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2016/7/24 情報経済システム論 情報経済システム論:第2回 担当教員 黒田敏史 1. 2016/7/24 情報経済システム論 講義概要 初日:導入・マクロ的影響・ミクロ経済理 論 – イントロ – 情報通信技術と経済成長 – 市場メカニズム – 寡占市場の理論 – ネットワーク効果の理論 二日目:続・ミクロ経済理論・情報通信政.

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1 2016/7/24 情報経済システム論 情報経済システム論:第2回 担当教員 黒田敏史 1

2 2016/7/24 情報経済システム論 講義概要 初日:導入・マクロ的影響・ミクロ経済理 論 – イントロ – 情報通信技術と経済成長 – 市場メカニズム – 寡占市場の理論 – ネットワーク効果の理論 二日目:続・ミクロ経済理論・情報通信政 策・政策分析 三日目:構造推定アプローチによる戦略・ 政策シミュレーション 2

3 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 経済成長とは – 一国の経済の規模は、市場で取引された財に与 えられた付加価値の合計( GDP )で測られる – 各財の付加価値 付加価値=生産財価値-中間投入財価値 – 一国全体の合計 国内総生産=総生産財価値-総投入物価値 – 三面等価の法則 国内総生産=国内総支出=国内総所得 国内総所得=労働所得+資本所得 – 市場規模=財単価*財数量(=生産財価値)と は異なる概念である 3

4 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 GDP の意義と限界 – GDPを測ることで、我々が生み出した価値額 を量ることができる – 生み出された価値は、生産要素である労働と資 本への対価として支払われ、所得となる – 与件を一定にすれば、より多くの所得を得るこ とにより、より多くの選択肢の中から行動を選 択する事ができるようになる – GDPの成長とは、「我々が、昨日できなかっ たことが、今日は可能になる」事を意味する 4

5 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 GDP の意義と限界 – GDPは市場で取引されない価値を含まない 市場で取引されない価値:余暇・家事労働・贈与・ 交換など – 金額と主観的価値は一致しない 支出額の大小と、人間の満足・幸福・充足とは必ず しも一致しない – 付加価値が一体何に用いられたのかを反映しな い GDPは消費・投資・純輸出・政府支出の合計であ り、人々の今日の生活水準は消費と一部の政府支出 に依存する GDPは誰の所得か(分配)に留意しない 5

6 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 経済成長の源泉 –Acemoglu (2009) は経済成長率の差の決定根源 的要因を以下の4つに分類 – 1・運 与件が一定であっても、小さな不確実性や偶然に よって実現する状態が変化する事による差 – 2・地理 人々が生きる物理的、地理的、自然環境による制約 – 3・文化 個々人の行動の源泉になる信念、価値観、選好 – 4・制度 経済的インセンティブや技術・物的資本、人的資本 への投資インセンティブに影響を与える規制・法 律・政治 6

7 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 成長会計 – 経済成長を要因に分解する事を成長会計と呼ぶ 労働投入量・資本ストック・生産性 – 生産量と投入量の比を生産性と呼ぶ 生産性=生産量/投入量 → 生産量=投入量x生産性 – 変化率に置き換える 生産の伸び率(GDP成長率)=投入量の伸び率+生産性成 長率 – 投入量を労働と資本に分解する GDP成長率=労働成長率+資本成長率+生産性成長率 成長を労働・資本などの複数の生産物に分解した後に残った 生産性の伸びを、全要素生産性( TFP : Total Factor Productivity )と呼ぶ – 労働生産性 労働生産性=生産量/労働投入量 捕捉が容易なのでこちらが用いられる場合もある 労働生産性が高くなれば雇用者の賃金は高くなるが、雇用を 減らして外注するようにすれば会計上の労働生産性が増加す るため、あまり意味のある指標では無い 7

8 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 8 出典:経済産業研究所 JIP データベース 2011

