よりよい抗凝固療法を目指して 講演用 スライドキット集

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1 よりよい抗凝固療法を目指して 講演用 スライドキット集
よりよい抗凝固療法を目指して 講演用 スライドキット集

2 目次 ● RE-LY試験/実臨床におけるダビガトランの有効性・安全性 ● 抗凝固療法が抱える課題 ● 理想的な抗凝固薬とは
● 抗凝固療法が抱える課題  ● 理想的な抗凝固薬とは ● イダルシズマブの特徴と臨床試験データ ● より良い抗凝固療法の為にダビガトランが推奨される患者像

3 RE-LY試験/実臨床における ダビガトランの有効性・安全性
<詳細コメント> 振り返りとして、RE-LY試験ならびに実臨床におけるダビガトランの有効性・安全性について紹介します。

4 RE-LY試験 試験デザイン 非弁膜症性心房細動患者 n=18,113 ワルファリン ダビガトラン 150mg2回/日
INR2.0~3.0 (日本:70歳以上では2.0~2.6) 有効性(主要評価項目):脳卒中(出血性を含む)、全身性塞栓症 安全性:出血イベント、肝機能、その他の有害事象 観察期間:2年(中央値) 非弁膜症性心房細動患者 n=18,113 脳卒中・TIA・全身性塞栓症の既往、左室駆出率<40%、症候性心不全(NYHAⅡ度以上)、 75歳以上、65歳以上の糖尿病・冠動脈疾患・高血圧のいずれか1つ以上のリスクを有する <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):試験デザインについて紹介します。 第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY※試験)では、脳卒中の危険因子[脳卒中、一過性脳虚血発作又は全身性塞栓症の既往、左室駆出率40%未満、症候性心不全(NYHAⅡ度以上)、75歳以上、65歳以上(糖尿病、冠動脈疾患、高血圧のいずれかを有する)]を1つ以上有する非弁膜症性心房細動患者を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群、あるいはワルファリン群(INR 、日本人の70歳以上はINR )に無作為に割付けて試験薬を経口投与し、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制におけるダビガトランの有効性と安全性をワルファリンと比較※※しました。 対象:非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む) 方法:ダビガトラン150mgを1日2回、ダビガトラン110mgを1日2回、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上は )を1日1回、12ヵ月~3年間(日本人には12ヵ月~23ヵ月)投与した。 評価項目: 【有効性の主要評価項目】脳卒中、全身性塞栓症の発症率 【安全性の評価項目】出血イベント(大出血、生命を脅かす出血、頭蓋内出血、小出血など)の発現率、肝機能障害の発現率、その他の有害事象 ※RE-LY: Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy ※※ダビガトラン群とワルファリン群はPROBE(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価:Prospective Randomized Open Blinded End-point)法で、ダビガトランの両群間はDBT(二重盲検比較試験:Double Blind Test)法で比較 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:

5 脳卒中または全身性塞栓症の発症率 全集団 アジア集団 1.12 1.72 1.54 1.39 2.50 3.06 35% 3.5 2.5
ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=135/6,076) 110mg×2回/日 (n=183/6,015) ワルファリン (n=203/6,022) RR0.65(95%CI:0.52–0.81) P<0.001(非劣性)、P<0.001(優越性) RR0.89(95%CI:0.73–1.09) P<0.001(非劣性)、P=0.27(優越性) 35% リスク減少 3.5 2.5 2.0 3.0 1.5 0.5 1.0 発症率(%/年) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=25/933) 110mg×2回/日 (n=44/923) ワルファリン (n=53/926) HR0.45 (95%CI:0.28–0.72) 1.39 2.50 3.06 HR0.81 (95%CI:0.54–1.21) 55% リスク減少 3.5 1.0 2.0 1.5 0.5 2.5 3.0 発症率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):脳卒中/全身性塞栓症の発症率(全集団とアジア集団)について紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ワルファリン群で1.72%/年(203/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.12%/年(135/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.54%/年(183/6,015例)であり、ダビガトラン両群ともにワルファリン群に対する非劣性(P<0.001)が、ダビガトラン150mg×2回/日群では優越性(P<0.001)が認められました。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ワルファリン群で3.06%/年(53/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.39%/年(25/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.50%/年(44/923例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群に比べて55%のリスク減少が認められ、110mg×2回/日群はワルファリン群と同等でした。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

6 出血性脳卒中の発症率 全集団 アジア集団 0.12 0.10 0.38 0.17 0.75 0.11 1.0 0.5 74% 69% 78%
1.0 0.5 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=12/6,076) 110mg×2回/日 (n=14/6,015) ワルファリン (n=45/6,022) 発症率(%/年) RR0.26(95%CI:0.14–0.49) P<0.001 RR0.31(95%CI:0.17–0.56) 74% リスク減少 69% 0.17 0.75 0.11 HR0.22 (95%CI:0.06–0.77) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=3/933) 110mg×2回/日 (n=2/923) ワルファリン (n=13/926) HR0.15 (95%CI:0.03–0.66) 78% リスク減少 85% 1.0 0.5 発症率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):出血性脳卒中の発症率(全集団とアジア集団)について紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、出血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で0.38%/年(45/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.10%/年(12/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.12%/年(14/6,015例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ74%、69%のリスク減少が認められました。(P<0.001) (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、出血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で0.75%/年(13/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.17%/年(3/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.11%/年(2/923例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ78%、85%のリスク減少が認められました。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

7 ダビガトラン長期追跡試験:RELY-ABLE 最大観察期間6.7年、中央値4.6年
n=12,091 無作為割付 ダビガトラン150mg×2回/日 n=6,076 RELY-ABLE継続 (6年以上) n=155 RE-LY終了後も生存および継続投与 n=4,519 RELY-ABLE登録 n=2,937* RELY-ABLE規定終了 (28ヵ月) n=2,508 RELY-ABLE継続 (28ヵ月超) もしくは死亡 n=1,102 無作為割付 ダビガトラン110mg×2回/日 n=6,015 n=165 n=4,492 n=2,914* n=2,511 n=1,086 <詳細コメント> プラザキサの長期有用性を検討したRE-LY ABLE(リライアブル)試験についご紹介します。 <対象>:脳卒中リスクを1つ以上有する非弁膜症性心房細動患者5,851例 <方法>:RE-LY試験でダビガトラン群(150mg×2回/日、110mg×2回/日)のいずれかに無作為割り付けされた患者について同用量を二重盲検下でさらに4.6年間(中央値)投与し、両用量群の長期の有効性・安全性を検討した Ezekowitz MD, et al: Europace Jul;18(7):973-8.

8 長期追跡試験:RELY-ABLE 脳卒中/全身性塞栓症の発症率
0.20 0.05 0.15 0.10 0.25 0.0 1 2 3 4 5 6 5,774 5,706 4,276 4,190 2,753 2,737 149 157 2,181 2,147 累積リスク 6,076 6,015 ダビガトラン150mg×2回/日 ダビガトラン110mg×2回/日 ダビガトラン150mg vs. ダビガトラン110mg ハザード比 0.81(95%CI: ) No. at risk 観察期間 (年) <詳細コメント> プラザキサの長期有用性を検討したRE-LY ABLE(リライアブル)試験について 脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.25%/年(243/2,937例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.54%/年(296/2,914例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群のダビガトラン110mg×2回/日群に対するハザード比は0.81でした。 <対象>:脳卒中リスクを1つ以上有する非弁膜症性心房細動患者5,851例 <方法>:RE-LY試験でダビガトラン群(150mg×2回/日、110mg×2回/日)のいずれかに無作為割り付けされた患者について同用量を二重盲検下でさらに4.6年間(中央値)投与し、両用量群の長期の有効性・安全性を検討した 953 929 Ezekowitz MD, et al. Europace 2016; 18:

9 長期追跡試験:RELY-ABLE 出血性脳卒中の発症率
0.20 0.05 0.15 0.10 0.25 0.0 1 2 3 4 5 6 No. at risk ダビガトラン150mg×2回/日 ダビガトラン110mg×2回/日 観察期間 (年) ダビガトラン150mg vs. ダビガトラン110mg ハザード比 0.91(95%CI: ) 累積リスク <詳細コメント> ダビガトランの長期有用性を検討したRE-LY ABLE(リライアブル)試験について 出血性脳卒中の発症率は、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.11%/年(22/2,937例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.13%/年(24/2,914例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群のダビガトラン110mg×2回/日群に対するハザード比は0.91と同等でした。 ダビガトラン2用量ともに長期間にわたる有効性と安全性が示されました。 <対象>:脳卒中リスクを1つ以上有する非弁膜症性心房細動患者5,851例 <方法>:RE-LY試験でダビガトラン群(150mg×2回/日、110mg×2回/日)のいずれかに無作為割り付けされた患者について同用量を二重盲検下でさらに4.6年間(中央値)投与し、両用量群の長期の有効性・安全性を検討した 6,076 6,015 5,821 5,771 4,338 4,264 2,785 2,796 2,226 2,209 979 956 Ezekowitz MD, et al. Europace 2016; 18:

10 ランダム化比較試験で得られたエビデンスが 実臨床でも得られるか、確認する事が重要
実臨床(Real world)データでは次のような検討が可能 ランダム化 比較試験(RCT) 幅広い登録患者* 臨床試験と 異なる 薬剤との比較 臨床試験で 評価していない 評価項目 臨床試験に 参加していない 医療機関 承認 選ばれた患者集団 <詳細コメント> ランダム化比較試験(RCT)でダビガトランの有効性・安全性は証明されました。し かし、RCTでは超高齢者や合併症、併用薬などにより登録が除外されるケースや、 人種による登録患者の偏りも発生します。選択された患者集団で証明されたRCT のデータが、幅広い患者層に投与される実臨床でも同じような傾向が得られるかど うか確認することも重要です。 *例:年齢層、人種、合併症、併用薬、服薬アドヒアランス

11 ダビガトランの実臨床における有効性・安全性の検討 RE-LY試験と米国メディケアデータ
ランダム化比較試験(RCT) HR:ハザード比(補正),RR:相対リスク RE-LY試験1)(18,113例) ■ワルファリン ■ダビガトラン150mg×2回/日 RR 0.88 RR 0.94 発現率 (%/年) RR 1.48 RR 0.76 RR 0.41 Real-world data 米国メディケアデータ2)(134,000例) 発現率(/1,000人・年) ■ワルファリン ■ダビガトラン HR 0.97 HR 0.86 HR 1.28 <詳細コメント> 2016年9月現在、報告されている中で最も症例数が多い実臨床データは、米国FDAが独自に解析をしたメディケアデータです。メディケアデータにおいて、RE-LY試験で証明されたダビガトランの有効性・安全性と同様の傾向が示されました。 <米国メディケアデータ> 対象:2010~2012年にメディケアを利用し、ダビガトランないしはワルファリンを新規に処方された65歳以上の患者134,000例 方法:対象患者のイベント発現率について患者背景で補正を行い、ダビガトラン群(150mg×2回,75mg×2回)とワルファリン群を比較した <米国におけるダビガトラン承認用量> クレアチニンクリアランス 30mL/min超:150mg×2回 クレアチニンクリアランス mL/min:75mg×2回 HR 0.80 HR 0.34 <RE-LY>対象:脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)のうち、ダビガトラン150mg×2回群6,076例、ワルファリン群6,022例   方法: 対象をダビガトラン群(150mg×2回,110mg×2回)あるいはワルファリン群に無作為に割付け、各試験薬を2年間(中央値)投与し、各群におけるイベント発現率を検討した <米国メディケアデータ>対象:2010~2012年にメディケアを利用し、ダビガトランないしはワルファリンを新規に処方された65歳以上の患者134,000例 方法:対象患者のイベント発現率について患者背景で補正を行い、ダビガトラン群(150mg×2回,75mg×2回)とワルファリン群を比較した 1)Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: 2)Graham DJ, et al. Circulation 2015;131:

12 ダビガトランの実臨床における有効性・安全性の検討 RE-LY試験と台湾データ
ランダム化比較試験(RCT) HR:ハザード比(補正) RE-LY試験:アジア人集団1)(2,782例) ■ワルファリン ■ダビガトラン150mg×2回/日 HR 0.78 発現率 (%/年) HR 0.57 HR 0.55 HR 0.69 HR 0.40 Real-world data 台湾データ2)(19,853例) ■ワルファリン ■ダビガトラン 発現率(/100人・年) HR 0.45 HR 0.62 <詳細コメント> アジアにおける大規模な実臨床データとして、台湾から大規模な実臨床データが報告されております。 このデータでもRE-LY試験のアジア人集団で証明されたダビガトランの有効性・安全性と同様の傾向が実臨床においても示されました。 欧米のデータと違う点として、アジア人ではダビガトランによる消化管出血の発現率はワルファリンと比べて同等であり、よりDOAC投与が望ましい集団であるとRCT/実臨床データから考えられます。 <台湾データ> 対象:2012年7月~2013年12月末までに、台湾国家健康調査機構データベース (Taiwan National Health Insurance Research Database)に登録された、 ダビガトラン内服患者9,940例、ワルファリン内服患者9,913例 方法:プロペンシティスコアを用い、対象患者におけるダビガトランの有効性・安全性について検討を行った。 HR 0.58 HR 0.44 HR 0.99 <RE-LY試験:アジア集団データ>対象:脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)   方法:対象をダビガトラン群(150mg×2回/日、110mg×2回/日)あるいはワルファリン群に無作為に割付け、各試験薬を2年間(中央値)投与し、有効性および安全性を検討した。 <台湾データ>対象:2012年7月~2013年12月末までに、台湾国家健康調査機構データベース (Taiwan National Health Insurance Research Database)に登録された、 ダビガトラン内服患者9,940例、ワルファリン内服患者9,913例 方法:プロペンシティスコアを用い、対象患者におけるダビガトランの有効性・安全性について検討を行った。 1)Hori M, et al. Stroke 2013; 44: 2)Chan YH, et al. Stroke 2016; 47:

13 ダビガトランの実臨床データ20論文のメタ解析
2015年11月までに各種データベース※ 検索で同定された6,494論文 重複した1,322論文を除外 登録基準を満たさなかった5,138論文を除外 その他登録基準、重複した14論文を除外 メタ解析の対象となった20論文を同定 <詳細コメント> 2016年7月に、これまでのダビガトランの実臨床データをメタ解析した論文が発表されました。 基準を満たした20の論文がメタ解析に用いられました。 解析対象となった20論文の患者数内訳は、ダビガトラン患者数が210,279名、ビタミンK拮抗薬患者数が501,019名、合計711,298名と膨大な数であり、 ダビガトランの実臨床データが豊富であることがうかがえます。 解析対象となった20論文の患者数内訳    ダビガトラン患者数:210,279名  ビタミンK拮抗薬患者数:501,019名     合計:711,298名 ※Pubmed、Embase、Scopus Carmo J, et al. Thromb Haemost 2016; Epub.

14 種々の実臨床データにおいて有効性が証明されている虚血性脳卒中(メタ解析)
Study or Subgroup Weight Hazard Ratio IV, Random, 95% CI ダビガトラン150 mg Abraham mg 5.1% 1.03 [0.63, 1.68] Graham mg 9.5% 0.80 [0.67, 0.96] Larsen mg 7.2% 1.18 [0.85, 1.64] Lauffenburger mg 10.3% 0.91 [0.81, 1.02] Maura mg 1.8% 0.75 [0.27, 2.08] Seeger mg 6.4% 0.92 [0.62, 1.35] Tsadok mg - at least 75 years old 7.9% 1.05 [0.79, 1.39] Tsadok mg - less than 75 years old 8.6% 0.89 [0.70, 1.13] Villines mg 7.7% 0.84 [0.62, 1.13] Yap mg 0.1% 0.13 [0.00, 50.25] Subtotal (95% CI) 64.6% 0.91 [0.84, 0.98] 0.1 0.5 1 2 10 0.2 5 ダビガトランが良い ビタミンK拮抗薬が良い Heterogeneity: Tau2=0.00; Chi2=6.49, df=9 (P=0.69); I2=0% Test for overall effect: Z=2.53 (P=0.01) ダビガトラン110 mg Chan mg 1.8% 0.22 [0.08, 0.61] Ho mg 4.7% 0.20 [0.12, 0.34] Larsen mg 7.4% 0.73 [0.53, 1.00] Maura mg 5.1% 1.50 [0.92, 2.45] Tsadok mg - at least 75 years old 10.2% 1.07 [0.94, 1.22] Tsadok mg - less than 75 years old 6.1% 0.90 [0.60, 1.35] Subtotal (95% CI) 35.4% 0.66 [0.41, 1.06] <詳細コメント> 虚血性脳卒中に関しては、ダビガトラン150mg×2回/日群ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.91と有意なリスク減少が見られました。ダビガトラン110mg×2回/日群ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.66と同等でした。 また、ダビガトラン2用量の合計ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.86と有意なリスク減少が見られており、RCTで証明された有効性が実臨床でも示されました。 Heterogeneity: Tau2=0.30; Chi2=51.18, df=5 (P< ); I2=90% Test for overall effect: Z=1.71 (P=0.09) Total (95% CI) 100.0% 0.86 [0.74, 0.99] Heterogeneity: Tau2=0.05; Chi2=57.94, df=15 (P< ); I2=74% Test for overall effect: Z=2.03 (P=0.04) Test for subgroup differences: Chi2=1.65, df=1 (P=0.20), I2=39.3% Carmo J, et al. Thromb Haemost 2016; Epub.

