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東京大学公共政策大学院 吉澤 剛 2009年7月14日 大阪大学
テクノロジーアセスメントの歴史と展望 東京大学公共政策大学院 吉澤 剛 2009年7月14日 大阪大学
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テクノロジーアセスメント(TA)とは何か
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TAの周辺 システムマネジメント、システム分析、プロジェクトマネジメント、プロセスマネジメント、技術管理、QC、ZD、TQM、ISO、トータルシステム、価値観の多様化、未来学、断絶の時代、脱工業化社会、情報化社会、超技術、ソフトテクノロジー、OR、PPBS、政策分析、シンクタンク、 CELSS、SNM、トランジションマネジメント、プロジェクト評価、研究開発評価、CSR、ビジネスアセスメント、ソーシャルアセスメント、プロブレムアセスメント、環境アセスメント、統合評価、インパクト評価、リサーチ・オン・リサーチ、テクノロジートランスファー、ソーシャルアクセプタンス、パブリックエンゲージメント、サイエンスコミュニケーション、リスクアセスメント、技術フォーサイト、技術予測、デルファイ、産業構造転換、産業ビジョン、技術戦略、優先順位付け
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TAとは 従来の枠組みでは扱うことが困難な技術に対し、早い段階から将来のさまざまな社会的影響を独立不偏の立場から予見・評価することにより、新たな課題や対応の方向性を提示して、社会意思決定を支援していく活動 「TA手法」というものはない →手法よりプロセス重視
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TAの活動:二軸モデル 課題を 提示する 対応策を 提示する 何が課題かを 話し合う 対応策を 話し合う 専門家 課題設定重視 対応策重視
市民
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TAの機能要素 対話・協働 俯瞰 問題解決志向 構築性 状況依存性《今、ここで》 再帰性《自らの立場と役割を再確認し》
先見性《ありうる、あるべき姿に向かう》
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TA機関に必要な条件 独立性 アカウンタビリティ →信頼性 品質 コミュニケーション能力 実現可能性 適正規模 ネットワーク
組織的自律性、政治的中立性/超党派性 アカウンタビリティ →信頼性 品質 学際性、科学的信頼性、社会的 公平性、プロセスの公平性・透明性、議論の質 コミュニケーション能力 口頭・文書プレゼンテーション能力、 メディア対応(知名度)、モデレーター能力 実現可能性 適正規模 支出の抑制、政治的リスクの回避、柔軟性、即応性 ネットワーク 情報収集、現実認識、結果の普及、個人的信用、外部資源の活用 政策志向性 →権威 時宜性 政策決定者のニーズへの対応、 社会的なニュースへの対応 政策決定への リンク 組織的または制度的 Adapted from Bütschi et al. (2004), Suzuki (2008)
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欧米におけるTA活動の変遷
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米国OTAとそれ以降(1) 行政府に対する議会の技術評価、政策支援として、重要な役割を果たす。
報告書のみならず、OTAと議会スタッフ間のコミュニケーションによる情報共有・支援活動が重要 スタッフが中心となり調査研究を行うが、外部の助言委員会を活用。委員の選定・構成は慎重になされ、合宿などで委員同士の活発な議論が促進された 「TA手法」というのはないが、問題に応じたアプローチを取り、あらゆる利害関係者からの視点が公平に盛り込む手続きがあった 政党中立性を制度で担保:民主党主導であったが、理事会(TAB)は党・院のバランスが公平になるように構成 しかし、SDI構想に関する報告書に代表されるような党派間対立も顕在化 共和党議会になって、財政削減の対象として1995年に廃止 189名の常勤スタッフ(1995年度)、約2,200万ドル( 年平均) 復活の動きは常にある(予算復活すればよい)が、実現していない
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米国OTAとそれ以降(2) TA的活動は定着化しており、多種の機関で継続されている。
