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非配偶者間生殖医療における 当事者の権利擁護とは
非配偶者間生殖医療における 当事者の権利擁護とは 中部学院大学人間福祉学部 教授 宮 嶋 淳 (博士(ソーシャルワーク)) JISART研修会 2016/11/13
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本日の内容 自己紹介 非配偶者間生殖医療における当事者 当事者の苦悩 ~「閉じられた医療」が「社会的虐待」を生む ソーシャルワークと権利擁護
ニュージーランドからの示唆 私益の社会化としての公益 生殖ケア・ソーシャルワークというアプローチ~対話と共生の創造 今後の展望~生殖ケアの射程 JISART研修会 2016/11/13
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自己紹介 序 章 研究の概要 先行研究調査 研究の方法 DI者の苦悩とは何か-インタビュー調査より- DI者の解放のための理路の構築 結論
序 章 研究の概要 先行研究調査 研究の方法 DI者の苦悩とは何か-インタビュー調査より- DI者の解放のための理路の構築 結論 JISART研修会 2016/11/13
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非配偶者間生殖医療における当事者とは JISART研修会 2016/11/13
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閉じられた医療が、Social abuseを生む
特定の個人の益を追求し、営利な活動として提供されるARTは、「私益」へのアプローチである。 「閉じられた医療」における「私益」の増進は、「公益」の増進と相関しない。 「閉じられた医療」は、排他的・特権的であるため、排除・不寛容、自己決定の否定、社会の不安を助長 「排他性・特権性」を廃せずして、合意形成は困難 夫の政治的権力や支配力、社会的地位などの罠 一般の人たちは、妻の行動を彼女の夫に投影する 妻は夫の許可なしではどのような活動にも参加できない・・社会的孤立 社会的な孤立や屈辱を心理的威圧により加える 彼女たちは命令に従わないと「ひどい傷を負う」メッセージを受けている 誰も助けにならない。地域社会・人々がそれを信じたくないし、信じない 夫が専門職の世界で「人物である」・・・より複雑。 助けを求めれば、世間に知れ、恥をかき、夫の一生を駄目にするかも 黙殺と隠匿という二重苦 周りが全員暴力の共犯者 レイア・E・ウォーカー著/斎藤学監訳『バタードウーマン』
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「社会的虐待」の構造 社会的排除(自己責任と不信) 虐待の起こっている場 (領域すべて) ・・・医療現場や関係者を取り巻く社会
虐待の起こっている場 (領域すべて) ・・・医療現場や関係者を取り巻く社会 加害者(領域Ⅳ以外) ・・・医師や医療者、提供者、AID希望者、親戚・縁者、一般市民、 被害者(領域Ⅳ) ・・・DI者、DI者が形成した家族 社会的不正義(暴力・無視) 社会的虐待(権威・服従) 社会的排除(自己責任と不信) 孤立(無力化・諦め)
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Social abuse の構造
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Social abuse とは何か ある者が他者の社会的行為を権限なく制限する行為であり,侮蔑的で差別的な意味合いが 含まれている.
