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特別講義信託法 樋口 範雄 2008年10月28日10時20分 22番教室 東京大学法学部信託法講義③
2008年10月28日10時20分 22番教室 東京大学法学部信託法講義③ 樋口 範雄 参照→
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目次 1 信託の効用 2 民事信託の例 3 商事信託の例
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現代における信託の利用 人はなぜ信託するのか=存在意義 (中世の存在意義を超えて) S → T 財産を信託する WHY?
(中世の存在意義を超えて) S → T 財産を信託する WHY? Bへの受益(利益供与) なぜ直接あげないのか?
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信託利用の理由 1 Bの財産管理能力なし・不足 →専門家の時代・社会的分業の手段 2 Bは未存在→財産処分能力の拡大
1 Bの財産管理能力なし・不足 →専門家の時代・社会的分業の手段 2 Bは未存在→財産処分能力の拡大 3 Bは複数で順序を付けたい →財産処分能力の拡大 4 Bは複数で利益の差別化 優先劣後 →受益権の複層化・条件付け 5 Bに与える利益を柔軟に (専門家の)裁量
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信託が可能にするもの 1 専門家の利用→専門家の時代・分業の時代 2 1つの所有権を複数に →受託者の所有権・受益者の所有権
1 専門家の利用→専門家の時代・分業の時代 2 1つの所有権を複数に →受託者の所有権・受益者の所有権 3 委託者の意思・支配権の拡大―時間・対象 4 受益権=自由自在な物権 →日本では債権説が通説 →物権法定主義 5 安全な信託財産 倒産隔離など 6 限られた限度での節税
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なぜアメリカ型の民事信託が 行われなかったか
信託法では遺言信託など明らかに民事信託を想定した規定が認められていたのに? 妨げる理由 1 民事法の不明確さ 例:遺言信託 受益者連続が許されるか 遺留分との関係・相続手続きとの関係 2 業法との関係→信託会社としての許可? 3 最大は税法 誰にどう税をかけるか 信託法改正でどのように変化したのか
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Ⅰ信託法試験問題法科大学院2006/9/5 1 信託と委任契約との違いについて説明しなさい。
1 信託と委任契約との違いについて説明しなさい。 2 わが国の信託について、従来の信託法は基本的に民事信託を想定しており、私法でありながら規制色が強いものだったといわれる。しかも、日本で行われてきた信託の主要なものはすべて商事信託であるのに、これにふさわしい法理論が欠落してきたともいわれる。 1)そこで、商事信託は民事信託といかに異なるかを説明しなさい。 2)さらに、信託を規制する信託業法と、私法としての信託法の役割のあり方の関連と区別について論じなさい。
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民事信託(Gift型) estate planning
アメリカでの利用法: Dukeminier & Johanson, Wills, Trusts and Estates 555 (6th ed , Aspen) 1 revocable trust 撤回可能信託 S→S=T 収益をSの生存中はSに 死亡した時点で、Sの子に元本を 目的=遺言代替方法 手段=自己信託 わが国での需要
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利用法 2 marital trust (marital deduction) 婚姻信託・典型的な家族信託の一例
婚姻信託・典型的な家族信託の一例 S→T 収益を配偶者Wの生存中はWに Wが死亡した時点でSの子に元本を 目的=相続税繰延 配偶者の生活・Sの前婚の子 専門家の管理 手段=信託譲渡・遺言信託 わが国での需要
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利用法 3 trust for incompetent person 障害者信託 S→T 収益を障害者である子Aに
S→T 収益を障害者である子Aに A死亡後はAの子孫に元本を 子孫がなければ別の子Bとその子孫 目的=障害者である子の生活 専門家の管理 手段=信託譲渡 わが国での需要
