A④_05 (チーム名:雲解像モデリング) 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」 「21世紀気候変動予測革新プログラム」 2008年5月26日 第2回研究調整委員会 A④_05 (チーム名:雲解像モデリング) 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」 研究代表者:坪木和久(名古屋大学 地球水循環研究センター) 参画研究者:増永浩彦(名古屋大学 地球水循環研究センター) 篠田太郎(名古屋大学 地球水循環研究センター) 渡部雅浩(東京大学気候システム研究センター) 青木尊之(東京工業大学 学術国際情報センター) 榎本剛(海洋研究開発機構地球シミュレータセンター)
雲を精度よくシミュレーションできるように雲解像モデルを高度化し、その利用、及び全球モデルとの結合により全球モデルの高精度化に寄与すること。 研究目的 雲を精度よくシミュレーションできるように雲解像モデルを高度化し、その利用、及び全球モデルとの結合により全球モデルの高精度化に寄与すること。 雲解像モデル高度化:雲解像モデルの改良と高度化。 雲物理過程の改良(完全2モーメント化、雹、氷晶生成) 力学過程の改良(セミラグランジュ化) パラメータ改良:雲解像モデルの計算から得られるデータを利用して、全球モデルの雲についてのパラメータを改良する。 非斉一モデル結合:非静力学雲解像モデルと静力学全球モデルを結合し、全球モデルの高精度化を図る。 1格子埋め込み(スーパーパラメタリゼーション) 領域埋め込み結合(双方向通信) 比較検証実験:現在気候と温暖化気候における全球モデル出力値を用いて、主に台風の雲解像実験を行いGCMの検証を行う。
雲解像モデル “CReSS” Cloud Resolving Storm Simulator 雲スケールからストームスケールの現象のシミュレーションを地球シミュレーターなどの大規模並列計算機で行うことを目的とした、非静力学・圧縮方程式系の雲解像モデル。 地球シミュレータに最適化した純国産の雲解像領域モデルを開発することを目標として、1998年より雲解像モデルの開発を行なってきた。(一からの開発) 詳細な雲物理過程の導入。 地球シミュレータでの実績。高精度で高効率の並列化。 多様なシミュレーション:台風、集中豪雨、雪雲、竜巻など。 毎日の気象予報実験。国内外での利用。
計画の概要 H19年度 (2007) H20年度 (2008) H21年度 (2009) H22年度 (2010) H23年度 (2011) 雲解像モデル改良 パラメータ改良 非斉一モデル結合 比較検証実験 H19年度 (2007) 雲物理の2モーメント化(雲水・雨水) セミラグ法導入 広領域予報実験、パラメータ抽出 衛星による検証 雲解像モデルの重並列化 双方向通信の方法の検討 観測された台風の実験と検証 (衛星・地上による検証) H20年度 (2008) 1次氷晶改良、2次氷晶導入 セミラグ法のパラメータ調整 高解像度の予報実験、パラメータ抽出 雲解像モデルのGCMとの1格子点結合 領域結合の試行と予備的な実験 観測された台風と現在気候の台風の実験(衛星・地上による検証) H21年度 (2009) 雹のカテゴリーの導入と豪雨や降雹へのインパクト検証 予報実験継続 パラメータの解像度依存性検討 1格子点結合による長期積分 領域結合による東アジア域の実験 現在気候と温暖化気候の台風の実験 H22年度 (2010) 雲物理の検証実験 GCMの雲表現パラメータ改良 1格子点結合の実験の継続と検証 領域結合による熱帯の実験 現在気候と温暖化気候の台風の実験(台風発生に重点) H23年度 (2011) GCMの雲表現改良のインパクト検証 1格子点結合によるGCM改善の検証 任意領域の領域結合による実験 現在気候と温暖化気候の台風発生と熱帯の雲の高解像度実験