(社会からの隔離、社会性の排除) 他者をコントロールする行為であり,差別や偏見に依拠しており,犠牲者を卑下すること を助長し,メディアをもコントロールする. (自己決定の否定、社会の不安) その結果,虐待者の行為を強化する役割を果たし,システムが犠牲者を非難し,安全性の 確保を図ろうとせず,無視する結果を招く.(不寛容) 犠牲者は法律に訴えるか,自分自身をごまかすかしかない状況に置かれる. (対 峙)
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DI者のHuman needs 4つの願い 4つの訴え 情報を共有し、信頼できる親 子関係を構築したい 私たちの声を聴いて欲しい
親から告知して欲しい 出自を知る権利を認めるルー ルを創って欲しい 両者を支える仕組みを整えて 欲しい 4つの訴え 私たちの声を聴いて欲しい 私たちの情動を理解して欲し い 変化しようとしている姿勢を 見てほしい 私たちの尊厳を、尊重して欲 しい 第56回日本生殖医学会
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ソーシャルワークにいう権利擁護とは 権利擁護=権利の擁護 権利1=人権、社会権、環境権
権利2=道徳的権利 (そうかも)、法的権利 (そうだ) 権利3=リスト化できる 擁護=作る、守る、育てる、維持する、伝える、代弁する (個/集団/社会) JISART研修会 2016/11/13
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人権に関する三区分 第一世代の人権 第二世代の人権 第三世代の人権 自由に対応する市民的および政治的権利
平等に対応する経済的、社会的、文化的権利 友愛に対応する連帯の権利 思想・良心および宗教の自由 経済的、社会的及び文化的権利 共通遺産の共有権 平和に対する権利 意見・表現の自由 生活保障の権利 自決権 環境権 結社の自由 労働権 発展の権利 人道主義的災害救助の権利 身体の自由 教育を受ける権利 移動の自由 財産権の自由 権利の平等 世界人権宣言の2条から21条 世界人権宣言の22条から27条 国際人権規約B規約「市民的及び政治的権利に関する国際規約」 国際人権規約A規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」 JISART研修会 2016/11/13 出所:南「人権の進化と創造」『“人権の歩み”から何を学ぶか』 71より論者が作成
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ソーシャルワーク と DI者の権利擁護 AIDの実施時並びに実施後における、DI者の願いとAIDを選択したカップルの願いとの両立をめざす。
目 的 AIDの実施時並びに実施後における、DI者の願いとAIDを選択したカップルの願いとの両立をめざす。 両者の願いの両立とは、「新しい家族」の福祉(=QOL&Human well-being)の成立 着眼点並びに仮説 ソーシャルワークの立場からの研究 DI者の「語り」と「ヒューマンニーズ」に着目 Human Needs=「4つの訴え」と「4つの願い」 充足のための要件=他者との対話 第56回日本生殖医学会
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ソーシャルワークとは何か(1) 1982年の定義 ソーシャルワーカーは、社会全般並びに発達に関する個別の形で社会の変化をもたらすことを目的とする専門職である。 ソーシャルワーカーは、人間の福祉を促進し、人間の潜在的な目標を達成するのを援助するとともに、人間及び社会活動に関する科学的知識と、国内並びに国際的なレベルで個人及び集団のニーズと目標充足することを目指しましたソーシャル・サービスとを組織的に開発し、適応することを考える一方、常に社会政策を促進する必要性を心にとめている。 ソーシャルワーカーは、国際倫理綱領とその他の国際的政策声明を仕事の指針とする。 ソーシャルワーク実践は、法的経済的社会的状況のあらゆるレベルでの活動を意味する社会福祉政策の枠内で考える。 ソーシャルワーカーの機能には、次の事項が含まれる。 1.人々が自ら個別的並びに集合的社会問題を解決することができるよう能力を開発するのを援助すること。 2.自己決定、適応、発達の能力を向上すること。 3.公正な社会政策及びサービスあるいはその他の既存の社会経済資源に代わるものを促進し導入すること。 4.情報と社会経済資源を提供する団体との社会的接触を提供すること。 ソーシャルワーカーは、集団並びに地域社会への予防的社会政策とサービスの企画、事前評価、適用、事後評価、修正に参画する。 ソーシャルワーカーは、多数の機能的部門に介入し、様々な方法論のアプローチを用い、広い組織的な枠内で活動し、ソーシャル・サービスをマクロとミクロのレベルで多様な対象者に提供する。
