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第8課 エディントン近似 平成17年12月12日 エディントン近似 Eddington Approximation

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1 第8課 エディントン近似 平成17年12月12日 エディントン近似 Eddington Approximation
授業の内容は下のHPに掲載されます。 今回のキーワード エディントン近似 Eddington Approximation

2 μdI(μ,x)/dx=I(μ,x)κ(x)-ε(x)
8.1.平面近似 全ての物理量AがX軸に垂直な平面内で一定と仮定する。 A(X,Y,Z)=A(X) (1) ーX軸方向(上向き)の輻射強度 I に対する方程式は、dI/dx=κI-ε (2) X軸に角度θを成す直線(μ=cosθ)に沿って、輻射方程式を考える。 Iλ (μ,τλ=0) τλ=0 τλ θ Iλ (μ,τλ) 直線に沿っての長さを t とすると、dI/dt= κI-εd l となる。 dt と X軸に沿っての深さdXとの関係は、dt=dx/μ なので、書き直して μdI(μ,x)/dx=I(μ,x)κ(x)-ε(x)

3 μ>0:I(τ,μ)=∫∞τS(t)exp[-(t-τ)/μ]dt/μ = eτ/μ∫∞τS(t,λ)e-t/μdt/μ
例(1):形式解 μdI(μ,x)/dx=I(μ,x)κ(x)-ε(x) :以下 Iλ 、 κλ等を I、κと省略する  dτ=κdX とおいて、  μdI / dτ=I-S     dτは光線に沿っての光学的深さでなく、X軸に沿っての光学的深さ、に注意。 光学的深さ=τの点で、X軸に対し角度θの輻射 I(τ,μ) は下のように 与えられる。 t=0 τ μ>0 μ<0 μ>0:I(τ,μ)=∫∞τS(t)exp[-(t-τ)/μ]dt/μ = eτ/μ∫∞τS(t,λ)e-t/μdt/μ μ<0:I(τ,μ)= -∫τ0S(t,λ)exp[ (τ-t)/μ]dt/μ = -eτ/μ∫τ0 S(t,λ) e-t/μdt /μ =∫τ0 S(t,λ) e-(τ-t) / (-μ) dt / (-μ)

4 表面からの輻射強度 S(τ) 表面から角度θで出る輻射Iの解は下のように与えられる。
I(τ=0 、μ) = (1/μ)∫∞0 S(τ) exp(-τ/μ) dτ 上式を見るとSをSource Function と呼ぶことが納得される。 S(τλ)=S=一定(0<τ<τo)のスラブ表面での I(τ=0 , μ) を計算すると、 I(τ=0 , μ) = (1/μ)∫τo0S exp( -τ/μ) dτ        = S[1-exp (-τo /μ) ] θ I(τ=0 , μ) τo S(τ)

5 例(2):線形解の表面輝度とフラックス θ 下図で光線に沿ったτ=1に注意 τ=0 τ=μ=cosθ τ=1 S(τ)= a + bτ
I(τ=0 ,μ>0) = (1/μ)∫∞0S(t)exp( ‐t/μ) dt       =(1/μ)∫∞0(a+bt)exp( ‐t/μ) dt   = (1/μ)[ a∫∞0 exp(‐t /μ) dt + b∫∞0 t exp(‐t /μ) dt] = a+ bμ= S(τ=μ)    (μ>0) I(τ=0 ,μ<0) = (μ<0) θ 下図で光線に沿ったτ=1に注意  τ=0  τ=μ=cosθ  τ=1

6 Fλ=∫μIλ(μ,τ=0)dΩ= 2π∫10μ( aλ+ bλμ)dμ=2π(aλ/2 + bλ/3)
フラックス   Fλ=∫μIλ(μ,τ=0)dΩ= 2π∫10μ( aλ+ bλμ)dμ=2π(aλ/2 + bλ/3)       Source Function  Sλ (τ)=aλ+bλτ だったから、 Fλ=π[aλ+(2/3)bλ]=πSλ(τ=2/3) である。  温度Tの黒体表面からのフラックスがπBλ(T),ここにBλ(T)は輻射強度、  だったことを考えると、線形大気では、τλ=2/3の深さの所を見て  いると言える。  I(τ=0)  a  0  τλ=0  1/3  τλ=μ=cosθ  S(τ=2/3)  2/3  1  τλ=1  a+b  a+bμ

