Download presentation
Presentation is loading. Please wait.
1
外務省 領事局 海外邦人安全課 (前国際協力局 事業管理室) 首席事務官 小玉廣明
日本外交と人間の安全保障 外務省 領事局 海外邦人安全課 (前国際協力局 事業管理室) 首席事務官 小玉廣明
2
保護 能力強化 1 人間の安全保障とは 人間の安全保障の視点を取り入れる → 国連の3つの柱(平和と安全、開発、 人権)の実現に貢献
1 人間の安全保障とは 【背景】 ●冷戦の終結やグローバル化の進展により、紛争や難民問題、感染症等、国際社会における課題が複雑化・多様化し、一国だけでは 対処することが困難であることが指摘され始めた。 ●これをきっかけに、国際社会が直面する課題に有効に対処するため、従来の国家を中心とした枠組みだけではない、人間を中心としたアプローチの重要性が高まった。 ●個人を脅かす多様な脅威の存在 (テロ、感染症、貧困、環境破壊等) ●これらの脅威は相互密接に関連 人間の安全保障の視点を取り入れる → 国連の3つの柱(平和と安全、開発、 人権)の実現に貢献 通貨危機 紛争 環境破壊 自然災害 保護 能力強化 欠乏からの自由 恐怖からの自由 平和・安全 開 発 人 権 尊厳をもって生きる自由 テロ 地雷 小型武器 感染症 人身取引 貧困 【人間の安全保障】 人間一人ひとりに着目し、人々が恐怖や欠乏から免れ尊厳をもって生きることができるよう、個人の保護と能力強化を通じて、国・社会づくりを進めるという考え方。
3
人間一人ひとりに着目した、人間中心のアプローチ→個人の保護と能力強化
1 人間の安全保障とは 人間一人ひとりに着目した、人間中心のアプローチ→個人の保護と能力強化 ・貧困、紛争、感染症、テロ、災害等、様々な課題から生じる影響は、女性、子どもなど、個人の置かれた立場に よって異なる。 ・格差の拡大など、国家レベル(マクロレベル)では課題の所在の特定や対応が不十分な問題の顕在化。 個人、特に脆弱な個人への配慮が必要。 ・適切に保護するとともに、自ら脅威に対処できるよう能力強化が不可欠。 包括的な対処 ・国際社会が直面する課題は相互密接に関連 脅威の背景にある根本的な原因を明確化した上で、適切な戦略や分野横断的アプローチが必要 さまざまな活動主体間の連携(全員参加型のアプローチ) ・国、地方行政、国際機関、NGO、市民社会等の連携を促し、重複を避け効率的な支援を促進 全ての人々が恐怖からの自由、欠乏からの自由、尊厳をもって生きる自由を享受 人間それぞれの持つ豊かな可能性を実現し、能動的に経済・社会活動に参画 人づくり、社会づくりを通じた国づくり=豊かで持続可能な社会の実現 【我が国の立場】 人間の安全保障は我が国の外交の重要な柱。国家安全保障戦略の中でも、人間の安全保障の実現のための協力を強化することとされている。 開発協力大綱の基本方針の一つとして推進。2015年より先の国際開発目標は人間の安全保障の理念に基づくべき。
4
1 人間の安全保障とは 人間の安全保障の視点:各分野における必要性と有効性 人間一人ひとりに着目 保護 包括的な対処 能力強化
1 人間の安全保障とは MDGsの課題: 貧困削減等のターゲットの達成状況において、地域間、国家間、国内の格差が顕著。 脆弱層が開発から取り残されている。 環境問題、防災、水・食料・エネルギーへのアクセス、人口動態、ガバナンス等、個人の生計や生活に影響を与える、持続可能性や強靱性に関する新たな課題も。 持続可能な社会の実現のためには、個人が能力を開花し、経済社会活動に参画することが不可欠。 人間の安全保障の視点:各分野における必要性と有効性 例:MDGs(ミレニアム開発目標)達成状況 人間の安全保障の視点を 取り入れることで、 有効な対処が可能に。 人間一人ひとりに着目 保護 包括的な対処 能力強化 例:防災(東日本大震災の経験) 震災の経験からの教訓: 災害対応において、高齢者、女性、障害者など脆弱層への配慮が不可欠。 あらゆるレベル(国、自治体、コミュニティ、学校教育等)において、常に防災を意識すること(=防災の主流化)が必要。 → ハードとソフトの効果的組合せによる対応が不可欠 → 個人が災害時に適切な行動を取れるよう、事前の防災教育が必要。 → 国と地方、官と民、地域の違いなどの垣根を越えた広範な連携が重要。 人間一人ひとりに着目 保護 包括的な対処 能力強化 多様な主体間の連携
5
