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先週の質問 「茶色い目の大きな犬を飼っている宇宙人」の 解釈は? 逐次通訳のノートとはどんなものですか? 通訳者になるための訓練とは?

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1 先週の質問 「茶色い目の大きな犬を飼っている宇宙人」の 解釈は? 逐次通訳のノートとはどんなものですか? 通訳者になるための訓練とは?
講義資料掲載サイトに解釈を掲載しました。 逐次通訳のノートとはどんなものですか? 通訳者になるための訓練とは? 次回の講義で通訳の技能訓練について紹介する 専門的な内容に関する調査の方法は? 11/30の第八回目の授業で扱うことにします。 11/30は休講の予定でしたが、30分遅く開始します。

2 発言の内容が理解できない時はどうしますか?
逐次通訳なら 話し手に質問する。かみ砕いて説明してもらえればほとんど問題なく通訳可能。それでも分からなければ話し手と聞き手に通訳者は内容が理解できないことを参与者に告げる。 同時通訳なら しばらく待って後続の情報から推測する  一緒に通訳をしているパートナーに助けてもらう 中立的で影響を与えない表現でとりあえずやり過ごす 訳さない とりあえず字面で訳しておく 発言者の意図が理解できないことを聞き手に伝える

3 知らない単語や俗語が出てきたらどうしますか?
そうならないように事前準備をする 通訳者の用語集については下記をご参照下さい。 それでも知らない単語が出てきたら、 前ページの方法にくわえ、 起点言語の発音のまま目標原語に取り込む 辞書をひく 俗語はなるべく対応する語を探すか、説明的に訳す 独断や偏見で勝手な創作をしないことが重要

4 質問:通訳と翻訳はかなり性質の違う仕事のようですが、両方できるのでしょうか?
向き不向きが分かれる仕事なので、どちらか一方しかしない人も多いようです。特に英語の場合は。 現実問題として、企業内では両方の能力を求められますし、フリーランスでも非英語通訳者のほとんどが通訳翻訳兼業で、さらに語学講師もしています。そうしなければ満足のいく収入を得ることができないからです。もし収入を問題にしないのであれば、片方だけを選ぶことができます。 実際の状況を見ると、通訳をやる人は翻訳もやるけれど、翻訳を専業にして通訳をやらない人が多いようです。つまり、翻訳者人口>通訳者人口。

5 二つの異なる言語体系に橋を架ける方法は?
大量の練習が基本。 常に両国語で何と言うかその違いを意識する。 同時通訳は二言語が重なって聞きにくい? イヤホンを通して聞くので特に聞きにくくはない もともと自分がまったく知らない言語は聞いていない 通訳の方法はどうやって選ぶのか? 話し合いの性質に応じて、主催者や会議請負会社が最も適切であると判断した方法を選ぶ 不適切な方法を用いてコミュニケーションが阻害されることはあり得る

6 メタ言語的使用においては訳さないことも必要
メタ言語的使用とはなんですか? 言語で言語について語るということ。 例えば、次の文を訳すことを考えてみましょう。 実際にあった話です。 「パンダのことを中国大陸では熊猫って言いますよね、でも台湾では猫熊って言うんです。だって、パンダは熊であって猫ではないでしょ? 熊猫じゃあ、猫じゃありませんか、熊なんだから猫熊が正しいはずですよ」 ここで「熊猫」と「猫熊」を全て「パンダ」と訳してしまったら何を言いたいのか訳が分からない。だから、 メタ言語的使用においては訳さないことも必要

7 通訳者は現場には何人くらいいるのですか?
半日以内の逐次通訳:一会場に一名 一日の逐次通訳:一会場に二名 半日までの同時通訳:一ブースに二名 一日の同時通訳:一ブースに三名 立食パーティーなど:会場の広さと出席人数に応じて 通訳ガイド:団体の人数に応じて(バス一台に一名) 司法通訳:一法廷に一名(通訳の正確さを検証するためのモニターがつくこともある)、一取り調べ室に一名 二国間外交:各国代表に各一名 VIP付き通訳:VIP一名に専属通訳者一名

