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2017/12/07 担当講師 後藤嘉宏 (筑波大・情報学群・知識情報・図書館学類・教員)
メディア社会文化論 2017/12/07 担当講師 後藤嘉宏 (筑波大・情報学群・知識情報・図書館学類・教員) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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次は8.放送の章・・・ まず、本題に入る前に(結構本題と被る)、放送を4つの観点から、他のメディアと比較 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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放送と他のメディアを比較する観点 1)広告依存度の高さ(民放のみだが)の問題 2)公平性の問題 3)事件(あるいは話題というべきか)の発生源としての側面の問題(報道に対する制作の比重の強さ) 4)下請け依存度の高さ 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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広告収入と放送 全く商業性のないNHK 広告収入だけで成り立っている民放 →非常に対照的 放送が両極で、その中間に他のメディア 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア相互の広告収入依存① 本・・・広告・零か、あっても自社出版物のみ(8の倍数による余りのみが広告スペース) 雑誌・・・ある程度広告収入依存(『文藝春秋』3億円/1号)ファッション雑誌だとモデルの来ている服のほとんどがタイアップというか広い意味での広告 新聞・・・かなり依存(「2007年の日本の新聞広告費は9462億円と、総広告費の13.5%」 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア相互の広告収入依存② ネット情報・・・それ自体が広告的なものと、そうでないもの双方。そうでないものも広告をバナー等で出しているものなど様々である。 ブロガーの存在・・・客観を装ったサクラ・・・極めて「悪質」 純粋に無料でかつ広告さえ出ていないものでも、ネットでは「売名」「広報」という広い意味での「広告」はなされていると思われる。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア相互の広告収入依存③ 大学のウェブページも受験生と研究費集めという広告塔の意味も。 民放・・・全面的依存 NHK・・・零依存(一応・・・) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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なぜ広告依存は歪むか? スポンサーを批判(刺激)するような、記事や番組を作れない 直接スポンサーを批判せずとも、政府等が放送に不満→スポンサーに圧力→テレビ局はその意見を飲まざるを得ない。1962年、東芝日曜劇場のドラマ「ひとりっ子」への放送中止圧力 視聴率至上主義に 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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本の売れ行きだって数字では?1/2 視聴率至上主義=本の売れ行き至上主義? 基本は同じ、しかし・・・ 本は売れなかったとしても、その本の出版費用が回収できないのみ。会社の評価も下げない。ベストセラー倒産という言葉もあり、ベストセラーも必ずしも歓迎されない 初刷が売れずにいてもロングセラーになるものも。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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本の売れ行きだって数字では?2/2 本はロングセラーが初期投資の必要のない美味しい商品になる(古い定番の薬同様、コピーすれば高い値段で売れる。「薬、糞商売」)。評価さえされれば良書が報われる世界 他方、テレビの視聴率向上は広告単価を上げるし、視聴率低下はスポンサーの撤退に・・・・次に響く。最近はドラマ打ち切りも 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平性の問題 (これは今年度も既述) 放送のfairness doctrine公平原則・公正原則 国民の共有財産としての電波・・・これを分け与えるのが免許制 Fairな放送をするという条件で、総務大臣が免許を与える Fairでなければ免許剥奪も ←fairを基準にすべきなのに、政府の意向に反したものを牽制する武器に使う懸念もあるが 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平性について他のメディアとの比較 放送・・・厳密な公平性。ただし政府の方に多少顔を向けざるを得ない。 新聞・・・自主的な公平性(不偏不党性)。ただし社による色はあり。 出版・・・公平性は標榜しないし、期待もされない。 ネット・・・放送と通信の境界と位置づけられる。しかし公平性無視、基本保守的というか右派の意見が強い。