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がんの治療
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進歩するがん治療 個別化医療の進歩 手術方法の進歩 放射線療法の進歩 支持療法の進歩
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図69.従来の化学療法と個別化がん治療 従来のがん化学療法 個別化がん治療 肺がん患者 肺がん患者 抗がん剤A+B 分子標的薬D
F F B A B A E E C C D D 多彩な遺伝子異常を持つ肺がん患者に対して、同じような効果が出ると予測したうえで、同じ種類の抗がん剤の組み合わせで治療を行なう。 多彩な遺伝子異常を持つ肺がん患者に対して、特異的な遺伝子異常にあわせて標的を決めて抗がん剤を創って投与する。
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進歩するがん治療 個別化医療の進歩 手術方法の進歩 放射線療法の進歩 支持療法の進歩
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手術療法の適応−局所コントロール
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がんの手術療法の有効性(根治度別効果) 根治度A:(比較的早期の癌について完全切除) 根治度B:(肉眼的にがんの遺残はないが、再発の危険性が高い) 根治度C:(肉眼的に明らかな遺残がある) 根治度Aの場合でもかなりの再発を認める。 完全切除の場合には切除の効果は顕著ではあるが、腫瘍細胞が遺残している限り、常に再発の危険性がある。これらの遺残腫瘍に対しては明らかに肉眼的に認める場合は治療的に、そうでない場合は予防的に放射線療法や化学療法との併用による集学的治療を考える。
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遠隔転移がなければ、原発巣の大きな腫瘍塊を取り除くことが可能であれば、予後が良くなる。
あくまでも局所コントロールを目的とした治療法になる。
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拡大手術から縮小手術へ
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乳がん手術術式の変遷 % 日本乳癌学会会員アンケート調査結果より改変 Breast Cancer 2008, 15, 3-4
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手術単独であれば、できるだけ大きく切除して取り残しをなくしたいので、拡大手術が選択される。
補助化学療法やホルモン療法などの併用療法の進歩に伴い、手術単独では得られない予後の改善があり、縮小手術でも同じ効果が得られるようになった。 最近、乳房再建術が進歩するにつれて、乳房切除術へと拡大傾向にある。
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手術療法の実際
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癌手術療法の特徴 良性腫瘍の手術では、腫瘍だけをくりぬくように切除して正常組織の切除を最小限にする。
癌の手術の場合には、癌の発生した臓器(例えば胃など)とともに浸潤や転移しているかもしれない周囲脂肪組織やリンパ節を安全域として切除する。胃癌を例にとると、リンパ節を廓清するために、脾動脈、脾臓および周囲脂肪組織を胃とともに切除する。 手術そのものの負担が大きく、術後の臓器欠損による負担も大きくなる。 脾動脈 脾臓
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手術療法の選択
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手術治療の選択 メリットである根治性だけではなく、デメリットである合併症、後遺障害も含めたバランスシートを考慮して、患者本人が決定する。
ー 根治性と安全性のバランスシート ー 根治性 切除範囲を大きくすれば、がん組織を完全に切除できる可能性が高くなる。 安全性 合併症:出血、感染、縫合不全、静脈血栓症など 後遺障害:臓器を切除したことによる欠損障害。例えば、胃切除後のダンピング症候群や貧血など メリットである根治性だけではなく、デメリットである合併症、後遺障害も含めたバランスシートを考慮して、患者本人が決定する。
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図73.胃がんの推奨治療アルゴリズム 胃がん M0 M1 T1 T2/T3/T4a T4b N0 N+ T1a(M) T1b(SM) 分化型
2㎝以下Ul(-) 分化型 1.5㎝以下 化学療法 放射線 緩和治療 対症療法 Yes No Yes No 胃切除 合併切除D2郭清 EMR ESD 胃切除 D1郭清 胃切除 D1+郭清 定型手術D2郭清 日本胃癌学会、胃癌治療ガイドライン2010より引用
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手術療法の選択は、正確なステージの決定に基づき決定する。
根治度と安全性のバランスによって決定する。(根治度を高めるためには拡大手術がいいが、安全性を考えると縮小手術が良い)
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内視鏡手術の進歩
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図74.内視鏡手術の方法 1) ポリペクトミー 2) 内視鏡的粘膜切除術 3) 内視鏡的粘膜下層剥離術 針金の輪をかける しばって切断
