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調達物流における荷主在庫を考慮した定期船輸送サービスの検討
海洋科学技術研究科 海運ロジスティクス専攻 鶴田・黒川研究室 川口 義弘
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発表の流れ 研究の背景・必要性 研究の目的 モデル・パラメータと保管単価 モデルの基本的な傾向 結果・考察 結論・今後の研究
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研究の背景・必要性
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背景概略 定期船業界は激しい競争状態にあり、各社コスト削減などによって生き残りを図っている。
コスト削減による競争は業界全体の利益にはならないので定期船船社はコスト削減に因らない競争力をつけるために荷主視点の輸送サービスを行う必要がある。
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船社の置かれている状況 厳しいコスト競争 1984年の米国海事法発効以降の定期船業界の競争状態 各船社の自社努力によるコスト削減、運賃の下落
アライアンスの形成やM&Aによる更なるコスト削減と競争の激化 厳しいコスト競争
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物流業界の動き 海運業界も変わらなければならない 近年の「物流」から「ロジスティクス」への転換 →輸送サービスの質が重視されてきている
→輸送サービスの質が重視されてきている …JIT、時間指定配送、etc. →事業内容が、単純輸送から3PLやSCMへ 変わってきている。行政も後押し。 海運業界も変わらなければならない
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荷主と保管費 保管費に注目することが重要 部分最適から全体最適への荷主の意識の移行 物流コスト削減策として「在庫量の削減」を重要視
船舶の大型化傾向に伴い、大量の在庫を抱える(=大きな保管費を計上する)荷主が登場することが予想される。 保管費に注目することが重要
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船社の向かうべき方向 船社が荷主に対して、保管費を考慮した輸送サービスを行う。
荷主の利益に繋がる輸送サービスを行うことで船社は荷主に選ばれ、コスト削減以外の競争力を持つ。
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研究の目的
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研究の目的 船社が荷主の保管費を考慮し、かつ荷主利益を最大にするような輸送サービスをしたときに、船社の経営資源の投入方法をどう変化させるべきなのかを探りたい。 経営資源: 船社が経営を行うときにツールとする もの。「船型」「船速」「投入隻数」 輸送サービス: 経営資源を用いて船社が行うサービス の内容。 運航間隔の増減による「多頻度輸送」、 「大量一括輸送」等。
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既存研究 在庫管理と輸送を同時に考えた費用最小化問題の解法を提案する研究。 計算方法の提案のみで、具体的な問題には取り組んでいない。
荷主側に立つとリードタイムの観点から、際限なき船型の大型化が必ずしも荷主のメリットにならない、と言う研究。 荷主の利益を見たアプローチはしていない。
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研究の目的 船社が荷主の保管費を考慮し、かつ荷主利益を最大にするような輸送サービスをしたときに、船社の経営資源の投入方法をどう変化させるべきなのかを探りたい。 経営資源: 船社が経営を行うときにツールとする もの。「船型」「船速」「隻数」 輸送サービス: 経営資源を用いて船社が行うサービス の内容。 運航間隔の増減による「多頻度輸送」、 「大量一括輸送」等。
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研究の目的 船社・荷主双方の収支構造のモデル化 保管費の算出方法の検討
モデルを使ったシミュレーションの結果による、荷主利益を考慮した船社の輸送サービスの提案
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モデル・パラメータと保管単価
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モデルのイメージ・条件 ・1社の船社が、1社の荷主の調達物流を請け負う。
販売店(1社の着荷主) 消費者 輸送 発港 着港 保管 ・1社の船社が、1社の荷主の調達物流を請け負う。 ・2港間において一定量の1種類の貨物を1年間輸送する。 ・陸上輸送については割愛する。 ・荷主は到着した商品について売れるまで保管をする。 モデルの方針 モデルは、船社が、自社の利益を確保した上で、保管も行う着荷主の利益を最大にするような輸送サービスを行うにはどのような経営資源の投下をしたらよいのかを探ることを目的としている。
