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医療メディエーション 対話と関係調整のモデル 日本医療メディエーター協会理事 早稲田大学大学院法務研究科教授 和田仁孝
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講義内容 医療事故当事者の心情を知る 医療メディエーション・モデル 謝罪と共感表明 理論的基盤1:ナラティヴ・アプローチ
理論的基盤2:IPI分析 まとめ
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医療事故当事者の心情を知る
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ある患者家族の語りから もし、医療側が真摯に対応してくれていたら きちんと向き合ってくれていたら
だれも訴訟に訴えたいとは思っていませんでした 私たちが求めているのは 法による解決や賠償金ではなく 事故にかかわった医療者が、人間として ごく自然に対応してくれることなのです。 それが満たされないとき、私たちがそうであったように訴訟に訴えるしかないのです しかしそこで得られるものは少なく 満たされないまま、さらに多くを喪うのです
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グリーフとしての事故体験 人身被害=根源にある感情的問題 受苦体験の克服過程としての事故後行動 ⇒「怒り=表層の主張」による支え
人身被害=根源にある感情的問題 受苦体験の克服過程としての事故後行動 ⇒「怒り=表層の主張」による支え cf. キューブラ・ロス『死の瞬間』 グリーフ・ケアとしての事故対応 ⇒「真相を知る」ことの意義 医療者にとっての「真相」と患者にとっての「真相」 ⇒共感とはなにか? 情報量?
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Second Victim としての医療者 (Albert Wu, Johns Hopkins)
多くのエラーのきっかけは日常の業務・システ ムの中に潜んでいる。それによって、医療者や 患者は思わずエラーに遭遇してしまう。医療者 もまたそれで傷つく第二の被害者なのだ。 (Albert Wu, Johns Hopkins)
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事故後の医療者に課される負担 法的制裁 医療界内部=専門医取消、医局からの離脱等 院内での対応=管理者、同僚の反応
民事責任 =保険による賠償 刑事責任 行政責任 =免許停止・剥奪 → 法と社会のミスマッチ 医療界内部=専門医取消、医局からの離脱等 院内での対応=管理者、同僚の反応
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医療事故後の医療者 悲嘆、恥、恐れ、孤立 何のケアもない状態で放置されたら・・ →抑うつ、不安、バーンアウト、自殺 →医療チームへの影響
何のケアもない状態で放置されたら・・ →抑うつ、不安、バーンアウト、自殺 →医療チームへの影響 →患者ケアの質の低下
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2002年 当事者によりNPO設立 ピアサポートシステムの必要性:米国での展開 1999年 Linda Kenney 麻酔事故
→当事者間(患者、医師)交流・赦し →医療機関の対応の冷たさ・情報断絶 2002年 当事者によりNPO設立 Medically Induced Trauma Support Services (MITSS) 2000年 ジョンズ・ホプキンス病院 2004年 ブリガム&ウィメンズ病院 =ピアサポート多職種チーム結成・トレーニング ⇒日本では Heals 設立
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医療メディエーション・モデル
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従来の事故・クレーム対応のかたち 患者側 医療側 対立的構造 病院を背負って 構える 応答がしばしば怒りの燃料補給に・・・
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コンフリクト状況の特徴 1.怒りは二次的感情である。 2.表面的主張は即答せず、受け止めたうえで 問いを返す。
2.表面的主張は即答せず、受け止めたうえで 問いを返す。 ※内容の受けとめでなく、感情の受けとめ 3.トラブル時には情報が貧困 ⇒振舞いや言葉を表層だけで判断 ⇒疑念、人格攻撃 ※情報共有の促進
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メディエーション:三極構造 医療側 患者側 対話促進 病院を背負って 支援 支援 信頼 信頼 院内 メディエータ 病院を背負わない
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チーム対応としてのメディエーション 患者と医療側が向き合う場と対話を支援 =患者対応におけるチーム対応モデル
=患者対応におけるチーム対応モデル ※バレーボールのセッター=メディエーター アタッカー=医療者側(医師・事務etc.患者側) =医療者に代わって患者対応するのではない 必須前提 ・病院上層部の理解 ・公正な調査と正直な姿勢と説明
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メディエーションの体制と応用 1.役職としてのメディエーター ・患者サポート体制充実加算の条件 ・事故後の説明・正直な対話の支援
・患者サポート体制充実加算の条件 ・事故後の説明・正直な対話の支援 ・安全にかかわる苦情時の対話の支援 2.汎用対話モデルとしてのメディエーション (メディエーションorセルフメディエーション) ・IC場面での関与 ・終末期における関与 ・日常診療場面で
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医療メディエーションと中立性 構造的中立でなく、信頼と動態的ケア・不偏性 構造的中立 / 実質的中立 / 過程的中立
・関わる中で構築される患者との過程的信頼が重要 ただし、信頼を基盤に、過程的な不偏性を目指す ・背景としての分け隔てのないケアの理念と姿勢
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医療メディエーターの行動規範 患者=医療者の直接対話の支援(ケア) 自身の意見・見解の表明は一切行わない
自身の意見・見解の表明は一切行わない ・原因説明・事実認定などは一切、行わない ・病院改善策の提案などは、一切、行わない ・法的評価、賠償提示などは一切、行わない 偏らない位置を維持 *問いを立て、深い情報共有を支援 *受け止めによるエンパワー *それによる認知変容の促進
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院内医療メディエーターの実際 ⇒事案の報告・要請 ⇒患者との「1対1」対応 ⇒医療者への対応、症例検討、確認 ⇒メディエーションの設定・実施