2 人間の安全保障の経緯 1994年UNDP人間開発報告書において「人間の安全保障」という言葉が初めて使用された。
2 人間の安全保障の経緯 1994年UNDP人間開発報告書において「人間の安全保障」という言葉が初めて使用された。 その後「人間の安全保障」とは何か、また、人間の安全保障をいかに推進していくか、 国際社会で議論が進展。我が国は以下のとおり積極的に議論をリード。 我が国主導の取組 その他の関連する動き 1998年 小渕総理政策演説 経済危機に伴う社会的弱者対策のため引き続きODA等を活用することや、 中長期支援のため国連「人間の安全保障基金」設立を発表。 1999年 国連人間の安全保障基金設立 人間の安全保障に資する案件を支援し、人間の安全保障の「実践」に取り組む。 2000年 国連ミレニアム・サミット 森総理から人間の安全保障を外交の柱と位置づけることを発表し、概念普及と 実践を推進。人間の安全保障に関する国際的な有識者の委員会の設置を提案。 人間の安全保障ネットワーク(HSN) 1999年に設立。人間の安全保障の概念や、それをいかに推進していくかを議論。メンバーはオーストリア、チリ、コスタリカ(2005年参加)、ギリシャ、 アイルランド、ヨルダン、マリ、 ノルウェー、パナマ、スロヴェニア、 南ア(オブザーバー)、スイス、タイ。 (なお、オランダ(2007年)とカナダ(2011)は脱退。) 2001年 人間の安全保障委員会の設立(緒方・セン共同議長) 2003年 人間の安全保障委員会報告書「安全保障の今日的課題」 ・ 安全保障の焦点を国家のみを対象とするものから人々を含むものへと拡大することの必要性を指摘。 ・ 人々の安全を確保するための包括的かつ統合された取組、人々の「保護」と「能力強化」のための戦略の必要性を指摘。 2003年 人間の安全保障諮問委員会設立 人間の安全保障委員会の報告書の提言の推進や、人間の安全保障基金の 運用について国連事務総長に助言。 2000年 介入と国家主権委員会(ICIS)設立 ↓ 2001年 ICIS報告書「保護する責任」 カナダ主導の取組。 1990年代、国内紛争に起因する人道的悲劇が多発したが、国際社会は有効な解決策を示すことができなかった。 これを踏まえ、1990年代後半から国連の場を中心に、人道上の危機に対する国際社会の対処のあり方を巡って議論が活発化。 (国境を越えた危機への対処において、個人を保護するという点で人間の安全保障と重複しているため、2つの概念との違いも議論となった。(後述)) 人間の安全保障フレンズ会合 ( 年) NYベースでの参加制限のない開かれた会合。全7回開催され、地球規模の諸課題 と人間の安全保障の関わりや、人間の安全保障実現のための方針等を議論。 →2008年5月、国連総会において人間の安全保障をテーマとする初めての 非公式テーマ別討論を開催 →2010年4月の人間の安全保障に関する事務総長報告発出に貢献。(次頁参照)
6
2 人間の安全保障の経緯:国連における議論の進展
2 人間の安全保障の経緯:国連における議論の進展 2005年3月 国連事務総長報告 “In Larger Freedom” 人間一人ひとりが恐怖からの自由、欠乏からの自由、尊厳をもって生きる自由を享受する権利を有することを提起。 2005年9月 国連総会首脳会合成果文書(国連総会決議として採択) 初めて国連の成果文書において人間の安全保障に言及。定義付けに向けて議論を進めることに合意。 2008年5月 国連総会における非公式テーマ別討論 2010年4月 人間の安全保障に関する初の事務総長報告 ・ 人間の安全保障は実践的な概念 ・ 人間の安全保障の要素:(1)人間中心、(2)包括性、(3)個別の文脈の重視、(4)予防 ・ 既存及び拡大する脅威に焦点を当てるとともに、これらの脅威の背景にある根本的な原因の明確化、それら脅威の拡大を防ぐ 早期警戒システムの構築に寄与する。 2010年5月 人間の安全保障に関する国連総会公式討論 2010年7月 人間の安全保障に関する初の国連総会決議(A/RES/64/291) 人間の安全保障の概念についての議論を継続することに合意。(共同ファシリテーター:日本、ヨルダン) 2010年9月 国連首脳会合成果文書(国連総会決議として採択) 概念の合意に向けた取組を継続することの必要性を認識。 2012年4月 人間の安全保障に関する2つ目の事務総長報告 2010年の決議に基づき作成・発表。 