(政府の側は放送とみなす傾向) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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事件(イベント)の発生源① 新聞のところで、 《新聞社の事業部=事件の発生源、ニュース枯れ対策、ある種のやらせ》と申し上げた しかし考えてみればテレビは報道<制作 (今は「報道番組制作」という言い方も結構あるが) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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事件(イベント)の発生源② 制作の仕事・・・ドラマ、アニメ、バラエティ、ワイドショー、クイズ番組、スポーツ中継等を作る・・・時代の空気を伝えるが、ドキュメンタリー以外は外の事件を伝えるのではない 基本的に自分たちが「事件・イベント」を制作 新聞社の脇役だった事業部や文芸部(新聞小説等)の業務・・・テレビでは主役 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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事件(イベント)の発生源③ 新聞、書籍など他の既存メディアとの差別化の必要性 普及の当初は一家に一台だった・・・色々な世代、性別の家族のメンバーが共通して興味をもてるもの・・・娯楽的内容 →当然セグメント化している現代社会では、こ の家族の娯楽という理由は弱まっても当然ではあるが・・・ 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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事件(イベント)の発生源④ ドラマの制作発表の記者会見を行うこと・・・テレビ局自体が、ニュースの発信源となっている。取材する側でなく、される側になっているという転倒・倒錯。 ・・・マクルーハンのテレビへの肯定的評価も、このような娯楽メディアとしての現状に理解があってのことなのか。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
下請け依存度の高さと メディア比較① テレビ局は制作部門を独立させたり、制作を制作会社に外注する傾向に。しかも看板番組でさえ。 Cf.出版①本づくり 「制作」に相当する「原稿書き」・・・作家先生に外注 「印刷」「製本」・・・専門業者に外注 Cf.出版②雑誌づくり 「原稿書き」・・・記者と外部のフリーランス半々か。文芸誌なら作家先生 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
下請け依存度の高さと メディア比較② とはいえ、いずれの出版も編集プロダクション依存の部分増えている。 新聞・・・記事はほとんど記者。印刷も内部。ただし通信社依存等の問題も。(新聞の自己完結・丸抱えと対比的というかここのみ矛盾) ネット・・・ニュース系ブログであっても記事はほとんど新聞社系のを引用。情報源としては既存メディアに寄生。依拠しつつ、「マスゴミ」と揶揄って批判する自己矛盾(昔のゼミ生、卒論で『永遠の夫』に依拠してこれを扱った) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
8.放送 8.1新聞と放送 8.1.1機能面での比較 新聞の機能 1)事実の報道機能 2)言論批判機能 それら以外は新聞社の事業部の仕事と・・・これはあえていえば娯楽機能 テレビはこの娯楽機能の比重が大きい 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
新聞社事業部の展開するスポーツイベント、展覧会・・・教養・娯楽機能として捉えうる。 そのような教養・娯楽機能が、「事実の報道」と「言論・批判機能」といった、ジャーナリズム機能と同程度に(あるいはそれ以上に)重視されるのが、テレビ 実際、芸能ジャーナリズムにとってはそれが事実の報道の対象となる 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
8.1.2制度面での比較・・・公平原則 新聞社は政府の介入を防ぐために「丸抱え」の体制 放送局は制度上、政府の介入を許す(公平原則ゆえに)・・・免許制・・・制度上は免許が更新されない可能性を常に持ち続けている しかしCATVにまで、放送法の適用範囲とする・・・異論も(電波の稀少性という根拠が・・・?) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・春日エリア)担当教員・後藤嘉宏
公平原則と放送・通信の垣根 通信に放送が融合しつつあるのが、現代のメディア状況・・・例 ワンセグ 通信は基本的に通信の秘密が守られ、それは言論の自由よりも一層、制限されてはいけない領域(このあたり今年度既に説明) 通信と放送の融合・・・今まで通信を放送の規制の網に(ネットでの誹謗中傷)・・・今後、公平原則をテレビ同様求めるのか。 2016/12/8 メディア社会文化論(筑波大・春日エリア)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
私信メールの転送・鍵垢のスクショ晒し・・・自分が送る場合、ある程度通信のつもり。ところが受け手の立場に立つと、放送水準で受けとる・・・メールは郵便の訳語だが、後者は通信だが、前者は事実上、放送(万人に開かれうる・・・そういうシステム設計) ネット全体を放送の範疇でカバーするという考えにも一定の妥当性あり 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