8 通訳と翻訳ではどちらの需要が多い? また、需要の多い言語は?
通訳と翻訳ではどちらの需要が多い?  また、需要の多い言語は? 英語翻訳が圧倒的に多い。次が中国語。 同時通訳における情報の取捨選択が最も難しいのでは? 情報の取捨選択にはいろいろなレベルがある 主語、単数・複数形、時制など文法範疇にかかわる取捨選択は割合に問題なく、また特に意識せずに行っている 冗語(余計な言葉や同じ内容の繰り返し)を切り捨てることもさほど問題ない 最も難しいのは同時通訳で原発言の情報密度が高すぎる場合→追いつけないときはまとめて訳出する

9 通訳と共通語の問題 通訳者が用いる話し言葉は最大公約数の共通語 Sorry,「標準語」という呼び方は不適切でした
聞き手の誰にでも受け入れられることが基本 NHKのアナウンサーが話している言葉は実際には存在しない人工的な言語かもしれないが誰でも分かる 聞き手全員の出身地や居住地が限定できる場合は時には方言を取り入れることも効果的 アクセントによって意味が変わってしまう語 石段と医師団 アクセントの違いを聞き手が補正して理解することになると、 それだけ理解の反応速度が遅くなり聞いていて疲れる

10 通訳翻訳論第六回 http://www.geocities.jp/nagatasae/2004tuuyaku.htm
通訳の歴史と通訳研究の歩み

11 通訳の歴史 近代以前 職業としての通訳はいつ生まれたのか 日本における通訳の歴史 近現代における通訳の歴史 日本生産性本部の視察団派遣
世界の同時通訳の歴史 日本の同時通訳-アポロ宇宙船の月面着陸

12 近代以前の通訳の歴史 行為としての通訳は古代にさかのぼる 職業としての通訳の成立 異なる言語の境界線上にある地域での二言語併用
異民族間の通婚 職業としての通訳の成立 大航海時代(十五世紀末~十六世紀初) お茶、香辛料の貿易 コロンブスの新大陸発見(現地の子供を連れ帰り通訳に) 日本にもポルトガル商船(南蛮船)が渡来(オランダ通詞) 宗教の布教 宣教師の渡来

13 職業としての通訳の誕生 通訳の歴史はあまり研究されていない。 翻訳と異なり関連する文献が残らない。 通訳者自身による著作がほとんどない。
研究対象としても注目されることがなかった。 一方で通訳は最も歴史の古い職業と言われる。 バベルの塔の伝説以来か?

14 日本における通訳の歴史 中国との古来からの行き来 ポルトガルとの南蛮船貿易 17世紀初、長崎の出島 二カ国語を話す人材
長崎でのキリスト教布教(最初は黙認) 信者の増加→幕府は団結を恐れるようになる 16世紀末、バテレン追放令 鎖国時代に唯一海外に開かれた窓口「出島」 17世紀初、長崎の出島 オランダ、中国などとの往来 出島の商館 阿蘭陀通詞、唐通事の成立 他にタイ語、ベトナム語、インド地方言語の通訳も存在

15 近現代の通訳の歴史 日本では第二次世界大戦後に通訳の需要が飛躍的に伸びてきた 極東国際軍事裁判(東京裁判) 進駐軍との折衝
山崎豊子の『二つの祖国』:米軍将校となった日系人が極東軍事裁判で同時通訳のモニターを担当 進駐軍との折衝 アメリカ進駐軍のために通訳を行う人材が集められた アメリカ大使館勤務にあった西山千氏も 日本生産性本部の代表団派遣随行同時通訳者 村松増美 『私も英語が話せなかった』

16 日本生産性本部の視察団派遣 1957年、日本はアメリカの産業界視察のために代表団を派遣 日本国内で日英通訳を行なう人材を募集
通訳者はアメリカの国務省で通訳訓練を受けた 当時、日英両国語間では語順が違いすぎるため同時通訳は無理だとの主張 1951年ごろ、西山千氏が進駐軍でウィスパリング形式の同時通訳をしていた 生産性本部で通訳を行なった通訳者が帰国後に日本で初の通訳者養成学校を設立