⇒患者との「1対1」対応 ⇒医療者への対応、症例検討、確認 ⇒メディエーションの設定・実施 (出迎えからICレコーダーによる記録、文書の扱い etc.) ⇒事後フォローアップ ※翌日フォロー、週一フォロー =向き合う姿勢を示す意義
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海外の医療メディエーション活用 医療機能評価機構プログラムの海外への普及 日本 フランス イギリス アメリカ 呼 称 担い手
呼 称 医療対話推進者 病院メディエーター Mediator Hopital 1. 苦情管理者 (Complaint Manager) 2. PALS (Patient Advice & Liason Service) 1. ombus/mediator (ミシガン、カイザー) 2. Patient Advocate 担い手 医療職 事務職 福祉職 1. 医療職 2. 事務職 メディエーション活用 活用(普及過程) 活用 いずれも 技能として活用あり 義務化 診療報酬 配置の法的義務化 兼務 医療機能評価機構プログラムの海外への普及 ○台湾:医療者継続教育機関でメディエーター研修モデル導入、2013年より普及 ○中国:医療人民調解決委員会の研修プログラムの可能性
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謝罪と共感表明
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責任承認と共感表明 共感表明 責任承認 =謝罪 責任承認:自分に非があったと認める謝罪 共感表明:不利益を受けた人への共感ケア
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情報開示と謝罪促進の動き:米国 1.情報開示・謝罪促進の初期対応モデル(ミシガン大学) 事故発生⇒共感表明+情報開示⇒RCA分析
事故発生⇒共感表明+情報開示⇒RCA分析 (その過程でメディエーターが対話促進、RMは全員受講) ⇒ ミシガン大学関連病院で訴訟が激減 2.謝罪促進立法=Sorry Law 事故時の共感表明を裁判で過失の証拠としない 陪審裁判の国々に広がり ⇒事故時に謝罪しよう!!という動き ⇒その説明・対話にメディエーションを活用
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日本の裁判所における謝罪の意義 裁判所: ・謝罪をもって過失の証拠などにしない ・判例分析⇒謝罪は慰謝料額の減額要素
・謝罪をもって過失の証拠などにしない ・判例分析⇒謝罪は慰謝料額の減額要素 (雑誌『医療安全』11~14号) 患者側: ・共感表明は必要 ・しかし不用意な謝罪をすると紛争誘発
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理論的基盤1:ナラティヴ・アプローチ
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理論基盤としての社会構成主義 社会構成主義 Narrative based Medicine
Narrative Therapy Narrative Mediation =現実(Reality)は、認知的に構成される。 cf. 青い海、白い壁=実は誰も壁や海そのものを見ていない =媒介としてのナラティヴ(物語、現実を見る眼鏡)
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ナラティヴ:「現実を見る眼鏡」 ナラティヴを通して解釈された「現実」 言葉 出来事 ナラテイヴ 世界 認知フレーム 世 知 界 観 経 識
験 ナラティヴを通して解釈された「現実」 Cf. ヘパリンと間違えインスリンを投与してしまいました。グルコースを 投与して、ICUでモニターしています。
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コンフリクトはなぜ起こるか 社会構成主義 ナラティヴを通して解釈された「現実」 言葉 出来事 事故 医療者のナラティヴ世界
患者の ナラティヴ世界 言葉 出来事 事故 認知フレーム 認知フレーム 医 学 教 育 患 者 の 日 常 医 療 の 日 常 経 験 経 験 ナラティヴを通して解釈された「現実」 社会構成主義
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コミュニケーションと誤解 Attacking:攻撃の語り Evading:回避の語り Informing:説明・情報伝達
Opening:心を開く語り Uniting:情報共有促進の語り Informing が attacking に受け取られるリスク 不安・不満(?)=受止めてから応答
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理論的基盤2:IPI分析
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語りを分析し、深いニーズを把握:ハーバードモデル
交渉と紛争解決についての実践モデル開発 Getting to Yes (『ハーバード流交渉術』) 紛争のIPI分析手法 ⇒心理学、社会学、ゲーム理論、文化論 様々な紛争領域(外交、ビジネス、民事紛争) に適用可能なモデル
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ポジション ポジション インタレスト インタレスト
IPI分析モデル Harvard Law School Program on Negotiation Getting to Yes by Fisher & Ury イシュー イシュー 医療側 患者側 イシュー 争 点 ポジション ポジション 表面化した多様な対立点 (事実主張//要求主張//感情) インタレスト インタレスト 潜在した不可視の欲求
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IPIによる整理 FACE(語りの4分類) ・イシュー(論点)ごとの整理 ⇒ここからインタレストを推測
事実(Fact) =何をどう見ているのかを把握 怒り(Angry)=何が怒りの根源か 要求(Claim)=表層の要求に囚われない=データと認識 感情(Emotion)=深層のインタレストに近い ・イシュー(論点)ごとの整理 ⇒ここからインタレストを推測
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NBCモデル:コンフリクトの生成過程 非日常 混乱 感情 問題の認知 (ネーミング) 隠れた対立 帰 責 (ブレーミング)
問題の認知 (ネーミング) 隠れた対立 帰 責 (ブレーミング) 潜在 顕在化 対立の表出 (クレーミング) 表面化した対立
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まとめ
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医療メディエーションの導入と効果 病院の対話文化の向上へ 事故対応の専従者(医療対話推進者) 病棟・診療科等の管理者
=現場のトラブルを芽のうちに摘む =対患者、対スタッフに活用 各スタッフレベルへの浸透 =コンフリクトの予防 =日常のコミュニケーションの向上 病院の対話文化の向上へ
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