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利用法 4 trust for minor 未成年者のための信託 S→T or S=T 未成年者に毎年1万ドルまで贈与=無税
信託を設定し、毎年1万ドルの収益を未成年の子のために使用。21歳になった時点で、元本を子に引き渡し。 目的=節税 手段=自己信託・信託譲渡 わが国での需要
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利用法 5 dynasty trust 金持ち信託 S→T
S→T Sの子どもたちに生涯受益。子どもたちが死亡後は、孫たちに。孫たちが死亡した時点で曾孫へ元本を。 目的=相続税繰延、世代飛越税スキーム 家産の維持、専門家の利用、100年計画 手段=信託譲渡 永久もありうる わが国での需要
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利用法 6 discretionary trust 裁量信託 S→T 遺言信託設定
S→T 遺言信託設定 Tに裁量権。受益者Bをクラス化。他には、Bを特定するも、その間での配分に裁量。 目的=節税、受益者の債権者からの保護 事情変更に応じた柔軟性 手段=信託譲渡・遺言信託(生前信託もあり) わが国での需要
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利用法 7 自己信託による信託設定(株式) S=T GEの株式1000株を信託財産化。 配当をBに生涯の間配分。 手段=自己信託
7 自己信託による信託設定(株式) S=T GEの株式1000株を信託財産化。 配当をBに生涯の間配分。 手段=自己信託 株式の交付不要 書面も不要 ただし、立証の程度にclear and convincing proof を要求する州あり
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利用法 8 自己信託による信託設定(不動産) S=T 不動産を信託財産化。収益をSの生涯中はSへ。Sが死亡した時点で、Bに不動産を引き渡し。
8 自己信託による信託設定(不動産) S=T 不動産を信託財産化。収益をSの生涯中はSへ。Sが死亡した時点で、Bに不動産を引き渡し。 元本受益者の定めがないと無効。 目的=遺言代替方法。生前で。 手段=自己信託 わが国での需要
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信託法改正後 民事信託への妨げはどの程度解消されたか 1 民事法の不明確さ 例:受益者連続が許されるか 遺留分との関係・相続手続きとの関係
1 民事法の不明確さ 例:受益者連続が許されるか 遺留分との関係・相続手続きとの関係 2 業法との関係→信託会社としての許可? 3 最大は税法 誰にどう税をかけるか
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例題 1億円の現金と銀座のテナント・ビルを受託 受託者は何をするか? いかなる義務があるか? →アメリカ信託法ノートⅡ 12頁
受託者は何をするか? いかなる義務があるか? →アメリカ信託法ノートⅡ 12頁 1 このような信託設定の相談を受けた場合 2 受託するか否かの判断 3 受託したら何をすべきか
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商事信託とは何か 1)預金型商事信託―貸付信託など 2)運用型商事信託―指定金銭信託(ユニット型)など
3)転換型商事信託―資産流動化または証券化と呼ばれるスキーム 4)事業型商事信託―土地信託など
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預金型の例 貸付信託 問 これは本当に信託か? 信託とは何か? S → T (信託銀行) → B(=S)
預金型の例 貸付信託 S → T (信託銀行) → B(=S) 2年または5年の期間、金銭を預ける。 T(信託銀行)は預けられた資金を合同運用し、主として貸付または手形割引の方法により運用する 委託者S自身が受益者Bであり、自益信託の形をとり、証券化された受益権をもつ。 1)貸付信託法という特別法に基づく制度であること。 2)1つの信託約款に基づき、信託銀行が多数の投資家(委託者)と契約して、資金を集めるものであること。 3)資金の運用方法も法定されており、企業への融資に使われること。 4)受益権は証券化されたものの、受益権譲渡は一般的ではなく、委託者兼受益者は信託設定後、信託銀行に買い取りを請求する形で現金化を図ることができたこと。 5)元本補填特約など、預金と酷似する扱いになっていること。 問 これは本当に信託か? 信託とは何か?