15 種々の実臨床データにおいて安全性が証明されている 大出血(メタ解析)
Study or Subgroup Weight Hazard Ratio IV, Random, 95% CI ダビガトラン150 mg Graham mg 6.8% 0.97 [0.88, 1.07] Hernandez mg 6.5% 1.58 [1.36, 1.83] Larsen mg - experienced VKA 5.6% 0.59 [0.46, 0.75] Larsen mg - naive VKA 5.9% 0.67 [0.55, 0.83] Lauffenburger mg 6.9% 0.94 [0.87, 1.01] Maura mg 2.3% 0.85 [0.43, 1.68] Nisthala mg 3.9% 0.29 [0.19, 0.44] Seeger mg 0.75 [0.65, 0.87] Tsadok mg men 6.6% 0.73 [0.64, 0.84] Tsadok mg women 6.2% 0.85 [0.71, 1.01] Villines mg 6.3% 0.87 [0.74, 1.03] Yap mg 0.7% 1.57 [0.36, 6.77] Subtotal (95% CI) 64.2% 0.81 [0.68, 0.95] ダビガトランが良い ビタミンK拮抗薬が良い 0.1 1 10 0.01 100 Heterogeneity: Tau2=0.06; Chi2=121.12, df=11 (P< ); I2=91% Test for overall effect: Z=2.60 (P=0.009) ダビガトラン110 mg Ho mg 0.5% 0.72 [0.12, 4.37] Larsen mg - experienced VKA 5.9% 0.81 [0.66, 1.00] Larsen mg - naive VKA 6.0% 0.72 [0.59, 0.88] Maura mg 4.5% 0.84 [0.59, 1.20] Nisthala mg 5.5% 0.40 [0.31, 0.52] Tsadok mg - men 6.7% 0.87 [0.77, 0.98] Tsadok mg - women 1.00 [0.89, 1.12] Subtotal (95% CI) 35.8% 0.75 [0.61, 0.94] <詳細コメント> 大出血に関しては、ダビガトラン150mg×2回/日群ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.81、ダビガトラン110mg×2回/日群ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.75とダビガトラン2用量ともに有意にリスク減少が認められました。 また、ダビガトラン2用量の合計ではビタミンK拮抗薬群と比べてHR0.79と有意なリスク減少が見られており、RCTで証明された安全性が実臨床でも示されました。 このように、ダビガトランはDOACの中でも豊富な実臨床データを有しており、ビタミンK拮抗薬と比べて同等以上の有効性・安全性が証明されております。 Heterogeneity: Tau2=0.06; Chi2=43.85, df=6 (P< ); I2=86% Test for overall effect: Z=2.57 (P=0.01) Total (95% CI) 100.0% 0.79 [0.69, 0.89] Heterogeneity: Tau2=0.06; Chi2=167.78, df=18 (P< ); I2=89% Test for overall effect: Z=3.73 (P=0.0002) Test for subgroup differences: Chi2=0.23, df=1 (P=0.63), I2=0% Carmo J, et al. Thromb Haemost 2016; Epub.

16 抗凝固療法が抱える課題 <詳細コメント>
ダビガトランはRCTのみならず、多くの実臨床データでもその有効性・安全性が示されております。 しかし、課題が無いわけではありません。抗凝固療法が抱える課題について触れたいと思います。

17 避けられない転倒や事故 <詳細コメント> 例えば、抗凝固療法中に問題になるケースとして以下のような場合が考えられます。
・抗凝固薬服用中の患者さんが交通事故に遭い、緊急の手術が必要になる場合 ・抗凝固薬服用中の患者さんが転倒し、頭蓋内出血を発現した場合 このようなケースでは、抗凝固薬服用中は出血を助長してしまう可能性が高いため、抗凝固作用を速やかに中和する事が必要になる場合があります。

18 RE-LY試験において手術が必要になった患者の 大出血発現率
発現率(%) ■ダビガトラン150mg×2回/日 ■ダビガトラン110mg×2回/日 ■ワルファリン 緊急手術 17.7 17.8 21.6 待機的手術 大手術 10 5 15 20 25 3.8 2.8 3.3 6.5 6.1 7.8 19/107 24/111 48/1,447 53/1,405 29/473 39/498 33/511 25/141 38/1,380 <詳細コメント> 抗凝固薬服用中の患者が、緊急手術/侵襲的処置が必要になる場合、大出血の発現率は高く、その対処には課題がありました。 ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY)サブ解析: 手術が必要になった患者の大出血発現率について紹介します。 (全集団)RE-LY試験において手術が必要になった患者の大出血発現率は、緊急手術を行ったでは、ワルファリン群で21.6%(24/111例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で17.7%(25/141例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で17.8%(19/107例)でした。待機的手術を行った患者では、ワルファリン群で3.3%(48/1,447例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で3.8%(53/1,405例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.8%(38/1,380例)でした。また、大手術を行った患者では、ワルファリン群で7.8%(39/498例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で6.5%(33/511例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で6.1%(29/473例)でした。 <RE-LY> 対象: 脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)のうち、ダビガトラン150mg×2回群6,076例、ダビガトラン110mg×2回群6,015例ワルファリン群6,022例   方法: 対象をダビガトラン群(150mg×2回,110mg×2回)あるいはワルファリン群に無作為に割付け、各試験薬を2年間(中央値)投与し、各群におけるイベント発現率を検討した Healey JS, et al. Circulation 2012; 126:

19 生命を脅かす出血の発現率 -RE-LY試験 アジア集団-
HR0.58 (95%CI:0.34–0.97) 3.0 HR0.41 (95%CI:0.23–0.73) 発現率(%/年) 2.20 2.0 42% リスク減少 59% リスク減少 1.28 1.0 0.91 <詳細コメント> ダビガトラン群での生命を脅かす出血の発現率はワルファリン群と比べてリスクの大幅な減少が見られましたが、それでもリスクが「0」になるわけではありません。 抗凝固薬服用中に発生した大出血はその後の生命予後にも関わることが知られています。 ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):生命を脅かす出血の発現率(アジア集団)について紹介します。 (アジア集団)生命を脅かす出血の発現率は、ワルファリン群で2.20%/年(38/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.28%/年(23/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.91% /年(16/923例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ42%、59%のリスク減少が認められました。 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=23/933) ダビガトラン 110mg×2回/日 (n=16/923) ワルファリン (n=38/926) <RE-LY:アジア集団データ> 対象: 脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)のうち、ダビガトラン150mg×2回群933例、ダビガトラン 110mg×2回群923例、ワルファリン群926例   方法: 対象をダビガトラン群(150mg×2回,110mg×2回)あるいはワルファリン群に無作為に割付け、各試験薬を2年間(中央値)投与し、各群におけるイベント発現率を検討した Hori M et al. Stroke 2013; 44:

20 頭蓋内出血の発現率 - RE-LY試験 アジア集団-
HR0.40 (95%CI:0.18–0.92) 1.5 HR0.20 (95%CI:0.07–0.60) 発現率(%/年) 1.10 1.0 60% リスク減少 0.5 80% リスク減少 <詳細コメント> ダビガトラン群での頭蓋内出血の発現率はワルファリン群と比べてリスクの大幅な減少が見られましたが、それでもリスクが「0」になるわけではありません。 抗凝固薬服用中に発生した大出血はその後の生命予後にも関わることが知られており、特に抗凝固薬服用中の頭蓋内出血は予後が悪い事が知られています。 ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):頭蓋内出血の発現率(アジア集団)について紹介します。 (アジア集団)頭蓋内出血の発現率は、ワルファリン群で1.10%/年(19/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.45%/年(8/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.23% /年(4/923例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ60%、80%のリスク減少が認められました。 0.45 0.23 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=8/933) ダビガトラン 110mg×2回/日 (n=4/923) ワルファリン (n=19/926) <RE-LY:アジア集団データ> 対象: 脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)のうち、ダビガトラン150mg×2回群933例、ダビガトラン 110mg×2回群923例、ワルファリン群926例   方法: 対象をダビガトラン群(150mg×2回,110mg×2回)あるいはワルファリン群に無作為に割付け、各試験薬を2年間(中央値)投与し、各群におけるイベント発現率を検討した Hori M et al. Stroke 2013; 44:

21 理想的な抗凝固薬とは <詳細コメント>
有効性・安全性がRCTや多くの実臨床データで証明されつつあるDOACですが、未だ解決されていない課題も存在します。 特に重篤な出血時(緊急手術時や頭蓋内出血)の対応については、DOACはこれまで特異的な中和剤が存在しませんでした。 では、理想的な抗凝固薬とはどのようなものでしょうか?

22 理想的な抗凝固薬 経口投与可能 薬効が速やかに発現 抗凝固効果が予測可能 治療域が広い モニターのための検査が不要 副作用が少ない
食事や他の薬剤との相互作用が少ない 中和する方法がある 価格が適正 <詳細コメント> 抗凝固療法、特にDOACの問題点は、副作用である重篤な出血事象の発現のみならず日常生活での転倒や交通事故等によって 緊急の手術が必要になった際に抗凝固作用を中和出来る薬剤が存在しなかった事です。 DOACが発売される前の2010年の段階でも理想的な抗凝固薬のプロファイルの1つとして「中和する方法がある」ことが掲げられていました。 星野晴彦. 循環器内科 2010; 68:

23 ダビガトラン服用中の患者が出血した場合の これまでの対処法
ダビガトラン服用中の患者が出血した場合の これまでの対処法 一般的処置 凝固因子の補充 ダビガトランの除去 ・ 薬剤の休薬 ・ 圧迫止血 ・ 外科的処置による止血 ・ 輸液投与など ・ 血液凝固第IX因子複合体製剤 ・ 遺伝子組換え第VII因子製剤 ・ 新鮮凍結血漿など ・ 経口活性炭投与 ・ 胃洗浄 ・ 血液透析 ・ 十分な利尿など <詳細コメント> DOAC服用中の患者が出血した場合のこれまでの対処法は、症状に応じて、休薬や圧迫止血、輸液投与、凝固因子の補充のために血液製剤の投与を実施するなどの対症療法が一般的でした。 それに加えてダビガトランの場合は腎排泄率が高いため、十分な利尿や血液透析という選択肢もありました。 Heidbuchel H, et al. Europace 2015; 17:

24 ダビガトラン服用中の患者が出血した場合の これからの対処法
ダビガトラン服用中の患者が出血した場合の これからの対処法 一般的処置 凝固因子の補充 ダビガトランの除去 ・ 薬剤の休薬 ・ 圧迫止血 ・ 外科的処置による止血 ・ 輸液投与など ・イダルシズマブ ・ 血液凝固第IX因子複合体製剤 ・ 遺伝子組換え第VII因子製剤 ・ 新鮮凍結血漿など ・ 経口活性炭投与 ・ 胃洗浄 ・ 血液透析 ・ 十分な利尿など <詳細コメント> 最近DOAC初の中和剤であるダビガトランの特異的中和剤であるイダルシズマブが登場しました。ダビガトランが原因となって発現している出血の際に、ダビガトラン抗凝固作用を中和できる薬剤であり、この薬剤はダビガトラン発売前から開発が進められていました。また、海外では既に臨床使用されており、各種ガイドラインや学会ステートメントなどにもイダルシズマブ使用に関するレコメンデーションが記載されています。 ダビガトランの特異的中和剤イダルシズマブが登場 Heidbuchel H, et al: European Heart Journal doi: /eurheartj/ehw058

25 NOAC投与下における出血管理 (EHRA Practical Guide Executive summary)
血液検体からのCCr、ヘモグロビン値、白血球数の算出 迅速な凝固能評価の可否を検査室に確認 軽度出血 中等度/重度出血 生命を脅かす出血 対症療法 ・機械的圧迫 ・内視鏡的止血(消化管出血の場合) ・外科的止血 ・輸液(必要があれば膠質液) ・必要があれば赤血球補充 ・FFP(血漿増量剤として) ・血小板補充(血小板数≦60×109/L) ダビガトラン投与患者 ・イダルシズマブ5gの  静脈内投与を考慮 ・十分な利尿を維持 ・血液透析を考慮 ・(活性炭血液潅流?) ・ダビガトラン投与患者:  イダルシズマブ5g静脈内投与 考慮 ・PCC50U/kg必要があれば+25U/kg ・aPCC50U/kg最大200U/kg/日 ・(rFVIIa90μg/kg  臨床的エビデンスはない) 次回投与を遅らせる、 または中止する 併用薬を再検討する <詳細コメント> NOAC投与中に出血を発現した場合、出血の重症度と出血部位に応じた対処を行う必要があります。 EHRA(ヨーロッパ不整脈学会)のPractical Guide 2016では、ダビガトラン投与中に中等度/重度の出血および生命を脅かす出血を発現した患者に対する出血の対処方法として、イダルシズマブが記載されています。 本アルゴリズムでは、生命を脅かす出血を発現した患者に対しては、イダルシズマブは以下の対症療法と併用可能と記載されています。 ・PCC50U/kg(必要に応じて25U/kg追加) ・aPCC50U/kg、最大200U/kg/日まで ・rFVIIa90μg/kg(臨床的エビデンスはない) Heidbuchel H, et al: European Heart Journal doi: /eurheartj/ehw058

26 イダルシズマブの特徴と 臨床試験データ <詳細コメント> イダルシズマブの特徴と臨床試験データについて紹介します。

27 イダルシズマブの効能・効果 効能・効果 以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和  生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
 重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時 <効能・効果に関連する使用上の注意> (1) 本剤は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の最終投与からの経過時間、患者背景(ダビガトランの薬物動態に影響する可能性がある腎機能及びP-糖タンパク阻害剤の併用等)等から、ダビガトランによる抗凝固作用が発現している期間であることが推定される患者にのみ使用すること。 (2) 手術又は処置に対して本剤を使用する場合、ダビガトランによる抗凝固作用の消失を待たずに緊急で行う必要があり、かつ、手技に伴う出血のリスクが高く、止血困難な場合に致死的あるいは重篤な経過になるおそれがある手術又は処置に対してのみ使用すること。 (3) 本剤はダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩以外の抗凝固剤による抗凝固作用の中和には使用しないこと。 <詳細コメント> 効能・効果は、生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時、もしくは重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時における、ダビガトランの抗凝固作用の中和です。 効能効果に関連する使用上の注意は、イダルシズマブはダビガトランの最終投与からの経過時間、患者背景(ダビガトランの薬物動態に影響する可能性がある腎機能及びP-糖タンパク阻害剤の併用等)等から、ダビガトランによる抗凝固作用が発現している期間であることが推定される患者にのみ使用すること、 手術や処置を緊急で行う必要があり、かつ手技に伴う出血リスクが高く、止血困難な場合に致命的あるいは重篤な経過になるおそれがある時に限られること、そしてダビガトラン以外の抗凝固作用の中和には使用しないことが重要です。

28 イダルシズマブの用法・用量 用法・用量 通常、成人にはイダルシズマブ(遺伝子組換え)として1 回5g(1 バイアル2.5g/50mL を2 バイアル)を点滴静注又は急速静注する。ただし、点滴静注の場合は1 バイアルにつき5~10 分かけて投与すること。 <詳細コメント> イダルシズマブの用法、用量は通常、成人にはイダルシズマブとして1 回5 g(50mL のバイアルを2本)を点滴静注又は急速静注し、点滴静注の場合は1 バイアルにつき5 ~10分かけて投与します。

29 イダルシズマブの特徴 ダビガトランに対して特異的に結合し、ダビガトランの抗凝固作用を投与完了直後に中和する。
ダビガトランの抗凝固作用の中和以外の作用として、凝固促進作用や抗凝固活性を示さず、血液凝固・線溶系に影響を与えない。 緊急処置を必要とする患者、もしくは生命を脅かす出血を発現している患者を対象とした国際共同第Ⅲ相症例集積試験(RE-VERSE AD試験)で確認された中和効果。 RE-VERSE AD試験(中間集計)において、日本人4例を含む243例に本剤が投与され、副作用が報告された症例は13例(5.3%)であった。(承認時) <詳細コメント> イダルシズマブの特徴は4つです。 1つめは、ダビガトランに特異的に結合し、その抗凝固作用を投与完了直後に中和する。 2つめは、ダビガトランの抗凝固作用の中和以外の凝固促進作用や抗凝固活性を示さず、凝固系・線溶系に影響を与えない。 3つめは、RE-VERSE AD試験で、中和剤の適応となる患者を対象に中和効果が確認されており、実際の患者さんで検証がされていることです。 最後に、その安全性が臨床試験で証明されていることです。

30 イダルシズマブのダビガトランへの結合様式
イダルシズマブ (分子量47,782 ) ダビガトラン (分子量471.5) トロンビン (分子量 約36,000 ) <詳細コメント> ダビガトランに特異的に結合するイダルシズマブですが、その結合親和性はトロンビンに対するダビガトランの結合親和性に比べ、約300倍高いことが知られています。 解離定数 (KD) 2.1±0.6pM トロンビンに対するダビガトランの結合親和性に比べ、約300倍高い親和性 会合速度 (Ka) 3.4±0.4×105/Ms ダビガトランに対するイダルシズマブの迅速な結合 解離速度 (Kd) 0.7±0.08×10–6/s ダビガトランからのイダルシズマブの解離は緩やか Schiele F, et al. Blood 2013; 121: Eikelboom JW, et al. Circulation 2015; 132: Wienen W, et al. Thromb Haemost 2007; 98(1):