雲水・雨水の2モーメント化について:これらの数濃度の物理過程を定式化しモデルに導入した。結果の比較を始めた。 平成19年度の研究成果と進捗状況 雲解像モデルの物理過程と力学過程の改良 雲水・雨水の2モーメント化について:これらの数濃度の物理過程を定式化しモデルに導入した。結果の比較を始めた。 全2モーメント雲物理過程をCReSS Ver.3に導入した。 氷晶の観測データの収集している。 セミラグランジュ法をコーディングし、をCReSS Ver.3に導入した。ただし、地形の扱いで調整が必要。
セミ・ラグランジュ法の導入とテスト 初期値 セミ・ラグ Leap-flog法 1次風上
GCMの雲に関するパラメーターの雲解像モデルを用いた改良 平成19年度の研究成果と進捗状況 GCMの雲に関するパラメーターの雲解像モデルを用いた改良 広域予報実験:東シナ海領域等で、解像度4kmの実験を毎日実施。 過去の予報実験を用いて、GCM 格子スケールで以下のパラメータを算出し、 GCM の格子毎の値との比較を行なうことにより、その特徴を把握する。 ・ 大規模凝結過程 ・ 総水量の確率密度分布 ・ 凝結水量と雲量 衛星データによる検証:1事例について、予報実験の結果と衛星データを比較。
CReSSを用いた毎日のシミュレーション実験(結果の例) 2005年2月1日 名古屋市内大雪 2006年6月10日 梅雨前線帯が沖縄付近に 停滞。沖縄本島で大雨。 ・感覚としては、予報実験の精度は親モデル(RSM)の結果に依存しているように思われる。 2005年9月6日 台風14号が九州西岸を 北上。九州各地で大雨。
CReSS シミュレーション実験結果の大規模凝結過程への適用 対応するGCM格子、鉛直各層における ・GCM格子平均の値に相当する 総水量(Qttl) ・総水量の頻度分布
衛星データを用いたシミュレーション実験の検証(雲頂温度) 右下:GOES 雲頂輝度温度 ・梅雨前線に伴う雲域の形状は合っている。 ・日本海西部の降水を伴わない雲域の形状 も合っている。 ・モデルの雲頂温度は一様(やや雲頂高度 が高すぎる)。 千葉大 樋口さんより提供
全球静力学-雲解像非静力学非斉一モデル結合 平成19年度の研究成果と進捗状況 全球静力学-雲解像非静力学非斉一モデル結合 雲解像モデルCReSSの重並列化:コーディングを完了。これをCReSS Ver.3に導入し、台風を中心とした実験を実施した。 GCM:CCSR/NIES/FRCGC GCM5,7bとの結合 :環境省推進費(代表:渡辺雅浩北大准教授(現在東京大学気候システム研究センター))の範囲で、1格子1方向結合を実施中。 AFESとの結合の検討:AFESの内挿法を開発。
重並列化によるタイリングの概念図 Numbers of group partition domains: 3 Numbers of sub domains in each group domain: 4 Numbers of total partition domains: 12 重並列化によるタイリングの概念図 grid points in physical domain grid points close to surrounding sub domains grid points at boundary domain and halo regions grid points close to surrounding group domains
台風0418号の実 験(2km解像 度) 計算領域は影の ある領域のみ。 初期値から5日 目の降水強度 (mm/hr)の分布。 赤線は気象庁ベ ストトラック。
台風0418号の実 験(2km解像 度) 計算領域は全領 域。 初期値から5日 目の降水強度 (mm/hr)の分布。 赤線は気象庁ベ ストトラック。
台風0418号の気象庁 レーダから得られた降 水強度(mm/hr)の分布。 線は気象庁ベストト ラック。
非斉一モデル結合のための補間法 双方向ネスティング 異なる格子系 高精度補間法の必要性 簡便, 高速かつ高精度な補間法を開発. 全球モデル 簡便, 高速かつ高精度な補間法を開発. スペクトル微係数を双3次補間に利用. 移流項の計算だけでなく, ダウンスケーリングにも適用可. 雲解像モデル
