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月はどっちに出ている 監督 / 崔洋一 坂井恵太 財津信 西山昌憲

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1 月はどっちに出ている 監督 / 崔洋一 坂井恵太 財津信 西山昌憲
タクシー狂躁曲 著者 / 梁石日 月はどっちに出ている 監督 / 崔洋一 坂井恵太 財津信 西山昌憲

2 あらすじ ●東京に住む在日朝鮮人でタクシー運転手を勤める姜忠男。忠男が働くタクシー会社には、個性あふれる運転手達がいた。
●ある日、忠男の母が経営するフィリピンパブに新しい娘コニーが  入ってきた。コニーへの熱烈なアタックの末彼女と同棲を始める。 ●金田の事業が失敗して会社が苦境に立ったり、忠男の母親の反対でコニーと別れたりすることにもなるが、最後はコニーとともにフィリピンへ行くことを約束する。

3 人物紹介1 姜忠男 本作の主人公である在日朝鮮人のタクシー運転手。特に目的もなく東京で独身生活を楽しんでいる。 英順
フィリピンパブを経営する忠男の母で在日1世。お金に対する執着心が強いと同時に祖国に対する想いも強い。 コニー 英順のパブで働くフィリピン人。気が強く、けったいな大阪弁を使う。忠男から猛烈なアタックを受ける。

4 人物紹介2 ホソ 昔はボクサーだったりしたこともあるらしい。忠男を殴った後、預けていた子供を連れ出し、オモニに会いたいと言って蒸発。朝鮮人は嫌いだが、忠さんは好きだぁ☆ 安保 金田タクシー期待の新人にして、迷子の達人。道に迷った末、富士五湖まで行ったこともある。

5 帰国事業 帰国事業とは、千里馬運動を掲げ、多数の労働者を必要とした北朝鮮政府と日本政府、そして、在日コリアンにとってそれぞれの思惑が一致 し行われた帰国運動である。 この事業は日本・北朝鮮赤十字会談の開催 から盛んになったとされている。

6 千里馬運動 朝鮮戦争で疲弊された北朝鮮の経済を押し上げた1950-60年代の大衆運動で、北朝鮮はこの時期を千里馬大高潮期と呼ぶ。
この運動は1956年12月に労働党全員会議で金日成主席が「千里馬を乗った気勢で走ろう」とのスローガンを提示したことが発端となり、経済だけでなく 社会・文化など社会全般に広がった。

7 映画と小説の比較1-1 映画では忠男の母が出てるが、小説では父が出てくる。性格は凶暴。
小説と映画のラストが異なり、小説ではタクシー会社が火事になって整備士の爺さんが逃げてしまうことで話が終わってしまうが、映画ではその後店を追い出されたコニーを忠男が迎えに行くというシーンで終わっている。

8 映画と小説の比較2-1 なぜか? 映画では、在日フィリピン人ホステスが出てくるが、小説ではまったく出てこない。
映画では、主に忠男とコニーを中心に、外からの視点で描いているが、小説では、タクシー運転手だったという著者の、中からの視点で描いている。 なぜか?

9 映画と小説の比較2-2 考えられる理由 小説 在日社会に対する日本社会の振る舞いへの批判と、自らを善なるものとしてきた在日社会への批判を描こうとしている 映画 小説のことに加え、今では在日コリアンが、他者の上に立っていることまでを描こうとしている

10 ところで、

11 あなたは在日フィリピン人の ことを知っていますか? これから少し、 在日コリアンと比べながら お話ししましょう

12 在日コリアンと在日フィリピン人の比較1-1 ~人数の比較~ 在日コリアン 613,791名 在日フィリピン人 185,237名
在日コリアン 613,791名 在日フィリピン人 185,237名 (2003年12月末日現在)

13 在日コリアンと在日フィリピン人の比較1-2

14 ちなみに、

15 在日コリアンと在日フィリピン人の比較1-2’

16 在日コリアンと在日フィリピン人の比較1-3

17 在日コリアンと在日フィリピン人の比較2-1 ~在日コリアン~ 貧しい人は貧しいが、そうでない人もいる 差別されてきた(今も)
・指紋押捺(2000年に廃止) ・就職差別 ・他 その存在が、日本社会でも知られている

18 在日コリアンと在日フィリピン人の比較2-2 ~在日フィリピン人~ 女性が多い 女性が多いゆえの問題がある ・不当に売春を強要される
・夫(日本人)からの暴力 ・他 その存在が、日本社会ではあまり知られていない

19 今と昔のタクシー運転手 昔はタクシーと言えば、乱暴運転というイメージも強かったが、最近では顧客の取り込みの為に色々な努力をしていて、かなりソフトなイメージもついてきている。 今も昔もタクシー運転手の地位はあまり高くなく、タクシー運転手だけで生活する場合、1日400~430キロの走行が必要とのことだ。 しかし最近では副業として働いている人が多い。給料は売上額の5~6割で昔と比べてあまり変化していない。 

20 この言葉の意味は!? 「月はどっちに出ている」の解釈1
映画では、安保さんが道に迷ってしまい、困ったあげくタクシー会社に電話をしたときの仙波さんの台詞である。 この言葉の意味は!?

21 「月はどっちに出ている」の解釈2   映画を見る限りでは、道に迷った安保さんに対するただの忠告のようにみえるが、夜の闇は、タクシー業界の不安定さ、さらには在日朝鮮人の未来の不明瞭さを暗示しており、その暗闇の中で光る月が、今まで在日という立場で様々な差別・苦労を強いられてきた人々の未来への光として描き出されているように感じた。

22 ホソの言葉の意味 「朝鮮人は嫌いだ、でも忠さんは好きだぁ」
「朝鮮人は嫌いだ」は、人から聞いた過去のイメージ。「でも忠さんは好きだぁ」は、自分で見た現実のイメージ。すなわち、過去の姿に捉われず、現実を見つめ、「今を生きよ」と、いうことを意味するのではないだろうか。

23 ホソが殴った理由 映画では、ホソが忠さんを殴るシーンがあるがこのシーンが意味するものは何か?
ホソ=日本社会、忠さん=在日社会を表し、今だに、日本社会のほうが力があるということを意味しているのではないだろうか。

24 感想1 小説では、日本社会や在日社会に対する批判が鋭く、読んでて非常に小気味よかった。しかし、映画ではその批判が薄くなっており、少々物足りなかった。けれども、 その分、他の在日外国人にまで目が及んでおり、そのような視点を持っている監督の力量に、とても驚いた。(財津)

25 感想2 映画、小説共に「その時代の在日外国人の見方」について描かれていたが、小説ではシリアスな展開で話が進み、少し重い感じがしたが、映画ではややコミカルで、柔らかい感じがした。しかし、自分はこの映画を「面白い作品」として捉えているわけではなく、「社会で生きていく厳しさ」というのは感じ、その中で懸命に働く人間の姿は在日外国人、日本人共に変わりはないと思いました。(坂井)

26 感想3 在日への低い待遇や差別、それに対し小説内での主人公はどこか無常観を漂わせ、諦めたような思想を持っているように感じた。しかし映画内での主人公はそれを茶化し、現実での生活そして今を第一と考えているような態度を見せていて、この違いがもっとも印象に残った。(西山)

27 参考文献

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