地球科学概論Ⅱ http://www2.kaiyodai.ac.jp/~koji/CKG2 担当:島田浩二
地球科学概論Ⅱ 第2~5回 2回(10月10日):地球気候 1.水惑星地球の特徴 *他の太陽系惑星との比較 地球科学概論Ⅱ 第2~5回 2回(10月10日):地球気候 1.水惑星地球の特徴 *他の太陽系惑星との比較 *放射平衡温度(温室効果ガス、アルベドも含めて) 課題は、最後の2枚のスライド、 締め切りは10/17の講義開始前 3回(10月17日):地球気候 2.大気大循環 *大気、海水の比熱と熱容量、潜熱(水蒸気、氷:多相系では、気候は熱で考える) *海陸分布と気候形成 *気圧と風 *貿易風、偏西風 *台風
地球科学概論Ⅱ 第2~5回 4回(10月24日):地球気候 3.海洋大循環 *風成循環 *熱塩循環 地球科学概論Ⅱ 第2~5回 4回(10月24日):地球気候 3.海洋大循環 *風成循環 *熱塩循環 5回(11月7日) :地球気候 4.気候変動 *エルニーニョ・ラニーニャ *北極振動 *温暖化、気候変化、気候変動の見方
様々な惑星 水星 金星 地球 火星 木星 土星 天王星 海王星 dwarf planet, 準惑星
惑星の内部構造と分類 岩石惑星(地球型惑星) ガス惑星(木星型、天王星型惑星) 金属鉄のコア+岩石質のマントル(+大気) 木星型:岩石のコア+ガス(大気) 天王星型:岩石と氷のコア+氷のマントル+ガス(大気)
水星 半径 2440 km 自転周期 58 日 平均気温 180℃ 反射率(アルベド):0.06 非常に薄い大気 昼側: - 183℃ 平均気温 180℃ 昼側: - 183℃ 夜側: 427℃ 反射率(アルベド):0.06 非常に薄い大気 10個/mm3 程度 約地球の 1 兆分の 1. H, He, O, Na
地球型惑星 地面がある 固体表面を持つ 幾何学的に「薄い」大気 「大気の厚さ」 << 惑星半径
木星型惑星, 天王星型惑星 内部では高い圧力によってガスが相転移 (金属化) 幾何学的に「厚い」大気 「大気の厚さ」 ~ 惑星半径
516 33 -6 -4 -7 -11 ◎海洋がCO2を吸収し、金星のような星ではなく、水惑星地球の環境を生み出した。
地球 半径 6378 km 自転周期 1 日 地表気圧 1 気圧 平均気温 15 ℃ 「大気の厚さ」 8.4 km 反射率(アルベド):0.3 大気組成(%) N2(78), O2(21), Ar(0.9),H2O(0~0.2)
金星 半径 6051 km 自転周期 243 日 地表気圧 90 気圧 平均気温 477℃ 「大気の厚さ」 16 km 公転周期とほぼ同じ 地球とは逆向き 地表気圧 90 気圧 平均気温 477℃ 「大気の厚さ」 16 km 反射率(アルベド):0.78 大気組成(%) CO2(96), N2(3.5), SO2(0.015)
金星大気の流れ どの緯度でも東風 硫酸の雲のパターンが4日で一周する 自転よりずっと速い風 原因:よくわからない 予想と違う! 自転周期は 243 日 原因:よくわからない 自転より速い風をどうやって吹かせるか?
火星 半径 3397 km 自転周期 1 日 地表気圧 0.006 気圧 平均気温 – 53℃ 「大気の厚さ」 11 km 地球の約半分 自転周期 1 日 地表気圧 0.006 気圧 平均気温 – 53℃ 「大気の厚さ」 11 km 反射率(アルベド):0.16 大気組成(%) CO2(95),N2(2.7), Ar(1.6)
大気循環 ダスト(砂)によって可視化 地球の温帯低気圧に相当するもの(?)
火星に特徴的な現象 極冠の形成 大気の主成分である CO2 が冬極で凍る その下には、水の存在が確認されている。 (地球にも南極氷床の下にはボストーク湖がある) 北極冠 南極冠
Q1. 大気、海洋が無い場合、 北半球の夏至に地球表面で最も温度が高くなる場所はどこか? 数字は地球が受ける熱 日平均(ワット/m2): 夏の北極では、 500Wの電気ストーブ で加熱するのと同じだけ の熱を受けている
地球流体(大気、海洋) の重要性
温度 流体があまり存在しない対流圏以外では、赤道非対称温度分布
東向きの風速 流体があまり存在しない対流圏以外では、赤道非対称な風分布
地球とは水の三相(固体、液体、気体)が共存できる奇跡の星
地球表面付近は、海洋のように熱慣性の大きな物質で覆われているから 対流圏(高度15kmぐらいまで)では赤道を挟んで南北対称な温度分布、風分布、上層海洋水温、上層海流になっている。 もし大気、海洋が無かったら、 日射量に応じた温度になるだけの惑星になってしまう。 北半球の夏至に、もっとも温度が高くなる場所は北極点になる。
放射
まず最初に: 放射(熱放射) “物”のエネルギーのやり取りの一形態. 物体はその温度に応じた波長と強度の電磁波を放射している. 経験的に知っていること. 熱したやかん, 鍋, フライパンを置いておくと, そのうち冷める. 温度が高いものほど「熱そう」 温度が高いものほどたくさんエネルギーを出していそう. 日なたにいると暑い. 太陽が太陽の温度(~6000 K)に対応した電磁波を放射.
