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赤道QBOの影響の統計的有意性 ― 大標本法に基づいた評価 ―
日本気象学会2005年度春季大会 D106 日本気象学会2005年度春季大会 中層大気 D106 赤道QBOの影響の統計的有意性 ― 大標本法に基づいた評価 ― 内藤 陽子 ・ 余田 成男 (京大・理) 長時間積分データの統計解析 Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, ] ↓ 現実大気データの見直し Naito & Yoden (2005) [SOLA, 1, 17-20] 京都大学の内藤です。 赤道QBOが中高緯度の冬の成層圏・対流圏循環の変動に対して与える影響を調べています。 以前の発表で、数値実験の結果についてお話ししましたが、 今回はその結果をふまえて現実大気データを見直しました。 詳しくは学会のオンライン誌「SOLA」に掲載されたのを見てください。 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究
日本気象学会2005年度春季大会 D106 中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究 現実大気データの解析 e.g. Holton & Tan (1980, 1982) QBOの位相 西風相(W) 東風相(E) 月平均で見た 極渦の状態 強い 冷たい 弱い 暖かい 大昇温 (大規模な突然昇温) 少ない (7回 / 26年) 多い (13回 / 20年) さて、まず復習から行きます。 中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究結果をまとめると、 この表のようになります。 QBOの西風相、つまり赤道域下部成層圏の東西風が西風のときは、 東風相にくらべて、冬の成層圏の極渦は強くて冷たいという傾向が見られています。 大規模な突然昇温、大昇温は、東風相の冬に、より多く起こっていました。 次に、我々が以前行なった数値実験の結果を紹介しておきます。 数値実験 • 現実大気データの解析結果を支持 e.g. Holton & Austin (1991) Naito, Taguchi & Yoden (2003) 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, 1380— ]
Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, 1380— ] 使用したモデル 簡略化した3次元大気循環モデル QBO位相を模した強制 du / dt = …… - aQBO ( u - UQBO ) aQBO : 緩和時間係数 ; UQBO : 基本プロファイル (いずれも赤道域下部成層圏に限るような分布) 長時間積分 • 10800日 x 9とおり 標本の大きさ • 境界条件:常に冬の状態、QBO強制も時間変化なし 我々が使用したモデルは、簡略化した3次元大気循環モデルでした。 赤道域下部成層圏に、時間変化しない帯状風強制をこのように与えて、 長時間積分を9とおり行ないました。 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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対流圏 449hPa での 冬極の温度の 頻度分布 データ数: 10800日ずつ
日本気象学会2005年度春季大会 D106 E1.0 W1.0 Frequency (%) Temperature (K) 対流圏 449hPa での 冬極の温度の 頻度分布 データ数: 10800日ずつ ~1K 9とおりのうち東風相1例と西風相1例について、 対流圏の冬極の温度の頻度分布を描いて比較しました。 成層圏の場合と違って、 対流圏では二つの頻度分布はほとんど重なっており、 ずれていると言ってよいのか見た目だけではわかりません。 この平均値の差の統計的有意性を、大標本法で検定しました。 ほとんど重なっている 差は約1K→ 有意性検定 有意性検定 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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大標本法による、二つの平均値の差の検定
日本気象学会2005年度春季大会 D106 大標本法による、二つの平均値の差の検定 統計量 Z : NW と NE が十分大きければ標準正規分布 標本を取り出した母集団の平均が等しいという仮説のもとで Z が 40.6 に達する確率は非常に小さい (< 10-27) [TW] : TW の平均値 [TE] : TE の平均値 sW2 : TW の分散 sE2 : TE の分散 NW : TW の標本サイズ NE : TE の標本サイズ 大標本法の場合の具体的な検定方法を説明します。 よく使われるt検定だと、二つの母集団の分散が等しい という仮定が必要ですが、大標本法では、その仮定は 不要になります。 二つの標本サイズN、今の例ではどちらも10800ですが、 これが十分大きければ、ここで計算するZという統計量は 標準正規分布に従うとみなせます。 仮説として、標本を取り出した元の母集団の平均が 等しかったとすると、その場合に標本から計算される Zの値が40.6という大きな値に達する確率は非常に 小さいことが、正規分布表からわかります。 したがって、平均値が等しいという仮説は棄却され、 二つの平均値の差は非常に有意であるということになります。 この方法を、今回は現実大気データに適用します。 二つの平均値の差は非常に有意 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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Naito & Yoden (2005) [SOLA, 1, 17-20 ]
