スケールモデルによる都市表面の熱輸送速度に関する実験

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スケールモデルによる都市表面の熱輸送速度に関する実験  1033205 河合 諭   1033341 中川 敬太 

近年、ヒートアイランド現象が進行している 目的 近年、ヒートアイランド現象が進行している しかし、そのメカニズムについては未解明 主な原因 ①熱容量の大きなRC造建築物の増加 ②高層建築物による風の流れの変化 建物表面から大気に運ばれる熱量の把握 縮小模型を利用した 実際の都市に近い形での野外実験

立方体均等配列における 輸送速度の把握 発展 過去の実験との位置づけ 過去の実験項目 本年度の実験項目 立方体均等配列における         輸送速度の把握 均等配列の建物寸法全面の輸送速度の把握 野外実験と風洞実験の比較 立方体均等配列における  輸送速度の面内分布の把握 全面測定におけるスケールが違う場合の比較 過去の実験項目 発展 ①立方体均等配列における    輸送速度の面内分布の補填実験 ②高さ分布がある場合の輸送速度の変化 本年度の実験項目

測定場所 サイトA サイトB S=1/50スケールモデル街区 コンクリート枡1600個 建物寸法 150mm×150mm×150mm グロス建蔽率25% サイトA S=1/50スケールモデル街区 日本工業大学拡張地 サイトB コンクリート枡1600個 建物寸法 150mm×150mm×225mm 150mm×150mm×75mm グロス建蔽率25% サイトB

実験方法 濾紙面水分蒸発法 物質輸送と熱輸送の類似性を 利用し、物質輸送速度から 熱輸送速度を求める

使用した試料 アクリル板 濾紙 1mm 2mm 150mm 50mm (a) 全面試料 (b) 分割試料

試料にサーミスタ温度センサを挿入し、測定位置に設置 測定手順 濾紙を湿らせ、密閉袋に入れて秤量 試料にサーミスタ温度センサを挿入し、測定位置に設置 水分蒸発測定時間(15分間) 試料設置直後に密閉袋を秤量 測定終了間際に密閉袋を秤量 試料を回収し、密閉袋に入れて秤量

物質輸送速度の算出 CE=WT/U 実験で得られたデータから 物質輸送速度を求める バルク係数CEとは輸送速度WTを        物質輸送速度を求める バルク係数CEとは輸送速度WTを 風速で除した無次元数である CE=WT/U

①立方体均等配列における輸送速度の面内分布 サイトA内にて分割試料を用いて測定 アクリル板 濾紙 1mm 2mm 150mm 50mm 接着 建物間面 壁面 150mm 壁面 建物間面 交差点面

測定面の定義 で比を算出し比較 測定面輸送速度 基準面輸送速度 測定面の表記 平面図 立面図 基準面 5

輸送速度の風向依存性(壁面上部) 風向による影響が大きい 減少傾向 値が大きい 値が大きい (05年度)U<1.0(ms-1) 0° 0° 360° 180° 180° 180° 風向による影響が大きい (05年度)U<1.0(ms-1) (05年度)U≧1.0(ms-1) U<1.0(ms-1) U≧1.0(ms-1) (05年度)U<1.0(ms-1) (05年度)U≧1.0(ms-1) U<1.0(ms-1) U≧1.0(ms-1) 減少傾向 値が大きい 値が大きい

輸送速度の風向依存性(壁面下部) 0° 0° 360° 180° 180° 180° 風向による影響が小さい この範囲内でやや変化

輸送速度の風向依存性(建物間面) 風向による変化が少ない この範囲内でほぼ一定 値がやや小さい 値がやや大きい 90° 0° 0° 0° 180° 360° 0° 0° 0° 0° 90° 90° 90° 0° 風向による変化が少ない この範囲内でほぼ一定 値がやや小さい 値がやや大きい

