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現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報社 1 第 6 章 多国籍企業と直接投資 グローバリゼーションを担う巨大企業群.

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1 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報社 1 第 6 章 多国籍企業と直接投資 グローバリゼーションを担う巨大企業群

2 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 2 6.1 直接投資と多国籍企業の現状 資本輸出 間接投資 直接投資 経営権の獲得ではなく,利子,株式の配当,キャピタルゲインと いった投資先からの収益を得ることを目的とする資本輸出。 グリーン・フィールド直接投資,既存企業の合併・買収( M & A ) によって,経営権に直接参加・支配することを目的とする資本輸 出。直接投資をつうじて国際事業活動を展開している主体が多国 籍企業。 2

3 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 3 多国籍企業の現状 多国籍企業の親会社は,本国以外に議決権株式 10% 以上を保有す る子会社や関係会社を所有・支配している企業 多国籍企業の定義 数値からみる現状 ① 親会社 7 万 9000 社 ,子会社,関連会社 79 万社 ② 2007 年時点で、直接投資残高約 15 兆ドル , 海外総資産 68. 7兆ドル ③ 雇用者 8000 万人以上 と世界経済において大きな存 在 3

4 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 4 4 ④ 海外子会社・関連会社の財・サービス輸出額は 5 兆 7000 億ド ル (世界の全輸出額の 3 分の 1 ) ⑤ 世界の GDP 約 54.6 兆ドル に対して多国籍企業の海外分が 約 6 兆ド ル ⑥ 7 万 9000 社の中でも トップ 100 社 が多国籍企業の 海外資産の 9.4%, 海外雇用の 12.3% を占めている

5 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 5 5 ①先進国中心の相互投資 (cross-investment) 多国籍企業の直接投資の特徴 多国籍企業による直接投資は投資国も受入国も先進国が中 心 ②産業集積地(クラスター, cluster )に資本 投下 目的:外部経済性の相互活用 取引費用を削減することによる立地優位性の獲得 ③様々な型の直接投資 産業別分布 → 鉱業の資源追求型直接投資 → 製造業の市場追求型直接投資と効率追求型直接投資 近年増加 → 戦略的資産追求型直接投資

6 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 6 6.2 多国籍企業と直接投資をとらえる理論パラダ イム a 直接投資と利子率理 論 利子率理論(間接投資の理論)で,直接投資や多国籍企業の活動の説明は可能 か? →否→否 理由:直接投資は特定産業に集中する傾向がある。利子率が問題ならば等しく 直接投資されるはず。利子率の異なる国間でクロス投資が行われている。 b なぜ直接投資が行われるの か なぜ( why )直接投資が行われるのか → ハイマー (S.Hymer) の議論 ① 進出企業が不利性( disadvantage )を相殺して余りある何らかの優位性 (advantage) を持っているから ② 直接投資による子会社支配は競争排除に利用 6

7 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 7 c どのような優位性があるの か どのような( which )優位性があるのか → 1. 技術的優位, 2. 規模の経済, 3. 優秀な経営者や企業家, 4. 原料独占 優位性には何らかの意味で独占という問題が絡んでいる d どこに直接投資が行われるの か どこに( where )直接投資が行われるのか → 立地論で説明できる。例えば労賃が安い,資金調達が容易,税制 上の優遇策が受けられる,インフラストラクチャーが整備されてい るなどの立地優位性を吟味しながら決定する(立地戦略論)。 7

8 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 8 e いつ直接投資が行われるの か いつ( when )直接投資が行われるのか → ヴァーノン (R.Vernon) とウェルズ・ジュニア (L.Wells,Jr.) のプロダクト・ライフ・サイク ル理論 図 6-1 プロダクト・ライフ・サイクルと国際貿易・投資 の変遷 サイクル第Ⅰ局面・・・アメリカ(先進国)の研究開発( R&D )がアメリカに過剰利 潤を生む。 サイクル第Ⅱ局面・・・技術がヨーロッパ(中進国)に伝播。これによって生じたア メリカ企業の競争相手にカウンター・アタックを浴びせるために,アメリカは,外国 に直接投資を行う。また,寡占産業にひとつの企業が進出すると次々と直接投資を行 う(バンド・ワゴン効果, follow-the-leader 効果)。原材料の需要企業の進出に伴い、 供給元の企業にも直接投資を行う。 サイクル第Ⅲ局面・・・技術情報の拡散と製品の成熟化・陳腐化によって,優位性が コストに依存するようになる。生産基地は生産コストの安い発展途上国へ移転する。 この段階では,市場は所得の向上と価格低下によって発展途上国にまで拡大する。 は輸出, は直接投資を 表す 8

9 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 9 f 多国籍企業はどのような戦略をとる のか 多国籍企業はどのような( how )戦略をとるのか →1976 年にバックレー( P.Buckley )とカッソン( M.Casson )が 内部化理論( internalization theory )を打ち立てて,解明に努めた。 輸出 → 輸出費用 [ 関税,マーケティング ] 技術提携(ライセンシング) → ライセンシング費用 [ 交渉, 監視 ] 直接投資 → 内部化費用 [ 資本コスト,内部化 ] どの形態も費用がかか る! 輸出,技術提携,直接投資それぞれの収益を予想し,競争排除による利益も 考慮に入れる。そして,それぞれ輸出費用,ライセンシング費用,内部化費 用を差し引き,利益の大小関係を比べることで3つの形態のうちどれかが選 択される。 9

10 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 10 g ダニングの「折衷理 論」 ダニングは多国籍企業の活動は 1 つの理論では説明できないの で諸理論を「折衷」した。 ・なぜ直接投資するのか? → 優位性の理論(所有優位, ownership advantage ) ・どこに投資するのか ? → 立地論(立地優位, location advantage ) ・輸出や技術提携が選択されないのはなぜか ? → 内部化理論(内部化優位, internalization advantage ) この 3 つの優位性を結びつけることで多国籍企業は利潤の極大 化を図ろうとする。 ダニングの折衷理論( eclectic theory ) 10

11 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 11 6.3 多国籍企業と国際会計基準の統一 合併買収の成果の評価をめぐって 従来の持分プーリング法から、パーチェス法へ 問題点 1.総資産が「水増し」された状態になる点 M&A の繰り返しにより貸借対照表の資産部分にのれん代が貯まる。総資産利潤率( ROA : return on assets )が下が り,結果的に「利潤の最大化」を図るのではなく「キャピタル・ゲインの最大化」を図ることになる。 2.時価主義そのものにはらまれる点 → 「予想」によって成り立っているので,「不確実性, uncertainty 」という悪雲がよぎれば,現在価値は計算不可能 になる。その結果、時価が成立しなくなり, M&A 市場や株式市場が麻痺してしまう可能性がある。 企業にとって「成績表」といえる損益計算書や貸借対照表の原則を定めたもの。 国際会計基準 米国会計基準 日本会計基準の 3 種類 会計基準とは? 持分プーリング法:のれん代を織り込んで貸借対照表に計 上 パーチェス法:時価主義( mark to market ) 11

12 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 12 表 6-1 直接投資と多国籍企業に関する基本統計 ( 注 ) 数値がカバーしている範囲,推計方法に関しては,出所の注記を参照のこ と。 ( 出所 )UNCTAD, World Investment Report,2008,p.10. 12

13 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 13 表 6-2 世界の 100 大多国籍企業 ( 出所 )UNCTAD, World Investment Report,2008,p.27. 13

14 現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報 社 14 表 6-3 産業別直接投資流入残高 ( 出所 )UNCTAD, World Investment Report,2008,p.207. 14


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