31 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 希釈トロンビン時間(dTT)
(秒) 80 75 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g×2 (n=9) ダビガトラン定常状態※+プラセボ (n=3) 平均値+SD 基準値上限 32.5秒 70 65 60 55 dTT(希釈トロンビン時間) 50 45 40 35 <詳細コメント> ダビガトランの定常状態にある(ダビガトラン220mg×2回/日投与)日本人健康成人男性にイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内投与した直後、dTTは基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、32.5秒)未満に低下し、観察期間を通じて、その中和効果が維持されました。 30 -2 -1 1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (時間) イダルシズマブまたはプラセボの1本目投与完了時点 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※:1~3、8~10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4、11日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

32 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 試験デザイン
ダビガトラン服用中の患者 目標患者数:500例(合計) 緊急手術患者: 緊急を要する手術または 侵襲的処置を必要とする患者 イダルシズマブ 1本目投与 イダルシズマブ 2本目投与 出血患者: 生命を脅かす出血または 止血困難な出血を発現して いる患者 0~15分 90日の追跡調査 0~24時間 試験開始時 (スクリーニング期) 1回目投与前 2回目投与前 10〜30分 1時間 2時間 4時間 12時間 24時間 30日後 90日後 <詳細コメント> ダビガトラン服用中で、緊急処置を必要とする患者または生命を脅かす出血を発現している患者を対象とした国際共同第Ⅲ相症例集積試験であるRE-VERSE AD試験について紹介します。 以下の患者を対象に、ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果が検討されました。 <対象>ダビガトランによる治療中の以下の患者243例 ・緊急手術患者群:緊急を要する手術または侵襲的処置を必要とする患者106例 ・出血患者群:生命を脅かす出血または止血困難な出血を発現している患者137例(日本人患者4例を含む) <方法> 本試験では、1回目の2.5g 投与完了後に採血が可能になるよう、1回目投与完了から15分未満の間隔を空けて2回目の2.5gが静脈内投与されました。 イダルシズマブ1回目投与前、2回目投与前、イダルシズマブ投与後10~30分後、1、2、4、12、24時間後、30、90日後にそれぞれ採血されました。 RE-VERSE AD:The study of the REVERSal Effects of Idarucizumab in Patients on Active Dabigatran RE-VERSE AD試験は、非盲検、非対照、多施設共同、症例集積試験です。本試験の登録基準を満たす出血症例は、対症療法だけでは不十分な場合があり、対照群(中和剤を使用しない対症療法のみ)の設定は倫理的に受け入れられないと判断しました。よって、本試験は非盲検で実施し、すべての患者に中和剤を投与することとしました。 ▲印は薬物動態/薬力学および抗薬物抗体検討のための採血時期を表す。 Pollack CV, et al. Thromb Haemost 2015; 114: Pollack CV, et al. N Engl J Med 2015; 373:

33 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 主要評価項目
1回目の投与終了から最後の投与完了の4時間後までのいずれかの測定時点の希釈トロンビン時間(dTT)またはエカリン凝固時間(ECT)の値に基づいて評価するダビガトランの抗凝固作用の最大の中和効果 最大中和効果 = (%) A [投与前の血液凝固検査値-投与後の血液凝固検査値の最低値] B [投与前の血液凝固検査値-基準値上限(ULN)の110%] ×100% 基準値上限未満 中和効果 血液凝固マーカー (秒) A B イダルシズマブ投与前の血液凝固検査値 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験における主要評価項目は、イダルシズマブの初回投与終了から最後の投与完了の4時間後までのいずれかの測定時点のdTTまたはECTの値に基づいて評価するダビガトランの抗凝固作用の最大の中和効果となっております。 最大中和効果は、図のとおりに算出し、この値が100%以上の場合を、ダビガトランの抗凝固作用に対する「完全中和」と定義しました。 尚、中和効果に関する有効性解析には、投与前の血液凝固検査値が100%ULN以下の患者は含んでおりません。 イダルシズマブ投与後の血液凝固検査値の最低値 基準値上限(upper limit of normal:ULN) Pollack CV, et al. Thromb Haemost 2015; 114: Pollack CV, et al. N Engl J Med 2015; 373:

34 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景①
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景① 緊急手術患者群 (n=106) 出血患者群 (n=137) 合計 (n=243) 人種または民族 アジア人 5(4.7) 13(9.5) 18(7.4) 黒人/アフリカ系米国人 0(0.0) 2(1.5) 2(0.8) ハワイ先住民、太平洋諸国系 6(5.7) 8(5.8) 14(5.8) 白人 92(86.8) 109(79.6) 201(82.7) 不明 3(2.8) 5(3.6) 8(3.3) 年齢 [歳]、中央値(最小値~最大値) 76.5 (50.0~96.0) 78.0 (47.0~94.0) 77.0 (47.0~96.0) 男性 51(48.1) 77(56.2) 128(52.7) クレアチニンクリアランス [mL/min] Cockcroft-Gault式に よる推算値 中央値 (最小値~最大値) 56.0 (7.9~192.9) 50.1 (8.2~186.8) 52.2 30未満※1 24(22.6) 27(19.7) 51(21.0) 30~50未満 19(17.9) 36(26.3) 55(22.6) 50~80未満 30(28.3) 39(28.5) 69(28.4) 80以上 26(19.0) 56(23.0) 9(6.6) 12(4.9) ベースライン(投与前)dTT延長※2 60(56.6) 96(70.0) 156(64.2) ベースライン(投与前)ECT延長※2 91(85.8) 125(91.2) 216(88.9) <詳細コメント> こちらは、RE-VERSE AD試験に登録された患者背景になります。日本国内で承認申請をした中間集計の段階で243例の症例が集積されており、 そちらのデータについて紹介いたします。 緊急を要する手術または侵襲的処置を必要とする患者(以下、緊急手術患者群)が106例、生命を脅かす出血または止血困難な出血を発現している 患者(以下、出血患者群)が137例でした。 患者の年齢(中央値)は77.0歳、クレアチニンクリアランス(中央値)は52.2mL/minと、高齢者および腎機能障害患者が多く含まれていました。 高度腎機能障害(CCr30mL/min未満)患者51例は、外傷、敗血症、持続性の失血、または血行動態ショックなど重篤な疾患において考えられる 腎機能低下を反映している可能性があります。 ベースライン(投与前)dTT高値の患者は156例(64.2%)、ベースラインECT高値の患者は216例(88.9%)であり、dTTおよびECTが正常であった87例および27例は、 有効性解析対象から除外しました。 データは説明がない限り例数(%) ※1 ダビガトランは重度の腎障害を持つ患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)への投与は禁忌(日本国内) ※2 基準値上限110%を超えていた症例 承認時評価資料

35 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景②
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景② 緊急手術患者群 (n=106) 出血患者群 (n=137) 合計 (n=243) ダビガトランの投与理由※1 心房細動 100(94.3) 130(94.9) 230(94.7) 整形外科術 1(0.9) 0(0.0) 1(0.4) 静脈血栓塞栓症 3(2.8) 2(1.5) 5(2.1) その他 2(1.9) 5(3.6) 7(2.9) ダビガトランの1日投与量 110mg×2回 66(62.3) 85(62.0) 151(62.1) 150mg×2回 32(30.2) 38(27.7) 70(28.8) 8(7.5) 13(9.5)※2 21(8.6) ダビガトラン最終投与から イダルシズマブ投与開始 までの時間 中央値 (最小値~最大値)[時間] 19.8 (2.6~105.8) 13.9 (1.5~90.4) 15.8 (1.5~105.8) 12時間未満 30(28.3) 50(36.5) 80(32.9) 12~24時間未満 58(42.3) 90(37.0) 24~48時間未満 33(31.1) 25(18.2) 58(23.9) 48時間以上 11(10.4) 4(2.9) 15(6.2) 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度 [ng/mL] 中央値(最小値~最大値) 65.1(1~2,880) 106(1~2,590) 80.8(1~2,880) 主な合併症および既往歴 高血圧 82(77.4) 110(80.3) 192(79.0) うっ血性心不全 35(33.0) 53(38.7) 88(36.2) 糖尿病 27(25.5) 42(30.7) 69(28.4) 冠動脈疾患 31(29.2) 84(34.6) 脳卒中の既往 15(14.2) 40(29.2) 55(22.6) 一過性脳虚血発作の既往 17(12.4) 28(11.5) 全身性塞栓症の既往 9(8.5) 9(6.6) 18(7.4) 大出血の既往 12(4.9) 活動性の癌 13(12.3) 11(8.0) 24(9.9) <詳細コメント> 総ダビガトラン血漿中濃度(中央値)は、緊急手術患者群65.1ng/mL、出血患者群106ng/mLでした。 患者報告に基づくダビガトラン最終投与からイダルシズマブ1回目投与までの時間(中央値)は、15.8時間でした。ダビガトラン最終投与から24時間以上経過している患者が全体の約30%いました。 ●総ダビガトラン血漿中濃度:血漿中の蛋白およびイダルシズマブに対する結合型・非結合型ダビガトランとその代謝物である結合型・非結合型グルクロン酸抱合体を合算した濃度のこと。 ● 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度:イダルシズマブおよび血漿蛋白のいずれにも結合していない濃度のこと。非結合型総ダビガトランはトロンビンに結合することが可能であるため、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はダビガトランの薬理活性を表すものと考えられます。 データは説明がない限り例数(%) ※1 本邦で承認されているダビガトランの効能・効果は「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」である ※2 誤記入により13名中2名は「その他」として集計されているが、治験登録時に「110 mg×2回」服用患者であることが確認されている 承認時評価資料

36 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景③
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 患者背景③ 緊急の手術または 侵襲的処置の理由※ 緊急手術 患者群(n=106†) 骨折 19 急性胆嚢炎・胆石症・黄疸 7 創傷部感染・感染性関節炎 6 急性腎不全・透析のためのカテーテル留置 5 ヘルニア修復 4 その他:各3 急性虫垂炎、開腹、ペースメーカー植込み、気胸、 内臓器官の穿孔疑い、小腸閉塞、脊柱管狭窄症減圧術 出血の種類・部位 出血 患者群 (n=137) 消化管出血 62 頭蓋内出血 43 後腹膜出血 5 心膜内出血 関節内出血 3 筋肉内出血 その他 24 <詳細コメント> ・緊急手術患者群における緊急の手術または侵襲的処置の理由は、骨折、急性胆嚢炎、急性腎不全、カテーテル留置などでした。 ・出血患者群における出血の種類および部位は、消化管出血と頭蓋内出血そして外傷の割合が多かった。 緊急手術患者群 本患者群には、きわめて予後不良である大動脈解離、腹膜炎などを発症している患者も含まれている。手術および処置の理由は、骨折(19例)が最も多く、以下、急性胆嚢炎/胆石症/黄疸(7例)、創傷部感染/感染性関節炎(6例)、急性腎不全およびカテーテル留置(5例)、急性虫垂炎(3例)などでした。 出血患者群 本患者群における出血の種類・部位は、消化管出血が最も多く(62例)、次いで頭蓋内出血(43例)、外傷(31例)でした。 ※:3例以上を抜粋 †:緊急手術患者群106例中101例が緊急の手術または侵襲的処置が実施された。 外傷 31 重複例あり 承認時評価資料

37 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 ダビガトランの抗凝固作用の中和効果:主要評価項目
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 ダビガトランの抗凝固作用の中和効果:主要評価項目 緊急手術患者群 出血患者群 合計 dTT 評価対象となった患者数 60(100.0) 96(100.0) 156(100.0) 投与完了後4時間以内の最大の中和効果[%] 中央値(95%信頼区間) 100(100, 100) 最大の中和効果が100%、80%以上または50%以上であった患者の割合 100% 58(96.7) 94(97.9) 152(97.4) ≧80% 59(98.3) 95(99.0) 154(98.7) ≧50% ECT 91(100.0) 125(100.0) 216(100.0) 85(93.4) 120(96.0) 205(94.9) 90(98.9) 124(99.2) 214(99.1) <詳細コメント> dTTおよびECTを用いて評価したイダルシズマブによる最大の中和効果の中央値は、緊急手術患者群、出血患者群ともに100%でした。 dTTに基づく最大の中和効果が100%であった患者の割合は、緊急手術患者群96.7%および出血患者群97.9%であり、ECTに基づく最大の中和効果が100%であった患者の割合は、それぞれ93.4%および96.0%でした。dTTおよびECTは緊急手術患者群、出血患者群ともにイダルシズマブ投与直後に110%基準値上限未満に低下し、その中和効果は24時間持続しました。 dTT:110%基準値上限=39.1秒、ECT:110%基準値上限=45.4秒 承認時評価資料

38 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(dTT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(dTT) 緊急手術患者群(n=104) 出血患者群 (n=136) (秒) (秒) 50 30 40 60 110 80 70 90 100 110 80 50 30 40 60 70 90 100 5 95パーセンタイル 90 10 25 75 50 dTT(希釈トロンビン時間) dTT(希釈トロンビン時間) イダルシズマブ 2.5g×2本 イダルシズマブ 2.5g×2本 1本目 2本目 1本目 2本目 110%基準値上限 39.1秒 110%基準値上限 39.1秒 <詳細コメント> こちらはRE-VERSE AD試験の主要評価項目である、dTT(希釈トロンビン時間)に基づく、ダビガトラン抗凝固作用に対する中和効果の結果です。 両患者群ともに、dTTはイダルシズマブ投与直後に基準値上限未満に低下しました。 また、その中和効果は観察期間24時間にわたって維持しました。 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 イダルシズマブ投与後の経過時間 イダルシズマブ投与後の経過時間 承認時評価資料

39 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(ECT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(ECT) 緊急手術患者群 (n=104) 出血患者群 (n=136) (秒) (秒) 325 150 75 25 225 300 125 200 275 100 175 250 50 325 150 75 25 225 300 125 200 275 100 175 250 50 ECT(エカリン凝固時間) イダルシズマブ 2.5g×2本 ECT(エカリン凝固時間) イダルシズマブ 2.5g×2本 1本目 2本目 1本目 2本目 110%基準値上限 45.4秒 110%基準値上限 45.4秒 <詳細コメント> こちらはRE-VERSE AD試験の主要評価項目である、ECT(エカリン凝固時間)に基づく、ダビガトラン抗凝固作用に対する中和効果の結果です。 両患者群ともに、ECTはイダルシズマブ投与直後に基準値上限未満に低下しました。 また、その中和効果は観察期間24時間にわたって維持されました。 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 イダルシズマブ投与後の経過時間 イダルシズマブ投与後の経過時間 承認時評価資料

40 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 安全性
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 安全性 副作用発現率:5.3%(13/243例) 緊急手術患者群3.8%(4/106例)、出血患者群6.6%(9/137例) 副作用 出血イベント発現:イダルシズマブ投与と因果関係があると判定された出血イベントはなし 出血イベント イダルシズマブ投与と因果関連があると判定された死亡:緊急手術患者群1例 死亡 抗イダルシズマブ抗体陽性率:3.3% (8/242例) 免疫原性(抗薬物抗体) <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された243例の安全性に関するデータを紹介します。 副作用は全体で5.3%、13例に発現しました。イダルシズマブ投与と因果関係があると判定された出血イベントはありませんでした。 また、緊急手術患者群で1例、イダルシズマブ投与と因果関係があると判定された死亡がありました。 抗イダルシズマブ抗体陽性率は3.3%、8例に認められました。 承認時評価資料

41 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 血栓性イベント
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 血栓性イベント イダルシズマブ 投与後の 期間(日)*1 年齢[歳] /性別 血栓性イベント 患者群 原疾患 抗凝固療法 の有無 1*2 54/男性*3 虚血性脳卒中 緊急手術患者群 血栓除去術 なし 3 94/女性 深部静脈血栓症 出血患者群 消化管出血 75/男性 深部静脈血栓症+肺塞栓症 4 94/男性 股関節全置換 あり 7 83/男性 心筋梗塞 8 82/女性 急性胆嚢炎 10~11*4 85/男性*3 深部静脈血栓症+肺塞栓症+心房内血栓 頭蓋内出血 14 86/女性 20 肺塞栓症 25 72/女性 膝関節感染症 なし*5 32 83/女性 75 68/男性 86 74/男性 股関節再置換 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験における血栓性イベントは、243例中13例に認められ、このうちイダルシズマブ投与と因果関係があると判定された血栓性イベントは緊急手術患者群および出血患者群でそれぞれ1例でした。 緊急手術患者群の1例は投与から約45分後に虚血性脳卒中を発現し、出血患者群の1例は投与から10日目(起点はイダルシズマブ投与日)に肺塞栓症および心房内血栓を、11日目に深部静脈血栓症を発現しました。いずれの患者も血栓性イベントの発現時点で抗凝固療法を再開していませんでした。 :イダルシズマブ投与と因果関係があると判定 :血栓性イベントにより死亡 ※1:起点(1日目)はプリズバインド投与日 ※2:プリズバインド投与約45分後 ※3:プリズバインド投与と因果関係があると判定 ※4:10日目 肺塞栓症および心房内血栓、11日目 深部静脈血栓症 ※5: 本症例は、プリズバインド投与後7日目にクレキサン(エノキサパリンナトリウム)を再開されたが、血栓性イベント発現時には中止されていたため、抗凝固療法の再開はなしと記載。 1例を除いて血栓性イベント発現時点で抗凝固療法を再開していなかった 承認時評価資料

42 DOAC投与患者における 出血および緊急手術時の管理
抗凝固療法中の緊急手術患者/出血患者 十分な止血が達成でき、患者が臨床的に安定した場合は速やかに抗凝固療法を再開 軽度出血 中等度/ 重症出血 生命を脅かす出血 緊急手術 ・次回投与の延期 または中止 ・併用薬の再検討 ・腎機能の確認 ・根本的な出血源と考えられる部位の 検討 ・患者を安心させる ・抗凝固療法を必ず継続させる 出血源の管理 ・機械的圧迫 ・内視鏡的または 外科的止血 ・画像下止血 対症療法 ・補液 ・輸血 ・利尿維持 考慮 ・PCC(4因子)50U/kg、必要が あれば+25U/kg ・aPCC 50U/kg 最大200U/kg ・ダビガトラン投与患者:イダルシズマブ5g* ・必要に応じて手術を開始(可能であれば待機) ・抗凝固状態の確認(時間があれば) ・交差適合試験済みの血液;濃厚赤血球の準備 ・PCC(4因子)の準備 <詳細コメント> こちらはDOAC投与患者における出血および緊急手術時の管理を示したフローチャートです。 生命を脅かす出血を発現した場合や緊急手術が必要な場合、ダビガトランによる治療中の患者であればイダルシズマブ5gの投与が推奨されます。 また、処置後に十分な止血が達成でき、患者が臨床的に安定した場合は速やかに抗凝固療法を再開するということも記載されています。 *: ダビガトランの中和剤として推奨されている Ageno W, et al. Thromb Haemost 2016; Epub.

