CLINICAL CYTOGENETICS: THE CROMOSOMAL BASIS OF HUMAN DISEASE

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CLINICAL CYTOGENETICS: THE CROMOSOMAL BASIS OF HUMAN DISEASE Chapter6 CLINICAL CYTOGENETICS: THE CROMOSOMAL BASIS OF HUMAN DISEASE 4石亀 20北原 25小森 27坂口  29実森 31嶋村 68前田 82吉田

INDEX CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER CHROMOSOME ABNORMALITIES AND PREGNANCY LOSS ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE CHROMOSOME ABNORMALITIES AND CLINICAL PHENOTYPES CANCER CYTOGENETICS

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 細胞遺伝学の技術と命名-1- 染色体の観察 コルヒチンやコルセミドのような紡錘体分裂阻害剤の使用。(分裂中期の体細胞分裂阻害) 低張液の使用(細胞の膨張、核の崩壊、染色体の分離) 染色液の使用(特徴的な明暗バンドをつくる) ◎22組の常染色体  →大きさによって配置 ◎性染色体  →右下に配置  karyotype/karyogram核型  (大きさによる表示法)

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 細胞遺伝学の技術と命名-2- 染色体の観察 (セントロメアの位置) 中心部付近・・・・・・・metacentric chromosome 末端・・・・・・・・・・・・・acrocentric chromosome 中心部と末端の間・・submetacentric chromosome 染色体の先端→テロメア 染色体の短腕・・・p 染色体の長腕・・・q 例)14q32→14番染色体の長腕における3つ目の区分の2つ目のバンド

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 細胞遺伝学の技術と命名-3- 染色体核型 <Table6-1: 染色体核型に対する一般的な命名> 47,XY,+21[10]/46XY[10]……トリソミー21細胞と正常細胞のモザイクの男性                        (各々の核型につき10個の細胞を記録) 46,XX,dup(5)(p14p15.3)……5番染色体短腕でp14からp15.3まで重複した          女性。                       45,XY,der(13;14)(q10;q10)..13番染色体と14番染色体で均整のとれた                           ロバートソン転座をもつ男性。   <核型分析> 核型分析→染色体の数の変異を見つけるには便利であったが、再配列や           小さな染色体欠損などの構造異常は検出困難。 そこで、 染色体分染→欠損、重複、構造異常を検出できる。

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 Chromosome Banding 染色分染法 ①Quinacrine banding ( Qバンディング)   初めて用いられた特異的な染色技術。 ②Giemsa banding (Gバンディング)   トリプシンで蛋白質を分解した後にギムザ液で染色することでGバンドをつくる。 ③Reverse banding (Rバンディング)   熱処理必要。①②で見られる黒白パターンを逆転させる。 ④C-banding(Cバンディング)   セントロメア近くにある構造的ヘテロクロマチンを染める。 ⑤nucleolar organizing region stains (NOR染色法)    acrocentric chromosomeにおけるStalkとSatelliteを強調する。 ⑥High-resolution banding 前期や前中期の染色体を染色する。 観察可能な染色体バンドは800ほどまで増えている。 ⇒今までのバンド染色法では見れなかった異常を検出できる。

蛍光標識した一本鎖DNA断片(probe)と変性させた染色体(中期、前期、間期)のハイブリダイゼーションにより、欠失・重複・転座を検出する。 《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 FISH(Fluorescence in situ Hybridization) 蛍光標識した一本鎖DNA断片(probe)と変性させた染色体(中期、前期、間期)のハイブリダイゼーションにより、欠失・重複・転座を検出する。 ◎正常→二か所でハイブリダイゼーション 1)一か所・・probeに対応する染色体に欠失 2)三か所以上・・probe対応部の重複 様々なprobeを組み合わせて 転座なども色の変化で表現可能

High resolution bandingより高い分解能をもつので、 1Mbほどの小さな欠失も検出できる。 《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 FISH(Fluorescence in situ Hybridization) FISHの利点 High resolution bandingより高い分解能をもつので、 1Mbほどの小さな欠失も検出できる。 間期染色体も使えるので、中期染色体を得るための時間が短縮され分析と診断がより早くできる。 →主に胎児染色体異常の出生前診断や腫瘍細胞での染色体再配列の分析に使える。 異なった蛍光色素で標識した多様なprobeを用いることで同じ細胞上で同時に異常を検出できる。

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 CGH(Comparative Genomic Hybridization) 染色体の欠失や重複を検出する。  (特に癌細胞) 癌細胞からのDNA(赤で標識)と 正常細胞からのDNA(緑で標識)を 正常の中期染色体に ハイブリダイゼーションさせる。 1)ある部位が顕微鏡下で赤色・・重複 2)ある部位が顕微鏡下で緑色・・欠失

