すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測

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すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測 信川 正順、小山 勝二、鶴 剛 (京都大学) 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

目次 銀河中心領域からの6.4keV中性鉄輝線 近年の観測結果 すざくによるSgr B2の観測 議論 まとめ 鉄輝線と連続成分の時間変動 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

銀河中心からの中性鉄(6.4keV)輝線 Sgr B2 Sgr C Sgr A* Sgr B2 6.4keVバンドマップ (すざく) X線連星 1E1743.1-2843 6.4keVバンドマップ (すざく) Sgr B2 Sgr C Sgr A* 20秒角= 50pc CS分子マップ (Tsuboi+99) Sgr B2 多数の6.4keV Clump (e.g. Koyama+96, Nobukawa+08, Nakajima+09) エネルギー 6.4 keV 分子雲との相関 =>分子雲中の鉄原子 からの蛍光X線 起源は?(X線/電子/etc) ハードバンド(7—8 keV) 銀河中心に広がるハードX線との関係 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

銀河中心からの6.4keV輝線ースペクトル スペクトルの特徴 ・強い中性鉄輝線 ・吸収を受けたハードな 連続成分 X線スペクトル スペクトルの特徴 ・強い中性鉄輝線 ・吸収を受けたハードな  連続成分 鉄以外の元素からの中性輝線 (Nobukawa+10) 等価幅はX線起源を示唆 必要光度 ~ 1039 erg/s Sgr A*の過去のフレア? 各輝線の等価幅 Z=1 solar 4 solar X線モデル 1.6 solar 電子モデル 4 energy(keV) 9 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

6.4keV輝線の時間変動 Sgr B2 2005年と同じ視野を 2009年10月に追観測 Sgr C Sgr A* X線連星 1E1743.1-2843 6.4keVバンドマップ (すざく) Sgr B2 2005年と同じ視野を 2009年10月に追観測 Sgr C Sgr A* 1994 (ASCA)  2000 (Chandra) 2003 (XMM-Newton) 2005 (Suzaku) 6.4 keV輝線の時間変動(Inui+09) 20秒角= 50pc 異なる衛星・検出器による =>同一衛星での観測。スペクトルの変化は? 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

観測結果(1) 輝線強度マップ Sgr B2領域のX線スペクトル 2009 (6.4keV) 2005 (6.4keV) 強度(A.U.) 2 4 6 8 10 10 pc 6.7keV (FeXXV Ka) -2005 -2009 6.4keV (FeI Ka) SNR G0.61+0.01 7.0keV (FeI Kb) 6.4 keV --- 低温ガス 6.7 keV --- 高温プラズマ 輝線強度マップを見れば  それぞれの分布が分かる 暗くなった 変わらず 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

観測結果(2) スペクトル 6領域(A—F)に分割してスペクトルを調査 でフィット プラズマ+輝線+ハード成分 6.4keVの時間変動 A B F D C A (2005) 輝線 ハード成分 表面輝度 (ph/s/cm2/am2) プラズマ 6.4keVの時間変動 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

観測結果(2) スペクトル プラズマ 領域によらず一様 ハード成分 プラズマからの放射は 時間変動 時間変動なし ハード成分とFeKbか 領域EにはSNRが含まれる A E — 2005 — 2009 プラズマ B 領域によらず一様 強度 F D C ハード成分 プラズマからの放射は  時間変動なし ハード成分とFeKbか ら時間変動を初検出 強度 時間変動 7.0 keV 強度 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

時間変動する成分の起源 明るい領域AとB: 2005年~2009年にかけて6.4keV輝線に伴ってハード成分も~2倍弱の変動 両者の起源は同じ (銀河中心のハード成分に寄与) 大きさ5光年程度の分子雲からの放射が5年間で時間変動 =>光速粒子が起源(つまりX線)  SgrA*の過去のフレアを吸収・散乱 今後の課題:  Clump以外に広がる中性輝線/硬X線の起源  Sgr A*の活動史 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

まとめ すざく衛星を用いてSgr B2領域の長時間観測を 2005年と2009年に行った。  2005年と2009年に行った。 6.4keV (FeKa)輝線に加えて、ハード連続成分と 7.06keV (FeKb)輝線の時間変動を初めて発見した。 両者の起源は同一 (Sgr A*の過去のフレアが有力) 銀河中心に広がるハードX線にも寄与? 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

Model fitting by PL + Lines Abs(NH=6e22, ZFe=free) * PL + Lines 6.4keV --- FeI Ka 6.7keV --- FeXXV Ka 7.0keV --- FeXXVI Ka + FeI Kb 2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

2010/3/25 天文学会2010年春季年会 広島大学

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