィルタなし ガンマ線は、可視の増光とほぼ同期している。X線は遅れている ほぼ同時にγ線が増光していたことを確認 新星からのγ線を始めて検出

V407 Cygni Binary System 赤色巨星から~10 km/sの星風 新星爆発で物質放出: ~3000 km/s 赤色巨星と白色矮星 6-7 a.u. 太陽~木星 赤色巨星からは膨大な量のガスが星風として吹き出る WDからの距離とガス密度 WDと赤色巨星を結ぶ線上(0度)が特にガス密度が大きい 赤色巨星から~10 km/sの星風 新星爆発で物質放出: ~3000 km/s

V407 Cygni Binary System 赤色巨星から~10 km/sの星風 新星爆発で物質放出: ~3000 km/s 『放射機構』 新星爆発で超音速(3000km/s)で物質放出。 星風と衝突しRG近くで衝撃波が形成。 SNRと同様の粒子加速が期待される。 赤色巨星から~10 km/sの星風 新星爆発で物質放出: ~3000 km/s 赤色巨星近くの衝撃波で粒子加速が期待される

Spectrum and Energetics ~2 GeVで折れ曲がり. 陽子のp0崩壊で説明できる (lepton起源も可能) Eg=4x1041 erg => Ep~1043 erg Enova~1044 erg の10%が粒子加速に費やされた 『スペクトルと総エネルギー』 データ点は赤. 黒青はモデル エネルギースペクトルは2GeVで曲がっている。 陽子起源として説明可能 ガンマ線総エネルギー=>宇宙線陽子の総エネルギー 新星爆発の10%が加速に使えれば説明可能(CasAと同程度) SNRと同様の粒子加速がより小規模の系でも起きうる SNRと同様の粒子加速は, より小規模の新星でも起きうる

その他の新γ線天体 CTA1中の新しいパルサー Abdo+08, Science 322, 1221 CenA lobe: 銀河より巨大な領域で粒子加速 Abdo+10, Science 328, 725 銀河とジェット ガンマ線 『新ガンマ線天体の紹介』 その他の新しいガンマ線天体を紹介 ガンマ線のみでパルスを出すパルサー ジェットがこちらを向いていない「普通の銀河」もガンマ線 ケンタウルス座A 巨大な銀河間空間での粒子加速 NGC1275: 新種のガンマ線銀河 Abo+09, ApJ 699, 31

ガンマ線天体3: ガンマ線バースト ガンマ線で突如輝く現象. 核実験監視衛星Velaが1967年発見. 宇宙論的距離にあり, 光度1051 erg/s(~全銀河の光度)に達する宇宙最大の爆発現象. 継続時間で2つに分類. 大質量星の重力崩壊(極超新星)または中性子星連星の合体とされる. 2 s 『GRBイントロダクション』 系外ガンマ線源: GRB ガンマ線で突如輝く「現象」。核実験監視衛星で発見 右下の図 短い時間で鋭いパルス 宇宙論的距離=>とても明るい 左下:継続時間で二つに分類。二つの母天体の説 T90 (duration) in seconds Time (s)

Gamma-Ray Bursts Overview (Meszaros 2001, Science 291, 79) G>=100 外部衝撃波 内部衝撃波 ガンマ線バースト 可視・赤外・ X線残光 中心天体から超相対論的ジェットが放出. 視線方向と一致するとGRBとなる ジェット内シェル同士の衝突(内部衝撃波)でガンマ線 星間物質との衝突(外部衝撃波)で可視/X線残光 『GRB放射機構』 放射機構: 標準モデル 中心天体から超相対論的ジェット(G>100)が吹き出る 視線方向と一致するとGRBになる ジェット内のシェル同士: 内部衝撃波: ガンマ線 星間物質と衝突: 外部衝撃波: 可視/X線残光 G~100に達する宇宙最強のジェット GRBジェットの起源は未解明. 『現象』の理解を積み重ねる 観測からLorentz因子>=100 “宇宙最強のジェット”

