「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政立法その2 行政規則.

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「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政立法その2 行政規則

行政規則とは 行政規則=行政内部における規範⇒法規としての性格を持たない⇒国民の権利義務に係わらない(内部法) 従って、法律による行政の原理が適用されない(はずである)。 しかし、現実には国民の権利義務に何らかの影響を及ぼすことが多い(例:所得税基本通達などの税務通達)。

行政規則に関する判例(1) 最三小判昭和43年12月24日民集22巻13号3147頁 墓地、埋葬等に関する法律第13条に定められた(埋葬の拒否に関する)「正当な理由」に関する通達は、直接的に原告寺院の埋葬受忍義務を課したり墓地の経営管理権を侵害したりするようなものではない。 従って、通達は行政処分にあたらない。

通達に関する伝統的な理論(1) 通達は、国民の法的地位に直接影響を及ぼすものではない。 単に下級機関の権限行使を制約するにすぎない。 そのため、上級行政機関は、その有する包括的な行政監督権限に基づき、下級機関の所掌事務について、とくに法律の根拠を必要とせずに通達を発することができる。

通達に関する伝統的な理論(2) 行政庁が国民に対して通達に反する処分を行っても、その処分は通達違反の故に直ちに違法と認められない。 国民は、通達に違反した不利益な処分を被っても、処分が通達に違反することのみをもって処分の違法を主張することはできない。 行政庁側も、処分が通達に違反しないことを理由として、その処分の適法性を根拠づけることは許されない。 また、裁判所も、法令の解釈運用の際に通達の拘束を受けることはない。

通達に関する伝統的な理論(3) 違法な通達が発せられ、そのために事実上国民に対し不利益な効果が及んでも、国民は通達自体を争うことはできない。 違法な通達が発せられた場合には、国民は具体的な不利益処分が行われるのを待ち、 行政処分がなされた段階で、この行政処分に対して行政訴訟などを提起して、違法な通達を執行した具体的処分の違法性を争えばよい。

行政規則の種類と機能 解釈基準:法律などの解釈の基準を示す。 裁量基準:行政庁の裁量権行使の基準を示す。 行政指導基準:行政指導を行う際の基準。 給付基準:補助金や融資の基準。 形式=訓令・通達(国家行政組織法第14条第2項)、要綱(地方公共団体)など。

行政規則に関する判例(2) 最二小判昭和33年3月28日民集12巻4号624頁 旧物品税法で「遊戯具」は課税対象物品/パチンコ球遊器は10年間ほど課税されていなかった。 東京国税局長は、パチンコ球遊器が「遊戯具」に該当するという趣旨の通達を発し、これに基づいて税務署長がパチンコ球遊器製造業者に対して物品税賦課処分を行った。 判決:「本件の課税がたまたま所論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基く処分と解するに妨げがな」い。

行政規則に関する判例(3) 最判平成19年11月1日民集61巻8号2733頁 在外被爆者については健康管理手当の受給権が失権するとした厚生省402号通達が違法であるとして、原告らの国家賠償請求を認めた。 「通達は、行政上の取扱いの統一性を確保するために上級行政機関が下級行政機関に対して発する法解釈の基準であって、国民に対して直接の法的拘束力を有するものではない」が、通達の作成・発出などを行った担当者の行為は、国家賠償法第1条第1項の適用上、違法である。

裁量基準の設定と公表 裁量基準を設定し、公表する⇒国民に予測可能性を与え、行政庁の恣意的な判断を抑制する効果がある。逆に、行政庁の意図を知らしめることによってそのとおりの目的を達成しうる。 行政手続法第5条:申請に対する処分についての審査基準 同第12条:不利益処分についての処分基準 最一小判昭和46年10月28日民集25巻7号1037頁も参照。

行政規則に関する判例(4) 最一小判平成5年2月18日民集47巻2号574頁 武蔵野市は宅地開発指導要綱に基づいて行政指導を行ったが、原告業者は行政指導が強迫にあたると主張した。 判決は、強迫の主張は認めなかったが、行政指導の限度を超え、違法な公権力の行使があったと判断した。