《CYTOGENETIC TECHNOLOGY AND NOMENCLATURE 》 CGH(Comparative Genomic Hybridization) CGH と array CGH CGHの弱点:5~10Mb以下の変異は顕微鏡では検出できない。 ⇒array CGH  DNAと3000のBAC probe (150kbのDNAinsertsを含む。約1Mb) を含んだマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせる。 →約1Mbの欠失や重複を検出できる。 →BAC inserts自身(150kb)よりも小さい変異は検出しにくい。 長所:①高い分解能で小さな変異を検出できる。(CGH)     ②過程が自動化されていて時間がかからない。      (array CGH)     ③わずかな量のDNAで分析可能。(array CGH) 短所:バランスのとれた染色体の再構成は検出できない。    ↑arrayCGHによる22qの調査

Study Question ② Q.FISH,spectral karyotype, CGHの使用と利点について説明せよ。 A.FISHは蛍光標識したprobeを中期、前期、間期の染色体にハイブリダイゼーションさせて欠失、重複、転座を検出する。分析・診断までの時間が短縮されたり一度に多くの染色体異常を検出できる。  Spectral karyotypeはFISHの応用で、それぞれの染色体を違った色で標識できる。異数体、遺伝物質の欠失、重複、とくに転座のような染色体再配列を正確かつ簡単に検出できる。  CGHは試験用と正常の試料で異なる標識をしたDNAを正常中期染色体やマイクロアレイとハイブリダイゼーションさせることによって欠失・重複を検出できる。array CGHは小さな欠失・重複も検出できる。バランスのとれた再構成は検出できない。

≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Polyploidy 倍数体   核に23の倍数の染色体をもつ細胞をeuploidy(正倍数体)という。   倍数体は一般的に植物で見られ、頻度は少ないがヒトでも見られる。   ヒトでみられる倍数体には、三倍体と四倍体がある。 Triploidy 三倍体 核型:69,XXX 各細胞の核の中に69本の染色体をもつ。 出生児の10,000人に1人の割合で見られ、胎児に起こる染色体異常の15%を占める。 原因  二精子受精(2つの精子と卵が受精) 卵と極体が融合し二倍体となった後、1つの精子と受精する。 減数分裂でのnondisjunction(不分離)により二倍体の卵や精子がつくられる。 Tetraploidy 四倍体 核型:92,XXXX 各細胞の核の中に92本の染色体をもつ。 三倍体よりも稀で、生まれても短期間しか生きられない。 原因 初期胚での有糸分裂の失敗により、娘細胞のうちの1つが四倍体となる。 (減数分裂の失敗によってできた)二倍体の卵と二倍体の精子との受精による。

Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体           ≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体 (23の倍数でない)欠失や付加の染色体をもつ細胞を異数体という。 異数体には monosomy(モノソミー)とtrisomy(トリソミー)がある。 常染色体モノソミーは出生まで生存するのは難しいが、いくつかの種類のトリソミーは出生児にかなりの頻度で見られる。 (21,18,13番染色体) ‘体は遺伝子物質の不足よりも過剰に対してのほうが耐えやすい’ 原因 第一減数分裂、第二減数分裂での染色体不分離 図 減数分裂

Trisomy21 21トリソミー ≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体-1- Trisomy21 21トリソミー 核型:47,XY+21または47,XX+21 Down Syndrome(ダウン症)を引き起こすトリソミーで21番目の常染色体が過剰にある ある程度生存できる最も一般的な常染色体異常 出生児の800~1000人に1人の割合でみられる <外見> 低い鼻根 眼裂斜上 平らな顎や頬 首が短く、特に新生児では頸部の皮膚過剰が見られる 50%の人の掌に深い皺がある 手足は広く短い傾向がある

Trisomy21 21トリソミー ≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体-2- Trisomy21 21トリソミー <臨床的特徴> 筋緊張の低下 40%の人が先天性の心奇形を持っている     早死の重要な原因   (最も多いのは房室管)                    心室中隔欠損 重篤な感染症   白血病にかかるリスクが一般の人に比べ15~20倍高い   呼吸器感染症 3%の人に十二指腸の障害や、胃・十二指腸・肛門の閉鎖症が見られる 重度の精神遅滞 難聴 甲状腺機能不全 眼の異常 男性のほとんどは不妊であるが、女性の40%は生殖可能 40歳以上ではほとんどの人がアルツハイマー病に罹患   矯正手術や抗生物質治療、白血病の管理の進歩により現在ではDown Syndromeの   子供の80%は10歳まで生きられ、その半数は50歳くらいまで生存できる 

Down Syndrome(ダウン症)の原因 ≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体-3- Down Syndrome(ダウン症)の原因 95%は減数分裂における染色体不分離によって起こる 残りは染色体転座によって起こる転座型と、体細胞分裂での不分離によるモザイク型 染色体不分離の75%は減数分裂Ⅰ期、25%はⅡ期で起こる 過剰な染色体は90~95%母親由来である 母親の年齢とDown Syndromeの子供が出来るリスクには強い相互作用がある <原因遺伝子の研究> 候補として・・・ DYRK1A⇒過剰にある場合、記憶や学習に障害を及ぼす         精神遅滞の原因遺伝子であると考えられている APP⇒アミロイドβ先駆体をコード        蓄積しアミロイド斑を形成       アルツハイマー病