全米科学アカデミー(NAS)、議会調査局(CRS), 会計検査院(GAO)など多数の政府機関 大学、シンクタンク、NGOも多数存在 しかし、活動が断片化・多様化し、包括的TAが減少。独立性、中立性も担保できない状況 党派性の強いTA、主張型(advocacy)TA, etc.... 個別事例で制度化を担保:研究開発法でELSI研究を義務付け ヒトゲノム計画時には議会決定によりDOEやNIHのプロジェクト予算の3-5%をELSIに充当していた ナノテクのELSI予算は約4億円(2008) TA専門機関がないため、人材育成が難しい
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欧州における議会TA 70年代:国際レベルの議論の影響(OTAの設立,OECD会議)により,一部で議論が開始.しかし,米国とは社会法制度(特に,行政と議会の関係)のあり方が異なることや,OTAの目的や手法が不透明であったことに対する批判等により,policy transferは生じず,欧州でのTA活動は低調だった 1980年代:科学技術による社会や環境への影響が強まり,特に経済停滞・低雇用を脱する方策としての技術(のポジティブな側面)への期待から,欧州版TAの議論が開始→欧州・各国レベルで議会TA機関の設立が相次ぐ,EPTAのネットワークも形成される
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欧州TA機関に関する考察 OTAに比べて小規模(予算・スタッフ)だが、ネットワークを活用して効果的な活動を実施
意思決定の直接的な支援よりも,問題認識やアジェンダセッティングに比重がある TA機関によっては,市民など幅広い関係者とのコミュニケーションやネットワークを重視する新たなタイプも出現 時限的なプロジェクトとして開始→生き残りのために,OTAタイプの導入ではなく各国の状況に適応したTAが発展.このため,欧州TA機関は各国の社会的文化的制度的要因を反映した多様なバリエーションが存在する
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日本におけるTAの歴史
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1970年代TAの「停滞」に対するこれまでの見解
定義や概念が不明確 技術推進者からの反発 手法への依存と手法開発の困難さ 負担の大きさとメリットの不明確さ 開発者が自発的に行うTAの限界 評価制度が行政から独立していない 公害問題の沈静化 ≠ 経済団体・産業界の環境関連法整備への強い抵抗 石油ショックによる意欲低下 科技庁内での原子力局の計画局への圧力
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システムマネジメントとしてのTA システムマネジメント=意思決定を行う段階(システム分析) +実施段階(プロジェクトマネジメント)
産業予測特別調査団の訪米(1969):「システム調査団」 林雄二郎(1969)「技術革新の成果を社会の場で再評価、再調整すること」 →《超技術》としてのTA 八人委員会(1970)「技術の開発と適用に対し、くり返し点検と調整を行うことである」 →フラー/ボールディング的環境思想に基づく ラムソン(1970):予測/事実認識(perception)、評価、コントロール 経済同友会、技術同友会(1973):社会的責任として企業による自主的なTAを奨励 公害や環境問題の深刻化、石油価格の高騰 →経団連、技術同友会(1975):公的機関におけるTAを提言 民間企業では1974年頃をピークにTA活動が衰退
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評価・フォーサイトとしての方法論的展開 プロジェクト評価としてのTA 技術フォーサイトとしてのTA
経済同友会技術開発調査団(1970):国家的プロジェクトへの関心からNASAを訪問し、大学やアカデミーでTAについて討論を行う 科学技術白書( ):「代替手段の利害損失を評価」→「技術を社会全体にとって望ましい方向に制御」として、TAの結果によって既存政策が廃止されたり大きく見直されることのないように定義をプロジェクトベースの方向に 産業構造審議会中間報告:「国自らが実施する研究開発のテーマについては、開発着手前にアセスメントを行ない、問題がある場合には、テーマの不採択、計画の変更等を行なう」 技術フォーサイトとしてのTA 岸田純之助:ネットワーク的な技術予測=TA 産業予測特別調査団は《デルファイ》の実践法を学び、牧野昇が以後中心的に技術予測に携わる 通産省のビジョン行政は1970年代にTAの概念を吸収する形で発展 →工業技術院・定量的評価手法PRETEQSの開発(1971) →産業技術開発長期戦略(1977)