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運用型の例 指定金銭信託(ユニット型) S → T (信託銀行) → B 委託者SはTに一定期間、金銭を信託する。
運用型の例 指定金銭信託(ユニット型) S → T (信託銀行) → B 委託者SはTに一定期間、金銭を信託する。 T(信託銀行)は預けられた資金を合同運用する。 委託者Sと受益者Bは異なることがありうるが、自益信託が多い。 1)実績配当型。予想配当率もなく、元本補填特約もない。信託銀行の運用次第で収益があがる。もちろん収益はすべて受益者に帰属。 2)貸付信託よりも運用方法の規制が緩やかで、株式・社債などの有価証券、公債等にも運用すること。フレキシブルな商品設計が可能とされ、信託期間、運用対象、それらの運用比率なども募集ファンド毎に設定されること。 3)約款上、委託者は受益者を変更することができるとあるので、自益信託に限らず他益信託も認められること。 4)約款上、受益権の譲渡・質入れは認められないとされていること。
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転換型の例 住宅ローン債権信託 S → T (信託銀行) → B 委託者Sは住宅ローン融資事業者でさまざまな住宅ローン債権をTに譲渡。
転換型の例 住宅ローン債権信託 S → T (信託銀行) → B 委託者Sは住宅ローン融資事業者でさまざまな住宅ローン債権をTに譲渡。 受益者Bは投資家で、受益権を購入する。購入代金によってSは資金調達を図る。 実際には、従来通り、Sが住宅ローン債権の管理を行う。 1)受託者である信託銀行Tの役割は限定的 2)受託者の自己執行義務の問題 3)受益者の、信託に関する情報を得る権利 4)受益権の複層化 5)自己信託の利用も可能 6)home equity loan backed securitiesというスキームとの異同
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事業型の例 土地信託 S → T (信託銀行) → B(=Sだが、変更もありうる) 委託者Sは所有する土地を信託財産として有効活用を図る。
事業型の例 土地信託 S → T (信託銀行) → B(=Sだが、変更もありうる) 委託者Sは所有する土地を信託財産として有効活用を図る。 受託者Tは建設資金借り入れ、ビルを建て、賃貸収入確保。 収益の中から、公租公課、管理費、信託報酬、借入金の返済などが支払われ、残りの収益は受益者に帰属する。 委託者Sが当初の受益者である自益信託の形をとるが受益権譲渡もできるから、他益信託にもなりうる。 信託期間終了後は、土地と建物は受益者に引き渡される。
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商事信託と民事信託の違い 1 区別を意識させてきた理由 民法典・商法典という発想 実際には商事信託ばかり 信託法の不備を商事性の強調で補う
1 区別を意識させてきた理由 民法典・商法典という発想 実際には商事信託ばかり 信託法の不備を商事性の強調で補う 英米では、このような区別はない あるとしても、個別的 e.g., pension trust, ERISA commercial trust family trust
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能見善久 信託法改正の基本理念3点 1 包括的な信託法
能見善久「総論(シンポジウム信託法改正の論点)」信託法研究30号3~21頁(2006年) 1 包括的な信託法 わが国の信託の利用が商事信託に偏ってきたことから、信託法自体に業法的な規制色が強い側面があった。だが、本来の信託は多様な利用が可能なものであり、民事信託と商事信託に共通なルールを明らかにすることが重要である。「包括的な信託法」第1のキャッチワード。 2 任意法規化と自由な活動促進 従来の信託法には強行法規的な規定が多く、信託を利用した自由な活動を阻害している面があった。今回の改正では、信託法も私法の一種であり、原則は任意法規であることを確認し、それによって多様な信託を作り出すことを可能にする。信託法の「任意法規化」と信託を利用した「自由な活動促進」がキャッチワード。 3 受益者保護の徹底 従来の信託法も受益者保護のための法であることが基本とされていたが、それでもいくつかの点で受益者保護に不十分な面が見られた。「受益者保護の徹底」、これが第3のキャッチワード。
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商事信託と民事信託の相違点 1)ギフト型の民事信託とディール型の商事信託 2)受益者多数の問題が生ずる商事信託
3)受託者・受益者の関係の特色 ① 信託目的と委託者の意思 ② 信託設定の方式 ③ 投資家としての受益者 ④ 受託者の報酬 ⑤ 受託者の信認義務の緩和と強化 ⑥ 信託の変更・終了
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