次世代X線天文衛 星に向けた 256素子TES型X線 マイクロカロリメータの開発

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次世代X線天文衛 星に向けた 256素子TES型X線 マイクロカロリメータの開発 宇宙物理実験 石川 久美 次世代X線天文衛星 DIOS

X線:0.2-10keV に様々な元素の吸収線•輝線 0. 研究背景 X線天文学における分光観測 X線:0.2-10keV に様々な元素の吸収線•輝線 分解能 将来のX線分光装置への要求 CCD 120 eV (1) 多ピクセル化によるイメージング (2) 数eVの分解能: • 微細構造線を分離 精密なプラズマ状態の診断 • 輝線のドップラ-シフト 天体の運動状態を解析 Photon counts 10 eV TES 2 eV TES型X線マイクロカロリメ-タ が最有力 6.6 6.7 Energy [keV] 2000万度のプラズマから の鉄Kα輝線 これまでに単素子では5.9keVの入射X線に対して4.8eVの分解能を達成 多素子化を目指す

TES (Transition Edge Sensor) 1. TES型X線マイクロカロリメータの原理 カロリメータの原理 TES (Transition Edge Sensor) 入射X線 熱伝導度 低温熱浴 吸収体 温度計 熱容量 超伝導状態 常伝導状態 遷移端 log 温度 log 抵抗 転移温度 X線光子のエネルギーを微小な温度上昇(~数mK)として検出する検出器 X線マイクロカロリメータはX線光子1つ1つのエネルギーを極低温に冷やした微小な素子で吸収し、微小な温度上昇(~数mK)として検出する検出器である。その構造は、温度Tに冷やされた熱容量Cの吸収体と温度計からなっていて、適度に悪い熱伝導度Gを持つサーマルリンクでより低温の熱浴と繋がれています。このカロリメータのエネルギー分解能は上記のように表され、kbはボルツマン定数で、αは温度計の感度を表している。この式より、カロリメータの性能としては、温度Tと熱容量Cがなるべく小さく、温度計の感度αがなるべく大きいことが望まれる。 TES型X線マイクロカロリメータは温度計にTESを用いたものである。TESは超伝導遷移端における数mKという非常にせまい領域内での急激な抵抗変化を利用した温度計である。その温度計の感度αは遷移端におけるR-Tカーブの傾きで表される。 温度計の感度 エネルギー分解能

2. 本実験で行うこと 単素子の断面図 Au 200nm TES (面積:180μm × 180μm) Ti 50nm Al配線 Si3N4 400 nm メンブレン構造 : TESと熱浴の弱いサーマルリンク SiO2 300 nm Si (100) 300μm (1) スパッタによるTES (Ti/Au)成膜 (2) Al配線形成 今回使用した基板 : MHI素子 メンブレン構造 形成されてない 断面図 256素子のカロリメータ製作の実現 : 素子が密集した領域のメンブレン形成 2cm ここにTES型マイクロカロリメータの断面図を示します。 TESは金とチタンから成り、TESからの信号はアルミ配線で読み出します。TESを支えるチッカシリコンと酸化シリコンの薄い膜はTESと低温熱浴との間のサーマルリンクの役割を果たしています。 今回は自作の基板ではなく、MHI製の、TESとアルミ配線がついているものを使用しました。その写真がこれです。これをカロリメータにするためにはSiを削ってメンブレンを形成する必要があります。従来はSiをKOHを用いてエッチングしてきました。しかし、この方法は結晶方向にエッチング速度が依存するため、このように目的の部分以外のエッチングが多くなってしまいます。そのため今回のように256素子という密集構造を作るのみは不向きです。そこで、垂直性の良いエッチングが可能なDRIE(Deep Reactive Ion Etching)という技術を導入しました。本卒業研究では、DRIEを用いてのTES型X線マイクロカロリメータの作成とその評価を行いました。 DRIEの導入による垂直性の向上 MHI素子 (光学写真) 16×16で256素子

DRIE (Deep Reactive Ion Etching) 3. 実験方法 DRIE (Deep Reactive Ion Etching) エッチング・・対象となる材料を化学的に加工・溶解 イオンを基板に照射する気相イオンエッチング 特に深いエッチングを行うもの Deep RIE 使用装置・・Surface Technology Systems社 MUC - 21 @ 産業技術総合研究所 使用ガス・・エッチングガス : SF6 側壁保護ガス : C4F8 SiF4 F* (-CF2)n 6 sec 3 sec エッチングと側壁保護のためのガスを交互に供給 垂直性の良いエッチング Si 300μm : 全体で約1時間

4. 実験結果 DRIE後の様子 装置内の圧力を 低下させて改善 (4.5 Pa → 3.8 Pa) 中心から先に削られている 当初の条件 : 穴の端から削られる 完成品 180μm 膜にシワが発生

5. 測定結果 5.1 DRIE前後でのR-Tカーブ比較 R 抵抗 ~1mK 熱浴の温度T[mK] R 抵抗 ~30mK エッチング前 R 抵抗 ~1mK 120 130 熱浴の温度T[mK] R 抵抗 エッチング後 ~30mK 120 150 熱浴の温度T[mK] 温度計の感度 に低下 メンブレン構造に シワが寄った影響 5.2 パルス取得によるエネルギー分解能測定 カウント数 11.1eV Energy[eV]

5.9keVの入射X線に対し、~11eVの分解能を達成。 → Au 吸収体をつけてさらに性能評価する 6. まとめ DRIEによるメンブレンの形成に成功 しかし、膜にシワ発生。温度計の感度α:減少 5.9keVの入射X線に対し、~11eVの分解能を達成。 → Au 吸収体をつけてさらに性能評価する 7. 今後の課題 シワのないTESの作製 →窒化膜と酸化膜の応力制御に問題 →膜付け方法を変える (例えばSi + Si3N4のみ)

エネルギー分解能の式 となり、フォノン数の統計的ゆらぎは このフォノン数のゆらぎによる素子のエネルギーゆらぎは フォノン数 N は素子全体の熱エネルギー CT と フォノン一個あたりの平均エネルギー kBTより となり、フォノン数の統計的ゆらぎは このフォノン数のゆらぎによる素子のエネルギーゆらぎは となる。ここに、カロリメータの動作条件や温度計の感度αなどに依存する 係数 を用いると となる。

従来のメンブレン形成 : KOHによるSiの液層エッチング サイドエッチが多く 基板裏面の”無駄な”面積が大きい

R-T測定方法 SQUIDの出力の電圧の変化を用いてRT特性を見積もる SQUIDの出力VoutとTESに流れる電流 定電圧バイアス回路で測定 SQUIDの出力の電圧の変化を用いてRT特性を見積もる SQUIDの出力VoutとTESに流れる電流 :電流電圧換算係数 50kV/A

ベースライン分解能ノイズ解析 ノイズの図のせる 固有ノイズ→1.4eV エクセスノイズ→3.52eV