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神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科

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1 神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科
The Japanese Respiratory Society 社団法人日本呼吸器学会 教育用DVD - DVDで学ぶ実践呼吸器病学 - Ⅱ-28-5 MPO-ANCA関連肺疾患 神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 小倉 高志,澤幡 美千瑠 1

2 内容 ANCAとは? ANCA関連血管炎とは? MPO-ANCA関連肺疾患 びまん性肺胞出血(DAH) 間質性肺炎(IP)
顕微鏡的多発血管炎(MPA)について Churg-Strauss症候群(CSS)について 参考文献 2

3 ANCAとは? 3

4 ANCA:anti-neutrophil cytoplasmic antibody (抗好中球細胞質抗体)
に特異的なIgG型自己抗体. 対応抗原について10種類以上に同定分類されている が,臨床的には ・ が血管炎と 深く関連している. サイトカイン・好中球の相互作用により血管内皮細胞障 害をきたし,血管炎をもたらす. ヒト好中球細胞質 MPO-ANCA PR3-ANCA (ANCA-サイトカイン連鎖説1~3)) 4

5 ANCA関連血管炎とは? 5

6 血清中にANCAを認め血管炎を生じる疾患群を総称している. 血管炎は免疫複合体の沈着を認めず, を 中心に侵す.
血管炎は免疫複合体の沈着を認めず, を 中心に侵す. →全身の多臓器病変をもたらす. →特に毛細血管炎は ・ を 引き起こし致命的となりやすい. 小血管 肺病変 腎病変 6

7 【小血管とは?】 赤字の部分が小血管に含まれる ANCA関連血管炎 毛細血管 細動脈 細静脈 小動脈 静脈 大~中型動脈 大動脈
赤字の部分が小血管に含まれる    毛細血管 細動脈 細静脈 小動脈 静脈 大~中型動脈 大動脈 皮膚白血球破砕性血管炎 Henoch-Schönlein紫斑病 本態性クリオグロブリン血管炎 顕微鏡的多発血管炎          Wegener肉芽腫症,Churg-Strauss症候群    結節性多発動脈炎,川崎病                ANCA関連血管炎  高安動脈炎,巨細胞性動脈炎 (Janette JC et al: Nomenclature of systemic vasculitides. Proposal of an international consensus conference. Arthritis Rheum 1994; 37:187) 7

8 ~Chapel Hill Consensus Conference 19944)~
ANCA関連血管炎とは? 【原発性血管炎の分類 -血管炎を主病変とする疾患-】 ~Chapel Hill Consensus Conference 19944)~ 大型血管炎 巨細胞性動脈炎 高安動脈炎 中型血管炎 結節性多発動脈炎 川崎病 小血管炎 . Schönlein-Henoch紫斑病 本態性クリオグロブリン血管炎 白血球破砕性血管炎 Wegener肉芽腫症 顕微鏡的多発血管炎 Churg-Strauss症候群 8

9 ~Chapel Hill Consensus Conference 1994~
ANCA関連血管炎とは? 【小血管炎の成因に基づく分類5) -続発性小血管炎を含む-】 ~Chapel Hill Consensus Conference 1994~ 血清中にANCAを認め血管炎を生じる疾患群をANCA関連血管炎と総称する    ANCA関連小血管炎 原発性 Wegener肉芽腫症 顕微鏡的多発血管炎 Churg-Strauss症候群 腎限局性血管炎 続発性 膠原病(SLE,RA,PM/DM,SSc)  薬剤誘発性 (プロピルチオウラシル,ヒドララジン, ザイロリック,抗リウマチ薬など) ウイルス関連血管炎 免疫複合体形成性小血管炎 Schönlein-Henoch紫斑病 本態性クリオグロブリン血管炎 ループス血管炎 リウマトイド血管炎 シェーグレン症候群血管炎 低補体血症性蕁麻疹様血管炎 Behçet病 Goodpasture症候群 薬剤性 感染症誘発性 腫瘍随伴性小血管炎 リンパ増殖性疾患 骨髄増殖性疾患 炎症性腸疾患 特にMPO-ANCAが検出されるものをMPO-ANCA関連血管炎とする 膠原病や薬剤誘発の結果MPO-ANCAが形成された病態も含まれる 9

