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高精度有限体積法による 非静力学惑星大気循環モデルの開発 神戸大学 地球および惑星大気科学研究室 河合 佑太
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1.序論:研究背景と研究内容 研究背景 大気循環モデル(Atmospheric General Circulation Model: AGCM)は, 地球大気の数値天気予報 , 気候予測にくわえ, 地球以外の大気循環を研究するための重要な道具である. AGCM の大気の運動を計算する過程:力学コア 伝統的には, 支配方程式系: プリミティブ方程式(静力学近似した大気の支配方程式) 数値解法: 球面調和関数展開に基づくスペクトル変換法 * 解像できない小規模な運動は, パラメータ化する. 近年開発されている AGCM では, 基礎方程式系や数値解法が再検討されている. ( 例: Satoh et al, 2008 の NICAM). 支配方程式系: 非静力学方程式 * 大循環に大きな影響を与える積雲対流といった小規模な運動まで陽に計算する. 数値解法: 有限体積法 * スペクトル法は高精度な一方, 偽の振動や大規模計算環境での効率の悪化が指摘されている.
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1.序論:研究背景と研究内容 数値解法として, 従来のスペクトル法の代わりに, 数値流体分野を起源とする手 法を気象分野にも適用する研究が見られるようになっている. 有限体積法, スペクトル要素法などの利用 (例: Ullrich et al, 2012; Giraldo and Restelli, 2008) 高精度化は局所的な物理場の情報を使って行う. ↔ スペクトル法は広域的な物理場の情報を必要とする 大規模計算環境での計算効率が良い. しかし, 実用的な大気の問題に対する適用性は検証段階にある. 研究内容 数値流体分野の数値手法に基づく全球非静力学モデルを開発する. 特徴 * 質量・全エネルギーの保存. * 場の急勾配の維持. 大気の問題への適用性の基礎的な検証
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2. 非静力学コアの概要 〜支配方程式系〜 完全圧縮非静力学方程式系 質量保存の式: 運動量方程式: 全エネルギーの式:
t: 時刻, ρ: 密度, u: 速度ベクトル, et: 全エネルギー, p: 圧力, I: rank3 の単位行列, : テンソル積, Φ: 重力ポテンシャル, Ω: 惑星の自転角速度ベクトル, γ: 比熱比 全エネルギーの式: 補助方程式: (via 理想気体の状態方程式) * 保存形式で記述. 空間離散化に有限体積法を用いれば, 系の全質量, 運動量, 全エネルギーは本質的に保存される.
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3. 非静力学コアの概要 〜数値計算手法〜 * 支配方程式系を数値的に解くために, 空間・時間に対して離散化を行う.
空間離散化 格子系 等角立方球面格子(Sadourny, 1972) セル中心型 有限体積法 空間精度: 水平方向 3 次精度, 鉛直方向 2 次精度 (Central ENO 法, Ivan 2010) フラックスの評価: AUSM+-up スキーム(Liou, 2006) 時間離散化 水平方向: 陽解法, 4 次の Runge=Kutta 法 鉛直方向: 陰解法, Newton=Raphson 法 * 両者の寄与は Strange-carryover 法で組み合わせる. 全体で時間 2 次精度. 数値安定性 AUSM+-up スキームに付随する拡散 並列化 OpenMP によるスレッド並列
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4.非静力学コアの概要〜数値計算手法〜 格子系の選択
等角立方球面格子(Sadourny, 1972) 利点 緯度経度格子における極の強い特異性はなくな る. 高解像度になるにつれて格子はより一様に分布 する. 並列計算における効率が良い(Taylor et al, 2008) . 欠点 各パッチで非直交な座標系が導入されるため, 方 程式系が複雑になる. 心射投影 球面上に凖一様な格子を生成する
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5. 非静力学コアの概要~ 数値計算手法〜 空間離散化
高精度有限体積法の概念 物理場の値 * 有限体積法の基本原理 多項式補間(Central ENO 法, Ivan 2010) セル界面 保存形式で書かれた 支配方程式系 セル内の体積平均値 フラックスの評価 (AUSM+-up スキーム, Liou 2006) セル(界面∂S)の 体積V に渡って積分 セル x 格子点 * セル内の分布を多項式で補間する. . これにより, 場の急勾配を維持できる. 特徴 ( ) : 検査体積内の体積平均量
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6. 非静力学コアの概要〜 数値計算手法 〜 時間離散化
* 鉛直方向の運動を陰的に時間積分することで. 時間刻み幅が鉛直格子幅により制限されず, 効率的な時間積分を行える. 特徴 空間離散化 格子系 等角立方球面格子(Sadourny, 1972) セル中心型 有限体積法 空間精度: 水平方向 3 次精度, 鉛直方向 2 次精度 (Central ENO 法, Ivan 2010) フラックスの評価: AUSM+-up スキーム(Liou, 2006) 時間離散化 水平方向: 陽解法, 4 次の Runge-Kutta 法 鉛直方向: 陰解法, Newton-Raphson 法 * 両者の寄与は Strange-carryover 法で組み合わせる. 全体で時間 2 次精度. 数値安定性 AUSM+-up スキームに付随する拡散 並列化 OpenMP によるスレッド並列
