肺結核の画像診断 ‐ABCから・・・・Zまで‐

Presentation on theme: "肺結核の画像診断 ‐ABCから・・・・Zまで‐"— Presentation transcript:

1 肺結核の画像診断 ‐ABCから・・・・Zまで‐
東邦大学　放射線科 佐藤雅史

2 肺結核症の問題点 結核を診れる医師と施設の減少 診断の遅れと誤診が目立つ 7年連続し罹患率は減少　2006年度 　　　　　集団感染が目立つ

3 結核診断の遅れと誤診 Patient’s delay & Doctor’s delay
発症から登録まで３ヶ月以上・・・２０％以上 初診から登録　1ヶ月以上・・・２５％ 　　　　　　　　　　　３ヵ月以上かかった・・・・７％ 　　これらの約半数が画像診断の誤診による！

4 63歳　女性　咳と痰　発熱（－） 10ヶ月間近医で投薬受けている． 一度も胸部写真撮影せず．

5 結核の感染は飛沫と空気感染による． 飛沫感染→３０%感染成立→３%発症

6 結核の病理と画像 一般細菌のように、菌体毒素により病巣が 形成されるのではなく､病巣は菌と生体との 免疫学的反応により生成される｡
　形成されるのではなく､病巣は菌と生体との 　免疫学的反応により生成される｡ 　→そのため画像所見も病変の進展も極めて複雑となる。 滲出性反応：主に組織球の集蔟からなり、 　　　　　乾酪壊死巣に進展する。(抗酸菌多数) 　　　　　　→空洞形成（穴ぼこ）・浸潤影 増殖性反応:類上皮細胞や多核巨細胞から 　　　　　なる肉芽腫形成(抗酸菌はまれ) 　　　　　　→粒状陰影（つぶつぶ）　

7 結核患者を極めて簡略化して３つに分類すると
1. 初感染結核→リンパ節腫大、胸水貯留 2．無症状検診発見群→肺尖の淡い浸潤影 3．有症状受診群（咳嗽･喀痰､発熱､寝汗､体重減少など） 　　　　　　　　　　→空洞伴う肺野陰影・粟粒陰影　　　　　　　　

8 初感染結核の画像 リンパ節結核（小児結核） 胸膜炎（胸水貯留） 粟粒結核 　これらの診断は比較的容易と思われる｡　

9 7歳　男児　ツ反強陽性 結核患者と接触歴あり リンパ節結核

10 ADA 高値 胸水貯留

11 75歳　男性 アルツハイマー病 某病院で原因不明の 高熱で入院．閉院に 伴い紹介入院となる． 粟粒結核 胃液からガフキー3号

12 肺結核画像診断のABC・・

13 肺結核の診断は難しい? 一般的に呼吸器疾患の画像診断は難しい! →病気の種類が多い． 完璧な結核の診断は大変に難しい．
　　→病気の種類が多い． 完璧な結核の診断は大変に難しい． →でも排菌している感染源となるような 　　開放性結核の診断は決して難しくない!

14 ホントに結核の診断は易しいの？! 呼吸器専門医にとって、完璧な診断は しばしば困難． 一般医にとっては容易 特に感染源となる排菌患者の診断は
　呼吸器専門医にとって、完璧な診断は 　　しばしば困難． 　一般医にとっては容易 　　特に感染源となる排菌患者の診断は 　　非常に簡単→喀痰検査（PCR法）！ 　　画像のポイントはたったの3つだけ!

15 やさしい結核の胸部画像所見 3つのポイント!! １. 上肺野とくに肺尖部の陰影 浸潤・結節 ２. 空洞性陰影（穴ぼこ）=排菌患者 !
１.　上肺野とくに肺尖部の陰影　浸潤・結節 ２.　空洞性陰影（穴ぼこ）=排菌患者 ! ３.　胸部CT：空洞と粒状影つぶつぶを探せ !!