加盟国の意見をまとめ、人間の安全保障に関する共通理解の醸成に向けて鍵となる要素を提示。 2012年6月 人間の安全保障に関する第2回国連総会公式討論 2012年9月 人間の安全保障に関する2つ目の国連総会決議(A/RES/66/290)(次頁) 2013年5月 人間の安全保障に関するハイレベルイベント(於:国連) 潘基文事務総長、緒方外務省顧問、クラークUNDP総裁等が参加し、人間の安全保障の推進を図った。 2014年1月 人間の安全保障に関する3つ目の事務総長報告 2012年の決議の共通理解を前提に,人間の安全保障を国連の3つの柱に関連する普遍的な枠組みと位置づけ、実践例を多く取り上げ、経験と教訓を導き出す形で、人間の安全保障の利点や付加価値、有用性を説明。 2014年7月 人間の安全保障に関する国連総会テーマ別討論
7
3 国連における人間の安全保障の共通理解の醸成
3 国連における人間の安全保障の共通理解の醸成 2012年9月 人間の安全保障に関する国連総会決議の採択(A/RES/66/290) 国連加盟国間の長年にわたる議論を経て醸成された人間の安全保障に関する共通理解を 確認するもの。 パラ3概要(加盟国が合意した共通理解) 人々が自由と尊厳の内に生存し、貧困と絶望から免れて生きる権利。すべての人々が、すべての権利を享受し、人間としての可能性を開花させる機会、恐怖からの自由と欠乏からの自由を享受する権利を有すること。 人間の安全保障は、すべての人々とコミュニティの保護と能力強化に資する、人間中心の、包括的で、文脈に応じた、予防的対応を求めるものであること。 人間の安全保障は「保護する責任」とは異なること。 武力による威嚇・武力の行使または強制措置を求めるものではなく、政府が市民の生存・生計・尊厳の確保に一義的責任を有すること。 (注)保護する責任に関する国連における議論 2005年国連首脳会合成果文書:国連の成果文書としては初めて言及。国家及び国際社会はジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化及び人道に対する犯罪(以下、4つの犯罪)から人々を保護する責任を負うとし、国家当局が自国民を保護することに明らかに失敗している場合、安全保障理事会を通じ、第7章を含む国連憲章に則り、集団的行動をとる用意がある旨言及。 2009年国連事務総長報告(A/63/677) ・ 保護する責任は4つの犯罪に対してのみ適用されるとした。国際社会がとりうる措置には国連憲章第6章に基づく平和的手段、同第7章に基づく強制力を伴う手段、同第8章に基づく地域的機関との協力が含まれ得るとし、措置の選択及び履行に当たっては、国連憲章の規定、原則及び目的を十分尊重しなければならない旨言及。 ・ 2005年国連首脳会合成果文書で合意された適用範囲について再交渉を試みることは、非生産的かつ有害でさえあるとし、HIV/エイズ、気候変動や自然災害への対応といった他の事態に範囲を拡大することは、2005年のコンセンサスを損なう旨言及。 2010年、2011年、2012年事務総長報告を発出するとともに国連総会非公式インタラクティブ・ダイアローグを開催。
8
4 我が国の取組 :現場における実践 共通理解の醸成や概念普及の取組のみならず、現場での 人間の安全保障の実践にも貢献してきている。
4 我が国の取組 :現場における実践 共通理解の醸成や概念普及の取組のみならず、現場での 人間の安全保障の実践にも貢献してきている。 開発協力大綱 「人間の安全保障の考え方は、我が国の開発協力の根本にある指導理念」 国際協力機構(JICA) 人間の安全保障の「七つの視点」 国連人間の安全保障基金 国連機関が実施する事業を支援(2014年12月現在の累計) 実施国数 88の国・地域 実施件数 227件 総拠出額 約436億円(訳4億34万米ドル) (注)各国の拠出状況 スロベニア:計7.6万ドル(2007~2009年、2011年、2013年)、タイ:9万ドル(2007年、2009年、2013年)、 ギリシャ1.5万ドル(2010年)、メキシコ0.5万ドル(2010年)、マルタ計約9.6万ドル(2014~2016年) 草の根・人間の安全保障無償資金協力 開発途上国の地方公共団体やNGO等が実施する事業を支援(平成26年度) 実施国数 125か国・1地域(パレスチナ) 実施件数 計965件 NGO実施案件460件 うち国際NGO実施案件53件、ローカルNGO実施案件407件 供与限度額総額 約97億円 NGO連携無償資金協力 我が国のNGOが実施する事業を支援(平成14~26年度まで) 実施国数 70か国・1地域(パレスチナ) 実施件数 計989件、153団体 供与限度額総額 約265億円