Naito & Yoden (2005) [SOLA, 1, ] 解析したデータ NCEP/NCAR再解析データ 年(46年分) 月-1月-2月(北半球の冬)の日々のデータを解析 QBO位相の定義 赤道東西風データ (courtesy of Dr. Naujokat) hPaの平均値を使って、冬ごとに位相を決定 西風相(W) 2316日、東風相(E) 1834日 連続データの独立性 (Laurmann & Gates 1977) 標本サイズ N を N’ N / t0 に置換え t0 : Effective sampling time (日) およそ成層圏で月、対流圏で週のオーダー 今回の解析に用いたのはNCEP/NCAR再解析データ 46年分の12月・1月・2月です。 QBOの位相は赤道東西風データを使って冬ごとに決定しました。 西風相の日が約2300日、 東風相の日が約1800日得られています。 連続する日々のデータの独立性を考慮するため、 時系列データの自己相関係数から effective sampling time を求め、 有意性を計算する際の標本サイズNをその日数で割りました。 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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帯状平均温度の Effective sampling time t0 (日)
日本気象学会2005年度春季大会 D106 帯状平均温度の Effective sampling time t0 (日) 灰色: t0 > 300日 30 成層圏 月(数十日) のオーダー pressure (hPa) 対流圏 20 週(十数日) のオーダー 各緯度・高度における帯状平均温度の時系列に対して effective sampling time を計算すると、この図のような 分布になります。 冬半球の成層圏では月のオーダー、対流圏では週のオーダーの間隔で、 データが独立ということになります。 以下、帯状平均温度についての結果を示します。 10 latitude 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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帯状平均温度のコンポジット差 (K) 青色: 西風相(W)のほうが低温 50 hPa 差が最大 ~4K pressure (hPa)
日本気象学会2005年度春季大会 D106 帯状平均温度のコンポジット差 (K) 青色: 西風相(W)のほうが低温 50 hPa 差が最大 ~4K pressure (hPa) 250 hPa ~2K この図は、西風相の平均から東風相の平均を引いた コンポジット差を示しています。 つまり、成層圏極域に見られる負の差は、西風相のほうが 低温であることを表しています。 差が最大なのは冬極の50hPaで、約4Kです。 このあと注目する250hPa付近では、差の大きさは 半分の2K程度となっています。 このような平均値の差の有意性を、大標本法で検定しました。 latitude 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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帯状平均温度のコンポジット差の統計的有意性 (%)
日本気象学会2005年度春季大会 D106 帯状平均温度のコンポジット差の統計的有意性 (%) 灰色: t0 > 300日 50 hPa 98.30 % pressure (hPa) 250 hPa 最も有意 % 各緯度・高度におけるコンポジット差の有意性を描くと この図のようになります。 最大のコンポジット差を示していた冬極の成層圏50hPaでは、 有意性は98.30%。 それに対して、対流圏界面に近い250hPaでは、最も有意性が 高く99.9985%という値が得られました。 最後に、この点における温度の頻度分布を示します。 latitude 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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冬極の温度の頻度分布: 対流圏 250hPa ~2K 有意性 99.9985 % ほとんど重なっている 西風相(W) 東風相(E)
日本気象学会2005年度春季大会 D106 冬極の温度の頻度分布: 対流圏 250hPa ~2K 西風相(W) 東風相(E) 2316日 1834日 有意性 % 最初に紹介した数値実験の結果を思い出してもらえるでしょうか。 ここでも二つの頻度分布はこのくらいほとんど重なっています。 しかし、これだけ重なっていても、平均値の差がこのくらい 有意であるということを、現実大気においても先ほどの検定で 確かめることができました。 ほとんど重なっている 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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まとめ 統計解析手法を提案 • 中高緯度成層圏対流圏循環の変動に対する 赤道QBOの影響の統計的有意性を 大標本法で検定
日本気象学会2005年度春季大会 D106 まとめ 統計解析手法を提案 • 中高緯度成層圏対流圏循環の変動に対する 赤道QBOの影響の統計的有意性を 大標本法で検定 • 大きなサイズの標本 ← 日々のデータから確保 ※ 連続するデータの独立性を考慮 • 成層圏だけでなく対流圏でも有意な差を検出 この手法の応用 • 他の外的強制の影響もこの手法で調べられる (例: 太陽活動11年周期変動、火山エアロゾル、 エルニーニョ南方振動、等々) まとめます。 中高緯度に対する赤道QBOの影響の統計的有意性を 大標本で検定しました。 連続するデータの独立性も考慮しました。 成層圏だけでなく対流圏でも有意な差を検出できました。 この手法で、QBO以外の外的強制、 たとえば太陽活動11年周期変動などの影響も、 同様に調べることができます。 以上です。 赤道QBOの影響の統計的有意性 ―大標本法に基づいた評価―
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