43 理想的な中和剤 理想的な 中和剤 特異的に 作用 使用方法が 簡便 迅速な 中和 副作用が 少ない 中和効果 が高い 中和効果が 予測できる
が持続 <詳細コメント> DOACはRCTでその有効性・安全性が証明され、実臨床においてもその有効性・安全性を支持するエビデンスが蓄積されてきています。 しかし、抗凝固療法の特性上、出血リスクを「0」にすることは難しく、今までは万一の際の対応に課題があり、特異的な中和剤の開発がのぞまれてきました。 イダルシズマブはDOACでは世界初となるダビガトランに特異的な中和剤ですが、それでは理想的な中和剤のプロファイルはどのようなものでしょうか? 特異的に作用する、迅速である、効果が高い、効果が持続する、効果が予測できる、副作用が少ない、そして使用方法が簡便であるということではないでしょうか。 イダルシズマブは第Ⅰ相試験から第Ⅲ相試験のRE-VERSE AD試験で、これらの項目を満たす中和剤であることが証明できたのではないでしょうか。 Dalal J, et al. Indian Heart J 2016; 68:

44 抗凝固療法選択において 患者・医師ともに中和剤があることを重視
抗凝固療法に対して重視する項目 <重視度> 患者 (n=266) 医師 (n=178) 食事・薬剤との相互作用が少ない 大出血リスクが低い 緊急時の迅速な中和が可能 豊富な臨床データがある 定期的な採血が不要 投与回数 脳卒中予防の有効性が高い <詳細コメント> こちらのスライドは、医師と患者それぞれが抗凝固療法に対して重視する項目をまとめたものです。 <対 象>:2014年5月~9月の間に、所定の調査項目を聞き取れたカナダ人266名の患者、178名の医師(開業医/家庭医:101名、循環器内科医:41名、一般内科医:36名) <方 法>:医師・患者双方に独立したインターネットによる調査を行い、所定の質問に対する回答を得た 医師のみならず、患者さんも抗凝固薬を服薬する際には中和剤の存在が重要であると考えています。 ダビガトランはRCT/実臨床でその有効性・安全性が証明されており、しかもDOACで唯一特異的な中和剤イダルシズマブを有しているため、医師・患者のニーズを満たせるDOACではないでしょうか。 対 象:2014年5月~9月の間に、所定の調査項目を聞き取れたカナダ人266名の患者、178名の医師(開業医/家庭医:101名、循環器内科医:41名、一般内科医:36名) 方 法:医師・患者双方に独立したインターネットによる調査を行い、所定の質問に対する回答を得た Andrade JG, et al. Canadian Journal of Cardiology 2016; 32:

45 より良い抗凝固療法の為に ダビガトランが推奨される患者像
<詳細コメント> より良い抗凝固療法を行う為に、DOACで唯一特異的な中和剤が存在するダビガトランが推奨される患者像を提示します。

46 ダビガトランが推奨される患者像 新たに抗凝固療法を開始する患者さん しっかりと脳梗塞を予防したい患者さん
カテーテルアブレーション等、侵襲的手技が予定されている患者さん <詳細コメント> ダビガトランによる抗凝固療法は安全に実施できることが、大規模臨床試験、実臨床データで再現性高く示されています。さらにダビガトランには、緊急時に直ちにその抗凝固作用を止めることが出来る中和剤イダルシズマブが承認されました。 ダビガトランは、 1)新たに抗凝固療法を開始する患者さん 2)しっかりと脳梗塞を予防したい患者さん 3)カテーテルアブレーションなど、侵襲的手技が予定されている患者さん などに推奨される薬剤だと考えられます。

47 まとめ ●実臨床においてもダビガトランの有効性・安全性はRE-LY試験と同様、その 有効性と安全性が確認されている。
●抗凝固療法の課題として、転倒などに伴う緊急手術や生命を脅かす出血、頭蓋内出血等の重篤な出血事象への対応があげられる。 ●イダルシズマブはダビガトランに対する特異的な中和剤であり、迅速・完全・ 持続的な中和作用を示した。 ●中和剤を投与した症例においては、止血確認後、臨床症状が安定したら   速やかな抗凝固療法の再開が重要である。 ●中和剤のある唯一のDOACであるダビガトランは、新規に投与する患者、 しっかり脳梗塞を予防したい患者、侵襲的手技を予定している患者に推奨 される薬剤である。 <詳細コメント> まとめのスライドになります ●実臨床においてもダビガトランの有効性・安全性はRE-LY試験と同様、その有効性と安全性が確認されている。 ●抗凝固療法の課題として、転倒などに伴う緊急手術や生命を脅かす出血、頭蓋内出血等の重篤な出血事象への対応があげられる。 ●イダルシズマブはダビガトランに対する特異的な中和剤であり、迅速・完全・持続的な中和作用を示した。 ●中和剤を投与した症例においては、止血確認後、臨床症状が安定したら速やかな抗凝固療法の再開が重要である。 ●中和剤のある唯一のDOACであるダビガトランは、新規に投与する患者、しっかり脳梗塞を予防したい患者、侵襲的手技を予定している患者に推奨される薬剤である。

48 補足スライド

49 補足スライド内容 ・ ダビガトラン関連 ・ 出血管理 ・ イダルシズマブの臨床試験 ・ イダルシズマブの安全性 ・ イダルシズマブの薬理作用 ・ イダルシズマブの薬物動態 ・ その他添付文書

50 ダビガトラン関連

51 トロンビンの生理作用を阻害するダビガトラン
結合 トロンビンの生理作用 血液凝固反応の増幅 フィブリン形成 血小板活性化 血栓形成 <詳細コメント> ・トロンビンは、「血液凝固反応の増幅」「フィブリン形成」「血小板活性化」などを介して、血栓を形成します。 ・ダビガトランは、トロンビンの活性を直接かつ選択的に阻害します。 ダビガトランは、トロンビンの活性を直接かつ選択的に阻害し、フィブリノゲンからフィブリンの生成を抑制するなどして、抗凝固作用・抗血栓作用を発揮します。 内皮細胞 治療学 Vol.44 no より作図

52 RE-LY試験 試験デザイン 非弁膜症性心房細動患者 n=18,113 ワルファリン ダビガトラン 150mg2回/日
INR2.0~3.0 (日本:70歳以上では2.0~2.6) 有効性(主要評価項目):脳卒中(出血性を含む)、全身性塞栓症 安全性:出血イベント、肝機能、その他の有害事象 観察期間:2年(中央値) 非弁膜症性心房細動患者 n=18,113 脳卒中・TIA・全身性塞栓症の既往、左室駆出率<40%、症候性心不全(NYHAⅡ度以上)、 75歳以上、65歳以上の糖尿病・冠動脈疾患・高血圧のいずれか1つ以上のリスクを有する <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):試験デザインについてご紹介します。 第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY※試験)では、脳卒中の危険因子[脳卒中、一過性脳虚血発作又は全身性塞栓症の既往、左室駆出率40%未満、症候性心不全(NYHAⅡ度以上)、75歳以上、65歳以上(糖尿病、冠動脈疾患、高血圧のいずれかを有する)]を1つ以上有する非弁膜症性心房細動患者を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群、あるいはワルファリン群(INR 、日本人の70歳以上はINR )に無作為に割付けて試験薬を経口投与し、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制におけるダビガトランの有効性と安全性をワルファリンと比較※※しました。 対象:非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む) 方法:ダビガトラン150mgを1日2回、ダビガトラン110mgを1日2回、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上は )を1日1回、12ヵ月~3年間(日本人には12ヵ月~23ヵ月)投与した。 評価項目: 【有効性の主要評価項目】脳卒中、全身性塞栓症の発症率 【安全性の評価項目】出血イベント(大出血、生命を脅かす出血、頭蓋内出血、小出血など)の発現率、肝機能障害の発現率、その他の有害事象 ※RE-LY: Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy ※※ダビガトラン群とワルファリン群はPROBE(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価:Prospective Randomized Open Blinded End-point)法で、ダビガトランの両群間はDBT(二重盲検比較試験:Double Blind Test)法で比較 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:

53 主要評価項目 (脳卒中または全身性塞栓症の発症率)
全集団 アジア集団 1.12 1.72 1.54 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=135/6,076) 110mg×2回/日 (n=183/6,015) ワルファリン (n=203/6,022) RR0.65(95%CI:0.52–0.81) P<0.001(非劣性)、P<0.001(優越性) RR0.89(95%CI:0.73–1.09) P<0.001(非劣性)、P=0.27(優越性) 35% リスク減少 3.5 2.5 2.0 3.0 1.5 0.5 1.0 発症率(%/年) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=25/933) 110mg×2回/日 (n=44/923) ワルファリン (n=53/926) HR0.45 (95%CI:0.28–0.72) 1.39 2.50 3.06 HR0.81 (95%CI:0.54–1.21) 55% リスク減少 3.5 1.0 2.0 1.5 0.5 2.5 3.0 発症率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):脳卒中/全身性塞栓症の発症率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ワルファリン群で1.72%/年(203/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.12%/年(135/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.54%/年(183/6,015例)であり、ダビガトラン両群ともにワルファリン群に対する非劣性(P<0.001)が、ダビガトラン150mg×2回/日群では優越性(P<0.001)が認められました。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ワルファリン群で3.06%/年(53/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.39%/年(25/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.50%/年(44/923例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群に比べて55%のリスク減少が認められ、110mg×2回/日群はワルファリン群と同等でした。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

54 虚血性脳卒中の発症率 全集団 アジア集団 1.34 0.93 1.22 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=112/6,076) 110mg×2回/日 (n=159/6,015) ワルファリン (n=144/6,022) RR0.76(95%CI:0.59–0.97) P=0.03 RR1.10(95%CI:0.88–1.37) P=0.42 24% リスク減少 2.5 1.0 2.0 1.5 0.5 発症率(%/年) 2.05 1.12 2.02 HR0.55 (95%CI:0.32–0.95) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=20/933) 110mg×2回/日 (n=36/923) ワルファリン (n=35/926) HR1.01 (95%CI:0.63–1.61) 45% リスク減少 2.5 1.0 2.0 1.5 0.5 発症率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):虚血性脳卒中の発症率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、虚血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で1.22%/年(144/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.92%/年(112/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.34%/年(159/6,015例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群と比べて24%リスクを減少し、優越性(P<0.001)が認められました。ダビガトラン110mg×2回/日群ではワルファリン群と同等でした。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、虚血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で2.02%/年(35/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.19%/年(20/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.05%/年(36/923例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群に比べて45%のリスク減少が認められ、110mg×2回/日群はワルファリン群と同等でした。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

55 出血性脳卒中の発症率 全集団 アジア集団 0.12 0.10 0.38 0.17 0.75 0.11 1.0 0.5 74% 69% 78%
1.0 0.5 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=12/6,076) 110mg×2回/日 (n=14/6,015) ワルファリン (n=45/6,022) 発症率(%/年) RR0.26(95%CI:0.14–0.49) P<0.001 RR0.31(95%CI:0.17–0.56) 74% リスク減少 69% 0.17 0.75 0.11 HR0.22 (95%CI:0.06–0.77) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=3/933) 110mg×2回/日 (n=2/923) ワルファリン (n=13/926) HR0.15 (95%CI:0.03–0.66) 78% リスク減少 85% 1.0 0.5 発症率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):出血性脳卒中の発症率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、出血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で0.38%/年(45/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.10%/年(12/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.12%/年(14/6,015例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ74%、69%のリスク減少が認められました。(P<0.001) (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、出血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で0.75%/年(13/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.17%/年(3/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.11%/年(2/923例)であり、ワルファリン群に比べ、ダビガトラン150mg×2回/日群、ダビガトラン110mg×2回/日群でそれぞれ78%、85%のリスク減少が認められました。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

56 全死亡 全集団 アジア集団 3.75 3.64 4.13 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=438/6,076) 110mg×2回/日 (n=446/6,015) ワルファリン (n=487/6,022) 死亡率(%/年) RR0.88(95%CI:0.77–1.00) P=0.051 HR0.91(95%CI:0.80–1.03) P=0.13 6.0 2.0 4.0 4.01 5.09 5.01 HR0.78 (95%CI:0.57–1.07) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=72/933) 110mg×2回/日 (n=88/923) ワルファリン (n=88/926) HR0.98 (95%CI:0.73–1.32) 6.0 2.0 4.0 死亡率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):死亡率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、死亡率は、ワルファリン群で4.13%/年(487/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で3.64%/年(438/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で3.75%/年(446/6,015例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群と同等でした。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、死亡率は、ワルファリン群で5.09%/年(88/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で4.01%/年(72/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で5.01%/年(88/923例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群と同等でした。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

57 大出血の発現率 全集団 アジア集団 3.40 3.61 2.92 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=409/6,076) 110mg×2回/日 (n=347/6,015) ワルファリン (n=426/6,022) RR0.94(95%CI:0.82–1.08) P=0.41 RR0.80(95%CI:0.70–0.93) P=0.003 発現率(%/年) 20% リスク減少 4.0 2.0 3.0 1.0 2.22 2.17 3.82 HR0.57 (95%CI:0.38–0.84) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=39/933) 110mg×2回/日 (n=39/923) ワルファリン (n=66/926) (95%CI:0.39–0.85) 43% リスク減少 4.0 2.0 3.0 1.0 発現率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):大出血の発現率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、大出血の発現率は、ワルファリン群で3.61%/年(426/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で3.40%/年(409/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.92%/年(347/6,015例)であり、ダビガトラン110mg×2回/日群ではワルファリン群と比べて20%リスクを減少し、優越性(P=0.003)が認められました。ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群と同等でした。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、大出血の発現率は、ワルファリン群で3.82%/年(66/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で2.17%/年(39/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で2.22%/年(39/923例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群に比べてそれぞれ43%のリスク減少が認められました。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

58 消化管出血の発現率 全集団 アジア集団 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=188/6,076) 110mg×2回/日 (n=137/6,015) ワルファリン (n=126/6,022) 発現率(%/年) RR1.48(95%CI:1.18–1.85) P=0.001 RR1.08(95%CI:0.85–1.38) P=0.52 1.15 1.56 1.07 2.0 1.0 HR0.69 (95%CI:0.37–1.27) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=17/933) 110mg×2回/日 (n=20/923) ワルファリン (n=24/926) HR0.82 (95%CI:0.45–1.49) 0.96 1.41 1.15 2.0 1.0 発現率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):消化管出血の発現率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、消化管出血の発現率は、ワルファリン群で1.07%/年(126/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.56%/年(188/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.15%/年(137/6,015例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群と比べて48%リスクが上昇し、劣性(P=0.001)が認められました。ダビガトラン110mg×2回/日群ではワルファリン群と同等でした。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、消化管出血の発現率は、ワルファリン群で1.41%/年(24/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.96%/年(17/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.15%/年(20/923例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群と同等でした。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

59 生命を脅かす出血の発現率 全集団 アジア集団 1.27 1.52 1.87 1.28 2.20 0.91 19% 33% 3.0 1.0
ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=183/6,076) 110mg×2回/日 (n=151/6,015) ワルファリン (n=221/6,022) 発現率(%/年) RR0.81(95%CI:0.67–0.99) P=0.04 RR0.67(95%CI:0.55–0.83) P<0.001 19% リスク減少 33% 1.27 1.52 1.87 3.0 1.0 2.0 HR0.58 (95%CI:0.34–0.97) HR0.41 (95%CI:0.23–0.73) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=23/933) 110mg×2回/日 (n=16/923) ワルファリン (n=38/926) 42% リスク減少 59% 1.28 2.20 0.91 3.0 1.0 2.0 発現率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):生命を脅かす出血の発現率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、生命を脅かす出血の発現率は、ワルファリン群で1.87%/年(221/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.52%/年(183/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で1.27%/年(151/6,015例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群と比べて19%リスクを減少し、優越性(P=0.04)が認められました。ダビガトラン110mg×2回/日群においてもワルファリン群と比べて33%リスクを減少し、優越性(P<0.001)が認められました。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、生命を脅かす出血の発現率は、ワルファリン群で2.20%/年(38/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で1.28%/年(23/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.91%/年(16/923例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群に比べてそれぞれ42%、59%のリスク減少が認められました。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