9
無償資金協力 開発途上国等に資金を贈与する援助形態。
開発途上国等に資金を贈与する援助形態。 開発途上国・地域の経済社会開発に資する計画を主たる目的として同国・地域の政府等に対して行われる無償の資金供与による協力。 一部の無償資金協力を除き,JICA(国際協力機構,Japan International Cooperation Agency)が事前の調査及び交換公文締結後の実施業務を担当。 ●無償資金協力の外交政策上の意義 ・国際社会のニーズに迅速かつ機動的に対応するための有効な手段 ・国際社会の安定確保や我が国のリーダーシップ向上に資する政策的効果が大 ●無償資金協力の対象分野及び対象国 ・対象分野 保健や教育などの基礎生活分野(BHN),人づくり分野,給水などの基礎インフラ等に加え,環境,紛争予防,平和構築や地雷対策も対象とするなど分野は多様化。 ・対象国 原則として開発途上国の中でも比較的所得水準の低い国を対象(毎年世銀のデータを参考に見直されるが)としているが,それ以外の国についても,ニーズや外交的効果を踏まえ柔軟に対応してきている。
10
有償資金協力(円借款) 円借款は,開発途上国・地域の経済社会開発に寄与し,かつ,我が国との経済交流を促進するため必要と認められる事業の実施に必要な資金,又は当該国・地域の経済の安定に関する計画の達成に必要な資金を緩やかな条件(低金利,長期返済期間)で貸し付ける形態の援助。 (参考)2013年度の平均金利は0.58%,償還(据置)期間の平均は33.6(9.3)年。 ●円借款の意義 ・無償資金協力と比較して大規模な支援を行いやすく,途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設等の支援に効果的。 ・途上国に返済義務を課すことで自助努力を促す効果を持つ。 ・途上国と長期にわたる貸借関係を設定することにより,その国との中長期にわたる安定的な関係の基礎を構築可能。 ●主な貸付先 ・これまで供与した国・地域等は108。 ・主たる貸付先はインド,ベトナム,インドネシア等。2013年度のアジア向けは全体の76.6%。うちASEAN諸国向けは37.5%。 ・供与対象は,「2013年の1人当たりGNIが12,745ドル以下の途上国」が一応の目安。 ・1人当たりGNIが4,125ドル以上の中進国については,対象分野を原則として環境,人材育成,防災・災害対策,格差是正,広域インフラ,農業に限定。ただし,このほか,我が国の知見や技術が活用できるなど,日本として戦略的意義が認められる場合には円借款の供与を行う。 ・中進国を超える所得水準の途上国については,世界銀行による支援を卒業する(通常5年程度)までの国を対象に,日本として戦略的意義が認められる場合に円借款の供与を行う。
11
技術協力 開発途上国の経済社会の開発に資するため,相手国の開発の担い手となる人材の育成,また,我が国の有する技術や知識の移転などを行う経済協力の一形態。 人と人との接触を通じて実現されるため,「顔の見える援助」として,国民レベルでの相互理解にも資する援助形態。 ●技術協力の主要形態 「研修員受入れ」: 開発途上国の指導的役割を担うことが期待されている行政官や技術者等を,我が国または第三国等 に研修員として受け入れ,専門知識・技術の移転を図る。 「専門家派遣」: 我が国から開発途上国へ専門家を派遣し,相手国の実状に則した知識や技術の移転を図る。 「技術協力プロジェクト」: 一定の目標達成のため,案件ごとに必要とされる援助手段(専門家派遣,研修員受入れ,機材供与 等)を柔軟に組み合わせ,効果的な技術移転を実施。 「開発計画調査型技術協力」:以下の調査の総称。 政策立案又は公共事業計画策定支援を目的としたマスタープラン(M/P,事業計画)作成及び政策 支援調査 緊急支援調査(復旧・復興事業を含む) 自国政府又は他のドナーによる事業化を想定したフィージビリティ・スタディ(F/S,実施可能性調査) その他(地形図作成,地下水調査等)の調査 その他,「人」を通じた協力としては,国民参加型事業「青年海外協力隊派遣」,「シニア海外ボランティア派遣」,「草の根技術協力」,国際緊急援助事業等。
12
世界の平和,繁栄,一人ひとりのより良き未来のために
