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事例研究(ミクロ経済政策・問題分析 I) - 規制産業と料金・価格制度 -
(#602 – 横断面前後差分析(DID)の応用) 2017年 12月 戒能一成
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0. 本講の目的 (手法面) - 応用データ解析の手法のうち、横断面前後差 分析(DID) などを実際に利用する際の留意点を 理解する (内容面) - 計量経済学・統計学を実戦で応用する際の 留意点を理解する
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1. 横断面前後差分析(DID) 1-1. DID: Difference In Difference - 横断面前後差分析(DID)は最も簡潔な処置効果 評価の手法として広く利用されている ・ 推計原理が明快 (“横断面の前後差”) ・ 試料整備負荷が小 (処置群・対照群, 最低2点) - 通常は処置群・対照群を複数用いて、処置群の 前後差から対照群の前後差を控除して推計する - 他方でDIDの推計が偏差のない処置効果を示す ためには多数の前提条件が存在するが、文献 毎に内容が異なっており要注意 3
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1. 横断面前後差分析(DID) 1-2. DIDの推計 (1)固定効果と処置群の前後差 - 各対象は固定効果モデルが当てはまると仮定し 処置効果が存在し0ではない場合を仮定 ・ 処置群の前後差 △Yj(s,u) s; 処置前 u;処置後 Yj(t-s) = Y0j +Ya(t-s) +Ybj(t-s) +εj(t-s) Yj(t+u) = Y0j +Ya(t+u) +Ybj(t+u) +YFj(t+u) +εj(t+u) ⇒ △Yj(s,u) = YFj(t+u) +Ya(t+u)-Ya(t-s) 前後差 処置効果 共通変動 + Ybj(t+u)-Ybj(t-s) +εj(t+u)-εj(t-s) 固有変動 誤差(前後差) 4
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1-3. DIDの推計 (2)対象群の前後差と横断面前後差 - 同様の仮定の下での対照群の前後差 △Yi(s,u)
Yi(t-s) = Y0i +Ya(t-s) +Ybi(t-s) εi(t-s) Yi(t+u) = Y0i +Ya(t+u) +Ybi(t+u) εi(t+u) ⇒ △Yi(s,u) = Ya(t+u)-Ya(t-s) 前後差 (処置効果) 共通変動 + Ybi(t+u)-Ybi(t-s) +εi(t+u)-εi(t-s) 固有変動 誤差(前後差) ⇒ 横断面前後差 △Yj(s,u) -△Yi(s,u) = YFj(t+u) – Ybi(t+u)+Ybi(t-s) +Ybj(t+u)-Ybj(t-s) -εi(t+u)+εi(t-s) +εj(t+u)-εj(t-s) 5
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1. 横断面前後差分析(DID) 1-4. DIDの推計 (3) 横断面前後差(DID)と誤差等 - DIDにより処置効果(YFj(t+u))が推計できるため には、対象i,j毎の固有変動と誤差の横断面前後 差について、固有変動や誤差の横断面前後差が 処置効果と比べて非常に小さいことが必要 ⇒ 横断面前後差 △Yj(s,u) -△Yi(s,u) = YFj(t+u) – Ybi(t+u)+Ybi(t-s) +Ybj(t+u)-Ybj(t-s) - εi(t+u)+εi(t-s) +εj(t+u)-εj(t-s) - 従って固有変動や誤差を処置効果と比べ十分 小さくする方法とそれを確認する方法が重要 6
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1. 横断面前後差分析(DID) 1-5. DIDの推計 (4) 横断面前後差(DID)の問題点 - 対象毎の固有変動や誤差が以下のような性質 を持つ場合には、DIDによる処置効果(YFj(t+u)) の推計に問題を生じる (固有変動・誤差自体による問題) a 誤差等の部分のDIDが非常に大きい場合 b 誤差等が処置群・対象群で対応していない場合 (固有変動・誤差の相関による問題) c 誤差等が処置効果と相関を持つ場合 d 誤差等が対象間で相関(組織相関)を持つ場合 e 誤差等が異時点で相関(系列相関)を持つ場合 7