7 8.2. エディントン近似 (Eddington approximation)
   μdI/dτ=I-S  (平面近似)      モーメント方程式 × ∫dΩ/4π   : × ∫μdΩ/4π  :  この系列はμ2  μ3  と上げても閉じない。式の数<変数の数 モーメント方程式をどこかでむりやり閉じる必要。     エディントン近似    エディントン近似が正確に成り立つ例 (i) 完全等方輻射 I(Ω)=Ioの場合 J=Io, K=(1/2)∫1-1Ioμ2dμ=Io/3 =J/ 3

8 (ii) I(τ,λ,μ)=Io(λ)+I1(λ)μ
Jλ=(1/2)∫1-1I dμ=(1/2)∫1-1(Io+I1μ)dμ=Io(λ) Hλ=(1/2)∫1-1Iμdμ=(1/2)∫1-1(Io+I1μ)μdμ=(1/3)I1(λ) Kλ=(1/2)∫1-1Iμ2dμ=(1/2)∫1-1(Io+I1μ)μ2dμ=(1/3)Io(λ) θ I+ (iii)  I(τ,λ,μ)= I+ (λ) μ>0   = I‐(λ) μ<0 I‐ J=(I+ + I‐)/2 H=[I+ /2 – I‐/2]/2=(I+ – I‐)/4 K=[I+ /3+ I‐ /3]/2=J/3 4H

9 8.3.恒星大気のエディントンモデル (1) (2)
仮定:(a)∫Jλκλdλ=∫ελdλ :輻射平衡 ( Radiative Equilibrium)      この仮定は(1)を とすると分かるように、H=一定 を意味する

10 仮定(b) Jλ(x)= Bλ(T(x)) :LTE
  (c )Kλ(x)=(1/3)Jλ(x)    :エディントン近似 ∫Hλdλ=H,  ∫Kλdλ=K とする。 (1)から仮定(a)によって、          H(x)=Ho       (3)  (2)から、  で定義されるκR=Rosseland mean pacityを使うと (4)

11 平均光学深さτRを τR=∫ρ(x)κR(x)dx と定義すると、
  H(τR)=Ho=一定   K(τR)=τRHo+ C   J(τR)=S(τR)=B(τR)=3(HoτR+C)=(σ/π)T4 (τR) したがって、線形近似S=a+bτの結果が適用できる。       a=3C  b=3Ho である。 Hoは、総フラックスで与えられた一定値。 Cは、τ=0(表面)でフラックスFが4πHであるという条件から定める。

12 S= 3C+3Hoτを線形大気(S=a+bτ)の結果に当てはめると、
モーメントの定義から、F=4πHであるから、    π(3C+2Ho)= 4πHo   C=2Ho/3 結局、H(τ)=Ho=一定    K(τ)=τHo+ 2Ho/3=Ho (τ+ 2/3)    J(τ)=S(τ)=B(τ)=3Ho (τ+ 2/3)=(σ/π)T4 (τ) となる。 

13 ここまでの結果は、エディントン近似モデルの (iii)  I(τ)= I+ (τ)  μ>0
でも考えられる。  H(τ)=Ho=一定=(I+ – I‐)/4   K(τ)=τHo+ C=(I+ + I‐)/6 を解いて、    I+ (τ) =2H(τ)+3K(τ)=2 Ho +3(τHo+ C)    I‐(τ)=3(τHo+ C)- 2 Ho 仮定 : 表面τ=0で、I=Io (μ>0) =0 (μ<0) とすると、C=(2/3)Ho , Io=4Ho    H(τ)=Ho=一定    K(τ)=τHo+ (2/3)Ho =Ho (τ+ 2/3) で、前ページと同じになる。