60 頭蓋内出血の発現率 全集団 アジア集団 ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=38/6,076) 110mg×2回/日 (n=27/6,015) ワルファリン (n=90/6,022) 発現率(%/年) RR0.41(95%CI:0.28–0.60) P<0.001 RR0.30(95%CI:0.19–0.45) 59% リスク減少 70% 0.23 0.32 0.76 1.5 0.5 1.0 HR0.40 (95%CI: 0.18–0.92) ダビガトラン 150mg×2回/日 (n=8/933) 110mg×2回/日 (n=4/923) ワルファリン (n=19/926) HR0.20 (95%CI:0.07–0.60) 60% リスク減少 80% 0.45 1.10 0.23 1.5 0.5 1.0 発現率(%/年) <詳細コメント> ダビガトランの第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY):頭蓋内出血の発現率(全集団とアジア集団)についてご紹介します。 (全集団)第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、頭蓋内出血の発現率は、ワルファリン群で0.76%/年(90/6,022例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.32%/年(38/6,076例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.23%/年(27/6,015例)であり、ダビガトラン150mg×2回/日群ではワルファリン群と比べて59%リスクを減少し、優越性(P<0.001)が認められました。ダビガトラン110mg×2回/日群においてもワルファリン群と比べて70%リスクを減少し、優越性(P<0.001)が認められました。 (アジア集団)第Ⅲ相国際共同試験のアジア集団2,782例を対象に、ダビガトラン150mg×2回/日、ダビガトラン110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR 、日本人の70歳以上はINR )を2年間(中央値)投与したところ、頭蓋内出血の発現率は、ワルファリン群で1.10%/年(19/926例)であったのに対し、ダビガトラン150mg×2回/日群で0.45%/年(8/933例)、ダビガトラン110mg×2回/日群で0.23%/年(4/923例)であり、ダビガトラン2用量ともにワルファリン群に比べてそれぞれ60%、80%のリスク減少が認められました。 Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361:    Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: Hori M, et al. Stroke 2013; 44:

61 ダビガトラン カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析
The J-Dabigatran Surveillance <詳細コメント> ダビガトラン カプセル特定使用成績調査(The J-Dabigatran Surveillance)― 長期使用に関する調査―2015年度 中間解析について紹介します。 プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

62 解析対象 本中間解析の解析期間:2011年12月~2015年9月17日 平均観察期間:544275(SD)日 登録例 6,772
調査票未回収例 178   未送信 60   未回収 118 解析除外例 186   登録違反 34  初診以降、通院なし 152 本報告の解析対象 6,408 <詳細コメント> 解析対象となった登録例は6,772例であり、調査表未回収178例、解析除外186例を除いた6,408例を本報告の解析対象としました。 本中間解析の解析期間:2011年12月~2015年9月17日 平均観察期間:544275(SD)日 プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

63 患者背景 ダビガトラン 1日投与量(初回) 全体 (n=6,408*) 150mg×2回/日 (n=1,559) 110mg×2回/日
年齢(歳) 63.19.1  73.38.7 70.99.9  65歳未満 837 (53.7) 686 (14.5) 1,531 (23.9) 65歳以上74歳以下 602 (38.6) 1,813 (38.3) 2,448 (38.2) 75歳以上 120 (7.7) 2,235 (47.2) 2,429 (37.9) 70歳以上 319 (20.5) 3,429 (72.4) 3,842 (60.0) 女性 310 (19.9) 1,763 (37.2) 2,125 (33.2) CHADS2スコア 1.41.1 2.01.3 1.81.3 326 (20.9) 542 (11.4) 877 (13.7)  1 606 (38.9) 1,429 (30.2) 2,062 (32.2) 2 352 (22.6) 1,337 (28.2) 1,732 (27.0) 3 188 (12.1) 792 (16.7) 1,000 (15.6) 4~6 87 (5.6) 634 (13.4) 737 (11.5) クレアチニンクリアランス(mL/min) 89.827.6 67.623.0 72.926.1 30mL/min未満 1 (0.1) 17 (0.4) 20 (0.3) 30mL/min超50mL/min未満 37 (2.4) 938 (19.8) 1,017 (15.9) 50mL/min超80mL/min未満 521 (33.4) 2,256 (47.7) 2,813 (43.9) 80mL/min以上 857 (55.0) 1,060 (22.4) 1,931 (30.1) <詳細コメント> 患者背景に関して紹介します。 全体の平均年齢は70.9歳、女性の割合は約3分の1、平均CHADS2スコアは1.8点であり、平均クレアチニンクリアランスは72.9mL/minでした。 用量別の患者背景の特徴として、ダビガトラン150mg×2回/日は若年者、男性、低CHADS2スコア、良好なクレアチニンクリアランス例に使用されていました。 ダビガトラン110㎎×2回/日は比較的高齢者、比較的低クレアチニンクリアランス例に多く使用されていました。 平均±標準偏差または例数(%) *:150mg×2回/日または110mg×2回/日以外の用量を初回投与された115例を含む プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

64 患者背景 既往歴と合併症 ダビガトラン 1日投与量(初回) 全体 (n=6,408*) 150mg×2回/日 (n=1,559)
患者背景 既往歴と合併症 ダビガトラン 1日投与量(初回) 全体 (n=6,408*) 150mg×2回/日 (n=1,559) 110mg×2回/日 (n=4,734) 既往歴 脳卒中/TIA 295 (18.9) 970 (20.5) 1,287 (20.1) 心筋梗塞 32 (2.1) 170 (3.6) 204 (3.2) 出血 36 (2.3) 251 (5.3) 299 (4.7) 消化管出血 9 (0.6) 70 (1.5) 81 (1.3) 胃腸障害 38 (2.4) 104 (2.2) 146 (2.3) 合併症 心不全 225 (14.4) 888 (18.8) 1,143 (17.8) 高血圧 980 (62.9) 3,203 (67.7) 4,261 (66.5) 糖尿病 322 (20.7) 964 (20.4) 1,300 (20.3) 肝機能障害 169 (10.8) 463 (9.8) 642 (10.0) 腎機能障害 49 (3.1) 530 (11.2) 603 (9.4) 168 (10.8) 759 (16.0) 943 (14.7) <詳細コメント> 患者背景(既往歴と合併症)に関して紹介します。 全体の脳卒中/TIA既往例は20.1%、心不全の合併は17.8%、高血圧の合併は66.5%、糖尿病の合併は20.3%でした。 用量別の既往歴と合併症として、特に大きな違いは無かったが、ダビガトラン150㎎×2回/日投与患者の腎機能障害例は3.1%でした。 例数(%) *:150mg×2回/日または110mg×2回/日以外の用量を初回投与された115例を含む TIA:一過性脳虚血発作 プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

65 重点調査イベント① 1次予防患者 (n=5,051) 2次予防患者 (n=1,287) 全体 (n=6,408) 心筋梗塞 8 (0.1)
1 (0.1) 9 (0.1) 出血 大出血 28 (0.4) 12 (0.6) 41 (0.4) 小出血 205 (2.8) 65 (3.5) 272 (2.9) 全出血(大出血+小出血) 229 (3.1) 77 (4.2) 309 (3.3) 頭蓋内出血 7 (0.4) 17 (0.2) 消化管出血 75 (1.0) 28 (1.5) 104 (1.1) 胃腸障害(非出血性) 573 (7.9) 133 (7.4) 711 (7.8) <詳細コメント> 重点調査イベント(心筋梗塞、出血イベント、胃腸障害)について紹介します。 全体6,408例におけるイベント発生率はスライドの通りです。心筋梗塞は9例(0.1%)に発現、大出血は41例(0.4%)、頭蓋内出血は17例(0.2%)、消化管出血は104例(1.1%)とRE-LY試験と比べて特に多い傾向があるイベントは確認されませんでした。また、胃腸障害が711例(7.8%)に発現しました。  ※RE-LYの延長試験であるRE-LY ABLE試験では胃腸障害発現時には、PPIやH2ブロッカーの併用同様に食事と一緒にダビガトランを服用するなどの工夫を行うことにより、85%以上の患者の胃腸障害が改善したと報告されています。 発現例数(/100人年) 平均観察期間:544±275(SD)日 プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

66 重点調査イベント② 1次予防患者 (n=5,051) 2次予防患者 (n=1,287) 全体 (n=6,408)
脳卒中/TIA・全身性塞栓症 48 (0.6) 28 (1.5) 76 (0.8) 脳卒中/TIA 44 (0.6) 26 (1.4) 70 (0.7) 虚血性脳卒中 38 (0.5) 23 (1.2) 61 (0.6) 出血性脳卒中 4 (0.1) 2 (0.1) 6 (0.1) 全身性塞栓症 <詳細コメント> 重点調査イベント(血栓塞栓症)について紹介します。 全体6,408例におけるイベント発生率はスライドの通りです。脳卒中/TIAは70例(0.7%)に発現、虚血性脳卒中は61例(0.6%)、出血性脳卒中は17例(0.2%)、全身性塞栓症は6例(0.1%)とRE-LY試験と比べて特に多い傾向があるイベントは確認されませんでした。 発現例数(/100人年) 平均観察期間:544±275(SD)日 TIA:一過性脳虚血発作 プラザキサ®カプセル特定使用成績調査 ― 長期使用に関する調査 ― 2015年度 中間解析

67 抗凝固療法が抱える課題 -無治療患者が存在-
<詳細コメント> ダビガトランはRCTのみならず、多くの実臨床データでもその有効性・安全性が示されております。 しかし、課題が無いわけではありません。抗凝固療法が抱える課題について触れたいと思います。 抗凝固療法が抱える課題の一つとして抗凝固療法の適応でありながら無治療の患者が存在することが挙げられます。

68 Fushimi AF Registry CHADS2スコア別 抗血栓薬処方割合
100 80 60 40 20 ■なし ■アスピリンのみ ■ワルファリン+アスピリン ■ワルファリンのみ 全体 1 3 2 4 5,6 n=3,183 患者割合 (%) CHADS2スコア (点) <詳細コメント> こちらは京都の伏見地区で行われているFushmi AF registryにおけるCHADS2スコア別の抗血栓薬処方割合です。 <Fushimi-AF registry> 対象:FUSHIMI AF Registryに登録された心房細動患者3,183例 方法:対象患者のCHADS2スコア別の薬物療法の割合を集計 CHADS2スコア別の抗血栓薬処方割合が示されていますが、抗凝固薬適応があるCHADS2スコア1点以上(ダビガトラン、アピキサバンは推奨)でも約5割の患者にしか抗凝固薬が投与されていない現状が示されました。では、なぜこのような事が起こるのでしょうか? FUSHIMI AF Registry 対象: FUSHIMI AF Registryに登録された心房細動患者3,183例 方法: 対象患者のCHADS2スコア別の薬物療法の割合を集計 Akao M, et al. J Cardiol 2013; 61:

69 医師の選択により抗凝固薬が投与されない理由
抗凝固薬が投与されない主な理由 (n=2,302) 医師の 選択 48.3% CHASD2スコア 2点以上 不明 25.5% その他 10.4% 患者の 拒否 抗血小板薬の 服用 5.1% アルコール乱用  0.5% 併用禁忌/注意の 薬剤を服用  0.7% 7.2% 出血の既往 2.4% 20 15 10 出血リスク 転倒リスク 脳卒中リスクが低い アドヒアランスの懸念 ガイドラインの推奨 3% 5 (%) (n=1,112) 9% 抗凝固薬が投与されない主な理由 医師の選択により抗凝固薬が投与されない理由 15% 13% 11% <詳細コメント> 抗凝固薬投与の適応がありながら、抗凝固薬が投与されない理由とその内訳についてご紹介します。 <GARFIELD-AF registry> 対象:GARFIELD-AF registryに登録されている19ヵ国、10,607例の心房細動患者心房細動患者 方法:患者の診断、症状、抗凝固治療の実施有無、抗凝固薬の未投与理由を調査 CHADS2スコア2点以上の抗凝固薬投与の適応がある患者で、投与されていない患者は2,302例(10,607例中)でした。 その内、医師の選択により投与されなかった割合が48.3%あり、投与されない理由の上位に出血リスク・転倒リスクがあります。 対象:GARFIELD-AF registryに登録されている19ヵ国、10,607例の心房細動患者心房細動患者 方法:患者の診断、症状、抗凝固治療の実施有無、抗凝固薬の未投与理由を調査 Kakkar AK, et al. PLoS One 2013; 8: e63479.より作図

70 出血管理

71 消化管出血発現時の管理: 食道静脈瘤出血のアルゴリズム
出血例 全身管理下 緊急内視鏡による出血源の確認 SB tube※による圧迫止血 <詳細コメント> 上部消化管出血の主な症状は、吐血・下血であり、静脈瘤などさまざまな病態で起こり得ます。 食道静脈瘤出血患者に対しては、一般的な出血性ショック対策を行った後、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)による内視鏡的治療が第一選択となります。 また、EVLによる内視鏡治療で止血できない場合は、Sengastaken-Blakemore double ballon tubeの挿入のほか、薬物療法が行われます。 ● 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL;Endoscopic Variceal Ligation):内視鏡下において静脈瘤をゴムバンドで縛り、壊死させる治療法のこと。 ● Sengastaken-Blakemore double balloon tube:先端にバルーンがついたカテーテルを用いて出血部分を圧迫して止血する治療法のこと。 EVL ※※による 一時止血 待機治療 ※ Sengstaken Blakemore double balloon tube ※※ EVL:Endoscopic variceal ligation 小原勝敏. 日門亢会誌2011; 17: より改変

72 消化管出血発現時の管理: 原因不明の消化管出血のアルゴリズム
診断のつかない消化管出血 セカンドルック内視鏡 不顕性 顕性 カプセル内視鏡 さらなる検索の必要性 対処療法 再発 検索の必要なし 経過観察 血管造影 再ルーチン内視鏡/カプセル内視鏡 メッケルシンチ 腹腔鏡 術中内視鏡 内視鏡下挿入 小腸内視鏡 血管造影+塞栓術 not critical negative positive Yes No <詳細コメント> 原因がはっきりしない消化管出血に対しては、上部・下部消化管内視鏡のほか、小腸内視鏡およびカプセル内視鏡などを用いて、全消化管観察に基づく出血管理が行われます。 ● メッケルシンチ(メッケル憩室シンチグラフィ):消化管奇形であるメッケル憩室の有無を確認する画像診断のこと。メッケル憩室は時に炎症や出血などを来します。 岡元和文 編著. 救急・集中治療 最新ガイドライン2014’-15. Pennazio M, et al. Endoscopy 2005; 37:

73 外傷時の出血管理 初期蘇生とさらなる出血の防止 出血の診断とモニタリング 輸液蘇生: 組織の酸素化、輸液と低体温 外科的処置:
*:日本未承認 初期蘇生とさらなる出血の防止 ・虚脱時間の短縮、タニケットの使用、人工呼吸 ・出血患者の診断、重症度:受傷機転、解剖学的損傷パターン、CRTなどの バイタルサイン、初期輸液の反応性などを組み合わせて臨床的に判断する。 ・凝固モニタリング:PTやaPTTなどを繰り返し測定する。 出血の診断とモニタリング ・組織の酸素化 ・輸液療法 ・昇圧剤と強心薬 ・体温管理 ・輸血 輸液蘇生: 組織の酸素化、輸液と低体温 ・早期の出血コントロール ・骨盤輪の閉鎖、安定化 ・パッキング、TAE 、止血術 ・DCS ・局所の止血処置 外科的処置: 出血の迅速なコントロール ・凝固のサポート ・抗線溶療法(トラネキサム酸) ・Ca ・FFP ・フィブリノゲンとCryopredipitate* ・血小板 ・抗血小板薬 ・デスモプレシン ・PCC ・理想的な抗凝固薬 ・rFVIIa ・血栓予防 凝固治療: 出血と凝固のマネジメント <詳細コメント> 初期治療とさらなる出血の防止 開放性四肢外傷の致死的出血に対して、タニケット(止血帯)が役立つ。ただし、加圧時間が長いと神経麻痺や虚血を起こす可能性があるため、2時間以内に留める。 出血患者の診断、重症度 受傷機転や解剖学的損傷パターン、頻脈や末梢冷感、CRTなどのバイタルサイン、初期輸液への反応性を組み合わせて、臨床的に判断します。外傷後凝固障害は、フィブリノゲンと血小板数を搬入初期から頻回にモニタリングします。 輸液蘇生:組織の酸素化、輸液と低体温脳損傷がない外傷患者では止血できるまで収縮期血圧を80~90mmHgに、重症の外傷性脳損傷(GCS≦8)がある場合には平均血圧を80mmHg以上に維持します。大量出血に対する初期輸液は晶質液で開始します。 外科的処置:出血の迅速なコントロール 腹部の出血は、パッキングや外科的止血、局所止血法により早期に制御する。制御不能な大出血患者には、大動脈遮断を補助的に用います。 凝固治療:出血と凝固のマネジメント 凝固能の測定およびモニタリングは、可能な限り早期から開始します。大出血発現時には、初期からFFPを大量投与します。トラネキサム酸を、受傷後3時間以内に1g/10分に続いて1g/8時間投与します。 ● パッキング:ガーゼ圧迫留置のこと。 ● TAE(Transcatheter arterial emolization):経カテーテル動脈塞栓術。挿入したカテーテルから塞栓物質を注入する止血法のこと。 ● DCS(Damage control surgery):止血と損傷部汚染のコントロールを優先し、速やかに手術を終了する術式のこと。 岡元和文 編著. 救急・集中治療 最新ガイドライン2014-’15.より改変 Spahn DR, et al. Crit Care 2013 ; 17: R76.より改変