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2. DIDの推計と前提条件 2-1. DIDの推計原理(1) RCM - DIDの推計原理は Rubin因果モデル(RCM)にお ける処置群の「仮想現実」を対照群を用いて推計 し処置群の現状値との差を処置効果とするもの (対照群) y00(t+u) ← 仮想現実の推計材料 観察指標 y y00(t-s) (処置群・仮に処置を受けな かった場合) y10(t+u) ← 観察不能(仮想現実) 処置効果(結果) (処置群) y11(t+u) ← 観察可能・現実 y10(t-s) 過去 (t-s) 処置 ▲(t) 現在 (t+u) 時 間 t 8
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-2. DIDの推計原理(2) RCMの前提条件 - Rubin因果モデル(RCM)の前提条件 (Rubin(1978~), Rosenbaum・Rubin(1983,4)) ・ 処置効果の安定性条件(SUTVA) 誤差等が処置効果と相関を持たないこと (c) ・ 処置群・対照群の処置の選択からの独立性 条件(CIA・CMIA) 誤差等の部分のDIDが十分小さいこと (a) ・ 処置・対照群の同時存在性条件(OVLA) 誤差等が処置・対照群で対応していること (b) 9
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-3. 安定性条件(SUTVA)(1) - 安定性条件(SUTVA)は更に 3つの条件から構成 されることが知られている c1. 処置の単一種類性条件(SUTVA-ST) 処置の内容が単一であり処置群の中で誤差 等が相関を持つ群が存在しないこと c2. 処置前後での処置群・対照群の構成の安定性 条件(SUTVA-CS) 処置の前後で処置群・対照群を構成する対象 が相互に入替わっていないこと 10
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-4. 安定性条件(SUTVA)(2) c3
2. DIDの推計と前提条件(1) 2-4. 安定性条件(SUTVA)(2) c3. 処置の二次的影響の不存在条件(SUTVA-NI) 処置の二次的影響などにより処置効果と対 照群の誤差等が相関を持たないこと (正の二次的影響) (負の二次的影響) 観察指標 Yi 観察指標 Yi 対照群(二次 的影響あり) 対照群(二次 的影響なし) 対照群(二次 的影響なし) 対照群(二次 的影響あり) 処置群 処置群 処置 F▲ 処置 F▲ 11 時間 t 時間 t
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-5. 安定性条件(SUTVA)(3) - 安定性条件(SUTVA)の成立を確保する方法は、 特にSUTVA-NIについて 2つしか知られてない (実験的手法により試料採取する場合) ・ 3群法 (Hudgens&Halloran(2008)) 処置群、直接処置はしないが二次的影響を 受ける群(中間群)、二次的影響のない対照 群の 3群を設定し実験を実施 (統計的(非実験的)手法により試料採取する場合) ・ BA/DID法 (戒能(2017- mimeo. )) 12
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-6. 安定性条件(SUTVA)(4) - BA/DID法 (戒能(2017- mimeo
2. DIDの推計と前提条件(1) 2-6. 安定性条件(SUTVA)(4) - BA/DID法 (戒能(2017- mimeo. )) ・ 対照群のうち特定の対象1つの前後差(BA) △Yi(u,s) = αi・Σk(YFk(t+u)) ← 二次的影響分 + Ya(t+u) –Ya(t-s) (影響係数αi) + Ybi(t+u) –Ybi(t-s) ・・・ ・ 当該対象1つのみを用いた横断面前後差(DID) DIDi(u,s) = (1 –m・αi)/m・Σk(YFk(t+u)) + Ybk(t+u) –Ybk(t-s) –Ybi(t+u) ・・・ → ~ 0 13
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2. DIDの推計と前提条件(1) 2-7. 安定性条件(SUTVA)(5) - BA/DID法 (戒能(2017- mimeo
2. DIDの推計と前提条件(1) 2-7. 安定性条件(SUTVA)(5) - BA/DID法 (戒能(2017- mimeo. )) 対照群の対象1つについての前後差(BA)を横断 面前後差(DID)で除した指数を、異なる基準時点 s及び評価時点uについて集め、横断面前後差 (DID)で時系列回帰分析した際の定数項が有意 であれば当該対象には二次的影響が及んでいる △Yi(u,s)/DIDi(u,s) = m・αi /(1 –m・αi) +(Ya(t+u) –Ya(t-s))/DIDi(u,s) +(Ybi(t+u) –Ybi(t-s))/DIDi(u,s) ・・・ 定数項 14