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1970年代の各省庁における取り組みの政治的背景
科技庁:縦割りと説明責任 計画局、研究調整局、振興局、原子力局、資源調査所による試験的TA(1973) 越川文雄計画局長:TAとは「意思決定者が意思決定過程の改善のために出資したいと思うもの」と「意思決定者が周囲の圧力にあって引き受けざるを得ないもの」(1975) 大澤弘之計画局長による議会TA機関の創設への働きかけ( ) 通産省:正当化と社会受容 1971年に新設された環境庁の活動を警戒し、他の省庁が取り組む前に自らの扱う技術に対してTAを実施し、妥当性を示そうとした 大島恵一「TAは社会による新しい技術の受容に関したプロセスである」 環境庁:環境アセスメントへの関心 化審法(1973)、「各種公共事業に係る環境保全対策について」(1972)、サンシャイン計画(1974)
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1980年代以降:国家技術戦略としてのTA 「むつ」をめぐる国会論戦(1984):巨大技術プロジェクトの研究開発における効率性の問題
科学技術会議による研究評価制度の調査研究( )・指針策定(1986)、各省で評価マニュアル策定(1989) 日米科学技術協力協定の改定をめぐる日米摩擦(1987) →国際技術戦略研究会( ):自民(中山太郎ら)+産官学(内田盛也、近藤次郎、岸田純之助ら) 技術同友会(1991)「テクノロジーと人間福祉」:近藤、岸田らが公的TA機関の設置や国際的TA活動に期待した提言を行う 科学技術と政策の会( ):松前達郎の呼びかけによる超党派議員連盟であり、国際技術戦略研究会に参加していた議員はこの会へ、有識者は渥美和彦らの設立した科学技術基本政策研究会へ 「科学技術評価会議」(仮称)創設法案の提出への動きは1995年1月、11月、97年4月、99年の少なくとも4回あったが、断念された ∵官僚の抵抗、OTAの廃止、科学技術基本法・基本計画の制定、 研究開発評価の大綱的指針の決定・改定、総合科学技術会議
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なぜ日本でTAは定着しなかったのか 概念 制度 手法
縦割り型行政は予測・評価活動を好み、手法的発展も手伝って予測・評価の制度化が進む 議会では国家的技術開発プロジェクトや国際技術戦略としてTAに関心を抱くが、官僚の抵抗が強く議会TA機関の設立は叶わず 手法 トータルシステムという理念に縛られた実証主義的方法論の追求により、結果としてその限界が露見 「多様な価値観」を扱うことができなかった
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日本におけるTAの制度化に向けて
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改めて・・・TAとは何か TAを本当に必要としている者はいない TAとは抑制的である TAは特定の問題に依存しない
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先進技術の社会的影響評価が必要となっている背景
第三期科学技術基本計画 第4章1「科学技術が及ぼす倫理的・法的・社会的課題への責任ある取組」 政治主導 国家技術戦略:海洋、宇宙など科学技術に関連する基本計画への貢献 二大政党制・ねじれ国会にあって政党としての科学技術戦略 最近の問題 医療:従来的TA制度と問題点 食品:安全性以外の経済・社会・倫理・文化的な側面に対する評価の不在 エネルギー:地球温暖化、太陽光発電、バイオマス燃料、コンビニ営業など ナノテク:多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のリスク
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TAの現代的意義と制度化の必要性(1) 多様な価値を調整する場の不在
評価や予測はリスクや不確実性を扱うが、そうしたリスクや不確実性の見方(フレーミング)そのものが人によって違う状況を扱えない 調整とは、独立な媒体によって多様な価値を公平に提示するものであり、審議会などのように意思決定者の提供する媒体による場において利害関係者の合意によって単一の価値を提示するものではない OTAの教訓:「誰に対しても何かを与えることが対立や批判を最小化する」 自律的・中立的組織として見なされているインテリジェンス機関がほとんどない 各アクターとのつながりやバランスが見えるように制度化することで自立性や中立性が外形的に保証される 科学技術ガバナンスの担い手であるアクターの多様性の確保 特定消費者、工場労働者、技術のユーザー企業なども含めた幅広い利害関係者を技術発展の早期から積極的に参画させることが、実質的・政治的・規範的に意思決定を有意なものにする