14 エディントン近似モデル(iii) τ=0 Io 4Ho 4Ho 4Ho

15 エディントンモデルに入るパラメターはHoだけである。
パラメターHoを温度で表現する為、F= 4πHo =σTe 4 で有効温度 Te  を導入する。すると、     Ho=σTe 4/4π    J(τ)=S(τ)=B(τ)=(3σTe 4/4π) (τ+2/3)=(σ/π)T4 (τ)    T(τ)4 =(3 /4)Te4 (τ+2/3) 表面(τ=0)温度 To はTeよりやや低く、      To4 = (1/2)Te4、 (To=0.84Te) また、 T(τ=2/3)=Te  ここにも、τ=2/3 が現れている。

16 T/Te J,H,Kのτによる変化 温度Tのτによる変化 4H 0 2/3 1 2 3 τ 0 2/3 1 2 3 τ J 3H K 2H
/ τ T/Te 0.5 1.5 / τ J 3H K 2H H H

17 8.4.線形大気からの放射 Sλ(τλ)= aλ + bλτλ の場合、 恒星表面からの輻射強度 I(μ,τλ=0)は、
I(μ,τλ=0)=(1/μ)∫∞0Sλ(τλ)exp( -τλ/μ) dτλ       = aλ+ bλμ フラックスFλは、 Fλ = 2π∫10μIλ(μ,τλ=0) dμ   = 2π ∫10μ(aλ+ bλμ)dμ   =π[aλ+bλ(2/3) ] =πSλ(τλ=2/3) I(μ,τλ=0) θ τ=0 τλ=cosθ Sλ (τλ=cosθ) 平均光学深さτR=∫ρ(x)κR(x)dx を使うと、τλ= τR (τλ/τR)=2/3の時

18 その時、LTEを仮定すると、Sλ=Bλ なので
ここに、 Fλ Bλ(Te) 結局、Fλ =πBλ (T)         ただし、 λ κλ = κR Fλ =πBλ [Te] κλ < κR Fλ =πBλ [T>Te] κλ > κR Fλ =πBλ [T<Te] κλが小さいと深い所を見るのでFλは大きくなる。 κλ κR λ

19 この時の熱平衡の式は、地表温度=Tgとおくと、 F(太陽)=σTg4 である。
8.5.温室効果 地球表面の温度は基本的には、    太陽輻射による熱流入(主に可視域)=地表からの熱放射(主に赤外域) で決まる。 F(λ) 太陽         地球 λ 可視 赤外 F σTg4  地表 この時の熱平衡の式は、地表温度=Tgとおくと、    F(太陽)=σTg4 である。

20 (1)単層モデル F(λ) 太陽 地球 λ Fo A・Fo (1- A)・Fo 可視 赤外 大気 Ta (1- A)・Fo
地球表面は赤外で不透明な(τ>1)大気に覆われている。 すると輻射の収支は前図から下図のように修正される。   Ta=大気温度、 Tg=地表温度、 A=可視光反射率 である。 F(λ) 太陽         地球 λ Fo A・Fo (1- A)・Fo 可視 赤外 大気   Ta (1- A)・Fo 2(1- A)・Fo 地表   Tg

21 単層モデルの仮定 太陽 大気 大地 1)大気は一様な温度Taを持つ。 2)太陽光は可視、地上からは赤外のみ放射
 1)大気は一様な温度Taを持つ。   2)太陽光は可視、地上からは赤外のみ放射  3)大気は可視で透明、赤外は不透明で黒体   4)可視太陽光の地表反射率=A     To=太陽有効温度=5780K、 Ro=太陽半径、  D=1AU=215Ro     Fo=σTo4(Ro/D)2 : 太陽から地上に向かう総フラックス(真上からとして)   σTa4 =大気から上方向、宇宙空間への赤外放射=下方向、地表への赤外放         σTg4 = 地表から大気への赤外放射 なので、 Fo=σTa4 +AFo  :大気の上での輻射収支  Fo+ σTa4 = σTg4 +AFo  :大気と地表の間での輻射収支 太陽 Fo  Fo=σTa4 +AFo   σTa4 AFo  大気 σTa4 Fo  σTg4    AFo   Fo+ σTa4 = σTg4 +AFo   大地

