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保育問題の経済学 教科書(社会保障亡国論)第7章「消費増税不要の待機児童対策」
参考書(財政危機と社会保障)第7章「待機児童問題が解決しない本当の理由」 参考文献:鈴木亘「財源不足下でも待機児童解消と弱者支援が両立可能な保育制度改革~制度設計とマイクロ・シミュレーション~」学習院大学経済論集第52巻第1号 日経新聞2016年4月15日朝刊「経済教室」:鈴木亘「待機児童問題の視点:保育料、新規参入自由化を」
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待機児童問題とは? 認可保育所*等に子どもを預けたいにもかかわらず、定員が足りず、入所できない待機児が大量に発生している問題。女性活躍社会の障害。 主に都市部の問題(首都圏、関西圏、政令指定都市で7割強)。 0-2歳で待機児童の約85%。 認可保育所・・・国の基準を満たし、国からの補助金が出ている保育所。全国で約2.3万か所。4割が公立、6割が私立。その他、小規模保育、認定こども園など(約5千) 認可外保育所(無認可)・・・国の補助金がない。東京都認証保育所、横浜保育室、ベビーホテルなど(約8千)
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どれぐらい深刻なの? 公式には、2.3万人(4月)~4.5万人(10月)程度。
毎年、待機児童以上の数の定員増を図るが、減少せず。潜在的待機児童は80万人との推計も。 厚労省HPより
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日本の保育の仕組みは社会主義? 割り当て方法は「配給制」。希望者の保育の必要度を点数化して、市区町村が利用の可否を決定。両親が正社員の場合が点数高く、非正社員は都市部では入所困難。正規・非正規間の不公平。理不尽な「保活」。 認可保育所の保育料は公定価格。所得に応じて変わる ⇔ 無認可は自由価格。 認可保育所は実質的な参入規制。私立のほとんどは「社会福祉法人」。株式会社などはわずか(3.7%)。自治体による自主的制限も。 ⇔無認可は参入自由だが、補助金無し。官業の民業圧迫。
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待機児童問題が起きる理由 第一に、公費・補助金の大量投入によって、認可保育所の保育料が大変安く設定されている。
第二に、規制産業である認可保育所は大変な高コスト体質に陥っており、財政難の折、各自治体とも手厚い公費・補助金を必要とする認可保育所を、簡単に増やせなくなっている。 第三に、規制と補助金の存在が保育産業に超過利潤(レント)を生みだし、それによって強大な業界団体や保育労組が結成されて、自分たちの既得権を守るための規制維持や補助金拡大に、強い政治力を発揮。
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認可保育所の公定価格が安すぎる。保育料月額は平均2.4万円ほど。 ⇔ 同程度の質の無認可(東京都認証保育所)は約6万円。
認可保育所の実際のコスト(運営費)は、東京都で15~20万円。0歳児は約40万円にもなる。 認可保育所は、実際には補助金漬け産業(保育料2割、公費8割、東京都は9割)と言える。社会福祉法人は建物の87.5%が公費(施設整備費)。 自治体の本音としては、公費が高くつく認可保育所をおいそれとは作れない。作っても、近隣から待機児童を呼び寄せるメカニズムもある。 近年は保育士不足、用地確保問題が深刻化。
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不適切な再分配の実態 認可外保育所には、国の公費・補助金が全くないので、認可保育所と無認可保育所の間で、公費投入の著しい格差。 待機児童問題が深刻な都市部において、認可保育所に優先的に入所できるのは、夫婦ともに正社員である場合にほぼ限られている(「保育に欠ける要件」) 実は夫婦ともに正社員という「保育に欠ける」夫婦は、一般的に所得が高く、その中にはかなりの高所得者層も含まれる。
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認可保育所入所者とそれ以外の所得分布
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認可保育所の高コスト体質 大量の公費投入によって守られていることにより、認可保育所は異常な高コスト体質に。東京都23区の公立認可保育所における0歳児1人当たりにかかる保育運営費は、平均で月額50万円程度、私立認可保育所でも月額30万円程度。平均は40万円。全児童にかかるコストも1人当たり15~20万円程度。 この高い運営費以外にも、各自治体が公立認可保育所を新設する場合には、土地や建物代というイニシャルコストも、別途、公費でねん出しなければならない。また、私立認可保育所(社会福祉法人立)の場合にも、新設した建物代の大半を公費で賄う必要があり、財政的に大きな障害。
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私立認可保育所の約9割を占めるのは、「社会福祉法人」が経営する保育所。一般的に土地を寄付した篤志家が経営者(法人理事長と園長を兼ねる)となるため、土地代はかからないが、新設した建物代の87.5%を「施設整備費」として国と自治体が補助しなければならない。 社会福祉法人は、特定郵便局のように家族経営・同族経営が多く、雇用している保育士たちに低賃金を強いている一方で、園長本人を含め、家族や親戚が占める理事や役員の報酬が多額に及んでいる場合も多く見受けられる。 その多くが世襲制で、相続税が一切かからずに土地建物が相続できるため、施設費や修繕引当などのコストを節約する動機が働かず、非効率に陥るという制度的欠陥がある。