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TAの現代的意義と制度化の必要性(2) 時宜性と安定性によって短期的・長期的な社会的意義を確立できる
エネルギーや食糧、地球温暖化、医療福祉、生命倫理などの問題に対して長期的な視点を提供できる安定的組織・運営が求められている 一方で、時宜的で社会的にインパクトの大きな政策課題に対する活動の累積により、組織としてのプレゼンスと信頼性を獲得できる 欧米の議会TA機関を見ると、制度・活動・人材の質が安定するまでには十年かかっている 科学技術ガバナンスそのものに関するメタレベルの知的資源の確保 科学と政策に通じた人材育成、様々なアクターとのネットワーク作り・コミュニケーション能力の養成、TAの実践知の蓄積、海外TA機関との連携 これまでは評価・予測研究、政策研究などの学術的発展や知見の蓄積が促進されてこなかった 制度化されないと、これまでの日本における取り組みのようにTAという概念や活動が発散して曖昧になるおそれがある 「TAとはOTAがしていることである」 意思決定にかかる責任の所在の明確化 TA機関はせいぜい意思決定のための助言を与えるまで
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配慮すべきこと─主体の問題 クライアントは誰か? スポンサーは誰か?
議員への情報提供が最終的な目標となりうるが、議会内のインテリジェンス機能の不在により、安定的なチャネルの構築は当面難しい とりあえずの間(〜10年)各省庁にとって政策形成の参考となり、同時に国民が関心を持ちそうな情報をタイムリーに提供していくことが現実的か スポンサーは誰か? 科学技術基本計画内で一定の予算枠の確保に対する言及をしておき、政府機関・外郭団体(できれば複数の省庁機関)から安定的な資金の提供を受ける ただし事務局は政府外部に置き、スポンサーと実施者との緊張関係を保つ スポンサーとして議会や業界団体、企業、財団もありうるが厳しいか
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配慮すべきこと─主体の問題 運営主体は誰か? 実施主体は誰か?
TAテーマや実施主体の方向性を決める運営委員会(steering committee)の組織の仕方、設置場所 幅広い第三者からなる助言委員会(advisory committee)が運営委員会に対して定期的に助言をすると、組織全体としての信頼性・透明性が高まる 実施主体は誰か? 事務局の設置場所をどうするか:既存の制度・組織を利用するか、新しい制度・組織を設けるか 常勤スタッフ7〜8名程度で実務を行うことが現実的 その場合、産・官・学・シンクタンク・NGO+議会の公式・非公式ネットワークを強化して外部資源を活用し、調査結果の不偏性・正統性・有用性を担保 完全な外注は政治的ニーズに応えられないおそれ
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配慮すべきこと─実務的な問題 (プロジェクトベースである)評価・予測活動、審議会との明確な概念的・制度的区別をするが、方法論的には連携
議論を特定のプロジェクトの枠内に収めないような工夫 (特にシステム論的・定量的になりがちな)手法よりも、プロセスを重視すること アジェンダの設定・助言委員会の委員選定に時間をかける 国会図書館、審議会や総合科学技術会議などの提供する既存サービスとの差別化をしつつ、併存、あるいは積極的に議論の助けをする 議員の関心の喚起・能力向上の支援 宇宙・海洋・原子力など国家安全保障に関わる巨大プロジェクトの推進あるいは見直しに関心を持つ政治家のためのレトリックとしてTAを利用する 議員との非公式なコミュニケーションチャネルの確保が特に求められる 政府に対する配慮 TAは早期警報のイメージが強いので、経産省の巻き込みのためにTAはイノベーションに役立つことを十分示唆する必要がある 適当なタイミングで法制化がなされないと、制度的安定性が保証されないまま社会的・政治的インパクトが薄れるおそれがある
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議会機関型 強み 課題 過去 現在 熱意を持った有力な国会議員の存在 不安定な議会勢力 構造(政権交代)