モザイク現象 ≪ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER≫ Clinical Commentary6-1 Autosomal Aneuploidy 常染色体異数体-4- モザイク現象 正常な体細胞とトリソミー21の細胞を両方もつ現象   モザイク現象は臨床症状をゆるやかにすることがある トリソミー21の新生児の2~4%にモザイク現象が見られる 組織特異的なモザイク現象が現れることがある   ⇒診断が複雑になる 生殖細胞に起こると子孫がDown Syndromeになる可能性がある Clinical Commentary6-1 ~Down Syndromeの子供への予測診療と健康管理~ 新生児期の心エコー図が推奨されている   ⇒心欠陥の外科的矯正のため 眼科受診   ⇒斜視や眼の異常が考えられるため 甲状腺ホルモンレベルの測定 2歳になるまで半年ごとに聴力テストを行う 神経学的症状に注意

Study Questions ① Q.haploidy,diploidy,polyploidy,euploidy,aneuploidyを   区別せよ。 A. haploidy→一倍体(細胞の核内に23本の染色体をもつ) diploidy→二倍体(細胞の核内に46本の染色体をもつ) polyploidy→倍数体(核内に3倍以上の23の倍数の 染色体をもつ) euploidy→正倍数体(23の倍数の染色体をもつ) aneuploidy→異数体(染色体数が欠損・重複しており、23の倍数でない)

Study Questions ③ Q.三倍体が生じる三つの方法を述べよ。 A. 卵が二つの精子と受精する。(二精子受精) 卵と極体が融合し二倍体となった後、1つの精子と受精する 減数分裂での不分離により二倍体の卵や精子がつくられ、一倍体の配偶子と受精する

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 Trisomy 18 トリソミー18(47,XY+18) Edwards syndrome(エドワード症候群)とも呼ばれる 常染色体トリソミーの中で2番目に多い 6000人に1人の割合で生まれる 先天性奇形による死産における染色体異常で最も多い トリソミー18で生きて産まれてくる子は5%以下 ○表現型 出生前に成長不足(体重が胎齢の割に少ない) 特徴的な顔貌を持つ                                    特殊な手の奇形 → 臨床的に診断する手がかり   ○奇形としては 小さく耳輪が丸まっていない耳、開けるのが困難な口       短い胸骨、短い母指 先天性心疾患 (特にVSDS)  臍帯ヘルニア 撓骨形成不全 横隔膜ヘルニア 脊椎披裂 ○特徴 50%のトリソミー18の乳児は数週間で亡くなる 約5%の子供が12カ月ほど生きる 明白な発育障害はトリソミー18の乳児でみられ、ダウン症よりも重大 95%以上のエドワード症候群の患者が完璧にトリソミー18を持っている モザイク現象の患者もいる 母親の年齢が大きな影響 90%以上のケースは、余分な染色体は母親由来

《 ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 Trisomy 13 トリソミー13(47,XY+13) Patau syndrome(パトー症)候群とよばれる 1万人に1人 臨床診断が容易にできる ○奇形 顔面裂、小眼球症、軸後多指症 中枢神経の奇形 心疾患、腎奇形 皮膚の形成不全 ○特徴 生きて産まれてきた95%のトリソミー13の乳児が1歳以内で死亡 長く生きたとしても重大な発育障害が生じる 2年間生きても滅多に成長がみられない 母体の年齢が影響 約95%のケースで余剰染色体は母親由来である 80%のPatau syndromeの患者は完全なトリソミー13を   持っている

《 ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 トリソミー13,18のまとめ 95%以上のトリソミーを持つ胎児は自然流産する トリソミー21より出生確率は低い 重大な病気の特徴を示す 1歳の時に死亡する確率は95% 母体の年齢が影響する 約90%で余剰染色体は母親由来である

Down syndromeの罹患率 30歳以下の若い母親では0.1%以下 35歳では約400人に1人の割合 《 ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 Trisomies , Nondisjunction , and Maternal Age-1- トリソミーと母体の年齢 Down syndromeの罹患率 30歳以下の若い母親では0.1%以下 35歳では約400人に1人の割合 45歳以上では約25人に1人の割合 母体年齢が高くなるにつれ有病率高くなる   そのため、35歳以上で出生前診断が   適応されている

ほほすべての卵母細胞は胚発生の間に形成される 卵母細胞は排卵期に放出されるまで、第1減数分裂で停止している 《 ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 Trisomies , Nondisjunction , and Maternal Age-2- 母親由来である理由 ほほすべての卵母細胞は胚発生の間に形成される 卵母細胞は排卵期に放出されるまで、第1減数分裂で停止している 停止した状態が長期間に及ぶことが染色体不分離を生じさせている可能性がある 影響を受ける因子として  ホルモン濃度、喫煙、橋本病(自己免疫性甲状腺炎)、  アルコールの消費、放射線が考えられている  (メカニズムの正確な原理は分かっていない)