22  (1-A)Fo=σTa4   σTg4 =2σTa4   太陽表面でのフラックス=σTo4、 太陽半径=Ro、 地球太陽距離=D とおくと、 Fo=σTo4(Ro/D)2  であるから、上の式に代入すると、 Ta= To(Ro/D)1/2 (1-A) 1/4 , Tg=2 1/4 Ta   A    0.1    0.3     0.5     0.7    0.8   0.85  0.9   Ta   384    360      331   292    264   245   222   Tg   455    428     394     347    313   292   263 このように、大気が毛布の役をするので地上温度は大気の1割以上高温 となる。 単層モデルでのTgとTaとの関係が、エディントン大気でのTeとToとの関係と同じであるのは面白い。

23 (2)エディントン大気モデル 大気表面 τ=0 Fo=太陽の可視フラックス AFo=反射。 (1-A)Fo=地表で吸収。 - τ=2/3
大気は赤外では不透明で、温度勾配を持つ。平面大気中を地表から 大気表面へ向け F = (1-A)Fo の赤外フラックスが流れると考える。 可視 赤外 大気表面   τ=0 Fo=太陽の可視フラックス AFo=反射。 (1-A)Fo=地表で吸収。 エディントン近似では、大気温度は大気表面から地表にかけて上昇し、ロスランド平均光学深さτR=2/3 での温度T2/3が単層モデルの大気温度Taと等しい。 T2/3 = Ta =To(Ro/D)1/2 (1-A) 1/4 τ=2/3 地表面 τ=τG

24 τλG<2/3 だと 地表(T=TG)が直接見えてしまう。
地球大気の特異性は、後に示すように大気の上端から地表までのロスランド平均光学的深さτRGが2/3より小さいことである。このため大気温度がTeまで達することは起こらない。 そこで、通常のエディントン大気モデルを次のように変更する。 1: 地表までの大気温度分布はエディントン大気モデルを採用      大気上端温度=To       地表温度=TG  とすると、 2: 地表までの光学的深さτλGは波長による。    τλG>2/3 ならば Fλはτλ=2/3、すなわちτR=(2/3)(τRG/τλG)        の深さを見る。その深さでの温度 T は、 τλG<2/3 だと 地表(T=TG)が直接見えてしまう。

25 大気上端 To TG 地表

26 大気から地表までの光学的厚みτλG

27 大気吸収の近似式 大気吸収を取り扱い易くするために前々ページのグラフから、 吸収=水蒸気連続吸収+水蒸気バンド吸収+炭酸ガスバンド吸収
と考え、以下のように近似する。 次ページの上図は前と同じ大気の光学的深さの測定値で、下図は上の近似式をグラフにしたものである。バンドの形等細かいところでの違いはあるが、今後はこの近似式で話を進める。

28 CO2 H2O CO2 H2O

29 ロスランド平均光学的深さ τR ロスランド平均の定義は、
大気のκλは温度T の関数であるが、温度依存を無視すると、大気表面から地表までの平均光学深さ τR=∫ κR ρdx は上と同じ形、 で計算できる。 なので とおき、 となる。

30 簡単に前頁の積分を、下式のような和で置き換え、T=280Kて計算すると、
大気上端の温度として(ちょっと高いが)To=260Kを採用する。 すると、

31 吸収の強い波長帯では T=To (大気上端)の黒体輻射
吸収の弱い波長帯では T=TG(地表)の黒体輻射

32 ... 問題8 2005年12月12日 提出 2005年12月19日 WN Ti T1 T2 TN To 8A
 問題8 2005年12月12日     提出 2005年12月19日 8A 魔法瓶の外壁は室温To=300K、内壁は中のお湯の温度Ti=370Kに保たれている。 簡単のため外壁と内壁は黒体、その間は真空と考える。 (1) 内壁から外壁に流れる1m2当たりの熱流の大きさW0を求めよ。 (2) 内壁と外壁の間に黒体の膜を1枚張る。この時の熱流W1をW0で表せ。 (3) 膜がN枚ではどうか? WN ... Ti T1 T2 TN To 8B   To=260K一定として、大気中COが2倍になると、地表温度は何度にな     るか? その時、Fλが増加する波長と減少する波長が生じる理由を述べよ。


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