開発協力による国際社会への貢献: 世界の平和,繁栄,一人ひとりのより良き未来のために 190か国・地域に対し,総額3,341億ドル(約42兆円)の支援(支出純額) 【二国間ODA※】総額約3,700億ドル(支出総額) 無償資金協力:約1000億ドル 技術協力:約580億ドル 有償資金協力:約2,000億ドル 【国際機関向けODA※】総額約900億ドル 184か国・地域に対し,総計約14万6千名の専門家を派遣, 96か国に対し,総計4万8千名のボランティアを派遣,190か国・地域から総計約56万名の研修員を受け入れ。 (注)支出純額=円借款の返済分を差し引いたもの 支出総額=円借款の返済分を差し引いていないもの ※:データが現存する1960年以降の合計(~2014年) 日本の開発協力60年(1954年~)の実績 日本の顔の見える支援として大きな役割を担う青年海外協力隊等のJICAボランティア 「人間の安全保障」を推進してきた緒方貞子氏 日本の開発協力の特色 自助努力の後押し 持続的な経済成長 人間の安全保障 相手国の意思,自主性を重視し,対話・協働 人づくり,法・制度構築等,自助努力・自立的発展の基礎を支援 持続的な経済成長を通じて貧困削減等を達成 インフラ整備,産業人材育成,法・制度構築等を通じて産業基盤,投資環境整備を支援 一人ひとりの保護と 能力強化により, 恐怖と欠乏からの 自由,一人ひとりが 幸福と尊厳を持って 生存する権利を追求。 脆弱な立場の人々に焦点。 【例】 シンガポール政府の要請を受け,日本の交番制度導入のための技術協力を実施。自国の実情に合わせて築き上げられた独自の制度は全国に広がり,国全体の犯罪率が低下。 【例】資金協力によるインフラ建設と技術協力等を組み合わせた支援で,タイの東部臨海地域は一大工業団地に成長し,タイ経済を牽引。 【例】ザンビアの低所得者居住地域にトイレとシャワーを設置。KOSHUと呼ばれて親しまれ,コレラ感染者数激減。
13
日本のODAの歴史 実績(累計) 援助総額(純額) (1954~2013年暫定値) 3,252億ドル (190の国・地域)
援助総額(純額) (1954~2013年暫定値) 3,252億ドル (190の国・地域) 研修員受入人数 (2013年度末まで(暫定値)) 約53万8千人(175の国・地域) 専門家の派遣人数 (2013年度末まで(暫定値)) 約13万6千人(167の国・地域) 青年海外協力隊/ シニア海外ボランティアの派遣人数 (2013年度末まで) 約3万9千人/約5千4百人(88/71の国・地域) (百万ドル) (支出純額) 1964年 OECD加盟 黄色の枠内は国協企では更新していません(2014年4月15日)。 (2013年は暫定値) 1954年 日本のコロンボ・プラン加盟
14
体制整備期 日本のODAの歴史 コロンボ・プランへの加盟 戦後賠償と平行して行われた経済協力 円借款の開始(1958年) 援助実施体制の整備
コロンボ・プランに加盟し技術協力を開始。 援助実施機関の立ち上げや整理統合、援助の仕組みの多様化などを通じて、 援助実施体制を整備していきました。 体制整備期 コロンボ・プランへの加盟 戦後賠償と平行して行われた経済協力 円借款の開始(1958年) 援助実施体制の整備 ラテンアメリカ協会 日本輸出銀行 日本輸出入銀行 メコン河総合開発調査会 社団法人アジア協会 海外技術協力事業団(OTCA) 海外移住事業団 国際協力事業団(JICA) 国際建設技術協会 海外経済協力基金(OECF) 日本政策金融公庫 国際協力銀行部門 (「新JBIC」)(注2) 国内部門 危機対応 国際協力機構 (「新JICA」) 無償資金協力(注1) 有償資金協力 技術協力 国際協力銀行(JBIC) 国際金融等業務 海外経済協力業務 国際協力機構(JICA) (1950年12月設立) (1952年4月改名) (1961年3月設立) (1954年4月設立) (1962年6月設立) (1963年7月設立) (1974年8月設立) (2003年10月独立行政法人化) (1999年10月設立) (2008年10月再編) (注1)外交政策遂行上の必要から外務省が引き続き自ら実施するものを除く。 (注2)2012年4月1日から分離。 ▲1958年、コロンボ・プラン会議に日本代表として出発する池田国務大臣(右)。左は見送りの佐藤大蔵大臣(ともに役職は当時) 日本の国際的地位の向上と援助の仕組みの多様化 <円借款タイド率の推移> 貿易振興からの脱却 ←1966年羽田空港からマニラに向けて出発するフィリピン第1次隊12人の青年海外協力隊員 ’56 ’70 ‘75 ’80 ’85 ’90 ‘95 ’00 ’03 (年) ■タイド ■部分アンタイド ■一般アンタイド