10 【ANCA関連血管炎の多臓器病変】 皮膚: 紫斑,結節性紅斑 関節: 関節炎 筋肉: 筋炎 消化管: , ,腸梗塞 神経系: , .
皮膚: 紫斑,結節性紅斑 関節: 関節炎 筋肉: 筋炎 消化管: , ,腸梗塞 神経系: , 腎: 心: 冠動脈炎,心不全,心筋炎 肺: , 消化管出血 腸管穿孔 脳出血 多発性単神経炎 急速進行性糸球体腎炎 びまん性肺胞出血 間質性肺炎 ANCA関連血管炎を肺病変側の視点から捉えた疾患概念をANCA関連肺疾患と呼ぶ 10

11 【ANCA関連血管炎に共通する臨床症状】
共通する全身症状 発熱 体重減少 倦怠感 11

12 【ANCA関連血管炎に共通する検査所見】
炎症所見 白血球数・CRP値・赤沈値・血小板数などの上昇 血管炎の活動性 ・CRP値・体温・腎機能など 欧米では や ,FFSなどの指標が用いられる. 抗核抗体・リウマチ因子が検出されやすい. 高γグロブリン血症 MPO-ANCA値 BVAS VDI 全身血管炎の活動性 BVAS (Birmingham vasculitis activity score) :全身症状,臓器症状に検査所見を加えている. 臓器障害の程度 VDI(vasculitis damage index) FFS(failure-free survival) 12

13 MPO-ANCA関連肺疾患 13

14 びまん性肺胞出血 (Diffuse alveolar hemorrhage:DAH)
MPO-ANCA関連肺疾患 びまん性肺胞出血 (Diffuse alveolar hemorrhage:DAH) 間質性肺炎 (Interstitial pneumonia:IP) 14

15 びまん性肺胞出血 (Diffuse alveolar hemorrhage:DAH)
MPO-ANCA関連肺疾患 びまん性肺胞出血 (Diffuse alveolar hemorrhage:DAH) 15

16 MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH)
問題:40歳代女性.主訴は3週間前からの乾性咳嗽,呼吸困難,Cr 1.42mg/dL, 尿蛋白2+,尿潜血+,Hb 9.3mg/dLと貧血あり. 問A:画像所見は? 問B:鑑別疾患は? 16

17 胸部単純写真では,両側びまん性,中下肺野優位にすりガラス状陰影・粒状影がひろがっている. 容積減少は認めない.
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 答A(画像所見) 胸部単純写真では,両側びまん性,中下肺野優位にすりガラス状陰影・粒状影がひろがっている. 容積減少は認めない. 肺野条件の胸部CT写真では,両側性にconsolidationの混在するすりガラス状陰影が広がる. 気管支を中心に扇状に広がる. 答B(鑑別疾患) 肺胞出血,過敏性肺炎,非定型肺炎(ウイルス肺炎, ニューモシスチス肺炎など) → 本例では,BALにて洗浄液は血性で,ヘモジデリン貪食マクロファージを確認した. 血清MPO-ANCAは76.4EU/Lと上昇していた. 腎障害を認め,腎生検で半月体形成性糸球体腎炎,壊死性血管炎を認め,顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis: MPA)と診断. 17

18 肺胞毛細血管炎により毛細血管壁が断裂するとの説がある6).
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血を生じる機序】 肺胞毛細血管炎により毛細血管壁が断裂するとの説がある6). わが国では,顕微鏡的多発血管炎(MPA)の22%,Churg-Strauss症候群(CSS)の17%で生じたとの報告がある7). 18

19 急性経過をとることが多いが,数か月に及ぶ慢性経過をとることもある.
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血の症状】 (比較的軽度) . 急性経過をとることが多いが,数か月に及ぶ慢性経過をとることもある. 無症状のこともある. 血痰・喀血 呼吸困難 19

20 病勢は血管炎の活動性(ANCA値など)と . ガス交換障害による低酸素血症 貧血
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血の検査所見】 の進行 病勢は血管炎の活動性(ANCA値など)と ガス交換障害による低酸素血症 貧血 一致する 20