16 １.上肺野とくに肺尖部の淡い影！ 多くは無症状 検診などで偶然に発見される 排菌症例は少ない

17 肺尖部の淡い影 蕁麻疹で皮膚科に入院時の胸部単純写真

18 ６３歳男性 吐血? 救急外来 胃液からガフキー4号

19 2．空洞形成病変（穴ぼこ） 開放性結核診断の遅れ
2．空洞形成病変（穴ぼこ） 　開放性結核診断の遅れ 空洞性病変の見落とし・見過ごしが結核診療の最大の臨床的問題点である． 画像から結核の可能性を否定することは出来ない． →空洞みたら喀痰検査を忘れるべからず。 日本の200床以上の病院で、年平均2名の開放性結核を気付かず入院させてしまう!! コメディカルスタッフ含めた病院全体の意識改革．

20 検診で異常陰影 技師長 「Dｒ.Sato！この写真TB､大丈夫ですかネ?」 Dr．Sato 「Whu~~？内科外来に電話した方が良いね！」
内科で喀痰検査　ガフキー4号

21 28歳 女性 子供と風邪で某小児科医院受診中!! 「先生!! 子供の風邪は治っても、私はちっともよくならない！
28歳　女性　子供と風邪で某小児科医院受診中!! 「先生!!　子供の風邪は治っても、私はちっともよくならない！ レントゲン写真撮らなくてもいいんですか!!」 「先生！10日間も抗生剤飲んだのにちっとも良くならない!　病院に行かなくてよいの！?」 ガフキー6号

22 47歳 男性 会社の検診で胸部異常陰影指摘された． コントロールされていない糖尿病患者
入院翌日の喀痰でガフキー10号 47歳　男性 会社の検診で胸部異常陰影指摘された． コントロールされていない糖尿病患者 →放射線科レポート「開放性結核疑！」 →内科医：DM合併肺炎疑い入院となる（3人部屋！）

23 ８０歳　女性　肺炎で入院　３週間抗生剤投与 ガフキー5号

24 大きな穴ぼこ!! 3ｶ月前から風邪が治らないので近医受診． 胸部撮影後、放射線科に紹介となる． ガフキー８号

25 高齢の糖尿病患者→難治性肺炎？入院中

26 胃液から結核菌証明！

27 増殖性病巣(つぶつぶ)を探せ！ 乾酪壊死巣(穴ぼこ)を見落とすな！
3．CTで穴ぼことつぶつぶを探せ 増殖性病巣(つぶつぶ)を探せ！ 乾酪壊死巣(穴ぼこ)を見落とすな！

28 つぶつぶの重要性 67歳　男性 呼吸困難と微熱 内科外来受診 “Ｄr.Sato何でしょう？”

29 びまん性すりガラス陰影 →PC肺炎！ つぶつぶあり!! ？

30 緊急で! HIVと喀痰か胃液のガフキーをチェックして！ 血清HIV強陽性 ガフキー2号 診断：PC肺炎と結核!

31 AIDS患者　見直すと単純でもつぶつぶあり！

32 つぶつぶを探せ！ 1.粟粒陰影 2.tree-in-bud 芽吹いた樹の枝 3.小葉内小粒状陰影 4.細葉性散布性病変
つぶつぶにもいくつかののパターンがある． 　　　　1.粟粒陰影 　　　　2.tree-in-bud　芽吹いた樹の枝 　　　　3.小葉内小粒状陰影 　　　　4.細葉性散布性病変

