星間ダストは主にどこで 形成されるか? 野沢 貴也 (Takaya Nozawa) (国立天文台 理論研究部) 共同研究者

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星間ダストは主にどこで 形成されるか? 野沢 貴也 (Takaya Nozawa) (国立天文台 理論研究部) 共同研究者 2019/02/20 星間ダストは主にどこで 形成されるか? 野沢 貴也 (Takaya Nozawa) (国立天文台 理論研究部) 共同研究者 田中 秀和、田中 今日子、大向 一行、仲内 大翼 (東北大)

0. 本日の3つのトピックス           (1) 銀河系の星間ダストの起源 (2) 宇宙における鉄の行方 (3) プレソーラー粒子の希少性

1-1. 銀河系の星間ダストの性質 〇 銀河系の星間ダストモデル - 組成: 炭素質(グラファイトなど)とシリケイト質    (Mathis, Rumpl, & Nordsieck 1977, Weingartner & Draine 2001, Zubko+2004, etc) - 組成: 炭素質(グラファイトなど)とシリケイト質 - サイズ分布: 冪分布(MRNモデル) n(a) ∝ a^{-q} with q=3.5, a = 0.005-0.25 µm - 存在量: Mdust / MH = 1/120 ~ 0.01 (~5x107 Msun) ➜ 重元素のおよそ半分(~40%)はダストとして存在 星間ガスのdepletion 星間減光 赤外線放射 Savage & Sembach (1996) Nozawa & Fukugita (2013) Compiegne et al. (2011)

○ Dust yield per SNe II/AGB Nozawa (2017) ‐重力崩壊型超新星とAGB星でのダスト凝縮効率が同じであるならば、   それらの星間ダスト供給への寄与はほとんど等しい ‐重力崩壊型超新星が0.5 Msun (0.01 Msun)のダストを供給する場合、   AGB星の寄与よりも約5倍大きい(約10倍小さい) Contributions of dust mass from SNe II/AGB ○ Dust yield per SNe II/AGB SN1 fSN = 0.01 and m_NS = 2.0 Msun SN2 SN3 SN4 AGB1 fAGB = 0.01 and m_WD = 1.4 Msun

〇 星(AGB星・超新星)からの星間ダストの供給率 〇 超新星の衝撃波による星間ダストの破壊効率 1-3. 星間ダストの供給と破壊 〇 星(AGB星・超新星)からの星間ダストの供給率 AGB星 0.004 Msun/yr 星形成率= 星の消失率 星がAGB星・ 超新星となる 割合 AGB星・超新星 から放出される ガスの割合 ダストが凝縮 する割合 〇 超新星の衝撃波による星間ダストの破壊効率 超新星 0.006 Msun/yr 超新星が 起こる頻度 衝撃波が掃く ガスの質量 星間空間での ダストとガスの 質量比 ダストが破壊 される割合   星間ダストの破壊効率は供給率を上回る    ➜ 星間ダストの量は時間とともに減少するはず

Asano, Takeuchi, Hirashita, TN (2013) 1-4. 星間ダスト量の進化 ③ 分子雲での金属ガス   降着によるダスト成長 ① 超新星・AGB星か   らのダスト供給 - a ~ 0.1 µm - Mdust/Mmetal ~ 0.2 ② 金属量~0.1 Zsun 星間乱流中での衝突破砕による0.01 µm以下の小さいダストの生成 Nozawa et al. (2007) Asano, Takeuchi, Hirashita, TN (2013)  星間ダストの総量を説明するためには、分子雲での  ダスト成長が必要    ➜ 超新星/AGB星のダストの寄与は~20%程度

1-5. ダスト成長のタイムスケール 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール 〇 ダスト進化のコンセンサス 〇 分子雲でのダスト成長のタイムスケール    〇 ダスト進化のコンセンサス 星間ダストの総量を説明するには分子雲中でのダスト成長が必要 (Dwek 1998; Inoue 2003, 2011; Zhukovska+2008, 2016; Draine 2009; Michalowski+2010, 2015; Gall+2011a, 2011b; Mattsson 2011; Pipino+2011; Kuo & Hirashita 2012; Valiante+2011, 2014; Mancini+2015; Asano+2013a, 2013b, 2014; Calura+2014; Nozawa+2015; Aoyama+2017; Hou+2017; Hirashita & Nozawa 2017) Mancini et al. (2015)