輸送速度の風向依存性(建物間面) 0° 45° 0° 180° 風向による変化が少ない 値が大きい この範囲内でほぼ一定

①まとめ (中川) 風向の影響が大きい 壁面について 上部の 測定面 風向の影響が小さい 下部の 測定面

①まとめ (中川) 建物間面・交差点面について 大きい 建物間面 交差点面 角面で風向の影響あり 角面で風向の影響が大きい 輸送速度が ①まとめ (中川) 建物間面・交差点面について 輸送速度が やや大きい 輸送速度が 大きい 交差点面① 風向135度 建物間面 交差点面 建物間面① 風向0度 角面で風向の影響あり 角面で風向の影響が大きい 建物間面① 風向90度 輸送速度が やや小さい

高さに分布がある場合の輸送速度の変化 サイトA 均一高さ配列 (立方体均等配列) サイトB 不均一高さ配列 (高さ分布あり) 高さに分布がある場合の輸送速度の変化  サイトA            均一高さ配列           (立方体均等配列) 12m サイトB 不均一高さ配列 (高さ分布あり) 高さ0.5H(75mm) 高さ1.5H(225mm) 高さ1.0H(150mm) 150mm 225mm サイトA(均一高さ配列) 150mm 75mm 150mm 12m 卓越風向 平均高さはサイトAと同じ 高さに分布がある場合の輸送速度の変化 サイトABは卓越風向に対して左右に設置されています (●)均一高さ配列のサイトAの建物高さ150mmを1Hとし、 (●)不均一高さ配列のサイトBには0.5Hと (●)1.5 Hのものを交互に設置しました (●)平均高さは立方体均等配列にと同じ150mmとしました 12m N サイトB(不均一高さ配列)

濾紙面水分蒸発実験 超音波風速温度計 (風速・風向) 熱電対 (鉛直気温分布) 濾紙 1mm アクリル板 2mm 150mm 全面試料   全面試料 超音波風速温度計 (風速・風向) 熱電対     (鉛直気温分布) 全面試料を用いて濾紙面水分蒸発実験を行いました。サイトA・Bの風速と鉛直気温分布を比較するため、水分蒸発測定中の風速と鉛直気温分布を測定しました

測定面 均一高さ配列と不均一高さ配列の比較 サイトA 均一高さ配列 (立方体均等配列) サイトB 不均一高さ配列 (高さ分布あり) 建物間面 屋上面 交差点面 建物間面 均一高さ配列と不均一高さ配列の比較 比較した面は屋上面、 (●)建物間面、 (●)交差点面としました

高さ分布がある配列での温度境界層の把握 温度境界層 不均一高さでは空気の混合が活発 不均一高さでは温度境界層内での温度差が小さい 均一高さ配列 不均一高さ配列 高さ150mmより上空では    不均一高さのほうが温度が高い 温度境界層 不均一高さは3H(450mm)まで 不均一高さでは空気の混合が活発 地表面付近では       均一高さのほうが温度が高い 均一高さは2H(300mm)まで 図は10月14日 13:00のサイトA・Bの鉛直気温分布を比較したものです。 (●)高さ150mmより下ではサイトAのほうが温度が高く、 (●)それより上ではサイトBのほうが温度が高くなっていました。 (●)サイトAでは2Hまで、 (●)サイトBでは3Hまでの高さに温度境界層が形成されていました。 (●)サイトAではグラフの線の傾きが大きく、 (●)温度境界層内での温度差が大きくなっていました。 不均一高さでは温度境界層内での温度差が小さい

各サイトの風速の差異 均一高さより約23%小さい 不均一高さ配列 均一高さ配列 各サイトの風下側地上30cmでの風速を比較しました。 (●)サイトBのほうがサイトAより約20%風速が小さくなりました 均一高さ配列

基準面:毎回同時測定 (輸送速度WTroof1.0H) 輸送速度比の算出 サイトA サイトB 基準面:毎回同時測定       (輸送速度WTroof1.0H) 基準面(WTroof1.0H) 測定面(WT) =輸送速度比 基準面として均一高さ配列の屋上面を毎回測定し、 (●)同時に測定した各面との (●)輸送速度比を算出しました。 測定面         (輸送速度WT)