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認可保育園の既得権者が改革を拒む →公立保育園は高給取りの公務員。 →私立保育園は、非課税・補助金優遇の社会福祉法人が中心。 →競争相手が増えないよう、株式会社やNPOの参入を拒む。 →国の基準よりも贅沢な上乗せ基準(保育士数、部屋面積)を堅持。親の会、守る会のインボルブ。 →国が行っている規制緩和も拒否。
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経済学的な解決策 安易で不適切な公費投入の割合を減らすこと。低所得者に対する公費投入はむしろ手厚くしても良いが、受益に見合った保育料を支払うことができる中高所得者には、今のように多額に及ぶ公費投入を行う必要はない。 いちばん良いやり方は、認可・認可外にかかわらず、全ての保育所の保育料を自由化した上で、低所得者の負担を減らすための直接補助(バウチャーの交付)を行うこと。
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バウチャーの金額は、利用者の所得が低いほど多くなり、保育料以外の用途へは使えない。実は、東京都の区や市の中で、既に実験済み。
価格を自由化する意義は、第一に、競争によって認可保育所の運営費の効率化が進む。第二に、待機児童問題が深刻な地域は、価格がシグナルとなり、参入が進む。 需給の過不足に応じてすぐに数の調整が行われることが、自由価格、つまり市場メカニズムの最大の利点。理不尽で不公平な割り当てを行わなくて済む。
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競争原理が働くことにより、認可外保育所は質を高める。バウチャーが使える施設の条件として一定の質基準を要求すれば更に効果的。
認可保育所については、価格競争があるので、高コスト体質から脱する経営努力を行う。 さらに、現在、深刻になっている保育士不足にも効果的。なぜならば、待機児童が深刻な地域の保育料が上がれば、保育士給与も増すため。市場は素晴らしい解決策。
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自由化しても価格は収斂する(安かろう、悪かろうにはならない)
東京都認証保育所保育料の分布(0歳児、月160時間
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株式会社の「完全」参入自由化 保育料価格を自由化するにあたって、その前提として非常に重要なことは、認可保育所の参入規制が撤廃されて、保育への参入が自由に行えること。 特に、株式会社やNPO法人は、家族経営・同族経営の多い社会福祉法人よりも、フットワークが軽く、柔軟に供給量を増加させることができる。 株式会社等は、チェーン化した大規模経営で、備品の大量発注等によって運営費を効率化でき、社会福祉法人のように多額の建物補助金(施設整備費)も一切かからず。自治体にとっては、その分の節約された公費を、さらなる保育所新設に使え、効率的。 だが、株式会社率の保育所数はまだまだ少ない。
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法律上認められているにも関わらず、実質的な参入規制が残る。
①株式会社であるにもかかわらず、株式で資金調達をして、配当することが禁じられている、②収入を新しい保育所を設立するための投資に使えない(内部留保の使途制約)、③企業会計のほかに、特殊な社会福祉法人会計の作成を求められる、④社会福祉法人は全ての税が免除されているのに対して、株式会社やNPO法人は課税される、⑤質等の基準を全て満たしていても、保育団体や保育労組の圧力等から、地方自治体が独自の判断として、株式会社やNPO法人の参入を認可しないことが許されている。 それに加えて、自治体のローカルルールが邪魔。
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期待される横浜方式 2010年度の待機児童数が、全国の自治体の中でワースト1であった横浜市。林文子市長の下、大改革に乗り出し、2013年4月には待機児童ゼロを実現。 その大改革のまさに柱となったのが、株式会社立の認可保育所を大々的に認めたこと。2003年度にはわずか2か所であった株式会社立の認可保育所は、2012年度には106、2013年には142に増え、全体(579)の約4分の1を占める。2013年度の1年間では新設認可保育所の実に半分が株式会社立という徹底ぶり。
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現状でも実現可能な対策 (1)保育士割合の緩和
現在、認可保育園の保育士は全員、合格率1、2割という難関の保育士試験に合格して保育士資格を有する必要。 同じ認可園である小規模保育(B型)では、保育士割合は5割でよく、残りは無資格者(子育て支援員)。東京都認証保育所も昔から保育士割合6割でやっているが、特に問題は生じていない。 待機児童が深刻な都市に限り、6割とする。 余った公立園の保育士には、自治体が従前の給与を保障した上で、新設施設に出向。 保育従事者数を今よりも1割増とする。