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3. DIDの推計と前提条件(2) 3-1. 独立性条件(CIA・CMIA)(1) - 独立性条件(CIA・CMIA)の本質は処置・対照群の 間で如何に「異質性」が管理されているか、という 点にある ・ 仮に処置・対照群の「異質性」が小さいのであ れば、対象毎の誤差等の時間挙動も類似して いるはずであり、誤差等のDIDは 0になると期 待できる (a) ・ 従って処置群を基準として、処置群と「同質的」 な対照群を複数用意すれば問題を解決可 15
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3. DIDの推計と前提条件(2) 3-2. 独立性条件(CIA・CMIA)(2) - 具体的に独立性条件(CIA・CMIA)の成立を確保 する方法は 4通りの方法が知られている (実験的手法で試料採取する場合) ・ ランダム化(Randomization)による方法 十分な数の母集団から試料を対で採取 (統計的(非実験的)手法で試料採取する場合) ・ マッチング(Matching)による方法 処置率マッチング(Rosenbaum・Rubin(1984)) 処置率マッチング+並行推移性確認法 (Heckman・Ichimura・Todd(1997)) 16
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3. DIDの推計と前提条件(2) 3-3. 独立性条件(CIA・CMIA)(3) (統計的(非実験的)手法で試料採取する場合) ・ 合成対照群(Synthetic-Control)による方法 (試料数が少数でも可, 系列相関同時確認可) 時系列回帰法(Abadie&Gardeazabal(2003)) 加重平均法(Abadie他(2009)) ・ 最尤度関数(Likelyhood Function)対応推計法 (Qin&Zhang(2008)) (理論的には最も正確であるが手法が複雑) 17
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3. DIDの推計と前提条件(2) 3-4. 独立性条件(CIA・CMIA)(4) - マッチング・並行推移と合成対照群による方法 ・ マッチング・並行推移性確認は少数時点・多数 対象の対照群の試料が得られる場合に効果的 ・ 合成対照群推計は多数時点・少数対象の試料 が得られる場合に効果的(系列相関も確認可) Heckman他の方法 (1997) マッチング・並行推移性確認 Abadie他の方法 (2003) 時系列回帰分析による合成対照群推計 観察指標 Yi 観察指標 Yi 処置群と観察指標が並行推移 する対照群を目視選別・平均化 し対照群を構成 対照群 処置前の試料を使って処置群の観察 指標を時系列回帰分析で直接推計 し「合成対照群」を予測 (対照群の素) 「合成対照群」 ≒ 仮想現実 時系列回帰 「並行推移」 処置群 処置群 目視確認 近似式推計・予測 時間 t 18 時間 t 処置 F▲ 処置 F▲
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3. DIDの推計と前提条件(2) 3-5. 同時存在性条件(OVLA) - 処置群・対照群の同時存在性条件(OVLA)は主 に統計的(非実験的)手法)で問題となる (b) ・ Lalonde - Dehejia&Whaba 論争 Lalonde(1986) 米国就労支援事業(NSW)の実験的試料から 推計される当該事業の効果は、米国の関連 労働統計(PSID・CPS)で全く再現できない Dehejia&Whaba(1999) (検証論文多数) Lalondeの労働統計の資料はOVLA条件に問 題有、個票から当該条件を調整すれば再現 19
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4. DIDの推計と前提条件(3) 4-1. 誤差等の対象間相関(Moulton効果)(1) - 処置群・対照群それぞれの対象が何らかの組 織(企業取引・資本系列、血縁・友人関係)に属し ている場合、誤差等の対象間相関に注意 (d) ・ 基本的にパネルデータ分析での”Moulton”効 果同様、組織の相関相当分標準誤差が小さく なり処置効果の「誤検出」が発生 - 合成対照群による方法では一般化最小二乗法 (GLS)が適用可能であるが、実験的手法やマッ チング等では直接対処不能、別途確認必要 20