公平原則と資本持ち合い・系列① 公平原則との絡みで、民法テレビ局は資本の持ち合いが制限される。 しかし現実には二つの局面で系列化 1)キー局とネット局 2)新聞社とキー局 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平原則と資本持ち合い・系列② 在京キー局と地方ネット局との系列化(取材・報道網) JNN(TBS系列)・・・全国28のネット局(2016年のデータ) NNN(NTV日テレ))・・・30(2012年現在) FNN(CX(フジ))・・・28(2015年現在) ANN(テレ朝)・・・26(2011年現在) TXN(TX(テレビ東京))・・・6 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平原則と資本持ち合い・系列③ 系列局への排他協定(JNNの例) 「加盟局は「JNNニュース」(JNNのタイトルのつくニュース番組)については、必ず同時ネット放送を行うこと」 「加盟局はニュース素材を加盟局のみに配信し、他系列局には一切、配信しないこと」 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平原則と資本持ち合い・系列④ キー局と全国紙5紙の提携関係(資本参加・取材協力・人的交流) 毎日新聞 TBS・・・元々はTBSの方が子会社だったが、毎日の経営危機等で親子逆転に 読売新聞 日テレ・・・かつては巨人戦のホームゲームの独占中継。保守の読売の系列企業の割には、日テレには政府への批判的な論評もある。 サンケイ フジテレビ・・・フジサンケイグループ。ライブドアのニッポン放送株取得問題で話題に。フジは保守反動のサンケイの系列会社であるが、政治よりは面白さを追求している。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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公平原則と資本持ち合い・系列⑤ 朝日とテレ朝(すでに申し上げた) 日経とテレビ東京(ブランド価値の高い新聞とキー局で一番人気のないテレビ) キー局とネット局は人的交流や資本関係でないが、番組がほとんど同じ・・・影響は強い キー局と新聞社の関係は、資本関係、人事の関係に及ぶ・・・政治色には一貫性がない←資本の無方向性のなさるワザ 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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8.1.3収益構造面での比較① 比較そのものは、8の前振りで言っているのでNHKを中心に NHK・・・受信料収入によって成り立っている NOT国営放送 BUT公共放送(似てはいるが) 税金が財政基盤ではない(よって国営ではない) 政府寄りではなく、かといって商品としての情報を売るのでもない。「公共性」を重視する 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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収益構造面での比較② 税金で運営されていないし、広告も流していないNHK・・・政府に対しても、資本家に対しても、一定の距離を保ち、中立性を保持できる・・・公共性の由来(cfハーバーマスの公共性) 公であり、私的な利益と反しつつ、国家や政府ではない領域・・・「社会」「市民社会」 (この区別ができていないのが似非社会主義国・・・偉大なマルクスの哲学を誤解した指導者たち) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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収益構造面での比較③ 受信料支払い拒否の連続・・・政府は、NHK受信料を税金の形で納めさせたら、と奨める。 ・・・対するNHK側、その意見に抵抗(政府の意見 に従う放送を拒む) 受信料収入に頼っているNHK・・・公共的な、あるいは、いいかえると社会的な問題に関わる事柄についての放送が多い(多かった) 広告収入に依存している民放・・・視聴率が稼げる娯楽的内容の放送が多い 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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収益構造面での比較④ これが逆にいうと、授業レポートでNHKに反撥する声が大きい理由にも 広告収入に頼る民放→娯楽性高い→楽しい→なのに無料(以前申し上げたように「無料」は見かけだけ。それに我々の時間資源こそが一番の希少財) 受信料に頼ればよいNHK→お堅い。つまらない→なのに有料(もっとも後藤はNHKの回し者ではありません) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?1/10 (11/16付け資料の終盤と議論がいくらか重なるが)
商品の肯定的側面 一定の水準にあるものが商品に アマチュアに対するプロフェッショナル お金を払って見聞きするに価するもの=商品 我々の論文だって紀要や学会誌は商品ではないが、本は一応商品で、文系は本を書いて評価される大学も多い。(以前の東大法学部助手→助教授選抜の基準、学術書は学術論文10本分にカウント。ある地方国立大は1対1に過ぎないが) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?2/10 塾の授業は公立高校の授業より遙かに面白い(教採落ちた人が塾講になるケースは多いのに) 予備校講師の授業は大学専任講師の授業より遙かに面白い(大学院出て大学専任教員になれなかった予備校講師も少なくないのに。実際、春日エリアの元教員で元予備校人気講師だった人は複数知っているし、かくいう詰まらぬ授業する私も短期間某予備校で教えていた) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?3/10 商品の否定的側面 利潤を増やす。資本の増大に役立つ。しかし資本は無方向。(前々回位にテレ朝に即してやった内容) 売れなくたって優れているもの、優れていなくても価値のあるものがある。・・・多元的な価値 このような多元性を一元的な価値に変えてしまう(「金の卵を産む鶏」のみ可愛い) 無限の比較地獄に陥らせる 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?4/10 真善美の価値 一致?