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ソーシャルワークとは何か(2) 2000年の定義 ソーシャルワーカーは、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。 価値: ソーシャルワークは、人道主義と民主主義の理想から生まれ育ってきたのであって、その職業上の価値は、すべての人間が平等であること、価値ある存在であること、そして、尊厳を有していることを認めて、これを尊重することに基盤を置いている。 ソーシャルワーク実践は、1世紀余り前のその起源以来、人間のニーズを充足し、人間の潜在能力を開発することに焦点を置いてきた。人権と社会正義は、ソーシャルワークの活動に対し、これを動機づけ、正当化する根拠を与える。 ソーシャルワーカーは、不利益を被っている人びとと連帯して、貧困を軽減することに努め、また、傷つきやすく抑圧されている人びとを解放して社会的包含(ソーシャル・インクルージョン)を促進するよう努力する。ソーシャルワークの諸価値は、この専門職の、各国別並びに国際的な倫理綱領として具体的に表現されている。 実践: ソーシャルワークは、社会に存在する障壁、不平等および不公正に働きかけて取り組む。そして、日常の個人的問題や社会的問題だけでなく、危機と緊急事態にも対応する。ソーシャルワークは、人と環境についての全体論的なとらえ方に焦点を合わせた様ざまな技能、技術、および活動を利用する。 ソーシャルワークによる介入の範囲は、主として個人に焦点を置いた心理社会的プロセスから社会政策、社会計画および社会開発への参画にまで及ぶ。この中には、人びとがコミュニティの中でサービスや社会資源を利用できるように援助する努力だけでなく、カウンセリング、臨床ソーシャルワーク、グループワーク、社会教育ワークおよび家族への援助や家族療法までも含まれる。 ソーシャルワークの介入には、施設・機関の運営、コミュニティ・オーガニゼーション、社会政策および経済開発に影響を及ぼす社会的・政治的活動に携わることも含まれる。 ソーシャルワークのこの全体論的な視点は、普遍的なものであるが、ソーシャルワーク実践での優先順位は、文化的、歴史的、および社会経済的条件の違いにより、国や時代によって異なってくるであろう。 2016/11/13 JISART研修会
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ソーシャルワークとは何か(3) 2014年の定義 ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解 放 を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、お よび 多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソー シャルワークは、生活課 題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に 働きかける。 注: 「地域・民族固有の知(indigenous knowledge)」とは、世界各地に根ざし、人々が集団レベルで長期 間受け継いできた知を指し、 いわゆる「先住民」の知が特に重視される。 : 人々が主体的に生活課題に取り組みウェルビーイングを高めら れるよう人々に関わるとともに、 ウェルビーイングを高めるための変革に向けて人々とともにさまざまな 構造に働きかける : 世界をアジア太平洋、アフリカ、北アメリカ、南アメ リカ、ヨーロッパという 5 つの地域=リージョンに分けている。 ソーシャルワークの定義は、グローバル(世界)・リージョナル(地域)・ナショナル(国)という 3 つのレベルをもつ重層的なもの。 JISART研修会 2016/11/13
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ソーシャルワークの中核となる任務 ソーシャルワーカーの中核となる任務には、社会変革・社会開発・社会的結束の促進、 および 人々のエンパワメントと解放がある。 ソーシャルワークは、相互に結び付いた歴史的・社会経済的・文化的・空間的・政治的・ 個人 的要素が人々のウェルビーイングと発展にとってチャンスにも障壁にもなることを認 識してい る、実践に基づいた専門職であり学問である。 構造的障壁は、不平等・差別・搾取・ 抑圧の永続につながる。人種・階級・言語・宗教・ジェン ダー・障害・文化・性的指向など に基づく抑圧や、特権の構造的原因の探求を通して批判的意 識を養うこと、そして構造的・ 個人的障壁の問題に取り組む行動戦略を立てることは、人々の エンパワメントと解放をめ ざす実践の中核をなす。 不利な立場にある人々と連帯しつつ、この専門職は、貧困を軽減し、 脆弱で抑圧された人々 を解放し、社会的包摂と社会的結束を促進すべく努力する。 JISART研修会 2016/11/13
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IFSWの政策文書(2008) 国境を越えた生殖サービスに関する国際方針文書
女性の生殖能力の商品化は人権侵害である 国境を越えた生殖サービスへの関与は、訪問国の事情に配慮しない と、搾取になる可能性がある 法整備が進んでいない国々では、十分な事前のインフォームド・コンセ ントがなされない可能性がある そのような中では、生まれる子どもの法的権利・心身の健康が危ぶま れる可能性がある 第56回日本生殖医学会
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IFSWの立場 人の命、精子・卵子・胚が商品化、あるいは商取引に用いられてはならない