父親の年齢は、影響があったとしても、その影響は微々たるものである 《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME NUMBER》 Trisomies , Nondisjunction , and Maternal Age-3- トリソミーと父親の年齢 父親の年齢は、影響があったとしても、その影響は微々たるものである 卵母細胞とは違い、精母細胞は男性が生きている間に何度も生産されるからだと考えられる

Study Question ④ Q. 妊娠10週目で出生前診断によって得られた核型と妊娠16週目で得られた核型とで、染色体異常の罹患率が異なっていた。これを説明せよ。 診断時期による染色体異常の罹患率の差は、染色体異常をもった胚や胎児が妊娠中に自然に死ぬことがある為生じる。

Study Question ⑤ Q.臨床の検査のみによってDown syndromeやEdwards syndromeの診断がついたとしても、核型を調べることが推奨されている。それはなぜか。 A.核型によって、 Down syndromeやEdwards syndromeが染色体不分離によって生じたものか転座によって生じたものなのかが分かる。トリソミーが転座によって生じたものならば、将来の妊娠の際の再発リスクは上昇する。また、核型を調べることにより、患者がモザイクかどうかもわかる。これによって、病気の表現型の重症度を前もって知ったり、説明したりすることも出来る。

男児では400人に一人、女児では650人に一人の割合で何らかのSex chromosome aneuploidyを持って産まれてくる ≪ABONORMALITIES OF CHOROMOSOME NUMBER≫ Sex chromosome aneuploidy -1- Sex chromosome aneuploidy(性染色体異数性) 男児では400人に一人、女児では650人に一人の割合で何らかのSex chromosome aneuploidyを持って産まれてくる Sex chromosome aneuploidyがあったとしても生存可能なケースもあるが、X染色体が欠失すると生存の可能性は非常に低い ⇒X染色体には生命維持に欠かせない遺伝子が含まれている

外見的特徴 *女性 *低身長 *三角形の顔貌 *外耳の異常(耳介低位) *翼状頸 *盾状胸 *手足のリンパ浮腫 ≪ABONORMALITIES OF CHOROMOSOME NUMBER≫ Sex chromosome aneuploidy -2- Tuner Syndrome(ターナー症候群) 外見的特徴 *女性 *低身長 *三角形の顔貌 *外耳の異常(耳介低位) *翼状頸 *盾状胸 *手足のリンパ浮腫 臨床的所見 *先天性心疾患  (大動脈二尖弁が50%、大動脈狭窄が15~30%) *卵巣の発育不全 *腎臓の構造上の欠陥⇒医学的な問題は引き起こさない *空間認識能力の減衰があるが、知能は正常 治療法 *均衡性の低身長 (平均より20cm低い) →思春期における成長が起こらない ⇒成長ホルモンを投与 *生殖器発育不全(索状卵巣)により二次性徴が起こらず、多くの患者は不妊となる  ⇒エストロゲン投与(骨粗しょう症防止) 診断 *新生児でよく診断される  →心疾患と顕著な翼状頸 *もし幼少期に診断されないと…  →低身長と無月経によって診断される

≪ABONORMALITIES OF CHOROMOSOME NUMBER≫ Sex chromosome aneuploidy -3- Tuner Syndrome(ターナー症候群) 遺伝的要因                              *患者の50%の核型は45,X                 *30~40%の患者の核型はモザイク型            ⇒最も一般的なのは45,X/46,XX                ⇒最も少ないのは45,X/46,XY                  *患者の約10~20%はXpの一部もしくは全ての欠失を含む構造上のX染色体の変異をたくさん持っている                         *モノソミーの60~80%は父方の性染色体遺伝の欠失が原因                                ⇒父親での減数分裂の際に生じる *胎児の脚を表現する転写因子をコードするSHOX遺伝子   ⇒X,Y染色体短腕の末端にあり、偽常染色体領域(X染色体の不活性化を受けない領域)に位置する。通常2本ある性染色体両方から転写される  ⇒X染色体しかないので1つしか転写されず、低身長の原因となる

Study Questions ⑧ Q:血友病Aの男性と正常な女性の間に Turner syndrome(ターナー症候群) の娘が生まれたとする。娘 は正常な第Ⅷ因子の活性をもつ。どちらの親で減数分裂の失 敗が起こったか? A:X染色体に血友病Aの遺伝子が存在するので、 減数分裂の失敗は父親で起こっている。 娘の第Ⅷ因子は正常なので、母親から正常な遺伝子を 受け取ったと考えられる。 X*:変異遺伝子 XX X*Y 血友病A 男性 正常女性 X*Y X X ターナー症候群の娘