それぞれの距離も 真実・虚偽、善・不善、美醜・・・本来、それぞれに固有の論理(振り分けの基準) あとの二つでのマトリックスを想起せよ。 {美しく不善}な人と{醜く善なる}人 前者が社会でもてる→皆が好む→商品価値あるとされる→メディアに多く露出できる 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?5/10 テレビは悪役以外、基本的に美男美女で構成される。少なくとも、ドラマの世界は現実世界より遙かにイケメン美女揃い。 {美しく不善}な人>>>{醜く善なる}人という価値付け 幼少より刷り込まれる あるいは「美しい人は善、醜い人は悪」という先入観をいだくように 「悪役=不細工の配役」ゆえ 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?6/10 そして価値=価値あることでありかつ価格が高いことでもある 心理学の実験では・・・ テレビで美しさを追求するように仕向けられる→美しいものを欲しがる→価値あるものは高い →お金を至上と考える価値観も埋め込まれる 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?7/10 お金を稼いで広告に出た「美しい」(美味しい・面白い)商品を買いましょうと仕向けられる こういった循環が民放でのコミュニケーション ルックスがよく弁が立つ政治家が人気に 内容よりはプレゼンの善し悪しで勝負(某地方国立大の卒論審査同様) (もちろんマクルーハン流にはプレゼン=メディアでそれがメッセージ=内容であるが) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?8/10 中身(言葉の力)で勝負するという民主主義の基本理念への脅威 〔別の側面から〕 時代を先導する偉人・・・一部の支援者・多くの周囲の無理解 偉人の模倣者・追随者・・・多くの人々が理解 前者は商品社会だと報われず、後者のみが良い思いを 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?9/10 ゴッホの絵・・・現代で数億円、当人は二束三文で売っていた絵が。シューベルトその他大作曲家・・・8割方生前、極貧。彼らを演奏する指揮者・ピアニストの大物・・・豪邸に住む 分かりやすさ、耳当たりの良さは大事 だけどそれのみを重視する社会は、新たな活力はないし、一元的で不健全 結論→商品性には一長一短ありというか一長三短ある。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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では、商品性って悪いのか?10/10 商品性の悪いことの(この場合、資本を富ませるか否かは措いて、金が絡むことを商品性と捉えるが)典型 性の商品化、政治の商品化の以下のものは特に悪とされる(最も大事なことをお金で換算することは悪という発想) 売春 買収・賄賂 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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補論 もっとも売春=悪という決めつけが良いかどうかは、哲学・宗教・社会学の面で議論はある ジンメル(社会学者・哲学者)『貨幣の哲学』・・・封建的な人間関係を打破する貨幣の契約的な良い面を窮極まで推し進めたのが売春 法然上人「遊女こそが救われるべき」・・・親鸞上人の「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや」の原型 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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芸術が基本的に美を目指したことと商業主義的メディアが美男美女で世界を構成することとも関係はありそう。 ジンメルは『芸術哲学も主著で、かつゲーテその他への文芸論や恋愛論も多く著した。 広告は我々の時間を不当に奪うというが、『広告批評』という雑誌もあるように、広告自体が人々の大きな話題となり、多くの人が共通してみているので、コミュニケーションの重要な対象ともなっている。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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NHKの娯楽志向 受信料が当たり前のように支払われた時代・・・NHKは視聴率を気にせず 受信料を支払わない人が増えた時代(「うち、NHK見ていないし・・・」)・・・NHKも視聴率、気にするように 中途半端な柔らかさ。民放で売れたタレント(森田一義、等)を毒抜きして使う(一番みっともない)「ブラタモリ」 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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8.1.4内容面での新聞(及びその他のメディア)との比較