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4. DIDの推計と前提条件(3) 4-2. 誤差等の時間方向の相関(系列相関)(1) - DIDでは処置群・対照群のデータを 2期しか用い ないが、当該期間で系列相関(Autocorrelation) を生じる場合有、要注意 (e) ・ 基本的に時系列回帰分析での系列相関の問 題と同じ問題 ・ Bertland他(2004) での注意喚起有 - 合成対照群による方法では Box-Jenkins法など が適用可能であるが、実験的手法やマッチング 等では直接対処不能、別途確認必要 21
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4. DIDの推計と前提条件(3) 4-3. 誤差等の時間方向の相関(系列相関)(2) - 系列相関の確認手法としては以下の 3通り ・ 時系列試料による確認 (Q検定・BGLM検定等) ・ Monte-Carlo法による確認 ・ 等間隔残差法(DIDでのみ可能) 分析対象期間と等間隔な過去の試料を利用 等時間間隔での残差の相関を確認 観察指標 Y(t) 残差 残差 22 t-u-2s t-s 処置t▲ t+u 時 間 t
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5. DIDの「安全」な推計手順 5-1. 実験的手法による試料採取の場合 (事前確認段階) ・ 処置単一種類性・構成安定性(SUTVA-ST,CS) (実験設計段階) - 適切なランダム化による対象抽出 ・ 観察指標の処置選択との独立性(CIA・CMIA) ・ 処置・対照群の同時存在性(OVLA) - 処置・中間・対照 3群の確保(Halloran他(2008)) ・ 二次的影響の不存在性(SUTVA-NI) (結果確認段階) ・ 系列相関等の不存在性(NEAA) Monte-Carlo 23
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5. DIDの「安全」な推計手順 5-2. 統計的(非実験的)手法による試料採取の場合 (マッチング・並行推移確認等「一般的」推計法) (事前確認段階) -・ 処置単一種類性・構成安定性(SUTVA-ST,CS) (分析実施段階) ( 処置なし ) (結果確認段階) -・ 二次的影響の不存在性(SUTVA-NI) BA/DID - マッチング・並行推移確認(Heckman他(1997)) ・ 観察指標の処置選択との独立性(CIA・CMIA) ・ 処置・対照群の同時存在性(OVLA) -・ 系列相関等の不存在性(NEAA) Monte-Carlo 24
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5. DIDの「安全」な推計手順 5-3. 統計的(非実験的)手法による試料採取の場合 (合成対照群による推計法) (事前確認段階) -・ 処置単一種類性・構成安定性(SUTVA-ST,CS) (分析実施段階) ( 処置なし ) (結果確認段階) -・ 二次的影響の不存在性(SUTVA-NI) BA/DID - 合成対照群推計(Abadie他(2003)) ・ 観察指標の処置選択との独立性(CIA・CMIA) ・ 処置・対照群の同時存在性(OVLA) ・ 系列相関等の不存在性(NEAA) 25
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6. 実践的なDIDの活用と推計手順 6-1. 福島第一原発事故による農産物風評被害 (福島産牛肉卸取引数量の事例)(1) (事前確認段階) - 処置単一種類性(SUTVA-ST) 同時に発生した震災等の被害と識別するため 岩手・宮城県の試料を対照群から除外 - 処置構成安定性(SUTVA-CS) 福島県産牛肉に産地偽装等はないと仮定 (結果確認段階) - 二次的影響の不存在性(SUTVA-NI) BA/DID法を適用 26
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6. 実践的なDIDの活用と推計手順 6-2. 福島第一原発事故による農産物風評被害 (福島産牛肉卸取引数量の事例)(2) (結果確認段階) BA/DID法の適用結果から 2~3産地が二次 的影響のない産地と判明 (→対照群が少数) - 合成対照群法(時系列回帰分析)を適用 ・ 観察指標の処置選択との独立性(CIA・CMIA) ・ 処置・対照群の同時存在性(OVLA) ・ 系列相関等の不存在性(NEAA) 27
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6. 実践的なDIDの活用と推計手順 6-3. 福島第一原発事故による農産物風評被害 (福島産牛肉卸取引数量の事例)(3) ・ 候補11産地のうち5産地が「二次的影響なし」 ・ 当該5産地の数量推移から「合成対照群」数量を推計 (通常の方法では影響が過大評価) 28
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