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荷主モデルと船社モデルの接続 荷主 船社 荷主が支払う輸送費 =船社の受け取る収入 モデルの目的関数 輸送費 船社収入 輸送費 船社収入
荷主利益 荷主収入 荷主支出 モデルの目的関数 荷主 船社 船社利益 船社収入 船社支出 仕入費 輸送費 保管費 リスク費 販売価格 年間需要量 運航費 船費 輸送費 船社収入 荷主行動 荷主は、貨物(=商品)を販売することで利益を上げる一方、その商品の仕入費、船社に対して支払う輸送費、商品の保管費、リスクに対する費用、を経費として支払う。 船社行動 船社は、荷主に対して運賃を請求し、収入とする。運賃は簡単のため貨物量に対して一定の運賃が得られるように設定してある。 また船社は輸送需要(一定)に応えるために船舶を運航するので、船舶の諸運航費、港費等が経費としてかかる。 輸送費 船社収入 荷主が支払う輸送費 =船社の受け取る収入 商品単価と 年間需要量の積
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保管費: E3 一日平均需要量 運航間隔 保管費は手持在庫量に 比例する 保管単価 航海距離 投入隻数 船速
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リスク費: E4 手持在庫量 輸送中の在庫量 海上輸送中の リスク単価 保管中の リスク単価 海上輸送中・保管中の区別 無くかかるリスク単価
海難事故 火災・破損 需要変動の大きい商品
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荷主モデルと船社モデルの接続 荷主 船社 荷主が支払う輸送費 =船社の受け取る収入 モデルの目的関数 船社収入 輸送費 商品単価と
船社利益 船社収入 船社支出 荷主利益 荷主収入 荷主支出 販売価格 年間需要量 船社収入 輸送費 仕入費 輸送費 保管費 リスク費 運航費 船費 荷主行動 荷主は、貨物(=商品)を販売することで利益を上げる一方、その商品の仕入費、船社に対して支払う輸送費、商品の保管費、リスクに対する費用、を経費として支払う。 船社行動 船社は、荷主に対して運賃を請求し、収入とする。運賃は簡単のため貨物量に対して一定の運賃が得られるように設定してある。 また船社は輸送需要(一定)に応えるために船舶を運航するので、船舶の諸運航費、港費等が経費としてかかる。 荷主が支払う輸送費 =船社の受け取る収入 商品単価と 年間需要量の積 輸送費 船社収入
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運航費N と船費C 船員に関する費用 船価・船舶の減価償却費など 船舶そのものに関する費用 港費は船型に比例 燃料費は船型の2/3乗、
燃料費 港費 荷役費(一定) 船員数 投入隻数 航海距離 船型 船速 船型 燃料費は船型の2/3乗、 船速の2乗に比例 船価・船舶の減価償却費など 船舶そのものに関する費用 年間就航回数 港費は船型に比例 船型
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式一覧 目的関数 船社 荷主 利 益 収 入 支 出
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各パラメータの相互関係 n W v τ 船社の経営資源の 投下方法が荷主の 利益に関わってくる 投入隻数 船型 船速 運航間隔 互いに影響
荷主支出 商品原価 輸送費 保管費 リスク費 船社の経営資源の 投下方法が荷主の 利益に関わってくる n W v τ 投入隻数 船型 船速 運航間隔 互いに影響
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保管単価γの推計フロー γ = 38.52 (万円/(TEU・年)) γ = 0.97% × 470万 × 8.45 売上高保管費比率
保管費・荷主収入・年間需要量 の定義式から保管単価を定義 売上高保管費比率 を計算 商品原価を計算 年間棚卸資産回転数 を計算 販売価格 r を計算 γ = 0.97% × 470万 × 8.45 γ = (万円/(TEU・年))
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モデルの基本的な傾向
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モデルの設定 アジアー北米西岸航路6000マイルを想定。 リスク費については単価が不明のため算入しない。
船型 の変化に伴う様々な変化を観察。 ・各パラメータは船型の変化に伴い変化する設定
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基本的な傾向一覧 ・稼働率 ・輸送頻度・運航間隔と船型の関係 ・投入隻数と船型の関係 ・平均手持在庫量と船型の関係
・稼働率 ・輸送頻度・運航間隔と船型の関係 ・投入隻数と船型の関係 ・平均手持在庫量と船型の関係 ・平均手持在庫量と輸送頻度の関係 ・運賃と船型の関係 ・荷主利益と船型の関係
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稼働率 ・モデルでは隻数が小数で算出される。 ・実際の隻数は整数。 ・よって小数点以下を切り上げ →切り上げ幅は無駄な運航分。 e.g.