治療法:テストステロン療法 ⇒二次性徴を促し、骨粗しょう症のリスクを軽減 ≪ABONORMALITIES OF CHOROMOSOME NUMBER≫ Sex chromosome aneuploidy -4- Klinefelter Syndrome (クラインフェルター症候群) 遺伝的要因                           *47,XXYの核型(48,XXXYや49,XXXXYの核型も存在)        *患者の15%はモザイク現象(46,XY/47,XXY)が原因である   →モザイク型のヒトは精子生産の可能性が高まる                                  *クラインフェルターの50%は母親由来であり、母体年齢が高齢化するにつれて発生率が増加する *新生児の1/500~1/1000で見られる 外見的特徴と臨床所見 *高身長 *手足が異常に長い *小さな精巣、精細管の萎縮 →不妊症 *テストステロンレベルの低下 *女性化乳房(患者の1/3で見られる)  →乳がんリスク亢進 *薄い体毛、筋肉量の減少 *学習障害、言語IQの減衰 治療法:テストステロン療法 ⇒二次性徴を促し、骨粗しょう症のリスクを軽減

≪ABONORMALITIES OF CHOROMOSOME NUMBER≫ Sex chromosome aneuploidy -5- Trisomy X, XYY Syndrome XYY Syndrome *男性 *高身長、IQは平均IQより低い *刑務所に収監されている男性の1/30が罹患  →暴力的、犯罪を犯しやすい疾患ではない  →多動、注意欠陥障害、学習障害の高い発生率

Clinical Commentary 6-2 XX Males, XY Females and the Genetic Basis of sex determination Pseudoautosomal region(偽常染色体領域) *X,Y染色体の短腕の末端部にあるとても良く似たDNA領域 *有糸分裂の際は常染色体と似たような動きをする SRY(Sex-determining region Y)遺伝子とDAX-1 *SRY遺伝子はY染色体上のPseudoautosomal regionの近くにあり、未分化の胚が男性へと発生する因子をコードした遺伝子をもつ  →セルトリ細胞の分化やミュラー管の抑制物質の分泌 *DAX-1は胚が男性へと分化するのを抑制するタンパク質である。X染色体上にコードされている。 *SRYにコードされたタンパク質はDAX-1にアンタゴニスト様に作用する

Clinical Commentary 6-2 XX Males, XY Females and the Genetic Basis of sex determination 男性の生殖細胞で減数分裂が生じる際に、X染色体とY染色体のpseudoautosomal regionにおいて交差が生じる →SRY遺伝子はY染色体のpseudoautosomal region付近にあるので、SRY遺伝子を含む交差が起こりやすい 結果、SRYはX染色体に転座するので… →XXで男性の表現型 →XYで女性の表現型

Study Questions ⑦ Q:核型が49,XXXXXの女性が見つかった。どのようにこの核型が生じたか説明せよ。 A:卵で第一減数分裂、第二減数分裂の両方で染色体不分離が起きた時、卵はXXXXとなり、精子からXが伝わるとXXXXXとなる。

≪CHROMOSOME ABNORMALITIES AND PREGNANCY LOSS≫ 染色体異常と流産 hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)   妊娠が成立すると、絨毛組織から分泌される糖蛋白質ホルモン。   着床直後より、hCGの値は急上昇し、妊娠10週目頃に最高値を示す。   →血中、尿中のhCGを測定することで妊娠の診断ができる。 着床後、約3分の1が流産する。   →自然な流産は、人間によくあることである。 <流産の核型の研究>    染色体異常は流産の主な原因である。    妊娠の10~20%は染色体異常を持つ。     染色体異常の約50%・・・トリソミー              約20%・・・モノソミー              約15%・・・三倍体              約15%・・・四倍体と構造異常 

≪CHROMOSOME ABNORMALITIES AND PREGNANCY LOSS≫ 染色体異常と流産 <精子と卵細胞の染色体異常の研究> 異数体や倍数体の頻度    卵母細胞・・・約20~25%    精子・・・・・・・約3~4% 構造異常の頻度    卵母細胞・・・約1% この発生率は父親の年齢とともに上昇する。 ☆ここまでのまとめ   妊娠中の流産は人間においてよく起こることで、着床後約3分の1は自然に流産する。    精子や卵母細胞、そして流産において研究されてきた染色体異常は、流産の重要な原因である。 これらのデータには統計的な偏りがある。

≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ 染色体構造の異常 染色体全体の欠損あるいは重複に加えて、染色体の一部が欠損したり重複したりすることもある。この部分的な欠損や重複のために、染色体の部分的な配列は変化する可能性がある。 Unbalanced 不均衡   再配列によって染色体が欠失や重複する場合   →個人あるいはその子に重大な病気を引き起こしうる。 Balanced 均衡   再配列によって染色体が欠失や重複しない場合   →個人には重大な健康に関わる結果は起こさないことが多い。     しかし、子には欠失や重複が起こる可能性がある。

≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ 染色体構造の異常 Translocations 転座 Deletions 欠失 Microdeletion 微小欠失 Uniparental Disomy 片親性ダイソミー Duplications 重複 Ring Chromosome 環状染色体 Inversions 逆位 Isochromosomes 同腕染色体

転座とは、非相同染色体間で遺伝物質が入れ替わること。ヒトにおいて最もよくある染色体異常の一つで、500~1000人に1人の割合で起こる。 ≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Translocation-1- Translocation (転座) 転座とは、非相同染色体間で遺伝物質が入れ替わること。ヒトにおいて最もよくある染色体異常の一つで、500~1000人に1人の割合で起こる。 転座には、基本的な2つのタイプがある。   Reciprocal Translocation(相互転座) Robertsonian Translocation(ロバートソン転座)

≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Translocation-2- Reciprocal Translocation (相互転座) 2つの異なる染色体間で切断が生じ、遺伝物質が相互に入れ替わること。   →derivative chromosome(誘導染色体) 相互転座のキャリアは遺伝物質を正常に完全な量持っているため、たいてい影響を受けない。 子は、正常、転座、欠失、重複になりうる。 (例)3番染色体と6番染色体の相互転座・・・Fig.6-14

≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Translocation-3- Robertsonian Translocation (ロバートソン転座) 2つの非相同染色体の短腕が欠損し、その長腕がセントロメアで融合して1つの染色体をつくること。 acrocentric chromosome(13,14,15,21,22番)に限定される。   理由:これらの染色体の短腕は非常に小さく、重要な遺伝物質を含まな                   いため。    →キャリアは影響を受けず、表現型は正常。     (ただし、各細胞には45本の染色体しか存在しない。) 子は、長腕を欠失または重複して受け継ぐ可能性がある。 (例)13番染色体と14番染色体のロバートソン転座                       ・・・Fig.6-15  

① ③ ② ① ② ③ 死

よくみられるロバートソン転座は、14番染色体と21番染色体の間で起こる。 ≪ABNORMARITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Translocation-4- ロバートソン転座とDown syndrome よくみられるロバートソン転座は、14番染色体と21番染色体の間で起こる。 ロバートソン転座はDown syndromeの約5%に関係している。 ロバートソン転座のキャリアの子がDown syndromeになる確率は、理論的には3分の1であるが、ある程度は流産するので、実際にDown syndromeの子が生まれる確率は3分の1より低い。(転座のキャリアが母親の場合は約10~15%、父親の場合は約1~2%) Recurrence Risk (再発危険率)     ロバートソン転座 ≫ 染色体不分離   →遺伝子検査によって、1人目の子供がどのような原因で Down syndromeに なったかを知ることが重要である。

Study Question ⑥ Q. Down syndromeの子供が生まれる危険性という点で、次のものを低いものから高いものへ並べよ。 Ⅰ: Down syndromeの家族歴のない45歳の女性 Ⅱ: Down syndromeの子供が1人いる25歳の女性 Ⅲ:21/14ロバートソン転座のキャリアーである25歳の男性 Ⅳ:21/14ロバートソン転座のキャリアーである25歳の女性 A. Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅳ

≪ABNORMALITES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Deletions(欠失) -1- Deletions(欠失) 欠失は、染色体の切断と損失によって起こる。 欠失には2通りある。 terminal deletion(末端欠失) 1カ所の切断によるもの:ABCDEFG⇒ABCDE interstitial deletion(介在部欠失) 2カ所の切断によるもの:ABCDEFG⇒ABEFG 染色体欠失症候群の例 cri-du-chat syndrome(猫鳴き症候群) Wolf-Hirschhorn syndrome(ウォルシュ-ハーシュ   ホーン症候群)

≪ABNORMALITES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Deletions(欠失) -2- 染色体欠失症候群 cri-du-chat syndrome(猫鳴き症候群) 新生児の約5万人に1人の比率で生じる。 第5番染色体短腕の末端欠失による。 核型:46 ,XX/XY ,del(5p) 症状 特に2歳未満の子供で猫が鳴くような泣き声 精神遅滞、小頭症、眼間開離・耳介低位などの特徴的な顔貌 Wolf-Hirschhorn syndrome (ウォルフ-ハーシュホーン症候群) 第4番染色体短腕の末端欠失による。 核型:46 ,XX/XY ,del(4p) 精神遅滞、眼間開離、口唇裂の跡  など その他の欠失症候群には、18p、18q、13q欠失症などがある。

高分解能染色法やFISH 、CGH法などの発達により、小さな欠失も見つけることが可能になった。 ⇒微小欠失症候群 微小欠失の生じる原因 ≪ABNORMALITES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Microdeletion(微小欠失) -1- Microdeletion(微小欠失) 高分解能染色法やFISH 、CGH法などの発達により、小さな欠失も見つけることが可能になった。        ⇒微小欠失症候群 微小欠失の生じる原因 low-copy repeats(低反復配列)に挟まれた 染色体領域で、不均等な乗り換えが誘導されるため。 微小欠失症候群の例 Prader-Willi syndrome(プラダー-ウィリー症候群) Angelman syndrome(アンジェルマン症候群) Williams syndrome(ウィリアムズ症候群)

