歴史の謎はインフラで解ける ~文化も歴史も社会も経済もすべて土木がつくっている~

Similar presentations


Presentation on theme: "歴史の謎はインフラで解ける ~文化も歴史も社会も経済もすべて土木がつくっている~"— Presentation transcript:

1 歴史の謎はインフラで解ける ~文化も歴史も社会も経済もすべて土木がつくっている~
歴史の謎はインフラで解ける ~文化も歴史も社会も経済もすべて土木がつくっている~ 京都大学大学院 藤井聡

2 土木が「文明」を産み出した (第一章第一節)
土木が「文明」を産み出した (第一章第一節) ・「人間」とは、文明を持つ動物である           (文明=civilization 野蛮・野生) ・「土木」とは、文明をつくる営為         (土木=civil engineering)    ※ 土木が文明の器(or 基板=インフラストラクチャー)をつくる ・そもそも…… 黄河文明、メソポタミア文明、インダス文明、エジプト文明はいずれも、大河との 共生を実現させる灌漑と治水という「土木」の営為があってはじめて、生まれた。

3 パンフレット:「土木という言葉について」(土木学会)より

4 土木が「文明」を産み出した(第一章) 築土構木の思想 (第一章 第二節) ・日本では、土木という言葉は「インフラ/国土をつくる」という
築土構木の思想 (第一章 第二節) ・日本では、土木という言葉は「インフラ/国土をつくる」という   civil engineeringの意味に加えて、  「救済行為」「利他行」(人助け)という意味も込めて使われてきた。 ・例えば、土木技術者には次のような「倫理要綱」が定められている。 土木技術者は、 土木が有する社会および自然との深遠な関わりを認識し、 品位と名誉を重んじ、 技術の進歩ならびに知の深化および総合化に努め、 国民および国家の安寧と繁栄、 人類の福利とその持続的発展に、 知徳をもって貢献する。  (土木学会・土木技術者倫理要綱 平成26年5月9日 改定) (趣旨)土木に携わる技術者は、日本や世界に役立つべく、(一体何が「役にたつ」ということなのかという哲学的な問いを問い続けながら)努力し続ける存在だと宣言

5 土木の精神は「築土構木」に現れている (紀元前2~1世紀頃中国の古典哲学書・淮南子(えなんじ) より)
「昔、民は湿地に住み、穴ぐらに暮らしていたから、 冬は霜雪、雨露に耐えられず、 夏は暑さや蚊・アブに耐えられなかった。 そこで、聖人が出て、民のために、 「土を盛り材木を組んで」(=築土構木) 室屋を作り、棟木を高くし軒を低くして雨風をしのぎ、 寒暑を避け得た。 かくして人びとは安心して暮らせるようになった」 ーー> 土木とは「聖人の利他業」であることを示している。

6 土木こそが、ファウストの究極の美であった
(第二章 第五節) ゲーテは「ファウスト」を通して「究極の美」を描こうとした。そして彼が選 んだ「究極の美」は「土木」だった。 <ファウスト>(ゲーテ、1833)のあらすじ。 天才科学者ファウストは、天才であるが故に、凡人にはわかり得ない究極の真実や美を求 めていた。そこで、彼は悪魔メフィストと「究極の美を見せてくれ。もしお前が俺に「こ の瞬間よ止まれ、汝はいかにも美しい!」と言わせることができるなら、自分の魂を持って 行ってもいい」と約束する。 その後、悪魔メフィストはファウストにあらゆる体験をさせる。恋愛や恋愛を巡る悲劇、 戦争の勝利等々・・・・しかし、ファウストは満足しない。  しかし最後に、「荒海という大自然と闘い、新しい土地を作る大土木事業」の槌音を耳 に為たとき、 「この瞬間よ止まれ、汝はいかにも美しい!」と叫んだのである。

7 <ファウスト より抜粋> 「最後の仕事が同時に最高の干拓事業なのだ。おれは数百万の人々に、安全 とは言えなくとも、働いて自由に住める土地をひらいてやりたいのだ。野は 緑に覆われ、肥えている。人々も家畜もすぐさま新地の土地に気持ちよく、 大胆で勤勉な人民が盛り上げたがっちりした丘のすぐそばに移住する。外側 では潮が岸壁まで荒れ狂おうとも、内側のこの地は楽園のような国なのだ。 そして潮が強引に侵入しようとして噛みついても、共同の精神によって、穴 を塞ごうと人が駆け集まる。 「そうだ、おれはこの精神に一身を捧げる。知恵の最後の結論はこういうこ とになる。自由も生活も、日毎にこれを戦い取ってこそ、これを享受するに 値する人間といえるのだ、と。従って、ここでは子供も大人も老人も危険に 取りまかれながら、有為な年月を送るのだ。おれもそのような群衆をながめ、 自由な土地に自由な民と共に住みたい。そうなったら瞬間にこう呼びかけよ う。止まれ、お前はいかにも美しい、と。」 」

8 千年の都・京都と土木 (第二章 第三節) ◆ 奈良・京都の文化は、奈良・京都という都市があったから花 開いた。そしてその都市を造ったのは「土木」だった。 ◆例えば京都に都市をつくるために必要だったのが、  「水運」と「上下水道」だった。   ー水運:京都南部に位置する「巨椋池」~淀川~大阪(難波津)   ー下水道:「堀川&東西の溝」での高低差を利用した排水システム。        (今日のような緻密な排水システム。なお、上水は地下水を利用)