74 侵襲的処置を要するNOAC投与患者の マネジメントフロー
通常の止血が必要、また24時間以内に外科的介入を行わなければならない 抗凝固活性の測定: ・ダビガトラン  dTTもしくはECT(aPTTによる代替測定も可) ・第Xa因子阻害剤  抗第Xa因子活性の発色アッセイ(抗第Xa因子活性アッセイで測定できない場合はPTを用いる) 凝固能検査値の異常 中和剤の投与:  イダルシズマブ ・第Xa阻害剤  PCC 外科的介入の実施: ・腎機能や手術による出血リスクに応じ、NOAC投与後24~48時間後に実施 ・ダビガトランを服用し、中等度~重度の腎機能障害を生じている場合は、その重症度や手術によるリスクに応じ、48~96時間以上経過観察し実施を判断する 中和剤は投与不要 YES NO <詳細コメント> 米国からも侵襲的処置を要するNOAC投与患者のマネジメントフローが発表されています。 イダルシズマブの使用に関しては、通常の止血が必要、また24時間以内に外科的介入を行わなければならず、抗凝固活性を測定し、検査値に異常があれば 投与可能と記載されています。 dTT:希釈トロンビン時間、ECT:エカリン凝固時間、aPTT:活性化部分トロンボプラスチン時間、PT:プロトロンビン時間、PCC:プロトロンビン複合体濃縮製剤 Ruff CT, et al. Circulation 2016; 134:

75 中和剤の投与が推奨される病態 適応と なる 適応となる可能性 適応に ならない × 生命を脅かす出血
(頭蓋内出血、有症候性もしくは血腫増大をみとめる硬膜外出血、制御不能な出血) × 閉鎖腔もしくは重要臓器からの出血 (脊髄腔内、眼内、心嚢内、肺、後腹膜内、またはコンパートメント症候群を伴う筋肉内出血) DOACの排泄遅延もしくは過量投与により、標準的な止血処置後も持続する大出血、 もしくは再出血の危険性がある場合 緊急手術/手技を要する出血高リスク患者でDOACの排泄を待機できない場合 緊急手術/手技を要し、周術期の出血リスクが高い場合: 脳神経外科手術(頭蓋内、硬膜外、または脊椎)腰椎穿刺、 心臓もしくは血管手術(大動脈解離/大動脈瘤修復)、肝臓やその他の主要臓器手術 急性腎不全患者で緊急手術/手技が必要な患者 待機的手術 対症療法が奏効した消化管出血 DOACが高血中濃度、もしくは過度の抗凝固状態で出血を来していない場合 DOACが排泄されるまで待機できる手術/手技 <詳細コメント> 中和剤の投与が推奨される出血、外科的介入について国際血栓止血学会(ISTH)が提起しています。 適応となる疾患はいずれも重篤もしくは緊急の処置を要する場合であるが、適応にならないケースとして、待機的手術の場合、対症療法が奏功した消化管出血、 DOACが高血中濃度、もしくは過度の抗凝固状態で出血を来していない場合、DOACが排泄されるまで待機できる手術/手技と記載されています。 中和剤が適応となるケースを見極めることが重要です。 出典: Levy JH, et al. J Thromb Haemost 2016; 14: (ISTH:中和薬利用の手引き) Ageno W, et al. Thromb Haemost 2016; Epub.

76 RE-VERSE AD試験で用いた出血評価基準
ISTH出血基準 ◎大出血は以下の基準を1つ以上満たすものとする。 ・ ヘモグロビン値2g/dL以上の減少を示す出血または全血もしくは濃縮血液2単位(日本における4.5単位に相当)以上の輸血を 必要とする出血 ・ 重要部位または臓器の症候性出血:眼内、頭蓋内、脊髄腔内またはコンパートメント症候群を伴う筋肉内出血、後腹膜内出血、 関節内出血または心膜内出血 ◎以下の基準を1つ以上満たす場合の大出血は、生命を脅かす出血に分類される。 ・ 致死的な出血 ・ 症候性頭蓋内出血 ・ ヘモグロビン値5g/dL以上の減少を示す出血 ・ 全血または濃縮血液4単位(日本における9単位に相当)以上の輸血を必要とする出血 ・ 心収縮増強剤の静脈内投与を必要とする低血圧を伴う出血または外科的処置を必要とする出血 Schulman S, et al. J Thromb Haemost 2010; 8: GUSTO出血基準 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験で用いた出血評価基準を示しています。 ◎重度または生命を脅かす出血 ・頭蓋内出血または血行動態の悪化に至り治療を必要とする出血 ◎中等度の出血 ・輸血を必要とするが血行動態の悪化には至らない出血 ◎軽度の出血 ・重度および中等度の出血の基準のいずれにも該当しない出血 GUSTO Investigators. N Engl J Med 1993; 329:

77 RE-VERSE AD試験で用いた出血評価基準
TIMI出血基準 ◎大出血  ・ 頭蓋内出血、ヘモグロビン値5g/dL以上の減少またはヘマトクリット値15%以上の減少 ◎小出血  ・ 臨床的に明白な出血の場合:ヘモグロビン値3g/dL以上の減少またはヘマトクリット値10%   以上の減少を伴うもの  ・ 臨床的に明らかでない出血の場合:ヘモグロビン値4g/dL以上の減少またはヘマトクリット値     12%以上の減少 ◎軽微な出血  ・ 臨床的に明白な出血の徴候(画像診断を含む)があり、ヘモグロビン値3g/dL未満の減少また   はヘマトクリット値9%以下の減少を伴うもの TIMI出血基準の定義は全て、輸血の影響を考慮に入れており、1単位の輸血(日本における2.25単位に相当)につきヘモグロビン値およびヘマトクリット値はそれぞれ1g/dLおよび3%増加するものとして補正する。したがって、2回の血液測定の間に輸血を1回行ったときのヘモグロビン値またはヘマトクリット値の実際の変化量は以下の計算式により算出される。 Δヘモグロビン値(Hgb)= [ベースライン時のHgb - 輸血後のHgb] + [ 輸血単位数] Δヘマトクリット値(Hct)= [ベースライン時のHct - 輸血後のHct] + [ 輸血単位数 x 3] <詳細コメント> RE-VERSE AD試験で用いた出血評価基準を示しています。 Wiviott SD, et al. N Engl J Med 2007; 357: Bovill EG, et al. Ann Intern Med 1991; 115: Mehran R, et al. Circulation 2011; 123: Rao SV, et al. Am J Cardiol 2005; 96:

78 イダルシズマブの臨床試験 <詳細コメント> イダルシズマブの臨床試験について紹介します。

79 イダルシズマブ臨床試験概要 海外 国内 第Ⅰ相 第Ⅲ相 Part 1:イダルシズマブ単独投与 Part 2、3:ダビガトラン定常状態下での
イダルシズマブ投与 健康成人男性(n=157) ダビガトラン定常状態下でのイダルシズマブ投与 ダビガトラン再開およびイダルシズマブ再投与 高齢者を含む健康成人および 腎機能障害を有する成人(n=46) Part 2:ダビガトラン定常状態下での 日本人健康成人男性(n=80) 国際共同第Ⅲ相症例集積試験 RE-VERSE AD試験 ダビガトラン服用中で、緊急手術/侵襲的処置を要する患者および生命を脅かす出血/止血困難な出血 を発現している患者 <詳細コメント> 海外第Ⅰ相試験と日本人健康成人男性を対象とした国内第Ⅰ相試験の結果に加え、国際共同第Ⅲ相症例集積試験(RE-VERSE AD試験)の日本人を含む中間解析結果を基に、2016年第1四半期に国内で承認申請が行われました。 また、高齢者を含む健康成人および腎機能障害を有する成人を対象とした海外第Ⅰ相試験は、用量設定試験でもあることから、第Ⅱ相試験の役割を果たしています。したがって、イダルシズマブの臨床試験として、通常の第Ⅱ相試験は行われていません。 臨床試験の概要は下記のとおりです。 海外第Ⅰ相試験 対  象:健康成人男性157例 試験概要: イダルシズマブ単独投与(Part 1)およびダビガトラン定常状態下でのイダルシズマブ投与(Part 2、3)の3つで構成されている。Part 1では、イダルシズマブ単回漸増投与時の安全性、忍容性および薬物動態を検討。Part 2、3ではダビガトランの抗凝固作用を中和する用量を探索的に検討しました。 対  象:高齢者を含む健康成人および腎機能障害を有する成人46例 試験概要: ダビガトラン定常状態下でのイダルシズマブ単回投与時の安全性、忍容性および薬物動態、ダビガトランの抗凝固作用を中和する用量を確認しました。さらに、健康成人に対してはイダルシズマブ投与24時間後にダビガトランを再開し、抗凝固作用を検討しました。また、健康成人に対して、1回目のイダルシズマブ2.5g投与の約2ヵ月後に同量のイダルシズマブを再投与し、イダルシズマブ再投与の有効性・安全性を探索的に検討しました。 国内第Ⅰ相試験 対  象:日本人健康成人男性80例 試験概要: イダルシズマブの安全性、忍容性および薬物動態、さらにダビガトランの抗凝固作用の中和に有効なイダルシズマブの用量を探索的に検討した試験です。イダルシズマブ単独投与のPart 1とダビガトラン定常状態下でのイダルシズマブ投与のPart 2の2つで構成されています。 国際共同第Ⅲ相症例集積試験 RE-VERSE AD試験 対   象: ダビガトラン服用中で、緊急を要する手術または侵襲的処置を必要とする患者、および生命を脅かす出血または止血困難な出血を発現している患者 試験概要: ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブ5g(2.5g×2回)の中和効果を検討する症例集積試験です[⇒「国際共同第Ⅲ相症例集積試験 RE-VERSE AD試験」]。 目標症例数: 500例 中間集計1: New England Journal of Medicine(2015年6月)に掲載された90例の中間集計データ 中間集計2: 国内承認申請時に用いられた日本人4例を含む243例の中間集計データ

80 有効性の主要評価項目:血液凝固マーカー (dTT、ECT)とダビガトラン血漿中濃度との相関
(秒) (秒) 250 250 イダルシズマブ非存在下 イダルシズマブ存在下 回帰直線(非存在下) 回帰直線(全投与群) イダルシズマブ非存在下 イダルシズマブ存在下 回帰直線(非存在下) 回帰直線(全投与群) 200 200 dTT(希釈トロンビン時間) 150 ECT(エカリン凝固時間) 150 100 100 <詳細コメント> dTTおよびECTとダビガトラン血漿中濃度は、高い相関性が示されることから、本試験においてイダルシズマブの中和効果を検討するための主要な血液凝固マーカーとして選択されました。 現在、汎用性、即時性および正確性のすべてを備えたダビガトラン血漿中濃度を推定する信頼性の高い方法は存在しません。 dTTおよびECTの延長とダビガトラン血漿中濃度は線形の相関を示します。しかし、dTTおよびECTは日本では研究用試薬としてのみ利用可能です。 40 80 120 160 200 240 280 40 80 120 160 200 240 280 (ng/mL) (ng/mL) ダビガトラン血漿中濃度 ダビガトラン血漿中濃度 イダルシズマブ非存在下:dTT= *Conc, R2=0.94 イダルシズマブ存在下:dTT= *Conc, R2=0.86 イダルシズマブ非存在下:ECT= *Conc, R2=0.92 イダルシズマブ存在下:ECT= *Conc, R2=0.89 対象:18~45歳の健康成人47例(イダルシズマブ投与35例、プラセボ投与12例) 方法:全ての患者にダビガトラン220mgを3日間1日2回反復経口投与後、4日目に1回経口投与2時間後にイダルシズマブ(1g,2gもしくは4gを5分かけて静注投与、もしくは5gを5分かけて静注投与後、1時間後に2.5gを5分かけて静注投与)もしくはプラセボ投与後、各時点で採血し、凝固パラメータ(dTT,ECT)を測定した Glund S, et al. Lancet 2015; 386: Supplementary appendix.

81 有効性の評価項目:血液凝固マーカー (aPTT、TT)とダビガトラン血漿中濃度との相関
3.3 3.0 2.7 2.4 2.1 1.8 1.5 1.2 0.9 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 40 35 30 25 20 15 10 5 単回投与 y= *x1/2 r2=0.8466 (ratio) aPTTとダビガトラン血漿中濃度の相関 TTとダビガトラン血漿中濃度の相関 反復投与 y= *x1/2 r2=0.8514 y= *x r2=0.5998 y= *x r2=0.8568 aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間) TT(トロンビン時間) ダビガトラン血漿中濃度 (ng/mL) 3.6 45 <詳細コメント> aPTTとダビガトラン血漿中濃度との相関関係は直線的ではないため、aPTTは正確性において十分とは言えません。 しかし、ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果を臨床的に判断する指標の1つとしました。 REVERSE-AD試験において、中央検査機関と実施医療機関で測定したaPTTの評価結果が一貫していたことから、 実施医療機関で測定するaPTTは、ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果を評価する指標として利用可能であると考えられます。 対象:健康成人男性40例 方法:ダビガトラン10,30,100,200,400mgまたはプラセボを単回経口投与、およびダビガトラン50,100,200,400mgまたはプラセボを1日3回6日間反復経口投与後、     7日目に1回経口投与した。各時点で採血し、血漿中ダビガトラン濃度と凝固パラメータ(aPTT,TT)を測定した。 Stangier J, et al. Br J Clin Pharmacol 2007; 64:

82 第Ⅰ相試験 外国人データ試験デザイン 健康成人におけるイダルシズマブの中和効果: 対象:健康成人12例(45〜64歳)
第Ⅰ相試験  外国人データ試験デザイン 健康成人におけるイダルシズマブの中和効果: 対象:健康成人12例(45〜64歳) 方法:ダビガトラン定常状態においてそれぞれイダルシズマブとして2.5gまたは5gを5分間急速静脈内投与、および1gまたは5gを5分間急速静脈内投与し、dTT 又はECT のいずれか1 つ以上の検査値がイダルシズマブ投与終了後10 分以内に任意に設定した基準値上限(ULN)未満に低下するかどうかを評価した。 腎機能障害を有する成人におけるイダルシズマブの中和効果: 対象:軽度腎機能障害※を有する成人12例、および中等度腎機能障害※※を有する成人6例 方法:ダビガトラン定常状態においてそれぞれイダルシズマブとして1gまたは5gを5分間急速静脈内投与、および2.5gを1時間間隔で2回(計5g)、5分間急速静脈内投与しdTT 又はECT のいずれか1 つ以上の検査値がイダルシズマブ投与終了後10 分以内に任意に設定した基準値上限(ULN)未満に低下するかどうかを評価した。 ※ (クレアチニンクリアランス60mL/min以上、90mL/min未満) ※※クレアチニンクリアランス30mL/min以上、60mL/min未満) 以下、イダルシズマブとして1g投与は国内未承認のため、イダルシズマブとして5g、2.5g×2またはプラセボを投与した被験者のデータのみを 記載。 <詳細コメント> 外国人データ 健康成人およぶ高齢者におけるイダルシズマブの中和効果 健康成人12例(45〜64歳)、および高齢者16例(65〜80歳)に、ダビガトラン定常状態においてそれぞれイダルシズマブとして2.5gまたは5gを 5分間急速静脈内投与、および1gまたは5gを5分間急速静脈内投与した。 腎機能障害を有する成人におけるイダルシズマブの中和効果 軽度腎機能障害を有する成人12例(クレアチニンクリアランス60mL/min以上、90mL/min未満)、および中等度腎機能障害を有する成人6例(クレアチニンクリアランス30mL/min以上、60mL/min未満)に、ダビガトラン定常状態※においてそれぞれイダルシズマブとして1gまたは5gを5分間急速静脈内投与、および2.5gを1時間間隔で2回(計5g)、5分間急速静脈内投与した。 承認時評価資料

83 イダルシズマブの中和効果(海外第Ⅰ相試験) イダルシズマブまたはプラセボの 投与完了直後
健康成人および高齢者における イダルシズマブの中和効果(海外第Ⅰ相試験) イダルシズマブまたはプラセボの 投与完了直後 (秒) 45~64歳 ダビガトラン定常状態※+プラセボ(n=6) 45~64歳 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ5g(n=6) 65~80歳 ダビガトラン定常状態※+プラセボ(n=8) 65~80歳 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ5g(n=8) 平均値±SEM 基準値上限 35.5秒 ベースライン平均値 32.1秒 90 85 80 75 70 65 60 dTT(希釈トロンビン時間) 55 50 45 40 35 30 25 <詳細コメント> こちらは外国人健康成人(45~64歳)および高齢者(65~80歳)を対象にした海外第Ⅰ相試験の結果です。ダビガトラン定常状態にした後、イダルシズマブ5gまたはプラセボを静脈内投与し、ダビガトラン抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果を検討しました。 その結果、イダルシズマブ投与完了直後、希釈トロンビン時間(dTT)は基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、35.5秒)未満に迅速に低下し、その効果は24時間持続しました。 イダルシズマブの迅速・完全・持続的な効果が健康成人および高齢者に対して証明されました。 ● ベースライン平均値は、海外の第Ⅰ相試験の治験薬投与前の値より算出した。 ● 基準値上限は、海外の第Ⅰ相試験のベースライン値から算出した平均値+2SDとした。 ● 中和効果の定義 迅速な中和:ダビガトランの抗凝固作用に対する中和効果がイダルシズマブの投与終了直後に認められること。 完全な中和:血液凝固マーカーの平均値が基準値上限未満に低下すること。 持続的な中和:血液凝固マーカーの平均値が観察期間の間、基準値上限未満に維持されること。 ベース ライン -2 0.5 1.0 1.5 2.0 4 8 12 16 20 24 (時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 ※ 1~3日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4日目に220mg×1回/日投与。 ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 対      象: 外国人健康成人12例(45~64歳)、および高齢者16例(65~80歳) 方      法: ダビガトラン定常状態※においてそれぞれイダルシズマブ2.5gまたは5gを5分間急速静脈内投与、および1gまたは5gを急速静脈内投与した。 主要評価項目: 薬物動態、忍容性、安全性 Glund S, et al. Clin Pharmacokinet 2016; Epub.