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(2)国基準を上回る上乗せ基準を撤廃させる
世田谷区のように待機児童が多い自治体は、国基準を大幅に上回る児童一人当たり面積、保育士数を、自治体独自の上乗せ基準として定めている。 「認可保育園の質を充実」が大義名分であるが、無認可保育園の児童、待機児童に比べて、あまりに不公平だ。 他の多くの自治体と同様、国基準に戻せば、その分、児童を多く受け入れられる。 贅沢は待機児童が無くなってからにすべきだ。 この点、政府の緊急対策では、自治体に是正を「要請する」としているが、甘すぎる。是正しない自治体には、国からの補助をカットすべき
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(3)無認可保育園に対するバウチャー助成 高コストの認可保育園が簡単に増やせない現状を考えると、東京都認証保育所のような一定の質が担保された無認可保育園を拡大する方向が現実的。 現在、東京都の多くの自治体は、無認可保育園の利用者に対して、自治体独自の助成制度がある。これは、一種のバウチャー。 この無認可用バウチャーの金額を、国が助成してもっと増やす。一種の景気対策なので、補正予算で手当てする。 バウチャーによって無認可保育園の採算が良くなれば、供給は直ぐに増える。その際、バウチャーを使える施設の条件として、一定の質基準を定めることにすれば、劣悪施設対策にもなる。
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(4)認可保育園の保育料引き上げ 低所得者はともかく、高所得者については認可保育園の保育料を引き上げる。 実際、国基準では、夫婦合計で世帯年収が1130万円以上の場合には月額10万円程度の保育料が定められているにもかかわらず、待機児童が多い自治体は、独自に保育料を引き下げている。 国からの補助をカットで応じる。 高所得者の保育料が上げれば、彼らは認可保育園ではなく、例えば、教育サービスを充実させた高級無認可保育園を選択する可能性が高い。 中所得者の保育料も自動的に上がることになる。価格面から待機児童が減少する。
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(5)育児休業給付金の対象拡大 0歳児保育は異常なコスト。1歳児以上に比べて倍以上の保育士を配置する必要があるから。 親が育休を利用して我が子を1歳児になるまで育てれば、その分、大幅に定員を増やせる。 そのために、育休給付金の対象を全ての非正社員に広げる。財源は6兆円もの積立金を持つ雇用保険なので、消費税との紐付けを回避できる。 問題は、認可保育園に入りやすい0歳児のうちに、親たちが無理に入園させようとすること。 そこで、例え0歳児で入園していても、1歳児になったところで、再度、入園審査をやり直す仕組みに改める。むしろ0歳児を家庭で育てた方がポイントを高くする。0歳児の保育料も費用を反映して引き上げる。
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東京都独自の問題 2016年9月から東京都特別顧問として待機児童対策の担当に。10月から東京特区共同事務局長にもなったので、東京都での現在進行中の対策を紹介。 ある区が頑張ると他区から「ただ乗り」される(横浜、川崎と対照的)。 基礎自治体が競い合って保育料ディスカウント。 土地が少なく、地価が高い。保育園に適した土地が供給されにくい。 保育士の賃金が他産業に比べて相対的に低く、人手不足(公定価格の歪み)。 私学補助金が多く、私立幼稚園が保育に参入せず。
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小池都政の対策1(2016年9月補正) 就任直後に、総額126億円の過去最大の補正予算。 保育士待遇改善(家賃補助月額8万1千円を拡充)。
土地の提供(都有地提供、借地賃料補助、マッチング事業、とうきょうほうれんそう)。 安すぎる保育料対策(認可と無認可の保育料差額補助、要するに保育バウチャー実現)。 基礎自治体の努力へのインセンティブ(頑張る自治体への整備費補助で、グリップを利かせる)
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無認可保育園の競争力強化(建物賃料の補助を認可同様に、巡回相談で質の改善、保育料補助)
効果を早期に生むためのインセンティブ(年度内執行への補助率アップ) 待機児童緊急対策会議の開催で相互牽制、グリップ。 政策目標を1万2千から1万7千へ積み増し。 詳細は、
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小池都政の対策2(国家戦略特区の活用) 空き家活用等小回りの利く小規模保育の活用促進。
特に、小規模保育の3歳児以上の入所→特区法成立で実現。 育休を2歳児まで拡大(保活のために、育休を早期に切り上げて、費用の高い0歳児に無理矢理入所させることを防ぐ)→通常国会で実現。 都市公園内の用地提供拡大。定員数1200超。 各種団体からの要望聞き取り(特区共同事務局による規制改革提案聞き取り、予算要望)。
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小池都政の対策3(2017年度当初) 破格の保育士待遇改善(賃金月額4万4千円の独自上乗せで、ほぼ賃金格差は解消。無認可も支援)