21 【びまん性肺胞出血の検査所見】 気管支肺胞洗浄 (BAL) 回収液は となり,後のほうほど . 血性 濃くなる 慢性では, が確認できる.
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血の検査所見】 気管支肺胞洗浄 (BAL) 右図には,BAL液のベルリンブルー染色(鉄染色)を示すが,ヘモジデリン貪食マクロファージが確認できる. 肺胞出血の診断に有用である. 回収液は となり,後のほうほど 慢性では, が確認できる. 血性 濃くなる ヘモジデリン貪食マクロファージ 21

22 すりガラス状陰影~consolidation
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血の画像所見】 胸部X線 広範囲のすりガラス状陰影~浸潤影を示す. 片側性のこともある. 胸部CT(特に高分解能CT) びまん性の 病変の軽い部分では 分布となる. すりガラス状陰影~consolidation 小葉中心性 22

23 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】 肺生検 肺胞腔に担鉄細胞(hemosiderin-laden macrophages)が集簇する. 小血管(毛細血管,細動静脈)の壊死性血管炎が認められることがある.ただし,治療後の生検,剖検では確認は 困難なことが多い. 毛細血管炎の組織所見としては,肺胞壁への好中球の浸潤やフィブリン析出を伴う血管壁の破壊を認める. Goodpasture症候群のびまん性肺胞出血と異なり,免疫複合体の沈着を伴わない. 23

24 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】 肺胞腔に担鉄細胞(hemosiderin-laden macrophages)の集簇よりなる 古い出血巣から新しい出血までが混在してみられる. VATS検体(HE染色,×25) 24

25 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【MPAにおけるびまん性肺胞出血の病理所見】 肺胞壁の毛細血管に好中球の浸潤(→)やフィブリン析出を伴う血管壁の破壊(→)を認める部分があり,肺胞毛細血管炎を認める.  VATS検体(HE染色,×50) 25

26 【肺胞出血をきたす疾患の鑑別8)】 による肺胞出血 . (SLE, RA, PM・DM, SSc,MCTD) Goodpasture症候群
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【肺胞出血をきたす疾患の鑑別8)】 による肺胞出血 . (SLE, RA, PM・DM, SSc,MCTD) Goodpasture症候群 抗リン脂質抗体症候群 Behçet病 Schönlein-Henoch紫斑病 本態性クリオグロブリン血管炎 IgA腎症 毛細血管炎 その他の原因による肺胞出血 骨髄移植後 心臓アミロイドーシス 僧帽弁狭窄症 汎発性血管内凝固症候群 びまん性肺胞障害 肺血管肉腫 肺毛細血管腫 肺リンパ脈管筋腫症 薬剤性 中毒物質吸入(isocyanateなど) 特発性肺ヘモジデローシス Wegener肉芽腫症 顕微鏡的多発血管炎 Churg-Strauss症候群 膠原病 薬剤性 26

27 MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH)
【びまん性肺胞出血の治療】 A.寛解導入療法(初期治療):3~6か月を要して治療する. MPO-ANCA関連血管炎に対する標準的治療プロトコール9)では,重症度により治療内容が異なる. びまん性肺胞出血は最重症例に含まれる. . メチルプレドニゾロン(M-PSL)パルス(0.5~1.0g/日)療法×3日間 あるいは経口プレドニゾロン(PSL)0.6~1.0mg/kg/日(40~60mg/日)             . 4週間以内に以下の併用療法を追加する. シクロホスファミド大量静注療法(IVCY)0.5~0.75g/m2 または経口シクロホスファミド(CY)0.5~2.0mg/kg/日(50~100mg/日) を行う. B.維持療法 寛解導入後は,PSL 5~10mg/日で再燃に注意して経過観察する.経口CY投与は投与開始後6か月以内に中止するのが好ましいが、AZPに変更して投与継続するのも可である。 C.感染予防 ST合剤(バクタ)2T/日を週2日または1T/日を連日予防的に投与する. ステロイド療法 免疫抑制剤 血漿交換 27

28 死亡率は約 % 30 約 %では再出血を認める. 20 【びまん性肺胞出血の転帰】
MPO-ANCA関連肺疾患 1.びまん性肺胞出血(DAH) 【びまん性肺胞出血の転帰】 死亡率は約 % 約 %では再出血を認める. 30 20 28

29 間質性肺炎 (Interstitial pneumonia:IP)
MPO-ANCA関連肺疾患 間質性肺炎 (Interstitial pneumonia:IP) 29

