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マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰
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有効需要と乗数メカニズム 景気拡大過程では、「需要の増加→生産の拡大→所得の増大→需要の増加」という自己増殖的メカニズムが働く。景気後退では逆。 この自己拡大(縮小)的メカニズムを「乗数プロセス」と呼ぶ。 乗数プロセスを理解すると、現実の経済の景気の好調・不調を理解することができる。 需要不足の経済=ケインジアン的世界
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需要不足がもたらす不況(56頁) 景気問題は重要(悪循環と好循環がある) 景気の問題は、需要サイド(消費や投資)が重要。
景気悪化⇒所得減少&設備過剰⇒消費や投資は落ち込む 景気拡大⇒需要拡大 景気の問題は、需要サイド(消費や投資)が重要。 景気と需要の動きの密接な関係を勉強する。
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内閣府月例経済報告 平成15年11月
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内閣府月例経済報告 平成16年11月
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内閣府月例経済報告 平成17年10月
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出所: 内閣府 経済社会総合研究所のデータを加工
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景気の波及メカニズム(57頁) 簡単な事例 他の業界へも波及(厳密には産業連関表で分析できる)
悪循環: 「景気が悪くてモノが売れない」→「企業が生産を縮小し雇用を減らす」→「人々の所得が減少してますます景気が悪くなる」 好循環: 「景気が良くなってモノが売れる」→「企業が生産を拡大し雇用も増やす」→「人々の所得が増大してますます景気が良くなる」 他の業界へも波及(厳密には産業連関表で分析できる)
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景気の波及メカニズム(57頁) 一次的な需要だけでなく、二次的・三次的な需要の波及を理解することが重要。 なぜ?
初期需要→生産増加→所得増加→二次需要を創出→・・・→三次需要→・・・・・・ 図3-1で確認。
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初期需要増 第二次需要 第三次需要 クーラー需要 100億円増大 100億円の所得 からの派生需要 (80億円) 80億円の所得 からの派生需要 (64億円) ・・・ クーラー生産 100億円増大 派生需要に促さ れた生産増 (80億円) 生産増 (64億円) 所得 100億円増大 所得さらに 80億円増大 所得増 (64億円) 100億円の所得 からの貯蓄 (20億円) 80億円の所得 からの貯蓄 (16億円)
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図3-1需要の波及と乗数プロセス 需要増大が生産増大と所得増大を生み出し、これがつぎつぎと派生需要を生み出し、その結果、経済全体の需要・生産・所得が雪だるま式に増えていくプロセスを乗数プロセスと呼びます。 乗数プロセスはプラスにもマイナスにも働く。
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初期需要増 第二次需要 第三次需要 クーラー需要 100億円増大 100億円の所得 からの派生需要 (80億円) 80億円の所得 からの派生需要 (64億円) ・・・ 需要の波及効果 がどのくらい 大きくなるかを 決めるのは 限界消費性向 である。 例: 0.8の場合 80億円×0.8 =64億円 残りは貯蓄 80-64 =16 クーラー生産 100億円増大 派生需要に促さ れた生産増 (80億円) 生産増 (64億円) 所得 100億円増大 所得さらに 80億円増大 所得増 (64億円) 100億円の所得 からの貯蓄 (20億円) 80億円の所得 からの貯蓄 (16億円)
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限界消費性向と乗数(59-60頁) 初期需要増(A)に対して、最終的な需要増加(D)はどのくらいになるか? 限界消費性向がcの場合には、
D=A+cA+c2A+c3A+c4A+c5A+・・・ =A(1+c+c2+c3+c4+・・・) =A/(1-c) 1/(1-c)を乗数(値)と呼ぶ。 限界消費性向が大きいと、乗数が大きくなり、最終需要が大きくなる。
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乗数の考え方とマクロ経済 乗数メカニズムが存在しているために、経済のどこかで起きた需要の増大(減少)の動きが、乗数メカニズムを通じて経済全体に拡大して波及する。 乗数メカニズムを利用して、政府が経済に需要を起こしたり(抑えたり)することができる。その手法が政府の財政政策や金融政策である。
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所得・需要・生産の相互メカニズム(61頁) 経済全体の需要の決定を考える。 仮定: 図3-2に注目。
簡単化のために、経済の需要は全て家計による消費とする つまり当面は、投資、政府支出、輸出は考えない(後で考える) 図3-2に注目。
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総所得 総生産 総需要 ③消費関数に従って総所得が増加すれば、消費も増大する
②総生産額はいろいろな形(賃金・地代・利子)ですべて所得として分配される 総所得 総生産 総需要 ①総需要に等しいだけの生産が行われる(生産能力の範囲内で)
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消費関数と生産・所得・需要の決定(63頁) 明示的(explicit)な形で分析する 消費関数を導入する
消費関数とは、図3-3のように所得と消費の間の関係の表現(式でも表される) 消費関数はC=C(Y)という関数形で表すことができます。 この式の意味は、左辺の消費(C)というものは(=)、所得(Y)に影響されます消費(C)ですよ、という意味です。
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消費(C) 消費関数 C=C(Y) 所得(Y)
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消費関数を用いて所得を決定する まず、需要(YD) 、生産(YP)、所得(YI)とする。
需要(Demand) 、生産(Product) 、所得(Income) 三面等価の原則から、YD=YP=YI <①式>である。 需要(支出)は消費だけだと仮定しているのでYD=C<②式>である。 消費関数はC=C(YI)<③式>である。
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厳密に考える YD=YP=YI <①式> YD=C<②式> C=C(YI)<③式> ②式と③式から、 YD=C=C(YI) ゆえに、
YD=C(YI)<④式> ①式から、 YD=YI<⑤式> ④式と⑤式から、 YI=C(YI) この式はYIの式だから、 YIが解ける!つまり、所得が求められる!