ステファン・ボルツマンの法則 物理学によると, 物体が出しているエネルギーは温度の 4 乗に比例する ステファン・ボルツマンの法則(Stefan-Boltzmann law) エネルギーを最も出しやすい物体 (黒体) が放射するエネルギーは, ステファン・ボルツマン定数
黒体放射のスペクトル 太陽 (~6000 K) と地球(~300 K) では放射する波長が異なる. (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)
黒体放射のスペクトル 温度 T (K) の黒体表面の単位面積から単位時間あたりに射出される波長 λ (m) の放射エネルギー 黒体放射量 (MW/m2/mm) h = 6.6261x10-34 (J s-1) :プランク定数 c = 2.998x108 (m s-1) :光速 k = 1.381x10-23 (J K-1) :ボルツマン定数 T=4000K 波長 (mm) T=2000K
電磁波・放射 γ線, X線, 紫外線, 可視光線 (“光”), 電波は全部電磁波. μm は 10-6 m nm は 10-9 m 専門的には, 電場, 磁場が振動しながら伝わっていくもの. 別の言い方では, ガンマ線, X 線, 紫外線, 可視光線, 電波などの総称. γ線, X線, 紫外線, 可視光線 (“光”), 電波は全部電磁波. μm は 10-6 m nm は 10-9 m (新訂 地学図表, 浜島書店, より引用)
小まとめ 物体は温度に対応した波長, 強度で電磁波を放射している. 太陽は ~6000 K の放射 地球は ~300 K の放射 主に可視光線を放射 地球は ~300 K の放射 主に赤外線を放射
地球・惑星のエネルギー収支 有効放射温度
惑星全体のエネルギー収支 考えること 太陽からやってくる放射 惑星が出す放射 惑星全体でもらうエネルギーと出すエネルギーは等しくなければならない 等しくないと, 全体の温度が一定になれない 時間がたつにつれて温度が高くなったり低くなったり
太陽ー惑星のエネルギーの流れ (惑星が受け取るエネルギー) = (惑星が出すエネルギー) もらった分だけ外に出す その釣り合いが崩れると, 寒くなったり熱くなったりしてしまう.
太陽ー惑星のエネルギーの流れ 主に可視光線(波長が短い) 主に赤外線(波長が長い) (惑星が受け取るエネルギー) = (惑星が出すエネルギー) もらった分だけ外に出す その釣り合いが崩れると, 寒くなったり熱くなったりしてしまう.
太陽ー惑星のエネルギーの流れ 太陽放射(太陽定数I) アルベド(α)=反射率 惑星放射 (惑星が受け取るエネルギー) =(太陽からやってくるエネルギー) - (惑星が反射するエネルギー) (惑星が受け取るエネルギー) = (惑星が出すエネルギー)
地球が受ける率 太陽定数 断面積/表面積=1/4 受け取る熱=出てゆく熱
-18℃
温室効果が無い場合の地球平衡温度 地球表面温度 アルベド(反射率)
代入 完全なる 温室効果 地球表面からの 長波放射を全て 吸収 303K @地面 30℃
完璧な温室効果の場合の地球平衡温度(赤) 温室効果が無い場合の地球平衡温度(青) アルベドに応じ、実現可能な 最高温度が決まる 完全な温室効果 地球表面温度 温室効果が無い アルベド(反射率)
温室効果が無い場合の地球平衡温度 アルベドが10%変化 すれば、地球全体平均で 10℃の温度上昇が起きる。 地球表面温度 現在の アルベド アルベドが3%低下 約-15℃ 約-18℃ アルベド(反射率)
アルベドが0.01(1%)下がれば、地球全体平均で 温度は1℃上昇 完全な温室効果 ΔT=10 Δα=0.1 温室効果が無い
海氷面積の変化1979~2012 1997~1998
北極海の面積は地球表面積の約2% 半分は白から黒に変わった アルベドは地球平均すれば、 0.01 (1%)下がる。
温暖化予測 量的には不確かさは残るが傾向は信じることが出来るものに進歩している 温室効果気体の増加を含めない場合 温室効果気体の増加を含める場合
温度上昇:北極海氷域>陸域>海氷のない海域 1980-1999年に対する表面温度上昇予測値 温度上昇:北極海氷域>陸域>海氷のない海域 北極海で6度上昇 B1で1.8℃、A1Bで2.8℃上昇、A2:3.4℃
余談:金星の不思議 何故、金星の温度は非常に高いのか? これまでのスライドにあるモデルでは実現不可能 これまでのスライででは、大気の層は1層のみを考えてきた。これをN層にするとどうなるか?
A=0なら、 2層大気モデル T=31/4Te (大気による短波放射の吸収がなければ) ※この図のαは、 問題2のページまでのA
N層大気モデル A=0, B=1なら、 T=(N+1)1/4Te (大気による短波放射の吸収がなく、長波放射は完全に吸収する場合には) ※この図のαは、 問題2のページまでのA ※この図のβは、 問題2のページまでのB ※この図のTeは、 問題2のページまでのT ※この図のT0は、 問題2のページまでのTe N=119で、 金星の温度740Kとなる。 (放射平衡温度224K×3.31倍≒740K)
【問題1】
さらに、地球からの長波放射σT4のうち、大気は割合BσT4だけ 【問題2】 さらに、地球からの長波放射σT4のうち、大気は割合BσT4だけ 吸収するとし(0<B<1)、残りの(1-B)σT4は宇宙空間に放射される 場合、地球表面(地面)温度(T)と大気温度(Ta)をTeとAとBで表せ。 ※α=0.3, A=0.2, B=0.9としたときの、地球表面温度が、現実の地球の 放射平衡に近い。確認してみよう。 (1-B)σT4 BσT 4 大気が短波放射に対して透明ではなく、また、大気が長波放射を完全に吸収しない場合