84 腎機能障害を有する成人における イダルシズマブの中和効果(海外第Ⅰ相試験) イダルシズマブまたはプラセボの 投与完了直後
(秒) 軽度腎機能障害※1 ダビガトラン定常状態※2+プラセボ(n=6) 軽度腎機能障害※1 ダビガトラン定常状態※2+イダルシズマブ5g(n=6) 中等度腎機能障害※1 ダビガトラン定常状態※2+プラセボ(n=6) 中等度腎機能障害※1 ダビガトラン定常状態※2+イダルシズマブ2.5g×2(n=6) 平均値±SEM 基準値上限 35.5秒 ベースライン平均値 32.1秒 90 85 80 75 70 65 60 dTT(希釈トロンビン時間) 55 50 45 40 35 30 25 <詳細コメント> こちらは、外国人の軽度および中等度の腎機能障害を有する成人を対象にした海外第Ⅰ相試験の結果です。 ダビガトラン定常状態下における軽度腎機能障害を有する成人にイダルシズマブ5g、中等度腎機能障害を有する成人にイダルシズマブ2.5g×2回を投与し、dTTを検討しました。その結果、両群いずれもイダルシズマブ投与直後にdTTは基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、35.5秒)未満に低下し、中和効果は観察期間24時間にわたって維持されました。 ● ベースライン平均値は、海外の第Ⅰ相試験の治験薬投与前の値より算出した。 ● 基準値上限は、海外の第Ⅰ相試験のベースライン値から算出した平均値+2SDとした。 ベース ライン -2 0.5 1.0 1.5 2.0 4 8 12 16 20 24 (時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 ※1 腎機能障害軽度;クレアチニンクリアランス60~90mL/min未満 中等度;クレアチニンクリアランス30~60mL/min未満 クレアチニンクリアランスは、Cockcroft-Gault式による推算値 ※2 1~3日目にダビガトランエテキシラートとして150mg×2回/日投与、4日目に150mg×1回/日投与。(ダビガトランエテキシラートとして150mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量) 対    象: 軽度腎機能障害を有する外国人成人12例(クレアチニンクリアランス60~90mL/min未満)、および中等度腎機能障害を有する成人6例(クレアチニンクリアランス30~60mL/min未満) 方    法: ダビガトラン定常状態※2においてそれぞれイダルシズマブ1gまたは5gを5分間急速静脈内投与、および2.5gを1時間間隔で2回(計5g)5分間急速静脈内投与した。 主要評価項目: 薬物動態、忍容性、安全性 Glund S, et al. Clin Pharmacokinet 2016; Epub.

85 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 試験デザイン
対象 : 20~45歳までの日本人健康成人男性48例 方法: ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日を3日間経口投与し、4日目に220mg×1回/日を経口投与した。その後、3日間休薬し(5〜7日目)、 8〜10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日を再び3日間経口投与し、11日目に220mg×1回/日を経口投与した。ダビガトラン最終投与約2時間後にイダルシズマブ1、2、4gを単回あるいはイダルシズマブ2.5gを15分間隔で2本(計5g)、またはプラセボを5分間急速静脈内投与した。 主要評価項目:安全性(副作用) 副次評価項目: ・非結合型総ダビガトラン血漿中濃度 ・血液凝固マーカー(dTT,ECT,aPTT)に基づくダビガトランの抗凝固作用に対する中和効果等 <詳細コメント> 国内第Ⅰ相試験の主要目的は、安全性および忍容性で、副次目的は、イダルシズマブの薬物動態の検討、およびダビガトラン定常状態下での薬物動態/薬力学パラメータに対するイダルシズマブの異なる投与量を投与した効果の検討です。 薬力学の評価項目として、血液凝固マーカーである、dTT、エカリン凝固時間(ECT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンビン時間(TT)、および活性化凝固時間(ACT)を測定しました。 対象:日本人健康成人男性48例[4用量群×12例(イダルシズマブ9例、プラセボ3例)] 方法: ダビガトラン220mg×2回/日を3日間投与後、4日目に220mg/日を投与し、ダビガトランの薬物動態/薬力学を検討しました。 さらにダビガトラン最終投与から3日間休薬し、ダビガトラン220mg×2回/日を3日間(8~10日目)、11日目に220mg/日投与し、最終投与2時間後に、イダルシズマブ1、2、4gの5分間急速静注およびイダルシズマブ2.5g+2.5gの5分間急速静注(15分間隔)し、ダビガトラン定常状態下でのイダルシズマブの安全性、忍容性および薬物動態およびダビガトランの薬物動態/薬力学パラメータに対するイダルシズマブの異なる用量を投与した効果を検討しました。 ダビガトラン単独投与期 ダビガトラン+イダルシズマブ投与期 ダビガトラン220mg投与 休薬期間 PK/PD等の検討 観察期間 試験終了 フォローアップ期間 ADAの検討 約15週 約6週 16日目 24日目 14日目 11日目 8日目 4日目 1日目 PK: 薬物動態 PD:  薬力学 ADA: 抗薬物抗体 イダルシズマブ投与 Part 2の試験デザイン 承認時評価資料

86 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 希釈トロンビン時間(dTT)
(秒) 80 75 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g×2 (n=9) ダビガトラン定常状態※+プラセボ (n=3) 平均値+SD 基準値上限 32.5秒 70 65 60 55 dTT(希釈トロンビン時間) 50 45 40 35 <詳細コメント> ダビガトランの定常状態にある(ダビガトラン220mg×2回/日投与)日本人健康成人男性にイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内投与したところ、投与完了直後にdTTは基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、32.5秒)未満に低下し、観察期間を通じて、その中和効果が維持されました。 30 -2 -1 1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (時間) イダルシズマブまたはプラセボの1本目投与完了時点 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※:1~3、8~10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4、11日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

87 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 希釈トロンビン時間(ECT)
(秒) 130 120 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g×2 (n=9) ダビガトラン定常状態※+プラセボ (n=3) 平均値+SD 基準値上限 36.3秒 110 100 90 80 ECT(エカリン凝固時間) 70 60 50 40 <詳細コメント> ダビガトランの定常状態にある(ダビガトラン220mg×2回/日投与)日本人健康成人男性にイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間急速静注したところ、投与完了直後にECTは基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、36.3秒)未満に低下し、観察期間を通じて、その中和効果が維持されました。 30 -2 -1 1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (時間) イダルシズマブまたはプラセボの1本目投与完了時点 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※:1~3、8~10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4、11日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

88 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度
(ng/mL) 250 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g×2 (n=9) ダビガトラン定常状態※+プラセボ (n=3) 平均値+SD 定量下限 1ng/mL 200 150 100 50 <詳細コメント> ダビガトランの定常状態にある(ダビガトラン220mg×2回/日投与)日本人健康成人男性にイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間急速静注したところ、投与完了直後に非結合型総ダビガトラン血漿中濃度は定量下限(1ng/mL)未満に低下し、観察期間を通じて、4ng/mL未満を維持されました。 -2 -1 1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (時間) イダルシズマブまたはプラセボの1本目投与完了時点 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※:1~3、8~10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4、11日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

89 国内第Ⅰ相試験 Part2:日本人健康成人男性 活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)
(秒) 85 80 ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g×2 (n=9) ダビガトラン定常状態※+プラセボ (n=3) 平均値+SD 基準値上限 39.6秒 75 70 65 60 aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間) 55 50 45 40 <詳細コメント> ダビガトランの定常状態にある(ダビガトラン220mg×2回/日投与)日本人健康成人男性にイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間急速静注したところ、投与完了直後にaPTTは基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN、39.6秒)未満に低下し、観察期間を通じて、その中和効果が維持されました。 35 30 -2 -1 1 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 (時間) イダルシズマブまたはプラセボの1本目投与完了時点 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※:1~3、8~10日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4、11日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

90 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 登録基準/除外基準
・ダビガトラン服用 ・18歳以上(日本は同意取得時20歳以上) ・書面によるインフォームド・コンセント ・緊急手術患者群(出血は発現していないかもしれないが、出血以外の状態・疾患のために緊急の手術またはその他の侵襲的処置を要し、ダビガトランの治療による抗凝固作用の残存が望ましくない患者):十分な止血(凝固能)が求められる緊急(8時間以内に施行)手術/侵襲的処置を必要とする病態 ・出血患者群(生命を脅かす出血または止血困難な出血を発現し、緊急の内科的治療または外科的処置を必要とする患者):試験担当医師により中和剤が必要と判断された、顕在性出血 ・既知の過敏症(薬物またはその賦形剤を含む)を有するなど、イダルシズマブの使用が禁忌である患者(遺伝性フルクトース不耐症の患者はソルビトールに反応する場合があるので除外する) 緊急手術患者群: ・必要とする手術または処置が待機的である場合、または止血困難もしくは対処治療が不能な出血の発現リスクが低い場合 出血患者群: ・標準的な対症治療が可能な小出血(鼻出血、血尿など)を発現している患者 ・出血の臨床的徴候がみられない患者 登録基準 除外基準 <詳細コメント> 第Ⅲ相試験であるRE-VERSE AD試験では、実臨床に則した幅広い患者の登録基準が設けられました。 RE-VERSE AD試験の登録基準は幅広く、対象患者は実臨床に則した患者となっています。本試験では、敗血症性ショック、大動脈解離または高度頭蓋内出血患者などのように極めて予後が悪く、非常に深刻な状況にある患者も除外していません。また、その他の止血製剤の使用について制限を設けておらず、イダルシズマブは血液透析および新鮮凍結血漿(FFP)、PCC、aPCC、rFⅦaに対して追加投与可能です。 ● 遺伝性フルクトース(果糖)不耐症(HFI;Hereditary Fructose Intolerance):フルクトースの代謝に必要な酵素が欠損していることから、フルクトースの摂取により低血糖などを引き起こします。HFIに関する報告は主に欧米からのものであり、欧米人における頻度は2万人に1人と推定されている1)。一方、日本では1990年までに5例が報告されており1)、まれな疾患と考えられています。 ● ソルビトール:糖アルコールの一種で、イダルシズマブの添加物として含まれます。ソルビトールは、HFI患者において、肝不全または腎不全に至る可能性が指摘されており、ソルビトール投与HFI患者で、致死的イベントが数件発生したとの報告があります2)。 1)Kajihara S, et al. Am J Hum Genet 1990; 47: 2)Yasawy MI, et al. World J Gastroenterol 2009; 15: Pollack CV, et al. Thromb Haemost 2015; 114:

91 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 評価項目
・緊急手術患者群:術中・術後24時間後までの出血の発現・止血機能 ・出血患者群: 投与開始前及び投与完了後の複数の時点における出血の重症度           初回投与開始から投与完了24時間後までの間で、止血確認に要した時間 主な副次評価項目(臨床的) ・ 1回目の投与完了から2回目の投与完了4時間後までのaPTT及びTTの評価による最大の中和効果・ 非結合型総ダビガトランの血漿中濃度※の最低値 主な副次評価項目(薬物動態/薬力学的) ・ 副作用、臨床検査値異常、出血・血栓性イベント、臨床的転帰(死亡)、抗薬物抗体 安全性評価項目 <詳細コメント> その他の評価項目に関してはスライドの通りとなっております。 ※イダルシズマブおよび血漿蛋白のいずれにも結合していない濃度のこと。   非結合型総ダビガトランはトロンビンに結合することが可能であるため、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はダビガトランの薬理活性を表すものと考えられる。 Pollack CV, et al. Thromb Haemost 2015; 114: Pollack CV, et al. N Engl J Med 2015; 373:

92 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 その他の評価項目
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 その他の評価項目 抗血栓療法の再開 緊急手術患者群 (n=106) 出血患者群 (n=137) 合計 (n=243) 頭蓋内出血患者 (n=43) 消化管出血患者 (n=62) ●抗血栓療法の再開あり 96(90.6) 98(71.5) 26(60.5) 45(72.6) 194(79.8)   抗血栓療法再開   までの期間 [日] 例数 96 98 26 45 194 平均値(SD) 2.9(7.4) 10.3(17.1) 10.8(17.5) 14.3(20.3) 6.6(13.7) 中央値 1.0 3.8 3.9 6.5 2.0   ダビガトランの再開 66(62.3) 36(26.3) 9(20.9) 14(22.6) 102(42.0)   ダビガトラン再開 66 36 9 14 102 13.5(14.9) 22.1(22.2) 34.4(29.7) 21.1(18.7) 16.5(18.2) 7.8 15.0 26.5 17.0 9.2   ダビガトラン再開前の   ヘパリンブリッジ 53(50.0) 21(15.3) 5(11.6) 7(11.3) 74(30.5) ●抗血栓療法再開なし 1(0.9) 16(37.2) 16(25.8) 37(15.2) ●抗血栓療法の再開について不明 9(8.5) 3(2.2) 1(2.3) 1(1.6) 12(4.9) <詳細コメント> ・イダルシズマブ投与後、79.8%の患者で抗血栓療法が再開されました。(緊急手術患者群:90.6%、出血患者群:71.5%) ・抗血栓療法再開までの期間(平均値)は、緊急手術患者群:2.9日、出血患者群:10.3%でした。 抗血栓療法を再開した患者の割合は79.8%(194/243例)であり、出血患者群(71.5%、98/137例)に比べ、緊急手術患者群(90.6%、96/106例)で高い傾向が認められた。ダビガトランによる抗凝固療法を再開した患者の割合は、緊急手術患者群62.3%(66/106例)であったのに対し、出血患者群では26.3%(36/137例)であり、これらの患者の多くがダビガトランによる抗凝固療法再開前にヘパリンブリッジが実施されていました。 ダビガトランによる抗凝固療法再開までの期間(平均値)は16.5日であり、緊急手術患者群13.5日、出血患者群22.1日でした。 1日以上入院した患者は243例中237例であり、入院日数(平均値)は17.8日でした。 ICUを使用した患者は243例中105例であり、ICU滞在日数(平均値)は5.6日でした。 ・入院患者数:243例中237例、入院日数(平均値):17.8日 ・ICU使用患者数:243例中105例、ICU滞在日数(平均値):5.6日 データは例数(%) 承認時評価資料

93 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 血液製剤などによる対症療法
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 血液製剤などによる対症療法 緊急手術患者群 (n=106) 出血患者群 (n=137) 合計(n=243) n(%) 投与前 投与後※1 投与後 血液製剤などの使用患者数 47(44.3) 16 41 92(67.2) 51 80 139(57.2) 新鮮凍結血漿 17(16.0) 5 12 33(24.1) 13 26 50(20.6) 赤血球濃厚液 30(28.3) 7 27 79(57.7) 42 66 109(44.9) 血小板 6(5.7) 1 14(10.2) 2 20(8.2) 血漿増量剤 14(13.2) 4 18(13.1) 32(13.2) トラネキサム酸※2 4(3.8) 3 17(12.4) 11 8 21(8.6) PCC(4因子含有) 2(1.9) 4(2.9) 6(2.5) rFⅦa 0(0.0) 1(0.7) 1(0.4) 全血 7(5.1) 6 9(3.7) aPCC 3(2.8) 4(1.6) その他 2(1.5) 2(0.8) <詳細コメント> 血液製剤を使用または輸血した患者は、緊急手術患者群47例(44.3%)、出血患者群92例(67.2%)でした。 重複例あり ※1:イダルシズマブ投与後および手術・侵襲的処置実施後 ※2:繊維素溶解酵素であるプラスミンの働きを阻止する抗プラスミン製剤 PCC:プロトロンビン複合体濃縮製剤、rFⅦa:遺伝子組換え活性型第Ⅶ因子製剤、aPCC:活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤 承認時評価資料