15
日本のODAの歴史 計画的拡充期 賠償支払いの完了(1976年)援助の計画的拡充 基礎生活分野に対する 援助の拡大 理念体系化の動き
累次の中期目標に沿ってODAの量的拡充が図られ、 日本のODAがグローバルに展開するようになりました。 賠償支払いの完了(1976年)援助の計画的拡充 基礎生活分野に対する 援助の拡大 % ■アジア ■中東 ■アフリカ ■中南米 ■大洋州 ■欧州 ■その他 ギニアの村落に井戸を建設→ 理念体系化の動き *1990年以降の欧州地域に対する実績には東欧向けを含む。 *回収額が供与額を上回る場合、数値はマイナスとなる。 DAC加盟国中、 第1位の援助大国に 構造調整の動き ←1982年8月21日付毎日新聞 1990年6月23日付毎日新聞→ 草の根レベルの支援の開始 草の根無償資金で購入した医療器具を使ってスラム街で診療するバングラデシュのNGO
16
日本のODAの歴史 政策・理念充実期(旧ODA大綱期) ODA大綱で援助の理念を示す 地域別・国別に援助を強化 分野別援助政策の強化
←第2回アフリカ開発会議(TICADⅡ) (1998年10月21日) 分野別援助政策の強化 減少するODA予算と量から質への転換 1997年の財政構造改革会議の報告に基づき「量から質への転換」をめざす方針が閣議で決定されると、98年度以降のODA予算は一転して減少することになった。 国際的開発目標に対する日本の貢献 ←国連ミレニアム・サミット(2000年9月)で採択された「ミレニアム宣言」を経て ミレニアム開発目標(MDGs)が作成された。 ODA中期政策の策定(1999年) 国民参加の拡大とNGOとの連携強化 1989年:NGO事業補助金制度、小規模無償資金協力の導入 1996年:NGO・外務省定期協議会開始 2000年:ジャパン・プラットフォーム設立 2002年:日本NGO連携無償資金協力、JICAの草の根技術協力の導入
17
日本のODAの歴史 新たな時代への対応 (旧ODA大綱・ODA改革) 新しい時代の訪れ―旧ODA大綱の策定(2003年8月)
現在、日本はリーディング・ドナーとしての指導力を発揮することが求められています。 他方、厳しい財政状況の中、国民の理解と支持を得るための取組の必要性も高まっています。 新たな時代への対応 (旧ODA大綱・ODA改革) 新しい時代の訪れ―旧ODA大綱の策定(2003年8月) 2003年8月29日、ODAを取り巻く国内外の状況の変化を踏まえ、ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性を高め、国民参加を拡大、日本のODAに対する内外の理解を深めるため、日本政府はODA大綱を11年ぶりに改定しました。 同大綱では、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じてわが国の安全と繁栄の確保に資すること」をODAの目的としました。 「ODAのあり方に関する検討 最終とりまとめ」の発表(2010年6月) ODAに対する国民の共感が十分には得られていないとの認識の下、ODAに対する国民の理解と支持を得るための見直しを行い、そのことによってODAをより戦略的かつ効果的に実施していきたいとの岡田大臣(当時)の考えに基づくもの。 ・重点分野を①貧困削減、②平和への投資、③持続的な経済成長の後押しに絞り込み ・NGOや民間企業等、開発関係者との連携強化の必要性 ・情報開示、国民参加による国民の理解と支持を促進する必要性 → 戦略的・効果的で透明性の高い援助の実施へ
18
開発協力大綱の決定 経緯 背景 名称変更 開発協力大綱のポイント