すべての人は、生殖に影響を及ぼす形での搾取や差別から保護されなければ ならない 法を犯さない限りにおいて、自己決定の権利を行使することを支持する 遺伝子情報は、個人のものである 国境を越えた生殖サービスに関わるソーシャルワーカーの倫理の確立を必要 とする 生殖サービスに関する当事者の参加を促進する役割を果たすため、世界保健 機構などと連携する 第56回日本生殖医学会
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ソーシャルワークが機能すると、DI者と他者との対話が促進される 対話の促進は、ソーシャル・インクルージョンが保持された社会を成立させる
社会的排除のない社会は、全ての人と家族の福祉を保持する。 したがって、「新しい家族」の福祉も保持される可能性が広がる SWとは、人権と社会正義を追求する社会的活動 SWは、当事者の「私益」ではなく「ニーズ」に効応し、「公益」を追求する ARTが、当事者の「私益」ではなく「ニーズ」に効応し、社会全体の益を追求するとき、 ARTで形成された「新しい家族」の福祉が、成立するのではないか。
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ニュージーランドからの示唆 ARTの社会化・公益化
“Human Assisted Reproductive Technology Act 2004”により、提供配偶子 により生まれた子どもの出自を知る権利を認めた。システムがある。 HART Act 2004 1 Preliminary provisions 序文 3 Purposes 目的 4 Principles 原則 5 Interpretations 説明 6 Procedures or treatments may be declared to be established procedures 提供・ 治療の手続き 7 Act binds the Crown 法的拘束
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HARTA2004 の Principles HARTA2004 の Purposes
(a) 生殖医療の研究とその手続きを明らかにする (b) 生殖医療の研究のうち、禁止事項は何かを明らかにする (c) 人間の再生に関する商業行為の禁止 (d) 生殖医療の研究のガイドラインとフレームワーク (e) 生殖医療の研究における承認手続きと倫理委員会の権限 (f) 出自に関する提供配偶子や提供した人々に関する情報 HARTA2004 の Principles (a) 生殖医療で生まれてくる子どもの健康と幸福に関する決定 (b) 現在と未来の人間の健康と安全、尊厳の保持 (c) すべての人が生殖医療の影響を受ける。 特に女性の健康と幸福の保護。 (d) 生殖医療の研究は、個人的利益のためになされてはならない。 (e)提供情報に、アクセスできなければならない。 (f) マオリのニーズや価値観、信念は考慮され、尊重される。 (g)社会の異なる倫理、精神性並びに文化の尊重 第56回日本生殖医学会
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HART Act2004(2010.10.改正) Advisory committee(諮問委員会)
第57条:Access by donor offspring to Information about then kept by providers or Registrar-General. (18歳以上で) Provider(提供事業者)~ドナーへの説明責任 Registrar-General(情報管理機関) ~ドナー情報の管理責任 Ethics committee(倫理委員会) ~ARTにかかる研究等倫理上の監査・監督 HART Act2004( 改正) Advisory committee(諮問委員会) ACART(=advisory committee on Assisted Reproductive Technology)として活動 Consultation on the use of in vitro Maturation in fertility treatment など、議論の ための提言多数 63 Voluntary register (自発的な登録) ・・・CoC Act も含めた理解の促進
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Ken Daniels からのメッセージ クリニックに来る人々には、サイコエデュケーションが必要である。
医療者や患者、コミュニティーの人々にも、生殖医療に関する教育を行う。 治療前に十分な情報を提供し、同意を得るためには、すべての疑問に答える、オープンな情報提供が必要である。 DI者の両親が、ドクターに「どうして話してはいけないのか」と疑問を投げかけた。 医療者のうち、最も尊重すべきはドクターであり、私とともに調査研究を行ったドクターがその姿勢を変え、それが法律に反映 された。 マオリの文化では、自分のルーツを知ることがとても大切。マオリの人々にとって、人生をかえりみるとき、個人よりもコミュニ ティーの中での自分の人生を見ることを大切にする。DIを秘密にすることを、マオリの人々は理解できない。 マオリの文化では、自分への接近は「個々人」ではなく「コミュニティー」アプローチである。 コミュニティー・アプローチであるので、自分の「所属」は非常に大切である。 もしマオリのカップルがDIを希望するならば、カップルとその家族にカウンセリングすることになる。 パケハの文化として個人の権利の尊重も必要で、関わりを持つ家族の権利も、コミュニティーの権利も、尊重されなければな らない。 2つの文化を尊重することが当たり前の社会であることを背景に、政府ではなく医療者の側が、提供者に対して情報を開示す るように要求している。