行政府の抵抗、議員や大学研究者の低い関心 科学技術基本法とのバーター? 研究開発評価との混同 現在 不安定な議会勢力 構造(ねじれ国会) 政治主導の流れ、 各基本法の制定 主導的な国会議員をどう見つけるか 行政府に対してうまみを提示できるか
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行政機関型 強み 課題 過去 現在 予測、評価、環境・リスクアセスメントへの概念的・方法論的貢献
縦割りとトータルシステム的発想によるプロジェクト単位の実践 知識・人材の蓄積がない 政策への反映がない 現在 実現性が高い 政策過程との距離が近い 内閣府・基本計画の活用による政策評価的発想や縦割りからの脱却 知識・人材をどう蓄積していくか
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大学型 強み 課題 過去 現在 アカデミズムに埋没し、応用社会科学が発展せず キャリアパスやネットワークの乏しさ
スポンサーに過度に依存しない 知識・人材が蓄積できる 社会的な要請に応えられる運営体制・成果をどう築くか 現役の意思決定者との交流をどう図るか
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独立法人型 強み 課題 過去 現在 産業界の支持 切実性に欠ける 実現のための人材確保 財源の確保 政策過程との距離が近い
所轄官庁以外との関係をどう保つか 長期的な活動が保証されるか
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企業連携型 強み 課題 過去 現在 CSRへの取り組み エネルギー危機を超える長期的課題への関心 個々の企業の抵抗 財源の確保
技術の負の影響に対してどう構えるか 財源をどう安定的に確保するか
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TAの制度化に向けて 米国ではOTAなき現在、TA的活動は断片化しており、党派性が見られる
欧州では議会型が中心だが多様な制度化がなされており、小規模ながらネットワーク重視 日本でも省庁、議会においてTAの制度化が試みられてきたが、工学的手法の偏重、予測・評価活動への推移、多様な関与者の欠如、既存の断片的活動の慣性などにより断念 日本では分散型TA(パネル方式、エージェント方式、系統的レビュー方式、課題対応委託方式)が有望か
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分散型TAのあり方
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パネル方式 既存の各機関に在籍していてTAに理解のある者をそれぞれ集めて議論させることでTAを実施する。専門家円卓会議方式。TA機関はオーサーシップを取らないため負担は軽減されるが、参加者の選定にあたり透明性、正統性などを確保する必要がある。社会的な注目度が高くなるので、あまり対立的でないもの、将来を先見する必要が求められているものに適しているかもしれない 例としては宇宙開発政策に対して実施し、民間に宇宙開発政策の意義と利用価値を発見してもらうことが考えられる。また、交通政策もこれに類する
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エージェント方式 既存の各機関に在籍していてTAに理解のある者を協力者として専門的な知見の提供、情報収集にあたらせ、TA機関がそれを基にTAを実施し、その成果を返し、機関内外への普及、および意思決定への反映に努めさせる。トロイの木馬方式 原子力政策など、膠着がひどく、公式に動かしえない課題に対して、共同体内部の意識・雰囲気を新たな方向にもっていくために用いられうる。非公式TAとして、電子政府問題にも適用しうる
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課題対応委託方式 TA機関が課題に応じて、その分析を行うのに最も適した個人・組織に委託する。権威の保持のため、成果の妥当性・正統性の確保のため、TA機関はオーサーシップを取るべきであろう。一つの実践において複数課題を設定し、複数の主体に投げてまとめることがいいかもしれない。リスク問題のように隣接領域に関心が飛びやすいものに対して使える TA機関が表に立つことで、メディアの側も接触しやすい《専門家》として扱え、これが間接的にメタ政策システムを動かすことともなる。ただし、TA機関自身は技術的な知見を有する科学者・技術者など専門家として見られることに注意すべきである