平成27年3月 外務省国際協力局 経緯 1992年 政府開発援助(ODA)大綱の閣議決定 ⇒ 2003年 改定の閣議決定 2014年3月 岸田外務大臣から,ODA大綱の見直しを発表 “新しい時代を迎え,60年の歴史を積み重ねてきたODAも進化しなければなりません。 そういったことから,ODA大綱を改定することを決定させていただきました。” 2015年2月 開発協力大綱の閣議決定 背景 ODAが対峙する開発課題の多様化,複雑化,広範化⇒協力の地平の拡大 (国内格差,持続可能性,ガバナンス,法の支配,中所得国の罠,脆弱性,卒業国の課題) 途上国の開発にとってのODA以外の資金・活動の役割増大⇒連携の必要性 (民間セクター,NGO,OOF,PKO等との連携) グローバル化⇒途上国と共に国際社会の平和,安定,繁栄を作っていく必要性増大 名称変更 ODA大綱 ⇓ 開発協力大綱 開発協力大綱のポイント ⇒ 平和国家として,国際社会の平和,安定,繁栄に積極的に貢献 平和国家として,非軍事的協力により世界に貢献(軍事的用途への使用を回避) 人間の安全保障(人間一人ひとりに焦点を当て,その保護と能力強化) 開発途上国と対等なパートナーとして協働 ⇒ ポスト2015年開発アジェンダに向けて 「質の高い成長」(包摂性,持続可能性,強靱性)と,それを通じた貧困撲滅 =経済成長の基礎(インフラ,人づくり等),脆弱性からの脱却(人間開発,社会開発) 包摂性(格差是正,女性の能力強化,ガバナンス等),持続可能性(環境,気候変動等),強靱性(防災等) 開発の基盤としての普遍的価値の共有,平和・安全な社会の構築 =法の支配,グッドガバナンス,基本的人権,民主化,平和構築,法執行機関の能力強化,テロ対策 特別な脆弱性を抱える卒業国,「中所得国の罠」への対応 触媒としての開発協力 ⇒ 民間セクター等との連携 官民連携,自治体連携,NGO/市民社会との連携 ⇒ 包摂的で公正な開発を目指して 女性の参画の促進,社会的弱者等あらゆる主体の開発への参画 日本の開発協力の理念を明確化 新しい時代の開発協力 触媒としての開発協力 多様な主体の開発への参画
19
開発協力大綱 骨子 1.理念 (1)開発協力の目的 我が国は,国際社会の平和と安定及び繁栄の確保により一層積極的に貢献する
開発協力大綱 骨子 1.理念 (1)開発協力の目的 我が国は,国際社会の平和と安定及び繁栄の確保により一層積極的に貢献する ことを目的として開発協力を推進する。 こうした協力を通じて,我が国の平和と安全の維持,更なる繁栄の実現,安定性及び透明性が高く見通しがつきやすい国際環境の実現,普遍的価値に基づく国際秩序の維持・擁護といった国益の確保に貢献する。 ODAは,開発に資する様々な活動の中核として,多様な資金・主体と連携しつつ,様々な力を動員するための触媒,ひいては国際社会の平和と安定及び繁栄に資する様々な取組を推進するための原動力。 (2)基本方針 ア 非軍事的協力による平和と繁栄への貢献 非軍事的協力による世界の平和と繁栄への貢献は,平和国家としての我が国の在り方を体現するも のとして高い評価を得ている。 今後も,開発協力の軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避するとの原則を遵守しつつ,国際 社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に貢献。 イ 人間の安全保障の推進 人間の安全保障の考え方は,我が国の開発協力の根本にある指導理念。 脆弱な立場に置かれやすい人々に焦点を当て,その保護と能力強化を通じて, 人間の安全保障の実現に向けた協力を行う。 女性の権利を含む基本的人権の推進に積極的に貢献。 ウ 自助努力支援と日本の経験と知見を踏まえた対話・協働による自立的発展に向けた協力 開発途上国自身の自発性と自助努力を重視。自立的発展に向けた協力を実施。 人づくりや経済社会インフラ整備,法・制度構築等,自助努力,自立的発展の基礎の構築を重視。 相手国からの要請を待つだけでなく,我が国から積極的に提案を行うことも含め,相手国等との対話・ 協働を重視。
20
ア 「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅
2.重点政策 (1)重点課題 ア 「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅 脆弱国等には,人道的観点からの支援,脆弱性からの脱却のための支援を実施。 貧困問題の解決には,人づくり,インフラ整備,法・制度構築,そしてこれらによる民間部門の成長等を通じた経済 成長の実現が不可欠。経済成長は,「質の高い成長」(包摂性,持続可能性,強靱性)でなければならず,日本の 経験・知見・技術を活かして,これを支援する。 この観点から,経済成長の基礎及び原動力の確保並びに基礎的生活を支える 人間中心の開発の推進のための支援等を実施。 