1) ポリペクトミー ポリープ 内視鏡の先端 針金の輪をかける しばって切断 2) 内視鏡的粘膜切除術 がんの部位を マーキング 生理食塩水を 注入して瘤を作る 針金の輪をかけて切断 がん 3) 内視鏡的粘膜下層剥離術 がんの部位を マーキング 生理食塩水を 注入して瘤を作る メスで粘膜を切開する 粘膜を剥離する がん
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表23.内視鏡的粘膜切除術の適応 高分化型 低分化型 潰瘍なし 潰瘍あり 潰瘍なし
高分化型 低分化型 潰瘍なし 潰瘍あり 潰瘍なし 粘膜内 2 cm以下 2.1 cm以上 3 cm以下 2 cm以下 粘膜下 3 cm以下 ガイドラインの内視鏡的粘膜切除術適応 リンパ節転移のほとんどない癌 日本胃癌学会:胃癌治療ガイドライン2010より引用 表23.内視鏡的粘膜切除術の適応
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医師主導型臨床試験などで、内視鏡手術の適応範囲の拡大が図られている。将来的には適応範囲は拡大するだろう。
一方、経験不足の術者による事故なども起き易くなる。
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鏡視下手術の進歩
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図75.腹腔鏡手術 モニター 腹腔鏡 処置具 約1cmの切開
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高齢者に対する手術の進歩
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がん死または寿命中に合併症を発症すると予測される がんによる病的状態が発現する前に寿命がつきる
図76.高齢者のがん治療アルゴリズム スクリーニング 評価 所見 治療に耐 えられない 支持療法 ・機能と併存症より平均余命を推定 ・がんによる病的状態の発生リスク を推定(診断時のステージ、再発 及び進行のリスク、疾患の悪性 度) ・がん治療の忍容性を妨げる状況 の評価(栄養不良、多剤投与、社 会的支援の欠如、うつ病、認知症、 転倒リスク) ・患者の治療目標 ・社会福祉相談 がん死または寿命中に合併症を発症すると予測される ・老人病評価 ・機能及び併存症の評価 機能的に自立 (ADLが自立) 治療 治療に耐 えられる 中等度の機能障害 治療に耐 えられない 支持療法 重大な機能障害や複雑な併存症 がんによる病的状態が発現する前に寿命がつきる NCCN(National Comprehensive Cancer Network)治療ガイドラインより引用
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表24.高齢者に対する外科治療 症例数 (%) 症例数 (%) 10歳代 4 0.0 2 0.0 20歳代 12 0.2 30歳代 0.9 1.1 40歳代 5.5 6.9 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 4.5 3.1 90歳代 4 0.0 0.0 欠損値 0.0 0.1 合計 1994年の全国集計では60歳代の切除例が2984例と最も多かったが、2004年では総切除例が1.5倍に増加し、70歳代の切除例が最も多かった。術後30日以内死亡は0.9% 「肺癌登録合同委員会 2004年肺がん外科手術例の全国集計に関する報告」より引用
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表25.80歳以上の高齢者肺がんに対する手術成績
報告者 報告年 症例数 合併症発生率 手術死亡率 5年生存率 Naunheim 1994 40 21 16.0 40.0 Aoki 2000 35 60 39.8 Port 2004 61 38 1.6 38.0 Dominguez 2006 379 48 6.3 - BrokX 2007 124 4.0 47.0 Okami 2009 367 8.4 1.4 55.7 Yamato 2011 464 17.6 1.3 56.9 Eur J Cardiothorac Surg. 1994;8:453-6.、Eur J Cardiothorac Surg. 2000;18:662-5、Chest. 2004;126:733-8, J Thorac Oncol. 2007;2:1013-7, J Thorac Oncol. 2009;4: , 新潟がんセンター病院医誌 50巻 2号:57−63より作成
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超高齢者(80歳以上)の肺癌手術の適応基準 1.非小細胞肺癌 臨床病期I、II期 小細胞肺癌 臨床病期I期 2.重篤な併存疾患がない
3.Performance Statusが良好(PS<1) 4.十分な心肺機能の予備能がある 5.患者および家族が手術に積極的である 肺癌の臨床研究プロトコールの患者選択基準では、75歳未満と設定されることが多く、75歳以上を高齢者、80歳以上を超高齢者として、手術適応、術式選択の判断を75歳未満と分けて考慮している。
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超高齢者肺癌の手術成績 東北大学加齢医学研究所の成績:80歳以上の超高齢者35例について2群郭清した22例と1群郭清以下にとどめた13例の比較検討結果では、肺葉切除+縦隔リンパ節までの郭清をおこなう標準手術よりも肺門部以下のリンパ節郭清にとどめた縮小術の方が5年生存率は良好であった。
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年齢自体が手術適応の決定に当たって、重要ではなくなり、PSが十分に保たれているかどうかが重要になってきた。