33 1.粟粒陰影:粟粒結核 全肺野にランダム分布

34 2.tree-in-bud appearance

35 “tree-in-bud” appearance
最も特異的な 抗酸菌の画像所見 “tree-in-bud” appearance

36 3.小葉内小粒状陰影

37 小葉内小粒状陰影 つぶつぶ

38 結核の画像所見は何でもありだけど 　　　　　　　　　　最も大切なことは・・・！ 「穴ぼこ」と「つぶつぶ」！

39 結核の見逃しを防ぐには？ 　ケシの実あんぱん！ つぶつぶと穴ぼこを忘れずに！

40 見たこともない奇妙な画像 の症例と!?電話あり。 主訴：咳嗽、微熱 体重減少、糖尿病患者 患者がCT持参して来院！

41 喀痰検査未施行!! 喀痰：ガフキー10号 結核性肺炎(乾酪性) 舌区コンソリデーション （滲出病巣） 大きな穴ぼこ(乾酪病巣）
　　　　　　　　（滲出病巣） 大きな穴ぼこ(乾酪病巣） 喀痰：ガフキー10号 結核性肺炎(乾酪性) 気道撒布（増殖性病巣） 　　　　　　　　つぶつぶ

42 難しい肺結核画像診断 ・・・XYZ． 気管支結核 軽微な画像所見・正常の時も！ occult TB(単純写真は正常）もある！ 下肺野の肺結核
気管支結核　軽微な画像所見・正常の時も！ occult TB(単純写真は正常）もある！ 下肺野の肺結核 先入観による誤診 非結核性抗酸菌症との鑑別診断

43 結核病変による気道狭窄を来し喘鳴を主訴とすると喘息と診断されてしまう恐れあり．肺野の結核病巣は軽度か時にないこともある．
気管支結核 結核病変による気道狭窄を来し喘鳴を主訴とすると喘息と診断されてしまう恐れあり．肺野の結核病巣は軽度か時にないこともある．

44 喘鳴あり半年前から内科外来で 喘息と診断され加療中。 咳と一緒に気管軟骨が出た!!

45 喀痰ガフキー3号 82歳　女性　咳

46 occult TB ‐CTのみで病変描出可能な症例‐
胸部単純写真正常の肺結核も 　　　　　　　　　　決してまれではない!!

47 息子が開放性結核で入院中

48 血痰が少量出た！ 培養にて結核菌陽性

49 57歳　男性　検診異常陰影　無症状

50 つぶつぶと穴ぼこ 喀痰でガフキー3号

51 下肺野優位の肺結核 画像から結核を疑うのは困難 !

52 気管支鏡にて 左B8入口部に気管支結核 42歳　女性　人間ドック受診時

53 小さな穴ぼこ 糖尿病患者:微熱と咳 胃液から結核菌証明される。

54 先入観による結核の誤診 肺癌を強く疑って、喀痰抗酸菌検査の忘れ． 一度の喀痰検査で結核を否定してしまう． 臨床情報にだまされてしまう．
症状が比較的軽いため胸部写真を撮影しない．

55 77歳　女性　2ヶ月続く咳と痰 肺癌を強く疑われ放科紹介 ガフキー4号

56 呼吸不全＋気胸 38歳　男性　ホームレス 路上で意識不明　救急車搬送入院 ガフキー10号!!

57 Mycobacterium avium Mycobacterium kansasii
非結核性抗酸菌症との鑑別 Mycobacterium avium Mycobacterium kansasii

58

59 喀痰ガフキー8号

60

61 70歳　女性　検診で胸部異常陰影　ツ反:強陽性 微熱あり　1年で４kg体重減少

62 その後徐々に増悪 ２年後の胸部写真 6ｶ月抗結核剤3剤で治療後

63 avium陽性 非結核性抗酸菌or薬剤耐性菌疑い気管支鏡施行

64 HRCTからも結核と鑑別することは出来ない!

65 まとめ 結核診療の最大の問題点は､結核患者の減少のｽﾋﾟｰﾄﾞを上まわる速さで結核診療出来る医者が減少してしまった点にある．
異常所見を見たら常に結核を疑う！ 胸部写真正常でも結核は否定できない． 画像所見から結核は否定できない． 常に肺野の「つぶつぶ」を探し、「空洞病変：穴ぼこ」を落とさない！

66 結核の見逃しを防ぐには？ つぶつぶと穴ぼこを忘れずに！