イ 普遍的価値の共有,平和で安全な社会の実現 「質の高い成長」による安定的発展の実現のためには,一人ひとりの権利が保障され,人々が安心して経済社 会活動に従事し,社会が公正かつ安定的に運営されることが不可欠。 このような発展の前提となる基盤を強化する観点から,普遍的価値の共有や平和で安定し,安全な社会の実現 のための支援を実施。 普遍的価値の共有:法の支配の確立,グッドガバナンスの実現,民主化の促進・ 定着,女性の権利を含む基本的人権の尊重等 平和・安定・安全な社会:平和構築,緊急支援(災害救援等),安定・安全への 脅威への対応(海保,テロ,治安維持,国際公共財等) ウ 地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱な国際社会の構築 地球規模課題は一国のみでは解決し得ない問題であり,ミレニアム開発目標(MDGs)・ポスト2015年開発ア ジェンダ等の議論を十分に踏まえ,国際社会全体として,持続可能かつ強靱な社会の構築を目指す。 (2)地域別重点方針 世界各地域(ASEAN,南アジア,中央アジア・コーカサス,アフリカ,中東,中・東欧,中南米,大洋州・カリブ)に対し,その必要性と特性に応じた協力を戦略的,効果的かつ機動的に実施。 地域統合,地域レベルでの取組,広域開発,連結性強化等の動きを踏まえる。 開発の進展が見られても様々な開発課題を抱える国々や,一人当たり所得が一定の水準にあっても小島嶼国等 の特別な脆弱性を抱える国々等に対しては,各国の開発ニーズの実態や負担能力に応じて必要な協力を行う。
21
3.実施 (1)実施上の原則 (2)実施体制 ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則 イ 開発協力の適正性確保のための原則
ア 効果的・効率的な開発協力推進のための原則 (ア) 戦略性の強化 外交政策に基づき,開発協力方針の策定・目標設定を行う。 ODAとODA以外の資金・協力との連携を図ることで相乗効果を高める。 政策や事業レベルでの評価を実施。結果を政策決定過程に適切にフィードバック。 (イ) 日本の持つ強みを活かした協力 民間等からの提案を積極的に取り入れる。インフラ建設等のハード面のみならず,システム,人づくり,制度づくり等のソフト面の両面で日本の知見と経験を総合的・積極的に活用。 (ウ) 国際的議論への積極的参加 イ 開発協力の適正性確保のための原則 (ア)民主化の定着,法の支配及び基本的人権の保障に係る状況 (イ)軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避 軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避。非軍事目的の開発協力に軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,実質的意義に着目し,個別具体的に検討。 (ウ)軍事支出,大量破壊兵器・ミサイルの開発製造,武器の輸出入等の状況 (エ)開発に伴う環境・気候変動への影響 (オ)公正性の確保・社会的弱者への配慮 (カ)女性の参画の促進 (キ)不正腐敗の防止 (ク)開発協力関係者の安全配慮 (2)実施体制 ア 政府・実施機関の実施体制整備 イ 連携の強化 (ア)官民連携,自治体連携 民間部門や地方自治体の資源の取込み,民間部門主導の成長促進により,開発途上 国の経済発展を一層力強く,効果的に推進。日本自身の力強い成長にもつなげる。 官民連携の推進に当たっては,開発協力が,民間部門が優れた技術・ノウハウや豊富 な資金を開発途上国の課題解決に役立てつつ経済活動を拡大するための触媒としての 機能を果たすよう努める。 中小企業を含む企業や地方自治体,大学・研究機関等との連携を強化。 (イ)緊急人道支援,国際平和協力における連携 緊急人道支援のための国際機関やNGO等との連携,PKOとの連携推進に引き続き取り組む。 (ウ)国際機関,地域機関等との連携 (エ)他ドナー・新興国等との連携 (オ)市民社会との連携 ウ 実施基盤の強化 資金的・人的資源等,持続的に開発協力を実施するために必要な基盤を強化すべく,必要な努力を行う。 (ア)情報公開,国民及び国際社会の理解促進 (イ)開発教育の推進 (ウ)開発協力人材・知的基盤の強化
Similar presentations
© 2024 slidesplayer.net Inc.
All rights reserved.