平成16年度電気学会基礎材料共通部門全国大会 平成16年8月31日(火) 仙台国際センター コロナ放電中のベンゼン分解特性 Decomposition characteristics of benzene in a corona discharge in nitrogen-oxygen mixture at atmospheric pressure 松澤 俊春 佐藤 孝紀 伊藤 秀範 田頭 博昭(室蘭工業大学) 吉澤 宣幸(NTTファシリティーズ) 下妻 光夫(北海道大学) T.Matsuzawa, K.Satoh, H.Itoh and H.Tagashira (Muroran Institute of Technology) N.Yoshizawa(NTT fasilities), M.Shimozuma (Hokkaido University) 背景 実験装置・条件 実験結果 分解生成物の調査 ベンゼン分解過程 C原子のマスバランス まとめ MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
背景と目的 ベンゼン 放電プラズマを用いた処理法 目的 排ガス処理に用いられる大気圧下の放電プラズマ パルスコロナ放電 バリア放電 ・ 発ガン性や催奇形性を有し,白血病との因果関係がある ・ 低濃度であっても長期的な摂取により健康への影響を生じる恐れがある物質 ・ 環境基準値は3mg/m3(0.86ppb) ・ ダイオキシン類,トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンとともに早急 な抑制が必要な指定物質 既存の処理法 : 吸着法,触媒燃焼法,直接燃焼法 放電プラズマを用いた処理法 ・ 既存の処理法では処理が困難な数ppm程度の濃度に対しても適用可能[1] ・ 安定で付加反応を受けにくいベンゼン環等を有する物質の処理に有効 ・ 大流量のガス処理には適さない 排ガス処理に用いられる大気圧下の放電プラズマ パルスコロナ放電 バリア放電 DCコロナ放電 ・放電領域を広くとることができ,大量のガス流に対して適合性がある[2] ・放電が不安定で火花放電へ移行しやすい 針電極を密集させることでストリーマコロナ放電を安定に発生可能 目的 大気圧下でのストリーマコロナ放電による窒素-酸素混合ガス中のベンゼン分解特性の解明 バックグラウンド(窒素-酸素)の混合比を変化させたときのベンゼン分解過程を調査した [1] K. L. Vercammen, A.A.Berezin, F. Lox and J. S. Chang:J. Adv. Oxid. Tech. 2, 312(1997) [2]吉岡 芳夫 :電学論A ,Vol.122-A pp.676-682(2002)
実験装置 針電極形状 針電極数:13本 放電チェンバー (ステンレス製) マクセレック(株)製 LS40-10R1 平板電極(ステンレス製) 内径 :f197mm 高さ :300mm 針電極形状 針電極数:13本 針電極 :ステンレス製 直径f4mm 台座 :真鍮製 直径f50mm 針密度 :0.66本/cm2 高圧側 マクセレック(株)製 LS40-10R1 Vmax±40kV, Imax±10mA 平板電極(ステンレス製) 直径 :f80mm 厚さ :10mm グランド側 VACUUBRAND DVR2 測定範囲 :1~1100hPa 測定精度 :<1hPa 許容圧力 :0.2MPa 測定周期時間 :1sec Infrared Analysis, Inc. ,10-PA 光路長 :10m 日本MKS(株)製 622A12TCE フルスケールレンジ :1.33×104Pa 分解能 :1×10-5F.S. 精度 :0.25% 島津製作所製 FTIR-8900 干渉計 :30°入射マイケルソン 干渉計 光学系 :シングルビーム方式 波数範囲 :7800cm-1~350cm-1 波数精度 :±0.125 S/N :20000:1 データサンプリング :He-Neレーザー エア・ウォーター(株)製 日本酸素(株)製 Benzene濃度:382ppm 純度:99.5% 純度:99.999% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
実験条件 電極構成 :針(13本)対平板電極 電極間隔 :2.5cm 印加電圧の極性 :正極性 電極構成 :針(13本)対平板電極 電極間隔 :2.5cm 印加電圧の極性 :正極性 印加電圧 :19.0~25.0kV (約300~1200mA ストリーマコロナ) 初期ベンゼン濃度 :300ppm MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