Fermi for GRB LAT GBM (NaI & BGO) FermiはGBMとLATで10 keVから100 GeVをカバーできる ガンマ線バースト モニタ GBM (NaI & BGO) GeVガンマ線 イメージング 8keV-40MeV 20MeV-100GeV FermiはGBMとLATで10 keVから100 GeVをカバーできる ジェットはどこまで加速 されているか ? 未知の放射成分はあるか? 『FermiによるGRB研究』 Fermi衛星はLAT+GBMで広いエネルギー帯をカバー GRB研究でも力を発揮 高エネに感度: ジェットはどこまで加速できるか? 未知の放射成分はあるのか? 内部衝撃波 (シンクロトロン放射)

Fermi View of GRB 全天をモニタするGBM + GeV放射を検出するLAT 打ち上げ後2年で 514 GBM GRBs (約半数がLATの視野内) 18 LAT GRBs ~0.7/日 ~0.7/月 4つのモンスターGRB (>=100 above 100 MeV) 『2年間のGRB観測まとめ』 観測開始後2年でのGRB観測のまとめ 2010年8月までに500個のGRBを検出 18個から100MeV以上のGeV光子 GRBの位置は等方=>宇宙論的 赤はLATの視野内,青はGeV光子 4つのモンスターイベント

GRB090510: Bright Short GRB 初めての「明るい」Short GRB. ~10 msのスパイク Abdo et al. 2009, Nature 462, 331 初めての「明るい」Short GRB. ~10 msのスパイク z=0.9 (73億光年) 最高で31 GeV 高いエネルギー放射の遅れや長寿命GeV放射が見られる 8-260keV GBM 0.26-5MeV LAT all events LAT >100 MeV 『GRB090510』 モンスターイベントの一つの紹介 2009年5月10日 (GRB090510) 上2つがMeV以下 下3つがsubGeV/GeVバンド 初の明るいshort GRB Z=0.903:距離が決まる。 最高エネルギー31GeV 高エネルギー放射の遅れや長寿命のGeV放射 >1GeV 0 1 2s Abdo+09, Nature 462, 331 (CA: Granot, Guiriec, Ohno, Pelassa)

Limits on Lorentz Factor 早い変動(小さな領域)&高い光子数=>電子陽電子対生成を起こし, 高エネルギー光子は外に出れないはず ジェットがLorentz因子Gで観測者に向いていれば, サイズRはG2倍 (相対論的Beaming) エネルギーは1/G倍 => 対生成に寄与する光子数減少 なのでtは~1/G6程度で済む. ここからGmin~1000となる. これだけ強力なジェットは例がない (活動銀河核で~10). 厚さ attenuation length Abdo+09 ApJ 716, 1178 『Lorentz因子の制限』 GRBのジェットについて考察 GRBは変動が早い=>小さい GRBは明るい=>MeV光子数が多い e-/e+対生成を起こす. 高エネルギー光子は外にでれないはず。 31GeVに対してtau=10^18 確かに無理。 (コンパクトネス問題) ジェットが観測者に向かっていれば説明可能 サイズG^2, エネルギー1/G 最低でもG=1000が必要と分かった 他に例がないほど強いジェット. 駆動機構は今後の課題

Limits on Lorentz Invariance Violation 遠方の, 同時に起きた, 高エネルギー光子イベント(GRB)で検証できる. 『光速不変原理のお話』 GRBを用いた光速度不変の原理の検証(お話のみ) 量子重力理論の一部はLIVを予言。光速はエネルギーに依存する 高エネルギー光子が遅い(模式図) なるべく遠くの、同時に起きた、高エネルギー光子によるイベントが最適 =>GRB 2009 Oct. プレスリリース資料より

Limits on LIV E<=5MeV E>=10MeV 31GeVの光子は最大でも0.86秒の遅れ GRBの開始 31GeV光子到来 E<=5MeV E>=10MeV 『光速不変原理のお話』 ライトカーブの拡大 青はGRBの開始 赤は31GeV光子 保守的に見積もっても、遅れは最大0.8秒 n=1 リニアなローレンツ不変の破れ=>量子重力はプランク質量以上 モデルに強い制限 低E/高Eスパイクが同期していたとすると、100倍強い下限がつく 31GeVの光子は最大でも0.86秒の遅れ MQG,1>1.2 Mplank 初めて, プランク質量を超える制限をつけた(n=1).