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7.非静力学コアの検証 非静力学コアに対する基本的なテストケース(Tomita and Satoh, 2004; Jablonowski et al., 2008; Jablonowski and Williamson, 2006)を実施した. <検証内容> 大気波動の表現 系の全質量, 全エネルギーの保存性 立方球面格子の特異点の影響の考察 適切な拡散パラメータの大きさの検証 数値解の収束性 他の全球非静力学モデルによる結果との比較 ケース1: 音波 ケース2: 内部重力波 ケース3: 傾圧不安定
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7.1 力学コアの検証〜テストケース: 音波 パラメータ 初期条件/境界条件 *設定: *結果: 圧力場の時間発展の様子(t=48h まで)
解像度 : c46 (約 220 km), 20 層 (上端 10 km) 時間刻み幅: 450 s 惑星半径 : 6371 km, 自転角速度 : 0 s-1 圧力場の時間発展の様子(t=48h まで) 基本場 : 静水圧平衡. 300 K の等温静止大気. 摂動場 : 圧力にのみ摂動を与える. 振幅100hPa. 上端・下端境界: スリップ条件 * 初期の圧力摂動の分布 水平分布 (コサインベル型) 鉛直分布 (サイン型第一モード)
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5.1 力学コアの検証〜テストケース: 音波 * 立方球面格子の8 つの特異点を, 波は問題なく通過していく.
*結果: 圧力摂動場の時間発展(鉛直断面, z=250mの水平面) 各エネルギーの時間変化 全エネルギーが 保存している * 球面上を線形論の音速と整合的な速度で伝播する. * 立方球面格子の8 つの特異点を, 波は問題なく通過していく. * 系の全質量, 全エネルギーは丸め誤差の範囲で保存される.
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結論 全球領域で完全圧縮非静力方程式系を数値的に解くためのモデル を開発した.
格子系には立方球面格子, 空間離散化には高精度有限体積法を用いた. 陽解法と陰解法を組み合わせることで, 時間積分を効率的に行えるようにした. 開発した数値モデルの性能を検証するために, 非静力学コアに対す る標準テストケースを3種類実施した. 系の全質量・全エネルギーは丸め誤差の範囲で保存される. 拡散が少なく, 場の急勾配を維持できる. 立方球面格子の非一様性に伴う波数4の偽の波の悪影響は, 他の立方球面格子モデル と同程度であることが確認された. 今後, 木星型惑星の内部循環(深い対流)の計算に用いるための改良を続ける. 修士論文内にて言及
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(補助スライド)5.2 力学コアの検証~テストケース: 内部重力波
*内容: *結果: DECAMO DIGMO 内部重力波の伝播を正しく表現できるか . 高精度非静力学モデルで見られる場の 急勾配の維持が確認されるか.他のモデ ルとの比較. 内部重力波の幾つかのモードの伝播速度の確認 パラメータ 初期条件/境界条件 CAM-EUL 4日後の温位摂動場. (赤道鉛直断面) 他の非静力学モデルとの比較 *設定: CAM-SE 解像度 : c90 (約 110 km), 20 層 (上端 10 km) 時間刻み幅: 225 s 惑星半径 : 6371 km, 自転角速度 : 0 s-1 CAM-FV 基本場 : 静水圧平衡. 浮力振動数一定 (0.01 s-1)の静止大気. 摂動場 : 温位にのみ摂動を与える. 上端・下端境界: スリップ条件 * 他のモデルと内部重力波の伝播速度は同じ. * 先端部の急勾配を捕捉している. * 2 次精度の FV に見られる拡散は見られない.
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(補助スライド)5.3 力学コアの検証~テストケース: 傾圧不安定
*内容: *結果: 地表面圧力 現実的かつ理想的な基本場分布におい て中緯度帯の傾圧波の発生・発達過程 を正しく表現できるかをテストする. 立方球面格子のgrid imprinting を評価. 初期のバランス場の維持. 数値解の収束の検証. パラメータ 初期条件/境界条件 850hPa温度場 Day6 Day8 *設定: Day10 解像度 : c90 (約 110 km ), 26 層 (上端 30 km) 時間刻み幅: 225 s 惑星半径 : 6371 km, 自転角速度 : 7.292×10-5 s-1 基本場 : 現実的な大気に似せた基本場を解析的に与える. 場は傾度風バランスしている. プリミティブ方程式の解析解. 摂動場 : 東西速度にのみガウシアン型の摂動を与える. 場所は北半球傾圧ジェットの中心. 上端・下端境界: スリップ条件 * 前線付近の温度場の急勾配や, 地表面圧力の極値の位置は, 他のモデルと整合的である. * しかし, 立方球面格子の非等方性に伴う波数4のgrid imprinting が背景場に見える. 他の立方球面格子に比べてやや強い.
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