赤外吸収スペクトルとガス濃度 FT-IRによる赤外吸収スペクトル測定 Lambert-Beerの法則 吸光度は試料濃度と比例関係 赤外吸収スペクトルとガス濃度 FT-IRによる赤外吸収スペクトル測定 Lambert-Beerの法則 透過率 %T 吸光度 A k=吸光係数 I0=入射光強度 I=透過光強度 c=試料濃度[g/l] d=ガスセルの光路長[cm] 吸光度は試料濃度と比例関係 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
吸光度スペクトル ~ C6H6 ~ C6H6の赤外活性な振動 ① ④ ③ ② ① CH str 3068cm-1 N2:O2 = 98:2 Ring deform CH bend CH str ① ④ ③ ② NIST C6H6の赤外活性な振動 ① CH str 3068cm-1 ② CH bend 673cm-1 ③ CH bend 1038cm-1 ④ Ring deform 1486cm-1 他の吸収ピークとの重複が無い 濃度の算出 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY *NIST Chemistry webbook(http://webbook.nist.gov/chemistry/form-ser.html)
吸光度スペクトル ~ 分解生成物 ~ CO2 CO HCOOH C6H6 N2O O3 濃度の算出に用いた分解生成物の赤外吸収スペクトル HCN HCN bend 712cm-1 C2H2 CH bend 730cm-1 HCOOH CO str 1105cm-1 CO 2040-2230cm-1 CO2 Anti str 2349cm-1 C2H2 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY
注入エネルギーに対する濃度変化 C6H6 C2H2 HCN CO2 CO HCOOH 注入エネルギーの増加にともない ベンゼン濃度は減少する ベンゼン濃度は減少する C6H6 注入エネルギーの増加にともないC2H2 濃度は一旦増加した後,減少する C2H2 注入エネルギーの増加にともないHCN 濃度は一旦増加した後,減少する HCN 注入エネルギーの増加に対し 増加するとともに飽和傾向を示す CO2 CO HCOOH 注入エネルギーの増加にともないCO 濃度は一旦増加した後,減少する 注入エネルギーの増加にともないHCOOH 濃度は一旦増加した後,減少する
酸素濃度に対する濃度変化 C6H6 C2H2 HCN CO2 CO HCOOH 酸素濃度を低くすると分解に 必要なエネルギーも小さくなる 必要なエネルギーも小さくなる C6H6 酸素濃度を低くすると生成量が増加 酸素濃度0.2%時の生成は最大で22ppm C2H2 酸素濃度を低くすると生成量が増加 酸素濃度0.2%時の生成は最大で36ppm HCN CO2 CO HCOOH 酸素濃度を高くすると生成量が増加 酸素濃度20%時の生成は最大で450ppm 酸素濃度0.2%時の生成は最大で15ppm 酸素濃度0.5%以上で酸素濃度に 依存せず生成は約400ppm程度 酸素濃度2%以上で酸素濃度に依存しない
ベンゼン分解過程 高酸素濃度 低酸素濃度 HCOOH CO C6H6 CO2 CO 酸素濃度が高いとHCOOHおよびCOを経て C6H6は
C原子のマスバランス 酸素濃度を高くすると,気相中の分解生成物中C原子の割合が 増加する(堆積物中のC原子数が減少する) N2:O2 = 99.8:0.2 N2:O2 = 98:2 N2:O2 = 80:20 C6H6 1分子に含まれるC原子 = 6個 C6H6濃度 ×6 = C6H6中のC原子数 [ppm] C2H2濃度 ×2 HCN濃度 HCOOH濃度 CO濃度 CO2濃度 ×1 = 各分解生成物中のC原子数[ppm] 酸素濃度を高くすると,気相中の分解生成物中C原子の割合が 増加する(堆積物中のC原子数が減少する)
C原子のマスバランス O2,0.2% O2,0.5% O2,2% O2,5% O2,10% O2,20%
まとめ ベンゼン分解過程 C原子のマスバランス 大気圧コロナ放電を用いて窒素-酸素混合ガス中のベンゼンを分解し, ベンゼンの分解過程を調査した ベンゼン分解過程 分解生成物と注入エネルギーの関係 CO2が最終分解生成物で,HCN,C2H2,HCOOHおよびCOは中間生成物である 中間生成物と酸素濃度の関係 ・ COの生成量は酸素濃度0.5%以上で酸素濃度に依存しない ・ 低酸素濃度のとき,HCNおよびC2H2の生成量は多くなるがCOの生成量に比べ微量である ・ 高酸素濃度のときのHCOOHの生成量はCOとほぼ同量で,低酸素濃度のときのHCOOHの生 成量はHCNおよびC2H2と同様に微量であった C6H6は,低酸素濃度の時にはCOを経て, 高酸素濃度の時にはHCOOHおよびCOを 経てCO2に分解される C原子のマスバランス 酸素濃度を高くすると堆積物に含まれるC原子の割合が減少し,気相中の分解生成物の割合が増加する