Prader-Willi syndrome(プラダー-ウィリー症候群) Angelman syndrome(アンジェルマン症候群) ≪ABNORMALITES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Microdeletion (微小欠失) -2- 微小欠失症候群 Prader-Willi syndrome(プラダー-ウィリー症候群)   Angelman syndrome(アンジェルマン症候群) 15番染色体長腕の微小欠失による。 この欠失が…父親由来:プラダー-ウィリー症候群 母親由来:アンジェルマン症候群 15qの欠失領域中に含まれる遺伝子のいくつかが、 遺伝子刷り込みで選択的に不活化されている。  ⇒片親由来の染色体の欠失によって異常が現れる。 Williams syndrome (ウィリアムズ症候群) 症状 精神遅滞、大動脈弁上狭窄、多発性末梢肺動脈狭窄、特徴的顔貌、   高カルシウム血症など 第7番染色体長腕の欠失による。 ELN(エラスチンをコードする遺伝子)を失うと、大動脈弁上狭窄が生じる。 ELNとLIMK1(脳で発現するキナーゼをコードする遺伝子)を失うと、大動脈弁上狭窄と視覚認識障害を引き起こす。 さらに多くの遺伝子を巻き込むような欠失が起こると、他の症状が現れる。

隣接した複数の遺伝子の欠失によって起こる。 欠失した遺伝子の違いで、現れる異常の組み合わせが変化する。 隣接遺伝子症候群の例 ≪ABNORMALITES OF CHROMOSOME STRUCTURE≫ Microdeletion (微小欠失) -3- 隣接遺伝子症候群 隣接した複数の遺伝子の欠失によって起こる。 欠失した遺伝子の違いで、現れる異常の組み合わせが変化する。 隣接遺伝子症候群の例 Williams syndrome(ウィリアムズ症候群) WAGR症候群(11p欠損) ウィルムス腫瘍(腎芽腫)、無虹彩、尿生殖器異常、精神遅滞  がみられる。

CLINICAL COMMENTARY 6-3 DiGeorge Sequence, Velocardiofacial Syndrome, and Microdeletions of Chromosome 22 -1- DiGeorge sequence(ディジョージ症候群) 80~90%の患者で22q11.2 の欠失がみられる。 症状として、胸腺の構造的・機能的不全、円錐動脈管心奇形、副甲状腺機能低下 などがある。 Velocardiofacial syndrome/VCF(口蓋心顔面症候群) 80~100%の患者で22q11.2 の欠失がみられる。 症状には、口蓋裂を含む口蓋の異常、心奇形、学習・発達障害、T細胞の機能異常 などがある。  ⇒ DiGeorge sequenceとVCFの関連性

CLINICAL COMMENTARY 6-3 DiGeorge Sequence, Velocardiofacial Syndrome, and Microdeletions of Chromosome 22 -2- 22q11.2の微小欠失を持つ人のうち、 90%が3Mbの同じ領域を欠失 8%が上の領域の中の1.5Mbを欠失 (この2グループ間で症状の違いはみられない) この欠失領域内には、TBX1という遺伝子が位置している。 TBX1は、神経堤細胞の移動、顔の構成、胸腺・副甲状腺・心臓の発達に関わる転写因子をコードする。 マウスでTbx1を欠損させると、 DiGeorge Sequence (ディジョージ症候群)とVCFの症状の多くが現れる。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Uniparental Disomy (片親性ダイソミー) 2本ある染色体が、何らかの理由で2本とも父親か母親か どちらか片親から受け継いだものであるという異常。・・・Isodisomy 原因  ①両親の染色体不分離により、 片親からの2コピーを持つ配偶子と、 もう片親からのコピーを持たない 配偶子との受精。   ②片親での染色体不分離の結果生じた トリソミーの受胎から、余分な染色体 が失われる。 ③有糸分裂の失敗。 疾患: Prader-Willi syndrome(プラダーウィリー症候群)、 Angelman syndrome(アンジェルマン症候群)、 嚢胞性肺線維症、Russell-Silver syndrome(ラッセルシルヴァー症候群)、血友病Aなど。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Duplications (重複) 重複・・・遺伝物質の部分的トリソミー 相互転座を持つ親の子孫において起こりうる。 減数分裂での不均等乗り換えによっても起こりうる。 重複は、欠失に比べて深刻でない傾向がある。    遺伝物質喪失の方が遺伝物質過剰よりも深刻。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Ring Chromosomes (環状染色体) 環状染色体・・・染色体の両端で欠失がおこり、残った           染色体の両端が融合したもの。 環状染色体をもつ女性の核型  46,X,r(X) 環状染色体がセントロメアをもつならば 細胞分裂を行えるが、 たいてい失われ、モノソミーとなる。    環状染色体のモザイク現象が見られる。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Inversions (逆位) 逆位・・・染色体の2ヶ所で切断がおこり、その内側の染色体の 断片が元の場所に逆転して再結合したもの。 ABCDEFG ABEDCFG 逆位部分にセントロメアを含む・・・腕間逆位 逆位部分にセントロメアを含まない・・・腕内逆位