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マオリのアイデンティティと人権 ワイタンギ条約 1840年 ワイタンギ審判所 1975年
1980年代以降、 血ではなく、文化的側面を重視したエスニ シティ(民族性)が重視される 2006年の人口調査では、 言語、信念、習慣など共有する文化 共通の祖先や歴史 類似の地理的起源や部族、一族の出自 が調 査された。 「ファカパパ (マオリの血をもっており、祖先と 系統的な関わりを持つ)」へのアイデンティティ マオリの伝統的価値観 ファナウンガタンガ(人々の広いつながり) ウツ(互恵主義) マナ(権威) マナキタンガ(気づかい) ワイタンギ条約 1840年 ワイタンギ審判所 1975年 ニュージーランドの司法組織における独立 性を保持 国によるワイタンギ条約の原則に合致しな い立法、政策、マオリの訴えにより審理 1985年の改正で、ワイタンギ条約締結時に 遡って、マオリの訴えを受理 ワイタンギ条約の原理の尊重、あるいはマ オリの尊重は、あらゆる法に明記 ソーシャルワーカーの教育プログラムにお いても、マオリの文化が伝承される
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「私益」 と 「公益」 私益=個人的な利益 公益=みんなの利益、地域や社会全体の益 ARTを「みんなの利益」のために活用するという発想
「私益」 と 「公益」 私益=個人的な利益 公益=みんなの利益、地域や社会全体の益 ARTを「みんなの利益」のために活用するという発想 「みんなの利益」=「安く」「楽に」「気軽に」「安心して」「恥ずかしくなく」ARTを使える 公益性のある活動=不特定多数に対する非営利の活動 公益へのアプローチ 政策的 : 人間本位の社会政策 実践的 : ボランティアやNPO・NGO、社会的企業による社会サービス
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「公益」の効用 公益は、社会全体を平安へと向かわせる 公益の追求は、共通の善(common good)の形成につながる
共通の善の前では、人々は自由であり平等であり、寛容でいられる 寛容は、開かれた社会の基礎である 寛容な空間の中では、開かれた自己が、自力で重要なことを決める 現在のARTは、 「私益」を追求する排他的で特権的な「閉じられた医療」と言えるのではないか。 現在の状況は、共通善の成り立つみんなの寛容さを助長し、自己決定が促進される社会(=「新しい家族」)を創 造しない 参考 : 小松隆二(2008)「公益の思想」『公益学を学ぶ人のために』世界思想社
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第56回日本生殖医学会
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患者とその家族の個人的な欲求に対応し、閉ざされた医療を提供してきたこ とにより、私益の増進を図り、排他性と特権を保持してきた。
しかし、その状況では公共的な合意は得られず、 当事者の社会的ネグレクトが継続し、 歴史的なリスクを抱えることになる。 したがって、ARTを開かれた医療に転換し、社会化することで、関係者のニー ズに即して「公益」を目指すべき。 保険適用など排他性と特権を廃した制度の制定に向けた働きかけを強力に 進める必要がある。
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当事者とは誰か 才村・宮嶋(2003)『社会福祉学』より
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想定されるサポートの範疇 才村・宮嶋(2002)『社会福祉学』より
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Human needsに対応した実践理論 Ⅰ 当事者の状況を把握するためのスキル Ⅱ 当事者に直接関わるためのスキル
