Journal Club 2015.5.19 東京ベイ浦安市川医療センター 後期研修医 吉野かえで BMJ 2014;348:g2197 Selective digestive or oropharyngeal decontamination and topical oropharyngeal chlorhexidine.

Presentation on theme: "Journal Club 2015.5.19 東京ベイ浦安市川医療センター 後期研修医 吉野かえで BMJ 2014;348:g2197 Selective digestive or oropharyngeal decontamination and topical oropharyngeal chlorhexidine."— Presentation transcript:

1 Journal Club 2015.5.19 東京ベイ浦安市川医療センター 後期研修医 吉野かえで BMJ 2014;348:g2197 Selective digestive or oropharyngeal decontamination and topical oropharyngeal chlorhexidine for prevention of death in general intensive care: systematic review and network meta-analysis

2 論文の背景 ICU 入室後, 中咽頭の細菌叢が変化 → 人工呼吸器関連肺炎, その他感染症, 死亡率増加 Am J Respir Crit Care Med 1997;156:1647-55. これらの合併症を減らす目的で, 予防的抗菌薬投与や消毒薬が試みられてきた

3 予防的抗菌薬投与 ①選択的消化管除菌 (SDD) selective digestive decontamination ①選択的中咽頭除菌 (SOD) Selective oropharyngeal decontamination 消毒薬 – 口腔内クロルヘキシジン (CHG)

4 局所 経静脈 中咽頭胃 選択的消化管除菌 selective digestive decontamination ； SDD ◯ ×× 選択的中咽頭除菌 Selective oropharyngeal decontamination; SOD ◯◯◯

5 局所 経静脈 中咽頭胃 選択的消化管除菌 selective digestive decontamination ； SDD ◯ ×× 選択的中咽頭除菌 Selective oropharyngeal decontamination; SOD ◯◯◯ 局所 – 非吸収性抗菌薬 （ポリミキシン, トブラマイシン, アムホテリシン） – 中咽頭：口腔ケア時に塗布（通常 4 回 / 日） – 胃：胃管 経静脈 – セフォタキシム

6 背景 選択的消化管除菌 (SDD) は 肺炎発生率 OR 0.28 (95%CI 0.20-0.38), 死亡率 OR 0.75 (95%CI 0.65-0.87) を低下させる Cochrane Database Syst Rev 2009;4:CD000022. 選択的中咽頭除菌 (SOD) は死亡率を低下させない BMJ 2007;334:889-93. クロルヘキシジン消毒により死亡率が上昇する Crit Care 2011;15:R115.

7 背景 選択的消化管除菌の有効性が示されて いるが, 臨床で用いられることは少ない。 人工呼吸器関連肺炎の予防として口腔内 クロルヘキシジン消毒が普及しているが, 死亡率上昇の可能性が示唆されている。

8 PICO P GICU に入室した成人患者 I ・ 選択的消化管除菌 ・選択的中咽頭除菌 ・クロルヘキシジン口腔内消毒 C 上記予防を行わない O 死亡率

9 目的 選択的消化管除菌 vs 選択的中咽頭除菌 選択的消化管除菌 vs クロルヘキシジン 選択的中咽頭除菌 vs クロルヘキシジン の死亡率についても同様に検討した

10 Method システマティックレビュー ペアワイズメタ分析 ネットワークメタ分析

11 方法 【検索内容】 ICU 患者 予防的抗菌薬もしくは消毒薬 死亡率 【使用したデータベース】 Medline Embase 1984-2012.12 Cochrane

12 方法 2005-2012 年のメタ分析, conference abstract, key journal についても検索 【 congress abstract 】 European Society for Intensive Care Medicine Society for Critical Care Medicine Symposium of Intensive Care and Emergency Medicine Chest 【 contents pages of the journals 】 Intensive Care Medicine Critical Care Medicine Chest Critical Care American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Journal of Hospital Infection Infection Control and Hospital Epidemiology

13 Inclusion criteria GICU に入院した成人患者を対象とした 無作為化比較試験 (RCT) placebo control, 盲検化についての 規 定なし

14 Inclusion criteria 定義 選択的消化管除菌群 – 非吸収性抗菌薬：中咽頭＋胃 – 経静脈的抗菌薬投与 選択的中咽頭除菌群 – 非吸収性抗菌薬：中咽頭のみ クロルヘキシジン群 – 中咽頭のクロルヘキシジン消毒 （濃度・形態は問わない） 対照群 – 通常ケアもしくはプラセボ