(前振りで述べたが) ワイドショウのような娯楽的な芸能・スポーツ関係の「報道」の比重も強いし、さらにドラマやバラエティ(これはワイドショウ等にも被る概念であろうが)、音楽・歌番組などの自分たちで作り上げる番組も多い。・・・報道ではないが社会を映す鏡 民放ではニュースそのものがバラエティ化。ジャニーズ事務所の人にキャスター委ねる等 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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→自分たち自身が情報の仲介者というより発信源である部分が新聞に較べて遙かに強い C.W.ライトのマス・メディアの4つの機能 1)環境監視活動 ニュース 2)社会的調整活動 編集・解説・指示 3)文化の伝承 4)娯楽機能 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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後藤将之の「新聞」の二つの機能のうちの 事実の報道機能は1)環境監視活動に 言論・批判機能は2)社会的調整活動に相 当 テレビ(放送)の教養記事や番組は3)文化の伝承であるし、標準語化とかいう意味なら全てのコンテンツが該当 そして4)の娯楽機能がテレビに強い 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』 (今年度は既にある程度説明済み)
ハバーマスの議論 公共圏参与資格が「教養と財産」 「財産」・・・私的利潤に囚われて発言しないための基盤→これを敷衍すると 1)経営基盤のしっかりしたメディアであるほど、利潤に囚われた言説をしない 2)広告収入依存のメディアほど、利潤に囚われた発言をする 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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ハーバーマス流の公共性を巡る諸メディアの比較 NHK・・・もっとも公共性が高い 本・・・大抵は自社広告が少し載るのみで、NHKの次に公共性が高い 新聞・・・本に次ぐ 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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雑誌・・・様々で、学術雑誌のように本以上に広告の少ないものもあるが、ファッション誌のように広告依存、記事そのものも広告的なものの方が多い(modelの着ている服のほとんどすべてに、売っているショップ名と価格の記載がある) 民放・・・最も公共性がない 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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NHK、民法、二種類の放送が、公共性という観点で諸メディア並べると、両極に。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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まとめ① メディアの特性の違いが色々。 下手なメディアミックス戦略のように、それぞれをきちんと翻訳し移動できる訳ではない。(例、アラン『諸芸術の体系』) 「メディアはメッセージ」であるから。 共通感覚論で申し上げたように、それぞれの感覚配分(五感の配分比率)で、ものの見え方は変わりうる(社会学者道を守るのなら技術決定論は排除しないといけず、困ったもんだが) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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まとめ② メディア相互で五感の配分も違えば、商品性の割合も違うし、客観性の有無も違うし、速報性・遅報性も違うし、空間的広がり(水平性・フロー)を目指すか時間的な広がりを目指すか(垂直性・ストック)も違う アランのいうようにそれぞれの芸術(通常は感覚を特化したもの)に固有の見方があるように、メディアにもそれぞれの固有のとらえ方=翻訳不可能性(というか翻訳は努めてすべきだが、翻訳不可能な部分は残るというべき) 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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まとめ③ 結局各々のメディアなりの真実 捉える角度による相違がそれぞれある(いずれも嘘ではないという意味では真実・でも絶対ではない)ということはメディア内だけでなく、メディア相互についてこそいえよう。 NIE( Newspaper in Education )のような同一メディア内での相互比較以上に、メディアリテラシー向上のためには、異なる類のメディア相互の同じ事象へのとらえ方の比較が必要。 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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まとめ④ 特にそれぞれのメディアの商品性(商品性には功の部分もあることを充分意識しつつ)に敏感になるべし そしてほとんどのメディアが何らかの意味で商品性や数の論理(売れ行き・視聴率・アクセス数)を意識している・・・情報の歪みの可能性あり そのなかで何を元に議論し、話していくかが我々の課題 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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補論 歪みのデメリットをメリットに転換させるロジックが中井正一の「委員会の論理」における「印刷される論理」であったと私は考えている。 商品の嘘。しかし芸術も多くは大きな嘘であった。嘘の歪みによって大量に生産される。大量生産されたものをそれぞれの人が読み、解釈すれば多くの異本に通じる。それらを付き合わせれば嘘は生産的に乗り越えられるという見通し 後藤嘉宏「中井正一「「委員会の論理」の「印刷される論理」の二価的側面について」」『出版研究』 (47), 1-22, 2017日本出版学会 2017/12/7 メディア社会文化論(筑波大・情報学群)担当教員・後藤嘉宏
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