計算上1.5隻投入の場合… 2.0隻に切り上げるので、 稼働率: 1.5 / 2.0 = 0.75 ・モデルでは隻数が小数で算出される。 ・実際の隻数は整数。 ・よって小数点以下を切り上げ →切り上げ幅は無駄な運航分。 稼働率が1に近いとき、 切り上げ幅は小さく、1から遠いとき、切り上げ幅は大きい。
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運賃と船型 運賃単価は船型が 大きいほど安くなる 小型の船舶になると 急激に運賃単価が上昇 これまでの船社の大型化戦略が、
運賃面では正しいことがわかる 稼働率の影響も大きく受けている →効率的な運航の重要性
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荷主利益と船型 グラフの形状は上に凸 ↓ 保管費と運航費 の影響 最大値が存在 →ある条件の下で最適な船型や寄港頻度が存在する。
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結果・考察
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検討項目一覧 保管費の影響 保管単価と荷主利益の関係 燃料費の影響 輸送距離の影響 輸送距離と保管費の影響
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保管費の影響 船社は貨物の保管費の大小を考えることで、 荷主に対して、用いる船の大きさや寄港頻度の提案が出来る。 保管費小
→船型大・寄港頻度小 保管費大 →船型小・寄港頻度大 保管費の大きいとき、大型化は荷主利益を大幅に損ねる。 グラフの形状は上に凸 ↓ 保管費と運航費 の影響 船社は貨物の保管費の大小を考えることで、 荷主に対して、用いる船の大きさや寄港頻度の提案が出来る。
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保管単価と、荷主利益最大にする船型 保管単価小→船型大 保管単価大→船型小 保管単価に注目したとき、超大型船の用途は
かなり限られたものとなることがわかる。 また、広い範囲の貨物を扱うことが出来る、効率の良い船型が 存在しうることも指摘できる。
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燃料費の影響 燃料費小 →船型小・寄港頻度大 燃料費大 →船型大・寄港頻度小 燃料費は船社の荷主に対する輸送サービスの
→船型小・寄港頻度大 燃料費大 →船型大・寄港頻度小 燃料費は船社の荷主に対する輸送サービスの 提案のファクターと成り得る。
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造船業者の立場で言えば、この結果より、優秀な小型船の設計を予めしておき、受注に応えることで他社に対し優位に立てる可能性がある。
輸送距離の影響 輸送距離小 →船型小・寄港頻度大 輸送距離大 →船型大・寄港頻度小 近年の日本メーカーのアジア進出にあわせたかたちで 船社の戦略を組むなら、小型船による多頻度輸送を 考慮した経営資源の増強が有効であることが指摘できる。 造船業者の立場で言えば、この結果より、優秀な小型船の設計を予めしておき、受注に応えることで他社に対し優位に立てる可能性がある。 輸送距離によって船型に大きな違いが出る →船社あるいは荷主は輸送距離と船型の関係について 慎重に考える必要がある。
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輸送距離と保管費両方の影響 ・保管費と輸送距離の影響がそのまま出ている。 ・実際にシミュレーションをする場合はこのように
様々なファクターを同時に考える必要
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結論・今後の研究
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結論 船社と荷主の関係について、双方に影響を与えるようなモデルを構築することが出来た。基本的な傾向を見るかぎり現実的なモデルであると考えられる。 保管単価について、推計方法を提案することが出来た。
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結論 構築したモデルを用いたシミュレーションにより、船社は荷主の視点に立った経営資源投入および輸送サービスが可能であることが示された。具体的には以下が示された。
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結論 保管費の違いによって荷主に提案すべき輸送サービスの変化が見られる。
荷主の保管単価に注目すると、船社が所有すべき船舶の船型が推測できる。 燃料費は荷主に対する輸送サービス提案のファクターになりうる。
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結論 輸送距離の違いによって、荷主に対する輸送サービスの提供方法は大きく異なる。この結果を知ることは船社・荷主・更には造船業者にも有益である。
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今後の研究 モデルにリスク費が未導入のため、リスク費単価δの導出方法を確立し、導入することが考えられる。これによってより多様な荷物の輸送に対する考察ができるだろう。 より現実的なモデルにするために荷主または船社を複数にすることが考えられる。 また、モデルに柔軟性があるため、定期船および海運のみならずに陸運など様々な状況でシミュレーションを行うことが出来るであろう。
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ご清聴ありがとうございました
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大型化 本当に大型化しているのか? 「2005年までの大型化動向予測」アンケート(2003) 太平洋航路
「2005年までの大型化動向予測」アンケート(2003) 太平洋航路 60%の船社が8000TEU以上の大型船が一部使われる予測、と回答。 欧州航路 60%の船社が8000TEU以上の大型船が一部使われる予測、と回答。
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実際の式 運航費・船費
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実際の式 輸送時間 投入隻数
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船社のロジスティクスサービス 定航海運事業は社会的ニーズがあるにもかかわらず構造的に不採算。
船社の売上におけるロジスティクスサービスの規模の小ささ。 競争力強化がコスト削減のように、自社努力にとどまっている。 大手日本船社の売上高割合
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荷主の物流コスト削減策(JILS, 2004)
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既存研究詳細