15 Exclusion criteria 小児, ICU 以外の患者 特殊な母集団（心臓手術・肝移植） 両群に局所の抗菌薬投与を受けている 対照群に経静脈的広域抗菌薬投与 中咽頭, 消化管除菌の区別なし 声門下投与単独

16 結果

17

18 GICU での成人患者を対象とした RCT について解析 SDD に関する RCT が 14 個 SOD に関する RCT が 3 個 SDD+SOD に関する RCT が 1 個 （最大規模） クロルヘキシジンに関する RCT が 11 個

19 選択的消化管除菌 (SDD) l ２ =13%, P=0.30

20 選択的中咽頭除菌 (SOD) l ２ =0%, P=0.80

21 クロルヘキシジン (CHG) l ２ =0%, P=0.59

22 結果（ペアワイズメタ分析） n （ trial) オッズ比 95%CI SDD 3,912 (15)0.73(0.64-0.84) SOD 2,058 ( 4)0.85(0.74-0.97) CHG 1,288 (11)1.25(1.05-1.50) SDD と SOD 死亡率低下 CHG 死亡率上昇

23 結果（ペアワイズメタ分析） trial オッズ比 95%CI SDD vs SOD 10.97(0.70-1.19) SDD と SOD では統計学的有意差なし

24 結果（ ネットワークメタ分析 ） オッズ比 95%CI SDD 0.7 ４ (0.63-0.86) SOD 0.82(0.62-1.02) CHG 1.23(0.99-1.45) SDD と SOD 死亡率低下 CHG 死亡率上昇

25 結果（ ネットワークメタ分析 ） オッズ比 95%CI SDD vs CHG 0.61(0.47-0.78) SOD vs CHG 0.67(0.48-0.91) SDD vs SOD 0.91(0.70-1.19) SDD と SOD CHG と比較し死亡率低下 SDD と SOD に統計学的有意差なし

26

27 Discussion ネットワークメタ分析による間接的な比 較により, 選択的消化管除菌・選択的中咽 頭除菌はクロルヘキシジンと比較し死亡 の予防に有用である。 クロルヘキシジンは広く使用されている が, 選択的消化管除菌と選択的中咽頭除菌の 有意差は明らかではない。

28 Discussion 過去のメタ分析と同様, 今回の大規模メタ 分析でも選択的消化管除菌が死亡率を減 らすことが示された。 結果はメタ分析・ネットワークメタ分析 のいずれでも一致していた。 また, 選択的中咽頭除菌もメタ分析で死亡 率を減らすことが示された。 クロルヘキシジンは死亡率を上昇させる 結果となった。

29 Limitation クロルヘキシジン 濃度 (0.12-2%), 投与回数 (1-4 回 ), 投与 期間 ( 最短 7 日 ) が異なる 元の RCT の大部分 (11/12) で死亡率が primary outcome ではない 死亡率について記載がないため今回のメタ分 析に組み入れていない RCT が１つ存在する

30 Limitation 選択的消化管除菌 大半が盲検化されていない 盲検化された RCT のうち, 隠蔽についても 触 れているものは１つしかない。 – ただし盲検化の有無が死亡率に与える影響は 少ないと判断。 ３つの RCT で感染症患者が除外されている。 抗菌薬のレジメンが異なる

31 Limitation 選択的消化管除菌 ICU 入室患者のうち何割がスタディーに 組 み込まれているかの記載がない。 選択的消化管 ICU 除菌, 選択的中咽頭除菌は ICU 内の菌の生態系を変化させうる。 → 全ての患者に除菌を行うかについては 考慮する必要がある。

32 Limitation 全体 挿管患者数（ 36%-100% ）, ICU 滞在日数にばらつきが ある。 対照群 治療内容の記載が乏しく, 治療内容にばらつきがある。 – 局所に過マンガン酸カリウムを使用しているなど。 潰瘍予防及び化学的口腔ケアを受けていない ことが多い。

33 まとめ 選択的消化管除菌, 選択的中咽頭除菌は 死亡率を低下させる。 口腔内クロルヘキシジン消毒は死亡率を 上昇させる。

34 私見 選択的消化管除菌, 選択的中咽頭除菌は 死亡率を下げるが, 治療対象に含まれてい ない感染症には無効であること, 耐性菌誘 導のリスクが懸念されることより, 実臨床 に応用するかはさらなる検討が必要であ る。 口腔内クロルヘキシジン消毒は行わない 方が良いようである。