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系統的レビュー方式 既存の各機関が公表しているデータや資料を取りまとめ、TA機関にて分析を行う。制度的慣性が強い、係る利害が大きいなどのため、政策改革が膠着状態に陥っており、TAに対して幅広く協力者を見つけることが困難な場合に適していると見られる。また、実践者の自律性が高く、公開データや資料が豊富かつ分散的である場合に有効である 典型例として医療政策が挙げられる。また、サイクル問題に対し新計画策定会議が取り組んだように、原子力政策にも適用しうるかもしれない
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分散型TAの類型 求心的 遠心的 アクター パネル方式 《責任の分散》 展望的 宇宙開発、交通 →メタ政策 エージェント方式
《フィールドの分散》 非公式的(黙示的) 原子力、電子政府 →累積的変化 インテリジェンス 系統的レビュー方式 《情報の分散》 非意図的 医療、(原子力) →自己変革 課題対応委託方式 《実践の分散》 喚起的 リスク →システム連携
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三世代モデル 米国 (1980s-) 欧州 (late 1990s-) 日本 (2010s?) 制度 議会型 議会型 (+政府) 分散型
アクター 専門家中心 市民参加 代表 アプローチ 早期警報 事前警戒 先見的/再帰的
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第3世代TAの例? “GoodGuide” http://www.goodguide.com/
UC Berkeleyの研究者が開発した、消費者むけ商品ガイドのウエブ “GoodGuide provides the world's largest and most reliable source of information on the health, environmental, and social impacts of the products in your home.”
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I2TAの活動
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I2TAの概要 RISTEX「科学技術と社会の相互作用」研究開発プログラムのプロジェクト(平成19~22年度)
参画者26名(リーダー:鈴木達治郎)、海外パネル4名(A. Rip、M. Rogers、C. Hill、D. Cope)、外部諮問委員2名(唐木英明、武部俊一) TA制度分析G(城山英明) TA手法構築G(鈴木達治郎) ナノテクTA実践G(竹村誠洋) ─医療・食品・エネルギー・CNT 広報・コミュニケーション活動の展開
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枠組み構築Gの守備範囲 TAプロセスは上記の三段階に分けられる。 枠組み構築グループでは、これら全てを扱う。 問題 設定 評価 アウトリーチ
(社会還元) TA開始 TA終了 TAプロセスは上記の三段階に分けられる。 枠組み構築グループでは、これら全てを扱う。 一般には、「評価」のみに関心が集まりがち。 全体を見渡していることがウリになる。
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TA実践グループの活動 医療(ナノメディシン)チーム 食品(フードナノテク)チーム
エネルギー(ナノグリーン)チーム プロジェクト当初からのテーマであり、昨年度から活動を本格化。来年半ばまでに一定の成果を公表 多層カーボンナノチューブチーム 特別テーマとして扱うために昨年度に新たに設置し、このたび成果を公表。今年度も活動継続
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医療(ナノメディシン) 主題:がん治療に向けたナノドラッグデリバリーシステム(DDS)
想定クライアント:東京大学ナノバイオ・インテグレーション拠点(CNBI) 方法論:臨床的証拠、トランスレーショナル・リサーチ、市民参加というテーマについて、幅広いステークホルダーが参加する円卓会議をそれぞれ開催 期待される成果:ナノDDS技術開発・導入のあり方について、誰もが賛同できる点と、ステークホルダー間で意見が異なる点を整理峻別した短い報告書を各円卓会議後に刊行
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医療チームの今年度計画 4月 事前アセスメント 報告書の準備 6月 報告書の刊行 第1回円卓会議の準備 7月 第1回円卓会議