30 広義には,臨床的に次のような概念も含まれている. MPO-ANCA陽性であるものの血管炎がなく と診断されている症例
2.間質性肺炎(IP) 広義には,臨床的に次のような概念も含まれている. MPO-ANCA陽性であるものの血管炎がなく と診断されている症例 → これらの一部では, を 発症する. → IIPsと区別するポイントは・・・ 発熱や腎機能障害の頻度が高い. 白血球数・CRP値・赤沈値はIIPsと比べ高い. 特発性間質性肺炎(IIPs) 顕微鏡的多発血管炎(MPA) IIPsでフォロー中にANCA陽性となる症例については,呼吸器学会においてまだ明確に位置づけられていない. 30

31 問題:70歳代男性,検診にて間質性陰影を指摘.
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 問題:70歳代男性,検診にて間質性陰影を指摘. 初診時胸部単純写真 初診時胸部CT写真 31

32 問: 3年後に咳嗽,血痰が出現. どんな検査を オーダーするか?
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 問: 3年後に咳嗽,血痰が出現. どんな検査を オーダーするか? すりガラス状陰影 嚢胞性陰影 蜂巣肺 32

33 答: 血清MPO-ANCAの測定 気管支肺胞洗浄(BAL) 検尿 → 本例では,初診時の MPO-ANCAは陰性,
2.間質性肺炎(IP) 答: 血清MPO-ANCAの測定 気管支肺胞洗浄(BAL) 検尿 → 本例では,初診時の MPO-ANCAは陰性, 3年後には640EU/Lと上昇していた. BALにて洗浄液は血性で,ヘモジデリン 貪食マクロファージを確認した. 検尿では蛋白尿を認め,腎生検で 壊死性血管炎を認め,MPAと診断. 33

34 病理組織(右S2) 蜂巣肺 fibroblastic foci MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP)
EVGルーペ像では胸膜直下組織の線維化と正常肺組織の介在が認められ,間質性肺炎のパターンはUIPパターンと診断する. 同部位の強拡大では,蜂巣肺が認められる. 34

35 肺胞毛細血管炎や微量の肺胞出血の反復に関連して組織変化をきたすとの説がある10).
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【間質性肺炎を生じる機序】 肺胞毛細血管炎や微量の肺胞出血の反復に関連して組織変化をきたすとの説がある10). 「ANCA関連血管炎の診断が先行する例」と「間質性肺炎の診断が先行する例」があり,機序は単一でない可能性もある. わが国では,MPAの33%,CSSの17%で生じたとの報告がある. 35

36 MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【症状】 . 無症状のこともある. 乾性咳嗽 呼吸困難 36

37 病勢は血管炎の活動性(ANCA値など)と一致 , IIPsと 同様, や に反映される. ガス交換障害による低酸素血症
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【検査所見】 病勢は血管炎の活動性(ANCA値など)と一致 , IIPsと 同様, や に反映される. ガス交換障害による低酸素血症 呼吸機能検査における拘束性換気障害 せず KL-6値 SP-D値 37

38 胸部X線では両側下肺野,肺外層優位の粒状網状影が主体である. 胸部CTでは を含む パターンを呈することが多く, が目立つのが特徴的.
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【画像所見】 胸部X線では両側下肺野,肺外層優位の粒状網状影が主体である. 胸部CTでは を含む パターンを呈することが多く, が目立つのが特徴的. 蜂巣肺 UIP すりガラス状陰影 38

39 パターンを呈することが多く, パターンもみられる. を認めることが多い. 細胞浸潤やリンパ濾胞が目立つ.
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【病理所見】 パターンを呈することが多く, パターンもみられる. を認めることが多い. 細胞浸潤やリンパ濾胞が目立つ. 血管炎や肺胞出血の存在,肺胞腔内器質化や細気管支炎や胸膜炎の存在など多彩な所見を呈する. UIP NSIP 蜂巣肺 39

40 右S4の部位のルーペ像では胸膜直下組織の線維化と正常肺組織の介在が認められ,UIPパターンと診断する.
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 右S4の部位のルーペ像では胸膜直下組織の線維化と正常肺組織の介在が認められ,UIPパターンと診断する. 同部位の強拡大では,胸膜下の古い線維化の周囲にリンパ球,形質細胞の浸潤を伴う胞隔炎の所見がみられた. H.E×25 40