1-6. 分子雲でのダスト成長は本当に可能か? ○ ダスト表面での氷マントル形成? 〇 ダストの選択的成長?(Jones&Nuth2011) ‐高密度分子雲(n > ~103 cm-3)ではダスト   表面に氷のマントルが形成され、その結果   ダストの成長は阻害される(Ferrara+2016) Si Mg ダスト 〇 ダストの選択的成長?(Jones&Nuth2011) - Si, Mg, Fe, O ➜ シリケイトダスト - C ➜ 炭素質ダスト 氷 H2 Fe H2O Mg C Si 〇 付着確率は1で良いか? - 0.01-0.1が妥当? ➜ ダスト成長のタイムスケ      ールは長くなる 炭素質ダスト シリケイトダスト

(1) 銀河系の星間ダストの起源 〇 星間ダスト総量(dust-to-metal ratio) 超新星・AGB星からの供給だけでは足りない    別の星間ダストのソースが必要    ➜ 分子雲での重元素ガス降着によるダスト成長  ‐分子雲中でダストは効率的に成長できるのか?  ‐観測から導かれた星間ダストモデルと整合的か?

2-1. 鉄はどのダスト種に含まれているか?

宇宙の鉄の99%以上は ダストに取り込まれている 2-2. 星間空間の重元素ガスの存在量 1 O Mg, Si: 5-10 % in gas C 0.1 C, O: 30-70 % in gas Si Mg 0.01 Fe: < 1 % in gas Fe 宇宙の鉄の99%以上は ダストに取り込まれている 0.001 Savage & Sembach (1996, ARAA, 34, 270)

2-3. 星間空間での鉄の行方不明問題 ○ 鉄を含むダスト種の候補 ○ 鉄を含むダストの主要な形成場所  ・ シリケイト ➜ (Mg, Fe)2SiO4, (Mg, Fe)SiO3 - astronomical silicate (Mg1.1Fe0.9SiO2)     鉄を含むシリケイトの存在は観測的に     確かめられていない ➜ シリケイトのほとんどはFe-poorである            (e.g., Tielens+1998; Molster+2002)  ・ 金属鉄(Fe)?硫化鉄(FeS)?酸化鉄(FeO)? ○ 鉄を含むダストの主要な形成場所  ・ Ia型超新星: 大量の鉄 (~0.7 Msun)を放出     ## 重力崩壊型の鉄質量 (~0.07 Msun)の十倍  ・ これまでIa型超新星での大量のダスト形成の   観測的証拠がない (e.g., Gomez+2012) Fe 0% Fe 1% Brommaert et al. (2014) Herschel 100 µm image Tycho Gomez+2012

(2) 宇宙における鉄の行方 Q2. 鉄はどのようにダストに含まれるのか? 〇 鉄の行方不明問題(Missing-Fe problem)    宇宙の鉄の99%は、ダストに取り込まれている    シリケイトには鉄はほとんど含まれていなさそう    Ia型超新星で金属鉄ダストは形成されていない  ‐鉄はどのようにダストに取り込まれているのか?  ‐金属鉄ダストの形成過程は? (cf. Kimura+2017) Q2. 鉄はどのようにダストに含まれるのか?

3-1. プレソーラー粒子 - 存在量(測定量 by 体積充填率) ・ 始原的隕石中: ~0.01 % ‐ 始原的隕石・惑星間塵(IDPs)中で発見される ‐ 同位体異常を示す   ➜ 太陽系物質とは全く異なる同位体組成 ## 太陽系物質の同位体組成は数%で均一 ‐ 太陽系外で(太陽系形成以前に)、超新星や   AGB星で形成されたダストの生き残り ‐ 組成 : graphite, SiC, TiC, Si3N4, Al2O3, MgAl2O4, Mg2SiO4, MgSiO3 … - 存在量(測定量 by 体積充填率)   ・ 始原的隕石中: ~0.01 %   ・ 惑星間塵(IDPs)中: ~0.05 % © Amari, S. Nittler 2003 Nittler+1997 http://presolargrains.net/

3-2. なぜプレソーラー粒子の存在量は小さいのか? 集積 隕石 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲でのガス降着によるダスト成長 微惑星・ 惑星形成 プレソーラー粒子 存在量 : ~20% ©JAXA プレソーラー粒子 存在量 : ~0.01% 原始太陽系星雲で ほとんどのダストは蒸発、ガスとして混合した後に再凝縮 「星間ダストは惑星の 原材料」ではない? Sakai+2014, Nakamoto et al.