17 世界の同時通訳の歴史 同時通訳の始まり 1926年、IBMが同時通訳装置を開発 1927年、ジュネーブの国連会議で初めての同時通訳
1928年から、旧ソ連においてコミンテルン(共産党国際組織)で利用 1935年、当時のレニングラードで開催した国際生理学会でパブロフの演説が英仏伊独語に同時通訳 1945年、ニュールンベルグ裁判、極東国際軍事裁判 現在国連では公用語である英語、フランス語、スペイン語、中国語、ロシア語、アラビア語の同時通訳

18 アポロ宇宙飛行の通訳 NHKで7号から17号まで四年間にわたって放送 米国で育った西山千氏が担当 最初は同時通訳は出演者だけに聞こえていた
その後、同時通訳者の声をそのまま放送 アポロ8号から通訳者が画面に出るように 視聴者から同時通訳をしている機械翻訳装置はどんなものかという問い合わせがあったため このアポロの同時通訳によって日本国中に通訳者の存在が知られることになった

19 通訳理論研究の概要 何が研究されているのか

20 通訳研究 同時通訳のモデル 解釈理論 処理プロセス 努力モデル 通訳研究の展望

21 同時通訳プロセスに関する研究 同時通訳ではいくつかのタスク(作業)が同時に行なわれている 複数の同時作業はいかにして可能なのか?
起点言語の理解と目標言語への転換と産出が常にオーバーラップ 目標言語の産出が起点言語の聴取に影響を及ぼす 複数の同時作業はいかにして可能なのか? 同時通訳を可能にするためにはどのような条件が必要なのか?

22 同時通訳を制約する要因 外部的要因 内部的要因 発言の速度 有意義の語彙の密度 発言者のアクセントやイントネーション ノイズ
資料や原稿の有無 内部的要因 通訳者の知識(言語・世界・状況・専門知識) 通訳者の通訳技能

23 通訳・翻訳の解釈理論 Seleskovitch & Lederer (1989/1995) 意味は言語とは独立に存在しているのか?
解釈理論(意味の理論) 1.言語的意味(meaning)の諸要素を言語外の知識と融合し、「意味」(Sense)を獲得する 2.「意味」が生じると同時にそれを非言語化する 3.「意味」を自発的に目標言語で表現する 言語的形態(起点言語の違い)は制約とならない 意味は言語とは独立に存在しているのか? 起点言語に依存しないことをどのように証明できるか?

24 同時通訳の情報処理モデル David Gerver(1976) フローチャートで同時通訳のプロセスを説明 記憶と注意の役割に注目
短期記憶→作動記憶→短期出力バッファ→出力                                                      ↑               長期記憶(語彙・文法)                受容・変換・構成 同時通訳者は正常な状態では注意力を複数のタスクにうまく分割して振り分けている 何らかの通訳阻害要因があると注意力がdecodingかencodingに集中し、入出力に影響を与える

25 Effort Model Daniel Gile(1989) 三つの非自動的な構成要素を想定 聴取と分析 記憶と検索 談話の生成
聴取と分析  記憶と検索  談話の生成  人間の処理能力にはある程度の容量限界があり、複数のタスクの合計が処理容量を超えない範囲内において同時通訳は可能であるが、いずれかの処理に注意力を大幅にさいてしまうと破綻する 聴取+記憶+生成=努力の合計<処理容量

26 通訳理論研究の展望 ブラックボックスである通訳の内部プロセスの仮説を作ることで様々な現象を説明
脳波、眼球運動、心拍、血圧といった通訳者の身体的負荷からの研究 通訳者の内言を報告することで問題解決に用いている方略を探る think aloud 通訳の入力と出力を用いて言語学的に研究 通訳者の介在するコミュニケーションの特徴 通訳者の社会的役割とは

27 今日のまとめ 通訳の歴史 通訳の研究 近代以前 職業としての通訳はいつ生まれたのか 日本における通訳の歴史 近現代における通訳の歴史
日本生産性本部の視察団派遣 世界の同時通訳の歴史 日本の同時通訳-アポロ宇宙船の月面着陸 通訳の研究 同時通訳モデル 研究の展望


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