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需要(YD)=消費(C)、 生産(YP) YD=YP=YI YD=C=C(YI) 均衡点 45度 Y* 所得(YI)
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所得がY*ではなかったら? 均衡の所得水準Y*よりも低い所得では、需要が供給を超過している(超過需要)。経済に十分な供給能力があれば、生産が拡大し、所得も拡大するであろう。 均衡の所得水準Y*よりも高い所得では、供給が需要を超過している(超過供給)。生産が縮小して、所得も縮小する。 結局、所得水準がY*のときに、所得・生産・需要の一致が見られる。
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Y1 Y* Y2 所得(YI) 需要(YD)=消費(C)、 生産(YP) YD=YP=YI 均衡点 YP2 YD2 YD=C=C(YI)
超過需要 超過供給 Y1 Y* Y2 所得(YI)
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需要不足の経済(65頁) 図3-4のメッセージ=「経済全体の所得や生産の水準が需要の規模によって大きな影響を受ける」
需要が不足すると、所得が大きく減退し、失業や遊休設備が生じる ⇒図3-5
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需要(YD)=消費(C)、 生産(YP) 45度 C1 需要の低下 E1 C2 E2 Y2 Y1 所得(YI)
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需要不足の経済 需要減少→生産低下→所得減少というプロセスが続いて、所得がY2のところまできて、経済は新しい均衡にたどり着く。
新しい均衡は、元の均衡に比べてはるかに低い所得・生産・需要となっている。 これがケインズ経済学が明らかにしたこと=需要不足の均衡の存在(失業と遊休設備)
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投資と政府支出(67頁) 海外部門を考えないと、 Y=C+I+G YはGDP、Iは投資、Gは政府支出
投資と政府支出が外生的に与えられていると仮定する(簡単化のため)。 投資と政府支出を導入すると図3-6を導くことができる。
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Y* 所得(Y) 消費や政府支出の拡大 需要(YD)、生産(YP) 45度 C+I+G C(Y)消費関数 I+G 均衡点で
Y=C(Y)+G+I というマクロ経済の均衡が成立する。 Y* 所得(Y)
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投資と政府支出 消費水準と同じように、投資や政府支出の水準もマクロ経済全体の生産や所得水準の決定に影響している。
投資や政府支出の規模が増加すれば、その乗数倍だけ経済全体の生産と所得の水準は増加する。 企業の投資意欲→投資水準
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景気循環の一つの説明 企業が将来を楽観的に考える⇒投資を増やす⇒生産や所得が上昇 企業が将来を悲観的に考える⇒投資を減らす⇒生産や所得が下降
景気が大きく振れながら動く=景気循環 政府支出は政策によって決定される 不況だと政府支出は大きくなり、好況だと政府支出は抑制気味になることが多い。
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所得水準決定の数値例(69頁) ①経済全体の消費関数を、 C=50兆円+0.8Y とする(Cは消費、YはGDP)。 <限界消費性向は0.8>
②投資(I)と政府支出(G)はそれぞれ20兆円と仮定する。
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所得水準決定の数値例 ③需要の内訳から Y=C+I+G であり、これに代入すると、 Y=50兆円+0.8Y+20兆円+20兆円
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所得水準決定の数値例 ④投資が20兆円から30兆円に10兆円だけ増えたとすると、 Y=50兆円+0.8Y+30兆円+20兆円
⑤限界消費性向は0.8であるから、乗数は 1÷(1-0.8)=5 10兆円の投資増加×5=50兆円。
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補論:恒等式と方程式 恒等式(つねに成立している) 例えば、Y=C+I+G
恒等式は重要であり、よく理解することが重要。
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