(3) プレソーラー粒子の希少性 〇 プレソーラー粒子 始原的隕石・惑星間塵で発見される星(超新星・ AGB星)起源のダストの生き残り    始原的隕石・惑星間塵で発見される星(超新星・    AGB星)起源のダストの生き残り    その存在量は0.01%程度と非常に小さい  ‐星間ダストは惑星の直接の原材料であるのか?  ‐なぜ太陽系物質の同位体組成は均一なのか?

4-1. 星間ダストの進化とプレソーラー粒子 分子雲でのダスト 成長は整合的か? プレソーラー粒子の 平均同位体は太陽系 組成と合わない 集積 隕石 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲でのガス降着によるダスト成長 微惑星・ 惑星形成 プレソーラー粒子 存在量 : ~20% プレソーラー粒子をコアとしたマントル組成であるはず 分子雲でのダスト 成長は整合的か? プレソーラー粒子の 平均同位体は太陽系 組成と合わない ©JAXA プレソーラー粒子 存在量 : ~0.01% 原始惑星状星雲で ほとんどのダストは蒸発、ガスとして混合した後に再凝縮 プレソーラー粒子の ふりかけ説 by ゆり本さんなど すべてのダストを蒸発させることは可能か? Sakai+2014, Nakamoto et al.

4-2. 鉄の観点から見た星間ダストから惑星形成 集積 隕石 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲でのガス降着によるダスト成長 微惑星・ 惑星形成 マントル組成 コア:鉄を含まないマントル:鉄を含む 鉄に富むマントルをもつシリケイトは観測を説明できるのか? 鉄を含まないシリケイト 鉄を含むシリケイトのマントル ©JAXA GEMS in IDPs 鉄のナノ粒子がシリケイト中に存在 シリケイトの 蒸発・凝縮実験 すべてのダストを蒸発させることは可能か? Sakai+2014, Nakamoto et al. Bradley+1999 Matsuno+2011

4-3. 分子雲中でのガス相からのダストの凝縮 星間ダストの 新たなソース 鉄のダストへの凝縮サイト 超新星・AGB星 でのダスト形成 分子雲中の衝撃波による ダストの破壊と再凝縮 原始太陽 系星雲 微惑星・ 惑星形成 Sakai+2014 「星間ダストは惑星の原材料」と言える ©JAXA 星間ダストの 新たなソース 鉄のダストへの凝縮サイト 太陽系物質の同位体組成均一性を説明できそう プレソーラー粒子の「ふりかけ」のタイムスケールを稼ぐことができるかも Asano+2014 Bradley+1999

5-1. 衝撃波後方ガスでダストは凝縮できるか? 〇 Λon = τsat/τcoll ~ τcool/τgrow    - τcool : ガス冷却のタイムスケール    - τgrow : ダスト成長のタイムスケール 〇 ダストが凝縮する条件 : Λon ~ τcool/τgrow >1 (Yamamoto & Hasegawa 1977; Nozawa & Kozasa 2013)

5-2. 衝撃波後方ガスでダストは形成されている ○ IIn型超新星のcool dense shell   ‐ダスト凝縮時刻:50-200 days   ‐間接的証拠が多数 〇 WC-OB star連星系 Tuthill+2008 Tuthill+1999

5-3. 衝撃波後方ガスでダストは凝縮できるか? MC-SNR MC-MC WC-OB SN IIn

本発表のまとめ ?? ?? ?? 銀河系の星間ダストの起源 宇宙における鉄の行方 プレソーラー 粒子の希少性 本発表のまとめ           銀河系の星間ダストの起源 宇宙における鉄の行方 プレソーラー 粒子の希少性 ?? ?? ?? 分子雲でのダスト成長が星間ダストの主なソース 金属鉄ダストして存在 原始太陽系星雲でのダストの蒸発、ガス混合、再凝縮 分子雲中で起こる衝撃波後方でのダスト凝縮を考える ことによって、これらの問題を統一的に理解できる!                          ・・かもしれない