第2回円卓会議の準備 報告書の準備・刊行 11月 第2回円卓会議 報告書の準備・刊行 第3回円卓会議の準備 2010年1月 第3回円卓会議 報告書の準備・刊行 3月 編纂報告書の刊行
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食品(フードナノテク) 主題:食品へのナノテク応用(特に表示について) 想定クライアント:食品安全委員会
方法論:フードナノテクについてのインベントリーの作成、パンフレットの作成、専門家や消費者へのインタビュー、ステークホルダー会合 期待される成果:社会が必要とするフードナノテクの利用の仕方を明確化し、フードナノテクの応用について提言する
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食品チームの今年度計画
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エネルギー(ナノグリーン) 主題:将来の省エネルギー住宅におけるナノテク
想定クライアント:建築環境・省エネルギー機構(IBEC)および環境・省エネ住宅政策を推進する議員連盟 方法論:Q方法論を適用した二段階ワークショップ(シーズとニーズのマッチング) 期待される成果:異なるユーザーの価値観に従った複数の将来省エネルギー住宅の描出と、社会的影響の検討
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エネルギーチームの今年度計画 2010 2009 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 シーズQワークショップ
住宅用(省エネ)ナノテク技術のリスト化 ニーズQワークショップ 将来の住宅に対する多様なニーズの把握 幅広い社会的影響の調査 報告書の執筆
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多層カーボンナノチューブ(MWCNT) 主題:多層カーボンナノチューブのリスク評価・管理をめぐる最近の動向
想定クライアント:総合科学技術会議 方法論:MWCNTの有害性に関する主要な論文のレビュー、三省審議会議事録などの文献分析、NGO、消費生活アナリスト、産業界へのインタビュー 成果:TA Note 01の刊行、発送 今年度の展開:海外カウンターパートとの連携、国際WSの開催、短めのTA Note 02の刊行
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I2TAは制度か I2TAにおける習慣的な行為とは何か I2TAは自らと外部によって類型化されるような活動をしているか
I2TAの現在の活動と目指すTA機関・制度は連続しているのか否か 連続しているのであれば、恵まれている現在の環境下で安定した制度を実現していなければならない 連続していないのであれば、I2TAの資産をどう引き継ぐのかという点と、メンバーや外部支援者の意識と意欲に注意を払わなければならない
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広報・コミュニケーション活動の展開 I2TAは制度か?─I2TAの現在の活動と目指すTA機関・制度は連続しているのか否か
アカウンタビリティ 内部/外部諮問委員の設置 リーフレット・ニュースレターの作成、ウェブの充実 人材・ネットワーク サイエンスライター、エディター、デザイナーの協力 内部コーディネーター、外部への広報・人脈作り 関心ある人からの寄稿のお願い
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I2TAの組織変革 1年半がたち、これからはTA実践と制度化(定着)に向けての具体的提言、発信のウエイトを高めていく
研究の中心であった、制度化グループ、枠組み(手法)構築グループは一つにまとめ、今後も必要な調査研究を統合的に実施する アウトリーチ活動の強化のため、新たに「アウトリーチ」専門のグループ(ユニットとよぶ)を設置する
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今後の予定 クイックTAの実施(HPVワクチン、合成生物学)、ニュースレターへのエッセイ執筆(AED、植物工場)
最先端研究開発支援プログラム(2700億円)へのアプローチ 第4期基本計画策定におけるロビーイング 市民科学講座後援(9/17)、サイエンスアゴラ出展(11/1-2) アトランタカンファレンス(10/2-3)、4S(10/28-11/1)など国際会議 I2TA公開ワークショップ(2010/3) 有望な若者の発掘
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