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既存研究 定期船船社の航路変更等によってリードタイムの短縮を目指す研究。 あくまで船社単独で行う戦略を考えている。
在庫管理と輸送を同時に考えた費用最小化問題の解法を提案する研究。 計算方法の提案のみで、具体的な問題には取り組んでいない。 荷主側に立つとリードタイムの観点から、際限なき船型の大型化が必ずしも荷主のメリットにならない、と言う研究。 荷主の利益を見たアプローチはしていない。
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既存研究出典 1.航路の設計からのアプローチ 『太平洋定期船航路直行便のシミュレーションによる評価』 (田中大士ら 日本船舶海洋工学会,2006) 定期船船社の寄港地変更や航路変更によるリードタイムの短縮を目指している。 しかしあくまで船社単独で行う戦略を重点に考えている。
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既存研究出典 2.保管と輸送の同時アプローチ 『配送センター間の協力がある在庫・配送システムの統合的最適化』 (横山雅夫 日本経営工学会論文誌,1999) 在庫管理と輸送を同時に考えた費用最小化問題の解法を提案している。 計算方法の提案にとどまっており、具体的な問題には取り組んでいない。
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既存研究出典 3.大型化と荷主にかかるコストについての アプローチ
3.大型化と荷主にかかるコストについての アプローチ 『船舶諸要目の統計分析によるコンテナ船の特徴とその大型化に関する研究』 (福谷文江ら 関西造船協会論文集,2004) 荷主側に立つとリードタイムの観点から、際限なき船型の大型化が必ずしも荷主のメリットにならない。 荷主の利益を見たアプローチはしていない。
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基本的な傾向
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輸送頻度・運航間隔と船型 輸送頻度と船型は 反比例し、 運航間隔と船型は 比例する シミュレーションでは横軸に船型を取って結果を見ているが、
輸送頻度や運航間隔を横軸に取っているとも言える。
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投入隻数と船型 投入隻数は船型と 反比例する 船型が大きくなると1航海あたりの輸送量が多くなるので 投入隻数が船型に反比例して小さくなる。
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平均手持在庫量と船型 平均手持在庫量は 船型に比例する 大型船の導入は荷主の持つ在庫を多くする 原因となることが指摘できる
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モデル初期設定 アジアー北米西岸航路を想定。実際の平均船型は約4000TEU。 リスク費については単価が不明のため算入しなかった。
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保管単価の推計
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保管単価と、関連する指標 保管単価と、保管単価を算出するのに必要な指標について述べる。 商品原価: u 販売価格: r 保管単価: γ
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保管単価の推計フロー = 38.52 (万円/(TEU・年)) r = 約470万 円/TEU
売上高保管費比率を計算 保管費・荷主収入・年間需要量 の定義式から保管単価を定義 商品原価を計算 販売価格 r を計算 約26兆円 物流費5.09% 売上高 約740万 TEU 粗利益25.7% を加算 約350万 円/TEU 保管費19.3% r = 約470万 円/TEU 年間在庫回転数 =年間棚卸資産回転数 =8.45 回/年 γ = 0.97% × 470万 × 8.45 = (万円/(TEU・年))
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商品原価: u 25兆8272億5950万2千円 ≒ 3,492,000円/TEU 7,396,519 TEU 1TEUあたり商品原価
商品原価: u 日本の年間総コンテナ貨物輸出価格 (財務省貿易統計,2004) 25兆8272億5950万2千円 ≒ 3,492,000円/TEU 7,396,519 TEU 日本の年間総輸出コンテナ (国交省港湾統計,2004) 1TEUあたり商品原価
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販売価格: r r は販売価格なので、 商品原価 u = 3,492,000円/TEU に粗利益を加算する。
販売価格: r r は販売価格なので、 商品原価 u = 3,492,000円/TEU に粗利益を加算する。 日本政策投資銀行の産業別財務指標によると、2004年度の製造業における粗利益は25.7%。 よって、 r ≒ 4,700,000 円/TEU
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γの推計 保管費 荷主収入(売上高) 売上高対保管費比率 と定義しているので、 以上より
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売上高保管費比率 JILSの「2004年度物流コスト調査報告書」によると、2004年度の製造業の売上高物流コスト比率は5.09%
そのうち、保管費の占める割合は19.3%なので、売上高保管費比率は約0.97%。 保管費の範囲が不明瞭なところもあるが、売上高に対する保管費の比率が得られた。 売上高 物流費 保管費
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γの推計 保管単価 年間売上原価÷在庫量 年間棚卸資産回転数は、日本政策投資銀行の2004年連結決算ベース財務指標より、
8.45(回/年)とわかった。 年間売上原価÷在庫量 年間在庫回転数 =年間棚卸資産回転数
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γの推計 であったので、 γ = 0.97% × 470万 × 8.45 = (万円/(TEU・年)) γを推計することが出来た
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仕入費: E1 商品単価 年間需要量 一日平均需要量
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燃料費と大型化 全体で逓減傾向 船型の大きいとき、燃料費は燃料費増大の影響が小さくなる。 →船型の大型化の一つのメリットと言える。
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