議論の前提 ある人獣共通感染症は、野生動物が感染源となって直接又は媒介動物を通じて人に感染を起こす。

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議論の前提 ある人獣共通感染症は、野生動物が感染源となって直接又は媒介動物を通じて人に感染を起こす。 野生動物から人へ感染が拡大するためには、自然環境から人の社会的環境までの様々な要因が複雑に影響を及ぼしあう連鎖の中で感染が起こり、拡大する。 ある人獣共通感染症の人への感染に影響を与える要因は次の特性要因図(鳥インフルエンザの例示)で表すことができる。

人の鳥インフルエンザ発生の特性要因図(fish bone) 自然環境 飼育環境 社会環境 人口密度 野生動物の侵入 人家との距離 医療体制 食鳥取り扱い施設 飼育密度 畜舎の構造 人のアウトブレイクの発生 生息環境 飼育状況 湖沼の状況 感染状況 病態調査 生息状況 病態 健康状態 健康状態 種類と数 死亡数 ワクチン投与 死亡状況 生態 基礎疾患の有無 発生状況 感受性 地域生態 家畜 野鳥 渡りと移動 人

感染に影響を与える要因の大きさ 「人の鳥インフルエンザ発生の特性要因図(fish bone)」で示した要因が、鳥インフルエンザの発生に影響を与える大きさは均一ではない 特性要因の中から影響の大きい要因を選別し、その要因をモニタリングしてデータを解析すれば全体を把握できるのではないか

感染に影響を与える要因の大きさ (パレートの法則) 「パレートの法則」が適用されると仮定すると特性要因図に示された多くの要因(大骨、中骨、小骨)のうち、20%の要因が、感染症発生の80%の原因となっていると仮定できる これによれば、特性要因図から影響の大きい20%の要因を抽出し、そのデータを解析すれば全体を把握できるのではないか

(参考)パレートの法則 一国の富、企業の売り上げ、不良品の発生などにおいて分配・分布・発生原因を考えたとき、その大勢は少数の要因によって決定されるという経験則のこと(イタリアの経済学者・社会学者のヴィルフレド・パレートが提唱した) パレートの法則は所得配分だけでなく、自然現象にも当てはまると指摘されている 不良全体の80%は、20%の原因に由来する(80対20の法則)

クレームの原因と割合(例)

モニタリングポイントの検討 抽出した要因をどのようなデータを使ってモニタリングするのか 必要なデータが無い場合の対応はどうするのか

抽出した要因の数量化と予測式 抽出された要因は数量化して把握しないとモニタリングができない 要因が数量化できれば、これに様々な条件を数量化して加味することができる。 要因及び諸条件を数量化できれば発生予測式を作ることができる 発生予測式の表し方としては、食中毒発生予測式が参考となるかもしれない

発生予測式の変数 発生予測式の変数は、ある感染症の発生に影響を与える要因である このことから、発生予測式の変数(要因)に仮の値を代入することで、発生予測式の結果が計算できるようになる(例えば、結果がプラスならば発生、マイナスならば発生しない) どの変数を小さく(あるいは大きく)すれば、最も効果的に制御できるのか想定が可能となる(リスク分析、リスク評価) また、類似した感染症については、変数に係数をつけて重み付けをすることで、疾病間の評価も可能になる?

要因ごとの対策の検討 抽出した要因に対する対策は、マトリックス図を使用してステージごとに対策を検討する マトリックス図については、研究会で検討した図を採用する

事例研究の今後の方向 疾病ごとの特性要因図を作成し、要因の中から重要モニタリングポイントを検討する モニタリングポイントと実在するデータについて検証する(検証は鳥インフルエンザを例に行う) とりあえず、食中毒予測式をモデルにして鳥インフルエンザの予測式を検討して試作品を作る(事例研究のまとめ)

対策の実施と検証(要因、モニタリング、基準値等も含む) 検討手順 疾病別特性要因図の作成 主要要因の抽出 主要要因のモニタリング方法の検討 モニタリング基準の設定 マトリックス図による分野別対策の検討 分野別対策の目標値設定 対策の実施と検証(要因、モニタリング、基準値等も含む)