41 MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【治療】 A.寛解導入療法(初期治療):3~6か月を要して治療する. 厚労省難治性血管炎研究班によるMPO-ANCA関連血管炎に対する標準的治療プロトコール9)では,重症度により治療内容が異なる. 間質性肺炎単独は軽症例に含まれる. . PSL 0.3~0.6mg/kg/日(15~30mg/日)経口投与する.      シクロホスファミド(CY)またはアザチオプリン(AZP) 0.5~1.5mg/kg/日(25~100mg/日)を適宜併用する.  呼吸不全合併例,腎炎合併例では重症例に準じる(びまん性肺胞出血の治療を参考). B.維持療法 寛解導入後は,PSL 5~10mg/日で再燃に注意して経過観察する.経口CY投与は投与開始後6か月以内に中止するのが好ましいが,AZPに変更して投与継続するのも可である. C.感染予防 ST合剤(バクタ)2T/日を週2日または1T/日を連日予防的に投与する. ステロイド療法 MPA陽性間質性肺炎の治療については、はっきりしたエビデンスはないが、厚労省難治性血管炎研究班によるMPO-ANCA関連血管炎に対する標準的治療プロトコールの肺線維症型の治療に準じて作成している。 41

42 や などIIPsと同様の経過をとることがある. 血管炎の顕在化(腎病変など) 感染症 5年生存率は約50%
MPO-ANCA関連肺疾患 2.間質性肺炎(IP) 【転帰・予後】 や などIIPsと同様の経過をとることがある. 血管炎の顕在化(腎病変など) 感染症 5年生存率は約50% MPO-ANCA値が高いほど予後不良の傾向がある. 急性増悪 肺癌形成 42

43 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)について 43

44 Wegener肉芽腫症やChurg-Strauss症候群と異なる. 壊死性血管炎
顕微鏡的多発血管炎 (MPA)について 【MPAの疾患概念】 小血管を主体とした ANCA関連血管炎症候群 免疫複合体の沈着を認めない. MPO-ANCA陽性率が高い. 肉芽腫性病変を認めない Wegener肉芽腫症やChurg-Strauss症候群と異なる. 壊死性血管炎 1994年にChapl Hillで開かれた国際会議において,これまで結節性多発動脈炎(PN)と診断されていた症例のうち,小血管を主体とした壊死性血管炎はPNと別の疾患群として区別された. 44

45 【MPAの診断基準】 1.主要症候 (1) . (2) ,もしくは . (3) 腎・肺以外の臓器症状 2.主要組織所見
(1) (2) ,もしくは (3) 腎・肺以外の臓器症状 2.主要組織所見 細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死,血管周囲の炎症細胞浸潤 3.主要検査所見 (1) (2) (3) 蛋白尿・血尿,BUN,血清クレアチニン値の上昇 (4) 胸部X線所見:浸潤陰影(肺胞出血),間質性肺炎 4.判定 (1) 確実 主要症候の2項目以上を満たし,組織所見が陽性の例 主要症候の(1),(2)を含め2項目以上を満たし,MPO-ANCA陽性の例 急速進行性糸球体腎炎 肺出血 間質性肺炎 MPO-ANCA陽性 CRP陽性 (旧厚生省難治性血管炎分科会,1998) 45

46 【腎生検標本】 MPA症例での,腎生検標本.tuft necrosis,幼若な半月体形成(→)が見られ,
半月体形成性糸球体腎炎の所見である. 46

47 【治療・予後9)】 初期治療(寛解導入法): 3~6か月を要して治療する. 先述した通り,
顕微鏡的多発血管炎 (MPA)について 【治療・予後9)】 初期治療(寛解導入法): 3~6か月を要して治療する. 先述した通り, ① 重症例-全身性血管炎型(3臓器以上の障害),肺腎型(限局性肺出血または広範囲間質性肺炎と腎炎の合併),RPGN型の3型 ② 最重症例-びまん性肺出血型,腸管穿孔型,膵炎型,脳出血型, 抗基底膜抗体併存陽性例,重症例の治療抵抗性症例 ③ 軽症-腎限局型(RPGN型は除外),肺線維症型(肺出血型は除外), その他の型(筋・関節型,軽症全身型,末梢神経炎型など)の重症度に準じた治療を行う.    死亡率約 %,診断後1年以内の死亡が多い. 主な死因は, ・ ・ 40 MPAの治療について: 初期治療は重症度に準じた治療が決まっている. 死亡率は約40%で,診断後1年以内の死亡が多いと言われている. 主な死因は感染症・肺胞出血・腎不全であり,感染対策が重要となってくる. 感染症 肺胞出血 腎不全 感染対策が重要! 47