Thank you for your Attention Summary フェルミ・ガンマ線衛星の成果をいくつか紹介 超新星残骸: 宇宙線の源 新星ほか, 新種のガンマ線源の発見 ガンマ線バースト: 強力なジェット, 光速不変の検証 他にも様々なトピック. 日本グループが活躍. 原著論文(>100) 天文月報「フェルミ特集」 2010年5~8月号 物理学会誌 2010年第3号 『まとめ』 まとめ いくつかのトピックを紹介 日本グループが活躍。 原著論文: チーム全体で100以上 忙しい方のために:日本語の解説記事 是非目を通して頂きたい! ご静聴ありがとうございました。 Thank you for your Attention

Backup Slides

CR Energy Spectrum Eankle Eknee

Shock Acceleration 超新星の爆風が星間物質中に衝撃波を作る 荷電粒子の一部は周りの 電磁流体乱流で繰り返し  散乱され、衝撃波面を通過する度にエネルギーを得る   (Fermiの統計加速) E-2を予言し、宇宙線加速として都合がよい 衝撃波面の静止系 (超新星が右側) V1/V2 ~4

SNR w/ cloud interaction: W44 中年齢(2x104 yr)のSNR Fermiで分解可能な大きさ 密度の濃い分子雲と相互作用しており, γ線放射が期待

LAT view of W44 高密度の分子雲からγ線が放射 x印はパルサーの位置 緑のコントアは衝撃波に励起された分子雲 Abdo+10, Science 327, 1103 CA: Tanaka, Uchiyama, Tajima x印はパルサーの位置 緑のコントアは衝撃波に励起された分子雲 高密度の分子雲からγ線が放射

LAT Spectrum & modeling 100 MeV 10 GeV 1 TeV スペクトルは陽子起源が良く合う

LAT Spectrum & modeling 100 MeV 10 GeV 1 TeV スペクトルは陽子起源が良く合う γ線で~1 GeV, 親の陽子で~10 GeVで折れ曲がり (予想されていなかった結果)

Gamma-ray Spectrum Ecut ~ 0.1Epcut p+p -> np0 + X, p0 -> 2g Mori08 Kelner+06, PRD 74, 034018 p+p -> np0 + X, p0 -> 2g Ecut ~ 0.1Epcut

X-ray from V407 Cygni X線は遅れており, 衝撃波が周りの星間物質を加熱して生じたと考えられている.

Spectrum and Energetics ~2 GeVで折れ曲がり. 陽子のp0崩壊で説明できる (lepton起源も可能) Eg=4x1041 erg => Ep~1043 erg Enova~1044 erg の10%が粒子加速に費やされた (非対称な系: 効率 >10%) IC (電子とR.G.からの光)なら0.4%が粒子加速 データ点は赤. 黒青はモデル エネルギースペクトルは2GeVで曲がっている。 陽子起源として説明可能 ガンマ線総エネルギー=>宇宙線陽子の総エネルギー 新星爆発の10%が加速に使えれば説明可能(CasAと同程度) SNRと同様の粒子加速がより小規模の系でも起きうる

GRB970508 X線残光の発見と可視分光: z=0.835 (ガンマ線の位置決定精度は数度) 2 arcmin 1997 May 09 BeppoSAX WFC (広視野X線カメラ) GRB970228で初めてX線残光 (後にz=0.695) GRB970508: 初めてz=0.835と求まる 1997 May 09 1997 May 14

Long-lived GeV Emission GRB090510 triggered by Fermi-LAT/GBM and Swift-BAT aopt~ -0.5 UVOT aopt~ 1.1 aX~ 0.7 XRT aX~ 2.2 LAT ag~ 1.4 プロンプト以外 長い寿命の放射も多く検出 GRB090510: Fermi & Swift同時観測 各バンドのライトカーブ 1 s 100 s 10000 s De Pasquale et al., ApJL 709, 146 (2010) T0+200 sまでの長寿命GeV放射 bg ~1.1でほぼ一定のスペクトル