9 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 生産性パラドックス –1980 年代以降、先進諸国で「膨大な IT 投資が行 われたにもかかわらず、生産性の上昇が統計的 に確認できない」ことが「ソロー・パラドクス (生産性パラドックス)」と呼ばれ、その原因 が議論されてきた 9

10 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 情報通信ストックと経済成長 –Roller and Waverman (2000) OECD21 ヶ国の 20 年間のデータを、 GDP ・電話普及率・ 通信インフラ投資・通信インフラストックの遷移の 4 変 数の同時方程式モデルを推定 情報通信インフラへの投資は成長率に正の有意な影響を 与えており、固定電話普及率 1% の上昇は、 0.034 %の経 済成長をもたらしている事を発見 電話普及率にはクリティカル・マスがあり、普及率が 40% を越えると、成長率への貢献は 0.07% と高くなる事 を発見 –Czernich, Falck, Kretschmer and Woessmann (2011) 1996 年から 2007 年の 25 ヶ国 OECD データを用いて分析を 行ったところ、 10% のブロードバンド普及率上昇は、経 済成長率を 0.9-1.5% 増加させることを発見 10

11 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 TFP の変化要因の分解 – 内部効果:各企業内で達成された企業の TFP 上昇 による産業全体の TFP が上昇する効果 – シェア効果:基準時点において TFP が高い企業が その後市場シェアを拡大させることによる TFP 上 昇の効果 – 共分散効果: TFP を伸ばした企業の市場シェアが より拡大することによる効果 シェア効果と共分散効果の和を存続企業間の資源再配分 効果と呼ぶ – 参入効果と退出効果:基準時点の産業平均生産性 より生産性の高い企業が参入したり、相対的に低 い企業が退出したりすることによる産業全体の TFP 上昇効果を表す 11

12 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 12 宮川・深尾 (2003) 「労働全体の寄与が低下しているだけでなく、労働力の再配分 効果が マイナスに働いて、 IT 資本の蓄積効果や TFP 上昇の寄与を相殺している。建設業 など生産性の低い業種で就業者シェアが増加。財政拡張の負の効果。」

13 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 13 出典: Fukao, Miyagawa, Mukai and Shinoda (2009)

14 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 14 出典: Fukao, Miyagawa, Mukai and Shinoda (2009)

15 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 クラウドと経済成長 –Etro (2009) クラウドコンピューティングによりインフラへの固 定投資をサービスの従量利用に置き換える事で、企 業の新規参入が促進され、競争が促進される事によ り経済成長率が高まる、という DSGE モデル(動学 的確率一般均衡モデル)を構築 EU の国々のデータによる分析結果、 GDP に与える 影響は短期的( 1 年)には 0.05% 、中期的( 5 年)に は 0.3% である事が明らかになった クラウドによる新規参入が促進される結果、卸売 り・小売り部門、次いで不動産部門での中小企業数 が増加する事が明らかになった。(イタリアで 8 万 1 千、スペインで 5 万 5 千、フランス 4 万 8 千、ドイツ 3 万 9 千、イギリス 3 万 5 千、ポーランド 3 万 2 千) 15

16 2016/7/24 情報経済システム論 情報通信と経済成長 参考文献 –Acemoglu, D. (2009). Introduction to Modern Economic Growth. Princeton and New York:. –Czernich, N., Falck, O., Kretschmer, T., & Woessmann, L. (2011). Broadband Infrastructure and Economic Growth. Economic Journal, 121(552), 505-532. –Etro, F. (2009). The Economic Impact of Cloud Computing on Business Creation, Employment and Output in Europe: An Application of the Endogenous Market Structures Approach to a GPT Innovation. Review Of Business And Economics, 54(2), 179-208. –Fukao, K., Miyagawa, T., Mukai, K., Shinoda, Y., & Tonogi, K. (2009). Intangible Investment in Japan: Measurement and Contribution to Economic Growth. Review Of Income And Wealth, 55(3), 717-736. –Roller, L., & Waverman, L. (2001). Telecommunications Infrastructure and Economic Development: A Simultaneous Approach. American Economic Review, 91(4), 909-923. 16


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