48 Churg-Strauss症候群 (CSS)について
48

49 末梢好酸球数の増加が著明になり, など局所浸潤がみられる時期. 血管炎期
Churg-Strauss症候群 (CSS)について 【CSSの疾患概念】 と をきたす. 3つの時期で構成される. 前駆期 や などのアレルギー性 疾患が先行する時期. 好酸球浸潤期 末梢好酸球数の増加が著明になり, など局所浸潤がみられる時期. 血管炎期 多臓器の血管炎による症状が出現するが, ・ ・皮膚・肺・心・筋・関節が侵されることが多い. 壊死性血管炎 肉芽腫性炎 気管支喘息 アレルギー性鼻炎 好酸球性肺炎 末梢神経 消化管 49

50 【CSSの診断基準】 Churg-Strauss症候群 (CSS)について 1.主要臨床所見 (1) 気管支喘息あるいは . (2) .
(1) 気管支喘息あるいは (2) (3) による症状〔発熱(38℃以上,2週間以上),体重減少(6か月以内に6kg以上),多発性単神経炎,消化管出血,紫斑,多関節痛(炎),筋肉腫,筋力低下〕 2.臨床経過の特徴 主要所見(1),(2)が先行し,(3)が発症する. 3.主要組織所見 (1) 周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性,またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在 (2) 血管外肉芽腫の存在 4.判定 (1)確実 (a) 主要臨床所見のうち気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎,好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ1つ以上を示し,同時に主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎) (b)主要臨床所見3項目を満たし,臨床経過の特徴を示した場合(Churg-Strauss症候群) アレルギー性鼻炎 好酸球増加 血管炎 (旧厚生省難治性血管炎分科会,1998) 50

51 PSL(1mg/kg/日)経口のみで寛解することが多い. 重症型は, や を併用. ガンマグロブリン静注療法も保険適応になる.
Churg-Strauss症候群 (CSS)について 【治療・転帰】 . PSL(1mg/kg/日)経口のみで寛解することが多い. 重症型は, や を併用. ガンマグロブリン静注療法も保険適応になる. ステロイドを漸減する指標としては, ・ ・ がある. 寛解率:81~92% 再発率:26% 死亡率:10~15%:心筋障害・重症消化管障害 ステロイド療法 mPSLパルス CY療法 臨床症状 好酸球数 赤沈値 51

52 参考文献

53 参考文献 Xiao H et al: Antineutrophil cytoplasmic autoantibodies specific for myeroperoxidase cause glomerulonephritis and vasculitis in mice. J Clin Invest 2002; 110: Janette JC et al: Nomenclature of systemic vasculitides. Proposal of an international consensus conference. Arthritis Rheum 1994; 37:187. Kanesh L et al: ANCA-positive vasculitis. Am Soc Nephrol 2002; 13: Yoshida M et al: In vitro production of myeloperoxidase anti-neutrophil cytoplasmic antibody and establishment ob Th1-type T cell lines from peripheral blood lymphocytes of patients. Clin Exp Rheumatol 2005; 23: Janette JC et al: Small vessel vasculitis. N Engl J Med 1997; 337: 吉田雅治:肺血管炎―ウェゲナー肉芽腫症,ANCA関連血管炎を中心として―.診断と治療 1997; 85(5): 吉田雅治:ANCA関連血管炎における肺病変.炎症と免疫 2005; 13(5): 萩原恵里:肺胞出血.日内会誌 2001;90(8): 難治性疾患克服研究事業難治性血管炎に関する調査研究班(主任研究者:尾崎承一) 平成16年度総括・分担研究報告書.2005, 濵野栄美ら:全身性疾患の肺病変 血管炎症候群(MPAを中心に).医学のあゆみ2007; 別冊 呼吸器疾患Ver.5:


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