Ⅰ 当事者の状況を把握するためのスキル エコロジカル・アプローチ ・システム理論アプローチ エンパワメントアプローチ Ⅱ 当事者に直接関わるためのスキル 利用者中心アプローチ ・行動理論アプローチ 認知理論アプローチ ・ナラティブ・アプローチ Ⅲ 当事者に直接関わり、ともに解決していくためのスキル 問題解決アプローチ ・課題解決アプローチ 危機介入アプローチ Ⅳ 当事者を取り巻く環境に働きかけるスキル コミュニティ・ソーシャルワーク ネットワーキング ソーシャル・キャピタル・ディベロップメント Ⅰ 対象となる子ども・家庭の状況を把握するためのスキル エコロジカル・アプローチ 子どもと親、子どもと友達との関係などをジェノグラムやエコマップでマッピングしながら、問題のありどころを見極めていくときに活用する。 システム理論・アプローチ 家族をひとつのつながりのあるシステムとみなして対応策を検討するアプローチ。子どもが表現している「歪み」は、家族のどこかから影響を受けていると考え、「歪み」の背景を探索する。 エンパワメント・アプローチ すべての利用者には「潜在的な力」があり、それが発揮できないよう「抑圧」しているものが存在するので、その「ストレッサー」を弱めていくことをめざす。「ストレッサー」を弱めていくと、利用者は解放され、力を発揮できるようになる。 Ⅱ 対象となる子ども・家庭に直接関わるためのスキル 利用者中心アプローチ 利用者の「今の状況・心情・見えているもの」をありのままに、無条件に受け入れ、疑いの念からではなく、肯定的な関心を向けていく。利用者の「自己概念」と「現実」との一致をめざす。 行動理論・アプローチ 「A:刺激、B:行動、C:結果」分析により、利用者の行動を変化させることを目指す。ある刺激Aに対して、利用者がBという行動を起こす。Bという行動が利用者にとってCという結果(報酬/罰)をもたらすことが学習されているからであると考える。利用者が望ましい行動B’を起こすための刺激A’とは何かを考え、それが繰り返されるような報酬C’を用意する。 認知理論・アプローチ 利用者が否定的な感情を表出する場合、利用者自身が描いたイメージと異なる現実に直面している結果である(困っている)と考える。物の見方や理解の仕方が変えられ、広げられるような働きかけを行う。 ナラティブ・アプローチ 利用者の「生活歴」や「ライフ・ヒストリー」を丹念に聴きながら、利用者が自覚している問題の焦点を明らかにしていく。問題の焦点が利用者自身の内なるもの化されている場合に、その問題の焦点を「外部との関係」で整理していく。自分と外部の役割分担をはっきり認識させていく。 Ⅲ 対象となる子ども・家庭に直接関わり、ともに解決していくためのスキル 問題解決アプローチ 利用者が語る、あるいは抱える問題が「複雑多岐」にわたる場合、その問題を小さく切り分けるように働きかける。小さく切り分けた問題をともに、あるいは後方支援をしながら解決する。利用者が「自分で問題を解決できた」という成功体験が繰り返し蓄積され、利用者が「できる力」を身につけることをめざす。 課題解決アプローチ 「課題」であるので、「時間的制約」や「直ちに取り組まなければならないこと」に焦点を当て、優先順位をつけていく。考え方は「問題解決アプローチ」と同じ。 危機介入アプローチ 長きにわたり利用者は「緊張」や「ストレス」に晒されつつも、自己バランスを保持してきた。しかしながら、何らかの刺激や出来事によりそのバランスが崩れ、「悲嘆にくれた」状況にあるととらえる。これを克服するし、正常な状態に戻るためにはまず「表出」が必要であり、介入の明らかな段階があるとするもので、長期的な見通しの中で提供するもの。 第56回日本生殖医学会
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当事者関係にアプローチする 修復的対話アプローチ
当事者関係にアプローチする 修復的対話アプローチ 家族を主体としたNZの伝統的な先住 民の考え方を取り入れた、対話方法。 前出の法にあるように、対話は主体 的な努力により、合意形成が図られる ところから始まる。 マオリの文化を活かした「FGC:ファミ リー・グループ・カンファレンス」と同根。 出典:山下英三郎(2010)(2012)を参照。
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期待される効果 対話の意味 当事者 第三者 双方 苦悩について語ることによる[癒し] の効果 理解を得ることによる[癒し]の効果
自らの行為が当事者に与える影響 を知ることによる[省察] 否定されないことによる[自尊心の 保持] 双方 関係再構築の可能性に対する安堵 感 未来への展望が開けることによる 開放感
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「共生」に着目したソーシャルワークの模式図
トライアングルモデル JISART研修会 2016/11/13
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生殖ケア・ソーシャルワークというアプローチ
JISART研修会 2016/11/13
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今後の展望 生殖ケアの射程 当事者(子)のスピリチュアル・ケア 社会環境の整備 当事者(母・父)のスピリチュアル・ケア
今後の展望 生殖ケアの射程 当事者(子)のスピリチュアル・ケア 当事者(母・父)のスピリチュアル・ケア 当事者(ドナー)のスピリチュアル・ケア 市民(第三者)へのアカウンタビリティ 当事者団体の公益の創造活動 当事者の希望の叶う居場所の確保 社会環境の整備 生殖医療に関する共通認識の形成 当事者団体と当事者の共通認識 医療者等専門家の認識 生殖医療に関する専門職の質の担保とし ての教育 JISART研修会 2016/11/13
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