0.5H屋上面 1.5H屋上面 高さの異なる屋上面の輸送速度 風向依存性はみられない 値の大きさに違いがある 0° 45° (case=376) (case=176) 風向依存性はみられない ④ 屋上面における輸送速度の風向依存性   図は屋上面における輸送速度比と風向の関係を示したものです。風速1未満では風が不安定になり、輸送速度が安定しないため、風速1m/s未満と1m/s以上で区別しました。梗概のグラフには風速1m/s以上のデータだけをプロットしています。   (●)高さ1.5H屋上面では、値のばらつきが大きいものの、特定の風向による値の変化はみられず、この範囲内でほぼ一定となっていました   (●)高さ0.5H屋上面では、全体的に基準屋上面よりも輸送速度が小さくなっています。また、風向による値の変化もみられませんでした   (●)高さが異なる屋上面においては輸送速度の風向依存性はみられないが、   (●)値の大きさに違いがあらわれました この範囲内でばらつく 風向による変化がみられない 値の大きさに違いがある

建物間面の高さ分布による輸送速度変化 風向依存性は少ない 値に大きな違いはみられなかった :1.5H :0.5H 180° 0° 0° 均一高さ配列での傾向線 風向依存性は少ない (均一高さ)U<1.0 (ms-1) (不均一高さ)U<1.0 (ms-1) (均一高さ)U≧1.0 (ms-1) (不均一高さ)U≧1.0 (ms-1) ⑤ 建物間面における輸送速度の風向依存性   図は建物間面における均一高さ、不均一高さの輸送速度比と風向の関係を示したものです (●)均一高さのデータは前年度のものを使用しました。図を見ると、どちらの配列でも (●)輸送速度の風向依存性は少なく、特定の風向によって大きく値が変化するという傾向はみられませんでした。 (●)値についても基準面よりも小さい値で配列による大きな違いはみられませんでした。 不均一高さ配列での傾向線 値に大きな違いはみられなかった

交差点面の高さ分布送速度変化 風向依存性は少ない 値に大きな違いはみられなかった :1.5H :0.5H 90° 0° 均一高さ配列での傾向線 風向依存性は少ない (均一高さ)U<1.0 (ms-1) (不均一高さ)U<1.0 (ms-1) (均一高さ)U≧1.0 (ms-1) (不均一高さ)U≧1.0 (ms-1) ⑥ 交差点面における輸送速度  図は交差点面における均一高さ、不均一高さの輸送速度比と風向の関係を示したものです (●)交差点面においても建物間面同様、 (●)輸送速度の風向による変化は少なく、配列による変化量の違いもみられませんでした。値の大きさに関しても、 (●)建物間面同様で配列による大きな違いはみられませんでした。 値に大きな違いはみられなかった 不均一高さ配列での傾向線

②まとめ(河合) 輸送速度の変化 屋上面 風向依存性:なし 1.5H→値がばらつく 0.5H→値が小さい 均一高さ配列:300mmまで 温度境界層 風速 :不均一高さは均一高さより約23%小さい 輸送速度の変化 屋上面 風向依存性:なし サイトAでは300(mm)、サイトBでは450(mm)までの高さに温度境界層がみられた サイトAでは温度境界層内での温度差が大きくなった サイトBではサイトAに比べ、風速が約20%小さくなった (●)高さの異なる屋上面では風向の影響はみられなかったが、 (●)値の大小に違いがみられた 1.5H→値がばらつく 0.5H→値が小さい

②まとめ(河合) 建物間面・交差点面 風向依存性:少ない 高さ分布による違いは少なかった :1.5H 建物間面 交差点面 :0.5H 建物間面、交差点面の床面では均一高さ、不均一高さともに (●)風向による値の変化も少なく、 (●)値に大きな違いもみられなかった