大規模粒子法による大型クルーズ船の浸水解析

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確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
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大規模粒子法による大型クルーズ船の浸水解析 jh170014-NAH 橋本博公 (神戸大学) 大規模粒子法による大型クルーズ船の浸水解析 共同研究拠点:東京工業大学  共同研究分野:超大規模数値計算系応用分野  研究の背景・目的 -なぜ本研究が必要かー  海上に浮かぶ巨大な閉鎖空間といえる船舶において、衝突や座礁により船内への浸水が生じた場合の安全性向上は重要な課題である。貿易立国を自負する我が国は、海上輸送を行う船舶の浸水事故に対する安全性を向上させていく責任を負っているが、従来の技術開発はその大半が基礎研究レベルに留まっている。これは、想定される様々な損傷シナリオに対して、浸水状況を正確に予測することが困難であり、安全向上策の評価が容易ではないことが挙げられる。  こうした状況を打破すべく、本研究では粒子法による浸水計算をコア技術とした損傷船舶の浸水シミュレーションについて、GPUスパコン上での大規模並列計算を実行可能とすることで高速化を図り、複雑な船内区画を有する大型クルーズ船への適用を実現する。これにより、従来計算では解析が困難であった船内浸水状況の経時変化を明らかにし、船舶の損傷時安全性向上の検討に資する数値シミュレーションとして確立する。  粒子法をコア技術とする損傷船舶の浸水シミュレーション -どのような技術を使うのかー 1)計算領域分割法  想定される損傷シナリオは多岐に渡り、損傷破孔の位置・大きさによって流入速度や浸水経路が大きく異なるため、条件に応じた計算格子の作成を要する計算手法は不向きである。また、浸水に伴う船体の急激な傾斜やダウンフラッディングなどの強非線形自由表面流れを取り扱う必要性から、船内への浸水解析において粒子法は有力な解法となる。ただし、粒子法による全船解析は非効率であることから、図1のような計算領域分割を行い、浸水が生じる損傷部のみを粒子法により、その他の非損傷部はポテンシャル理論により流場を計算して流体力を求める。 2)GPUスパコンを用いた大規模粒子法  複雑な船内区画を有するクルーズ船の浸水状況を再現するためには、外部領域を含めて一億程度の粒子が必要となる。大規模計算ではスケーラビリティの確保が重要となるため、圧力のポアソン方程式を解かない陽的MPS法を用いる。これまでに、CUDAによるプログラミング、GPUに適したリンク・リスト法やソート処理による最適化、スライスグリッドによる動的負荷分散など代表的な手法は導入済みであり、MPIを用いた並列化によりGPUクラスタでの計算にも対応している。TSUBAME2.5上において、12GPUで3000万粒子を用いた単純区画への浸水計算が問題なく行えることは確認済みであり、72GPUを用いた一億粒子の計算においても良いスケーリングを維持するなど、大型クルーズ船の浸水解析に向けて大きな障害は見られない。 3)鏡面壁境界と壁粒子自動生成  クルーズ船の船内は多数のデッキに分かれており、薄板に対する水粒子の貫通防止が重要となる。鏡面粒子の動的な生成・配置を行う鏡面壁境界の導入がこの問題の解決に有効であり、さらに初期データとして用意する壁粒子は粗密の制約を受けないため、STLデータからの壁粒子の直接生成が可能となり、移動を伴う複雑形状を対象とする場合でも前処理に要する手間はない。 図1 計算領域分割 図2 船内浸水シミュレーションの実施例  大型模型船を用いた水槽試験 -どのように精度を保証するのかー  全長3.5mの模型船(図3、4)を用いた水槽試験を実施することにより、船内浸水状況と船体姿勢の経時変化を計測する。同一条件にて行った計算結果との比較により精度検証を行う。粒子法計算には内部区画を含むSTLデータから自動生成した壁粒子を使用する(図5) 。 図3 損傷区画を有する大型クルーズ船の模型 図4 船内区画と損傷破孔 図5 損傷部の計算に用いる壁粒子 今後の研究計画 1)GPUスパコンを用いたクルーズ船の浸水シミュレーション 2)模型船を用いた水槽試験の実施、ならびに精度検証 3)粒子法アルゴリズムの高精度化と計算コードの最適化 4)想定される損傷シナリオに対する多ケースシミュレーション 研究体制 代表者 橋本博公 副代表者 青木尊之 課題参加者 末吉  誠 課題参加者 大学院生3名 神戸大学海事科学研究科 東京工業大学学術国際情報センター 九州大学応用力学研究所