台風に関する全球モデル-雲解像モデル比較検証実験 平成19年度の研究成果と進捗状況 台風に関する全球モデル-雲解像モデル比較検証実験 観測された台風との比較・検証:台風0423, 0418, 0704, 0709, 0711, 0712, 0715について、シミュレーション実験を実施。観測と比較を実施。 特に0418, 0704, 0709,0711, 0712, 0715について、重並列化によるタイル張り拡張領域を用いた方法での実験を実施した 。 主な目的と事例: 台風の構造の再現性と観測の比較:短時間・高解像度(1km)・矩形 T0613, T0712, T0715, T0709 台風の急発達の再現性:長時間・解像度(1~2km)・矩形・タイリング T0613, T0704, T0712, T0715 台風に伴う降水と強風の再現性:長時間・解像度(1~2km)・タイリング T0418, T0423, T0709
台風0423号の実験 水平解像度 1km CReSSによる24時間 総降水量 (mm) 延岡
Rainfall intensity (mm/hr) Bars:Observation Solid line: CReSS Dashed line: RSM Time (UTC)
急速に発達する 台風0613号の シミュレーション。 水平解像度は 1km.
台風0613号の中心気圧の時間変化 黒線:CReSS 1km解像度実験 赤線:気象庁ベストトラックより
T0712 の概観 ・眼を囲む発達する雲域 ・眼の壁雲に伴う強い降水域 ・眼の壁雲を囲む弧状の降水帯 MTSAT-IR1 で観測された T0712 の雲画像 気象庁レーダーで観測された T0712 の降水強度分布 T0712 の概観 2007 年 9 月18日 0400 JST (JST = GMT + 9) 2007 年 9 月18日 0430 JST 画像は高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/)による 台風の雲分布 ・眼を囲む発達する雲域 台風に伴う降水分布 ・眼の壁雲に伴う強い降水域 ・眼の壁雲を囲む弧状の降水帯 T0712 の中心: 124.30E, 24.03N
台風0712号の9月18日04JSTの CReSSによるシミュレーション結果 (水平解像度1km)。 カラーレベルは降水強度 等値線は地上気圧 赤実線は気象庁ベストトラック
2008年度の研究計画 雲解像モデル改良:雲物理過程の改良について、1次氷晶生成プロセスの感度実験と2次氷晶生成過程の導入を行う。これを観測データと比較し検証をする。 力学過程の改良について、セミ・ラグランジュ法についてパラメータ調整を行い、さらに高速化を図る。 パラメータ改良:広領域実験を継続して実施する。日本周辺または熱帯域において、500km×500km程度の領域を対象として、水平解像度1~2km程度での毎日の予報実験(狭領域実験)を実施する。広領域実験の結果と同様に、各種気象パラメータに関する確率密度分布を算出し、境界層過程において確率密度分布を決定づける要素を明らかにする。またこれにより雲の特性についての理解を深める。
2008年度の研究計画 (続き) 非斉一モデル結合:全球モデル1格子点ごとに雲解像モデルを埋め込み、実験的にモデルを実行し、数日のシミュレーションで、パラメタリゼーションを用いた場合とどのように異なるのかを調べる。領域結合については、そのための雲解像モデルと全球モデルの改良を行う。 比較検証実験:実際に観測された台風と、現在気候で全球モデルが再現した台風について、事例数を増やし比較・検証を重ねる。
地球シミュレータ利用の実績と2008年度計画 2007年度:10200ノード時間積については、全ノード時間を使用した。主に台風について、CReSS2.3mを用いた矩形領域実験、CReSS 3.0mを用いたtiling 実験を行った。 2008年度:10200ノード時間積を使用予定。主に以下の計算に使用する予定。 雲解像モデル開発 非斉一モデル結合 台風のシミュレーション実験