支持療法の発達によって、高齢者に多かった術後合併症の発生を抑制できるようになった。
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進歩するがん治療 個別化医療の進歩 手術方法の進歩 放射線療法の進歩 支持療法の進歩
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放射線治療 放射線治療の基礎 1.腫瘍の局所制御 2.正常組織の急性反応 3.正常組織の晩期障害
放射線治療では線量さえ十分投与すればが んは100%治しうる。 2.正常組織の急性反応 例えば60Gy程度の照射をすると照射開始10- 14日ぐらいでマウスの下肢皮膚は放射線皮 膚炎を起こすが、照射終了後2-4週間でほぼ 治癒する。あてる場所で異なる炎症が出現。 3.正常組織の晩期障害 8Gy x 10回の照射を行うとマウス腫瘍は 100%治癒すると述べたが、この時マウスの 足は萎縮し、指はとけてなくなっている。 6Gy x 10回の照射を行った場合合計線量は60Gyとなり、局所制御率は0%(すなわちマウス腫瘍は1つも治癒しない)であるのに対し、7Gy x 10回の照射では合計線量70Gyで局所制御率は約50%、さらに8 Gy x 10回の照射では合計線量80Gyとなりマウス腫瘍は100%治癒する。
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表26.放射線治療の進歩 空間的線量分布の改善 CTシミュレーション、PET/CTシミュレーション 術中照射
192-Ir 高線量率小線源治療 125-I 前立腺がん永久挿入術 強度変調放射線治療(IMRT) 脳および体幹部定位放射線治療 時間的線量分布の改善 加速過分割照射 放射線像管法の進歩 温熱療法、放射線増感剤 空間的線量分布の改善:がん病巣に集中させて正常組織へ照射しない方法の改善
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空間的線量分布の改善 放射線治療は、線量を上げれば癌細胞をたたける。問題は正常組織へのダメージ。がん組織への放射線被曝の集中をはかるのが、空間的線量分布の改善。
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図77.定位放射線治療の原理 肺がんに対して5方向から照射する方法で、肺がんの部位のみに高線量の放射線を照射できる。
放射線治療ガイドライン2008より抜粋 肺がんに対して5方向から照射する方法で、肺がんの部位のみに高線量の放射線を照射できる。
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分割照射=時間的線量分布の改善 がん細胞に比べて正常組織の方が回復が早く、分割することによって正常組織へのダメージを少なくすることができる。
また放射線は、細胞周期によって感受性が異なっており、抵抗性のS期の細胞が、分割照射すると感受性の周期に入っているため、効果が増大する。
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密封小線源治療 放射線は距離が2倍に離れると線量が1/4になるため、外からの照射では内部のがん組織への影響は減少する。
体内(がん組織)から照射する方が正常組織へのダメージが減る。 b線の到達度は1−3mm.
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図78.密封小線源治療 米粒 白く造影された膀胱の下部の前立腺に多くのシードが認められる。 ヨウ素125シード線源(長さ4mm程度)
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重粒子線治療 重粒子線の特徴 1.ある特定の位置でのみ放射線を放出できる。
2.通常の放射線と違い、細胞周期に関係なくがん細胞の死を誘導できる。
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図79.粒子線治療の効果 X線は、身体表面に近いところで放射線が強く、がん病巣に届くころには減弱してしまう.一方粒子線(水素原子核である陽子線や炭素原子核)は、任意の深さで線量をピークにすることができる。そのため、正常組織への影響を最小限にしてがん病巣に対する効果を最大にできる。
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IR (Interventional Radiology)
画像下治療 エックス線透視や超音波像、CTを見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す新しい治療
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原発性肝細胞癌に対する動注化学塞栓療法 担がん亜区域までカテーテルを挿入してリピオドールと抗癌剤のエマルジョンを注入し、さらにゼラチンスポンジを注入して塞栓を行った。 CT scanでは、がん領域がリピオドールによって濃染している。
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Q: なぜ肝癌に対して塞栓療法が可能なのか? ほかの臓器でも可能なのか?
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胆道狭窄に対する治療(ステント) リンパ節転移による総胆管狭窄に対する 金属ステント挿入。
肝門部胆管癌による分離型狭窄に対して右前枝、右後枝、左枝、総肝管にそれぞれ金属ステントが挿入された。各枝から12指腸への良好な流出が得られている。
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