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Inversions (逆位) 逆位は構造的な再配列によりバランスをとっている。    逆位のキャリアーでは滅多に病気は起こらない。 しかし、逆位が減数分裂に影響を及ぼすことにより、逆位キャリアーの 子に染色体異常が生じることがある。 理由  染色体は、減数分裂前期の間はきちんとした順序で並んでいることが必要。  逆位のある染色体は、正常な染色体と対応して並ぶために輪を形成する。  輪における乗り換えにより、娘細胞の染色体に重複や欠失が生じることがある。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Inversions (逆位) 逆位をもつ染色体が欠失や重複を 形成する。 組み換え染色体8症候群  8番染色体に腕間逆位のある人の  子孫の5%     8q遠位部に欠失や重複がある。

《ABNORMALITIES OF CHROMOSOME STRUCTURE》 Isochromosomes (同腕染色体) 同腕染色体:一方の腕の2つのコピーを持ち、   もう一方の腕のコピーは持たない染色体。 ほとんどは誤った分裂により生じるが、 ロバートソン転座によっても形成される。  同腕染色体Xq:Turner syndrome(ターナー症候群) 同腕染色体18q:Edwards syndrome(エドワード症候群)

Study Questions ⑨ Q:核型が 46,XY,del(8)(p11)と 46,XY,dup(8)(p11) の人では、 どちらが重症であると予想されるか? A: 46,XY,del(8)(p11) ・・・8番染色体短腕11から末端までの欠失 46,XY,dup(8)(p11) ・・・8番染色体短腕11から末端までの重複 遺伝物質の欠失のほうが重複よりも深刻な結果を   もたらすことが多いので、 46,XY,del(8)(p11) のほうが 重症である。

《CHROMOSOME ABNORMALITIES AND CLINICAL PHENOTYPES》 染色体異常と疾患 染色体異常症候群chromosome syndrome ・・・染色体の構造異常に伴う障害 (例) Edwards Syndrome(エドワード症候群) Patau Syndrome(パトー症候群) Tuner Syndrome(ターナー症候群) Down Syndrome(ダウン症候群)

《CHROMOSOME ABNORMALITIES AND CLINICAL PHENOTYPES》 染色体異常と疾患 染色体異常症候群の表現型   ・多様な形態異常   ・軽度の異常    ・色々な程度の発達遅延  一定のパターンを示す。  しかし、症候群の中でも相当な表現型の多様性がある。 臨床的特徴が染色体異常の可能性を示す時でも核型を調べる必要がある。 表現型の特徴 ほとんどの染色体異常(特に常染色体)は子供の発達遅延や老人の精神遅滞と関係 ほとんどの染色体異常症候群は顔面形態形成の変化と関係 常染色体異常症候群では成長遅延が共通して見られる ほとんどの常染色体異常で先天性奇形、特に先天的心疾患が高頻度で生じる

《CANCER CYTOGENETICS》 癌と細胞遺伝学 体細胞における染色体再編成 ヒトの重要な癌の原因となる ①慢性骨髄性白血病CML 9番染色体と22番染色体の相互転座 フィラデルフィア染色体の形成

《CANCER CYTOGENETICS》 癌と細胞遺伝学 1.9q上のABL(癌原遺伝子)が22qに移動 2.BCR/ABL融合遺伝子形成 3.チロシンキナーゼ活性増大 4.細胞増殖   造血細胞で悪性腫瘍が発生

《CANCER CYTOGENETICS》 癌と細胞遺伝学 ②バーキットリンパ腫 8番染色体と14番染色体の相互転座 1.8q24上のMYC遺伝子が14q32に移動                   免疫グロブリン重鎖の近く 2.免疫グロブリン付近の転写調節配列がMYC遺伝子を活性化 3.持続的にc‐mycが発現 4.細胞増殖 悪性腫瘍が発生

《CHROMOSOME INSTABILITY SYNDROMES》 染色体不安定症候群  ・・・DNA複製と修復の欠如により、染色体切断や    他の構造異常が高頻度に、自発または誘発される    一群のヒトの遺伝病。    癌のリスクの上昇と関係する。 (例)毛細血管拡張性運動失調症     Bloom syndrome(ブルーム症候群)     Fanconi anemia(ファンコニ貧血症)    色素性乾皮症 XP

Fanconi anemia(ファンコニ貧血症) 《CHROMOSOME INSTABILITY SYNDROMES》 染色体不安定症候群 Fanconi anemia(ファンコニ貧血症) 先天性再生不良性貧血(常染色体劣性遺伝子疾患) DNA架橋剤に暴露すると染色体切断頻度が上昇    DNA分子中の2個の塩基に結合(架橋構造)   損傷DNAの修復の欠如による   造血幹細胞がアポトーシスに陥りやすい Bloom syndrome(ブルーム症候群)  常染色体劣性遺伝子疾患 高頻度の体細胞姉妹染色分体交換 Sister chromatid exchange   DNA複製においてDNAを分離する酵素の異常による   高頻度に乗換えが起こる

Study Questions ⑩ Q:なぜ体細胞における転座が時々、癌につながるのか。 A:転座によって癌原遺伝子が活性化される部位に移動することによって、癌遺伝子となることがある。 また、逆に癌抑制遺伝子を抑制することによって癌につながる場合もある。