9 信長の天下統一と土木 (第三章 第三節) 信長が天下統一に大きく駒を進めることができたのは、「農地整備」と 「道路整備」の土木を徹底的に進めたから。 「桶狭間の戦い」の時、既に信長の石高(農業生産力)は、農業土木に 熱心で無い今川義元を凌駕していた。だから、あの勝利は、半ば「必然 的」なものだった。 信長は道路を「経済活動を支えるための都市地域インフラ」として整備 するという、戦国の世では誰も思いつかなかった大きな発想の転換を図 り、道路ネットワークを整備していった。    → 領地の経済を大いに発展させ、      これによる「富国強兵」が可能となった。

10 <信長の道路事業> 道路に「街道・脇道・在所道」の3つのランクを設け、それぞれの「道 路規格」を統一して、平定した領地に「計画的」に整備。 現代風に言うならそれぞれ、「国道・都道府県道・市町村道」に対応。 しかもそれらを、放射状に整備された「街道」の合間合間に脇道、在所 道を縦横に張り巡らしていくことで「蜘蛛の巣状」に形成していった。 こうした道路の「ネットワーク」が形成されたことで、「商人達の往来 が増え、商品流通が活発」となっていった。 このように信長は「楽市楽座」が有名だが、その経済政策の根幹は   「政府主導」の経済成長を目指した「大きな政府論者」であった。

11

12 浜口梧陵と稲むらの火 (第四章第二節) 7つの教訓 1)「リーダー達」が何をなすべきなのか―――その精神性 2) 人間はカネより尊い 3) 最悪の事態のイメージの不可欠性 4) 避難の不可欠性 5) ソフト対策の重要性(リスク・コミュニケーション) 6) 震災復興における 財政政策(防災減災ニューディール)の不可欠性 7) 堤防・ハード対策の抜本的有効性(命だけでなく資産を守る。つまり街を根こそぎ守るのが堤防) ●濱口の高潔な精神が、村人全員を大津波から救う  ・ 1854年11月5日の夜大地震(安政南海地震)が勃発。大津波が紀州藩広村(和歌山県広川町)をまさに直撃せんとしていた。  ・その時村人たちは津波が来ることも知らず「逃げる」そぶりを全く見せなかった。  ・「高台」に居を構える村の郷士、濱口梧陵は、その様子を目にし、「このままでは全員が津波で死んでしまう」という事を認識。そして、彼らを救うためにどうすべきかを瞬時に考え、自らの収穫したばかりの稲を積み上げた「稲むら」に火を放った。  ・何も知らない村人たちは、「郷士の家が燃えている!!」と驚き、その火を消すため、皆、高台の濱口の家・稲村に駆け付けた・・・・結果、村人たちは全員救われた。     ※この物語は1937(昭和12)年から10 年間にわたり小学校国語読本(5 年生)に掲載。 ●「被災による地域消滅」から広村を救った濱口の「防災減災ニューディール」  ・津波によって家も仕事を無くした村人たちは途方にくれ、多くが村から立ち去ろうとした。  ・このままでは村の「消滅」は必至。これを乗り越えるため、濱口は再び資材をなげうち、「津波堤防」を作ることを決意。4 年の歳月をかけて高さ5 m、長さ600 mの堤防を完成させた。  ・この事業によって村人たちは震災後はじめて「仕事」ができ「所得」を得ることができ、それを元手に再び、広村で暮らし始めることが可能となった。  ・この広村堤防は、約100年後の1946年の大津波(昭和南海地震)から村の大部分を守った。

13 交通インフラが日本の国土構造を決めた (第五章 第三節) 明治9年 平成22年 北前船が物流の主力 新幹線整備 人口上位15都市
 (第五章 第三節) 明治9年 人口上位15都市 平成22年 政令指定都市 北前船が物流の主力 新幹線整備 ・新幹線がない都市は全て凋落! ・新幹線がある都市は成長!

14 現代日本の「衰退」の原因 (第六章 第一節)
現代日本の「衰退」の原因 (第六章 第一節)  歴史を振り返れば、文明の黎明も、古代・中世のローマや京都の発展も、近世の江戸・富山の発展も、そして、日米の近代の発展も全て、「土木」がその背景にあった。  だとすれば「現代の日本」の発展には、土木は不可欠であろう。 しかし、 土木への支出(公共投資)は、 過去30年の間、激減し、 半分になってしまった! 半減!

15 しかも例えば、道路インフラの整備水準は、 先進国中、最も低い。

16 ちなみに諸外国の高速道路網(80km以上)は…

17 でも、日本は・・・

18 にも関わらず、 インフラ費用を 減らしているのは日本だけ 多くの外国は大幅に増額! ↓ これで、 日本が衰退しない わけがない・・・
にも関わらず、 インフラ費用を 減らしているのは日本だけ 多くの外国は大幅に増額! ↓ これで、 日本が衰退しない わけがない・・・

19 実際、この体たらく・・・

20 しかも、地方のインフラは いつまでたってもできないので・・・
しかも、地方のインフラは         いつまでたってもできないので・・・ 日本だけ、 首都一極集中!

21 だから日本が一極集中を緩和し、 「成長」するためには、 諸外国と同様に、これくらい作るのが必要ではないか?

22 「土木」という営為の構造 (終章) こう考えれば、インフラが歴史や文化や社会や経済をつくっているのも、 当たり前のことなのである。

23 おわりに・・・ 土木が人類のなし得る最も偉大な営為である以上、 それに携わるためには、 その自覚と教養の双方が求められているのである。
本書はその自覚と教養の双方の形成を 読者の内に形成せしめんとするものであり、 それこそが、本書が構想する「土木学」である。 (P204より)


Download ppt "歴史の謎はインフラで解ける ~文化も歴史も社会も経済もすべて土木がつくっている~"

Similar presentations


Ads by Google