実行プラン2020で、4年間で7万人の数値目標策定(当初は5万)。 私立幼稚園の預かり保育拡大に対する独自助成。 事業所内保育所に対する独自助成。 保育園用借地提供の家主に対する固定資産税免除。
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成果 供給増は1.5倍に(舛添時代の最後2015→2016は供給増は約14000、小池都政に代わり2016→2017は約21000)
待機児童数は旧定義で8466(2016年4月)→7880(2017年4月速報)と減少。舛添時代の増加からようやく減少に転じられた。 ただ、女性の就業立増加は予想以上で、まだまだ対策は必要。現在も計画中。需要面のコントロールなど、発想を変えた対策が必要。
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改革をどう実行するか 想定されている姿
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実際には、これでは早期に効果を得ることが困難。
首長・役人間の圧倒的な情報格差の存在。 小池都政以前の知事外しの慣習(そうせい候化)。 担当局の制約(都議会の横並び要望、業界団体の要望、過去の政策との整合性、予算部局や他部局との公平性等) 公務員の制約(継続性の重視、事なかれ主義、先送り主義、縄張り主義、極度の縦割り、リスクや責任のとれない終身雇用の役人社会)
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実際の姿
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(特別顧問の役割) 情報格差の解消(知事と官僚の情報の非対称性解消) 知事と担当部局間の意思疎通や調整 担当局・公務員の制約の理解と除去(縦割り調整、業界団体調整、リスクや責任の引き受け) 目を覚まさせるショックドクトリンも重要だが、あくまで主体は知事と都職員。組織の中に入って話をよく聞き、状況を理解することが大切。知事と担当局をつなぎ、ベクトルを同じ方向に向かせるための潤滑油(ミドルマン)として機能する。 議会からの批判多数。
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病児・病後児保育の問題 大半が赤字経営。数も非常に少ない。
病児・病後児保育施設が赤字経営になる理由は簡単。病児・病後児保育施設は、2009年から、看護師が利用児童おおむね10人につき1名以上、保育士は利用児童おおむね3人につき1名以上という配置基準となっており、人件費の固定費が非常に高い。これに対して、利用自体は、突発的であり、常に利用者があるとは限らない。全く利用者がいない日が何日も続いた後に、突然、季節性のインフルエンザなどが流行して、需要が集中するなど、需要の変動が激しい。
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一方、病児・病後児保育施設の収入は、自治体からの補助金がわずかにあるほかは、この突発的利用者からの利用料を得るしかない。利用料も補助金を利用している手前、あまり高くすることができないし、利用料が高いとパートやアルバイトの親たちは休みをとって対処してしまうため、収入確保が難しく、構造的に採算割れの状態となってしまう。
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経済学的な解決策 簡単な経済理論から考えて、こうした予測できない突発的変動と普段の利用率の低さという特徴を持つ需要への対処は、「保険」制度にすることである。 そもそも、病気による通院・入院リスクは、医療保険という形で対処されているのであるから、病児・病後児保育を保険化するという発想は極めて自然である。つまり、病児・病後児保育を利用しない月も、病気があったら預けられるという安心を買うために、利用料(保険料)を支払ってもらうのである。その代り、病気になったときの利用料は、現在の1日5千円前後の価格よりももっと下げて良い。
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実際、民間で病児・病後児保育を提供しているNPO法人フローレンスは、会員制で運営されているが、彼等が徴収している会員料がまさに保険料に当たるものである。ただし、任意で行なわれる民間の保険市場には、「逆選択」という市場の失敗が起きて、リスクの高い人ばかりが集まるため、採算は厳しくなる。フローレンスの利用者は、機会費用の高いかなりの高所得者が多いが、任意の民間保険市場にしている以上、これは当たり前であり、低中所得者の利用は難しいという問題が生じる。
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この逆選択現象を防ぐためには、病児・病後児保育を多く利用する人もそうでない人も、機会費用の高い人もそうでない人も、皆、強制で病児・病後児保育の保険料を支払わなければならないという制度にすることである。そのためには、通常の保育所の保育料に加えて、この病児・病後児保育の保険料を一緒に強制徴収する仕組みとすることが良いと思われる。 その代り、保険料を支払っている以上、病気になれば必ず、病児・病後児保育を利用できるということにして施設数を増加させる。これにより、女性就業増、女性就業の高度化・正規化が進む。
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