94 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(aPTT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(aPTT) 緊急手術患者群 (n=104) 出血患者群 (n=136) (秒) (秒) aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間) 180 200 140 80 40 100 120 160 60 20 aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間) 200 180 160 イダルシズマブ 2.5g×2本 イダルシズマブ 2.5g×2本 1本目 2本目 140 110%基準値上限 43.8秒 110%基準値上限 43.8秒 1本目 2本目 120 100 80 60 40 <詳細コメント> こちらは主な副次評価項目であるaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)に基づく、ダビガトラン抗凝固作用に対する中和効果の結果です。 両患者群ともに、aPTTはイダルシズマブ投与直後に基準値上限未満に低下しました。 また、その中和効果は観察期間24時間にわたって維持されました。 20 ベース ライン 1本目 投与後 10- 30分 1 時間 2 時間 4 時間 12 時間 24 時間 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 イダルシズマブ投与後の経過時間 イダルシズマブ投与後の経過時間 承認時評価資料

95 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(血中濃度)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 抗凝固作用の中和効果(血中濃度) 緊急手術患者群 (n=103) 出血患者群 (n=134) (ng/mL) (ng/mL) 300 600 200 500 100 400 700 700 300 600 200 500 100 400 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度※ 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度※ イダルシズマブ 2.5g×2本 イダルシズマブ 2.5g×2本 1本目 2本目 1本目 2本目 <詳細コメント> こちらは主な副次評価項目である非結合型総ダビガトラン血漿中濃度に基づく、ダビガトラン抗凝固作用に対する中和効果の結果です。 両患者群ともに、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はイダルシズマブ投与直後に低下しました。 また、その中和効果は観察期間24時間にわたって維持されました。 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 イダルシズマブ投与後の経過時間 イダルシズマブ投与後の経過時間 ※イダルシズマブおよび血漿蛋白のいずれにも結合していない濃度のこと。   非結合型総ダビガトランはトロンビンに結合することが可能であるため、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はダビガトランの薬理活性を表すものと考えられる。 承認時評価資料

96 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 トロンビン時間(TT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 トロンビン時間(TT) 緊急手術患者群(n=103) 出血患者群(n=135) イダルシズマブ 2.5g×2本 1本目 2本目 5 95パーセンタイル 90 10 25 75 50 110%基準値上限 15.6秒 300 150 100 200 250 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 投与後 TT(トロンビン時間) (秒) イダルシズマブ投与後の経過時間 ベース ライン 10- 30分 1 時間 2 4 12 24 1本目 投与後 イダルシズマブ 2.5g×2本 2本目 50 300 150 100 200 250 TT(トロンビン時間) (秒) イダルシズマブ投与後の経過時間 110%基準値上限 15.6秒 <詳細コメント> こちらは主な副次評価項目であるトロンビン時間(TT)に基づく、ダビガトラン抗凝固作用に対する中和効果の結果です。両患者群ともに、TTはイダルシズマブ投与直後に基準値上限未満に低下しました。また、その中和効果は観察期間24時間にわたって維持されました。 承認時評価資料

97 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 主な臨床的副次評価項目
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 主な臨床的副次評価項目 緊急手術患者群 106例 緊急の手術/ 侵襲的処置を 施行:101例 侵襲的処置中の止血機能 ・正常な止血機能:93例 ・軽度の止血機能障害:7例 ・中等度の止血機能障害:1例 ・重度の止血機能障害:0例 出血患者群 137例 止血評価可能: 105例 試験担当医師が判定した 止血確認に要した時間(中央値) 10.0時間 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された243例の患者に関する、主な臨床的副次評価項目の結果について紹介します。 ・緊急手術患者群106例中101例が手術を受け、このうち93例(92.1%)がイダルシズマブ投与完了後の手術中に正常な止血が得られました。 ・出血患者群137例のうち、イダルシズマブ投与完了後に止血の判定ができなかった32例を除く105例で止血が確認されました。24時間以内に止血が確認された患者は77例(56.2%)、72時間以内に止血が確認された患者は92例(67.2%)であり、止血確認に要した時間の中央値は10.0時間でした。 出血の程度の評価タイミングは試験実施計画書に定められておらず、試験担当医師が適切と思われるタイミングに評価しました。 イダルシズマブはダビガトランの抗凝固作用を中和するが、直接的な止血作用はないため、止血に要する時間と中和に要する時間は同じではありません。 承認時評価資料

98 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 副作用発現割合一覧
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 副作用発現割合一覧 緊急手術患者群 (n=106) 出血患者群 (n=137) 合計 (n=243) 副作用等の発現症例数(%) 4(3.8) 9(6.6) 13(5.3) 副作用等の種類 副作用等の種類別発現症例数(%) 血液およびリンパ系障害 0(0.0) 1(0.7) 1(0.4)   血小板減少症 神経系障害 1(0.9) 2(0.8)   脳血管発作   頭痛 心臓障害 2(1.5) 3(1.2)   心停止   心房内血栓   徐脈   上室性頻脈 血管障害   深部静脈血栓症   低血圧 呼吸器、胸郭および縦隔障害   肺塞栓症 胃腸障害   下痢   びらん性胃炎 皮膚および皮下組織障害   発疹 筋骨格系および結合組織障害   四肢痛 一般・全身障害および投与部位の状態   溢出   注入部位疼痛 <詳細コメント> こちらは、RE-VERSE AD試験における副作用発現割合一覧です。 副作用の発現率は5.3%(13/243例)であり、緊急手術患者群3.8%(4/106例)、出血患者群6.6%(9/137例)でした(承認時)。 重大な副作用として、ショック、アナフィラキシーを含む過敏症状があらわれることがあります(頻度不明※)。 ※:国際共同第Ⅲ相症例集積試験の中間集計以降に海外において認められている副作用のため頻度不明。 本剤最終投与後90日以内に発現した副作用を集計した。 承認時評価資料

99 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者の患者背景
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者の患者背景 症例1 症例2 症例3 症例4 患者群 出血患者群 出血の種類・部位 下部消化管出血 くも膜下出血 硬膜下血腫 下部尿路出血 年齢/性別/体重/身長 72歳/男性/ 63kg/164cm 82歳/女性/ 55kg/154cm 87歳/女性/ 44kg/140cm 79歳/男性/ 80kg/162cm 血清クレアチニン [mg/dL] 0.95 0.50 0.89 2.01 クレアチニンクリアランス* [mL/min] 62.7 75.4 31.1 33.8 ベースライン(投与前)dTT値 [秒] 37.7 34.6 43.7 47.5 ベースライン(投与前)ECT値 [秒] 55.8 41.0 73.3 89.2 ダビガトランの1日用量 110mg×2回 110mg×1回 ダビガトランの投与理由 心房粗動 心房細動 ダビガトランの最終投与から イダルシズマブ投与開始までの時間 11.7時間 21.1時間 21.6時間 29.7時間 合併症および既往歴 高血圧 高血圧、糖尿病、 脳卒中および全身性塞栓症の既往 高血圧、 脳卒中の既往 糖尿病、冠動脈 疾患、脳卒中および全身性塞栓症の既往 <詳細コメント> 国内承認申請時のデータに含まれた患者243例のうち、日本人患者4例が含まれていました。 RE-VERSE AD試験の日本人患者4例はいずれも出血患者群であり、出血の部位はそれぞれ、下部消化管出血、くも膜下出血、硬膜下血腫、下部尿路出血でした。 投与された症例は高齢、腎機能障害を有していました。 ダビガトランの最終投与からイダルシズマブ1本目投与までの時間は11.7時間~29.7時間となっており、ダビガトラン服用からある程度時間が経過後にもイダルシズマブが投与されました。 *:Cockcroft-Gault式による推算値 承認時評価資料

100 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(dTT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(dTT) (秒) 50 症例1 症例2 症例3 症例4 110%基準値上限 39.1秒 40 dTT(希釈トロンビン時間) 30 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された日本人患者4例のいずれにおいても、dTTはイダルシズマブ1本目投与完了直後、速やかに110%基準値上限未満に低下し、 その後24時間後までその中和効果は持続しました。イダルシズマブの迅速かつ持続的な中和効果が示されました。 4 8 12 16 20 24(時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 承認時評価資料

101 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(ECT)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(ECT) (秒) 100 症例1 症例2 症例3 症例4 110%基準値上限 45.4秒 90 80 70 ECT(エカリン凝固時間) 60 50 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された日本人患者4例のいずれにおいても、ECTはイダルシズマブ1本目投与完了直後、速やかに110%基準値上限未満に低下し、 その後24時間後までその中和効果は持続しました。イダルシズマブの迅速かつ持続的な中和効果が示されました。 40 30 4 8 12 16 20 24(時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 承認時評価資料

102 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(血中濃度)
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果(血中濃度) (ng/mL) 100 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度※ 症例1 症例2 症例3 症例4 定量下限1ng/mL 90 80 70 60 50 40 30 20 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された日本人患者4例のいずれにおいても、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度は、イダルシズマブの1本目投与完了後に定量下限(1mg/mL)未満に低下し、投与完了24時間後まで持続しました。 ● 非結合型総ダビガトラン血漿中濃度:イダルシズマブおよび血漿蛋白のいずれにも結合していない濃度のこと。非結合型総ダビガトランはトロンビンに結合することが可能であるため、非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はダビガトランの薬理活性を表すものと考えられます。 ● 定量下限1ng/mLは海外第Ⅰ相試験を基に決定しました。 10 4 8 12 16 20 24(時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 ※イダルシズマブおよび血漿蛋白のいずれにも結合していないダビガトラン及びグルクロン酸抱合体の合算。非結合型総ダビガトラン血漿中濃度はトロンビンに結合することが可能であるため、ダビガトランの薬理活性を表すものと考えられる。 承認時評価資料

103 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果のまとめ
中間集計243例 国際共同第Ⅲ相症例集積試験:RE-VERSE AD試験 日本人患者における中和効果のまとめ 血液凝固 マーカー 患者 投与前 [秒] (ベースライン) 投与後の最低値 [秒] (測定時点) 最大の中和効果[%] dTT (希釈トロンビン時間) 症例1 37.7 31.1 (投与完了2時間後) NA 症例2 34.6 32.4 (投与完了10~30分後、4時間後) 症例3 43.7 31.5 (投与完了1時間後) 100 症例4 47.5 30.1 (投与完了10~30分後) ECT (エカリン凝固時間) 55.8 36.7 41.0 34.2 (投与完了4時間後) 73.3 35.3 (2本目の投与直前) 89.2 <詳細コメント> RE-VERSE AD試験に登録された日本人患者における中和効果のまとめを紹介します。 日本人患者全例において、完全な中和効果が認められました。 dTTに基づく中和効果 dTTに基づく最大の中和効果は、110%基準値上限(Upper Limit of Normal;ULN)を用いた評価において、対象となった症例3、4の2例とも完全な中和効果が認められました。 ECTに基づく中和効果 ECTに基づく最大の中和効果は、110%基準値上限を用いた評価において、対象となった症例1、3、4の3例すべてで完全な中和効果が認められました。 ※中央検査機関で測定したdTTおよびECTのベースライン(投与前)値がそれぞれの110%基準値上限を超えていた患者2例および3例を対象に解析しました。 dTT:110%基準値上限-39.1秒、ECT:110%基準値上限-45.4秒 NA:投与前の値が110%基準値上限以下の症例は有効性評価対象除外例として、算出せず。 データは110%基準値上限に基づく評価 承認時評価資料

104 イダルシズマブの安全性 <詳細コメント> イダルシズマブの安全性について紹介します。

105 抗薬物抗体 ●第Ⅰ相試験におけるイダルシズマブ投与後の抗イダルシズマブ抗体発現例
●第Ⅰ相試験で抗イダルシズマブ抗体が認められた19例における抗体価の最高値分布 海外第Ⅰ相試験(健康成人男性) 7/118例 海外第Ⅰ相試験 (高齢者を含む健康成人および腎機能障害を有する成人) 6/46例 国内第Ⅰ相試験(日本人健康成人男性) 6/60例 合計 19/224例(8.5%) 抗体価の最高値 1 2 4 8 10 16 40 患者数 5 <詳細コメント> 国内外の第Ⅰ相試験(海外データ:健康成人男性、高齢者を含む健康成人および腎機能障害を有する成人、国内データ:日本人健康成人男性)でプリズバインドの投与を受けた224例中19例(8.5%)において、プリズバインド投与後に抗イダルシズマブ抗体の発現が認められました。これら19例における抗体価の最高値※分布は、以下のとおりでした。 ※:抗体価の最高値から概算される抗体濃度は、イダルシズマブの投与量5gの0.1%以下に該当する。 承認時評価資料

106 健康成人に対するイダルシズマブ再投与時における イダルシズマブ血漿中濃度および中和効果(海外第Ⅰ相試験)
100,000 (nmol/L) 4 8 12 16 20 24(時間) イダルシズマブ投与後の経過時間 45~64歳、ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g初回投与(n=6) 45~64歳、ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ2.5g再投与(n=6) 10,000 1,000 100 10 幾何平均値     基準値上限 35.5秒     ベースライン平均値 32.1秒 平均値±SD イダルシズマブ血漿中濃度 (秒) -2 25 2 6 14 18 22 85 70 55 40 dTT(希釈トロンビン時間) <詳細コメント> ・イダルシズマブの初回投与時と2ヵ月後のイダルシズマブ再投与時において、イダルシズマブ血漿中濃度は、初回投与時とほぼ同様に推移しました。 ・2ヵ月後のイダルシズマブ再投与時における中和効果は、初回投与時と違いはありませんでした。 海外第Ⅰ相試験(高齢者を含む健康成人および腎機能障害を有する成人)で、健康成人6例を対象に、初回イダルシズマブ2.5g投与の約2ヵ月後に2.5gを再投与し、イダルシズマブ再投与時における薬物動能および有効性、安全性・忍容性を検討しました。 その結果、初回と再投与時において、薬物動態および中和効果に違いは認められませんでした。1例で、再投与後に抗イダルシズマブ抗体が認められたが、アレルギー反応は認められませんでした。 ● イダルシズマブ再投与の可能性 RE-LY試験では、大出血を発現した患者の10~15%が試験期間中(平均期間2.0年)に2回目の大出血を発現しました。出血経験を有し、出血に対する治療を受けた患者では、後に緊急手術が必要になり、イダルシズマブ投与後の数日から数年後に再投与する可能性が考えられます。イダルシズマブ再投与に際しては、イダルシズマブに対する過敏性反応または免疫反応のリスクが生じる可能性があることから、海外第Ⅰ相試験として、イダルシズマブ再投与を検討しました。 対      象: 45~64歳の健康成人男性6例 方      法: ダビガトラン定常状態※においてイダルシズマブ2.5gを初回投与し、その約2ヵ月後に再投与したときの有効性および安全性について検討した。 主要評価項目: 安全性、忍容性 ※:1~3日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4日目に220mg×1回/日投与    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 承認時評価資料

107 イダルシズマブの薬理作用 <詳細コメント> イダルシズマブの薬理作用について紹介します。

108 モノクローナル抗体の種類 ヒト抗体の割合が高いほど、安全性が高い マウス抗体 キメラ抗体 (66%ヒト抗体) ヒト化抗体 (90%ヒト抗体)
モノクローナル抗体 Monoclonal AntiBody ○オマブ o-mab マウス抗体 キメラ抗体 (66%ヒト抗体) ○キシマブ xi-mab ヒト化抗体 (90%ヒト抗体) ○ズマブ zu-mab 完全ヒト抗体 (100%ヒト抗体) ○ウマブu-mab <詳細コメント> ・イダルシズマブは、ダビガトランに非常に高い結合親和性を有するヒト化モノクローナル抗体のフラグメントです。 抗体の構造 抗体は、抗原(生体に対する有害物質)が検出された際、体内の免疫系により産生される蛋白質の一種であり、すべての抗体分子は、2本の重鎖と2本の軽鎖の計4本のポリペプチド鎖を基本構造としています。抗体分子は、免疫を担う細胞や他の蛋白質と結合するFc、抗原に結合する部分を含むFabで構成されています。 モノクローナル抗体 一般的に、抗原は複数の抗原決定基(抗体が認識する抗原の領域)を含むことから、自然状態で生体に誘導される抗体は単一ではありません。そのため、同一の抗原を認識する抗体を集めた場合であっても、複数の抗原決定基を認識する抗体が混ざった状態となります。このように、同一ではない複数の抗体が、混ざっている集合体をポリクローナル抗体といいます。一方、特定の抗原決定基とだけ結合する抗体の集合体をモノクローナル抗体といいます。医薬品としてのモノクローナル抗体には、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体があり、抗原に結合するFabの先端部分をヒト化することにより、免疫原性反応のリスクが低下します。  住田孝之. 医学のあゆみ 2011; 238:

109 ヒト化モノクローナル抗体のフラグメント(Fab)
ダビガトランに特異的に結合する マウスモノクローナル抗体 重鎖 軽鎖 Fc: 免疫を担う細胞などと 結合する抗体の一部 Fab: 抗原に結合する 抗体の一部 抗原結合部位 (ダビガトラン結合部位) キメラ抗体のフラグメント(Fab) キメラ化 ヒト化抗体の フラグメント(Fab) イダルシズマブ 緑:マウス由来 青:ヒト由来 ヒト化 <詳細コメント> ・イダルシズマブは、ヒト化モノクローナル抗体のフラグメント(Fab)です。 Fabのみにすることの利点 ・免疫原性反応のリスクが低下します。 ・完全型の抗体に比べ、分子量が小さいFabは代謝・排泄されやすい。 ● 免疫原性:人体が異物にさらされた際に起こる免疫応答のこと。生体内の免疫系を刺激して抗体産生を誘発します。 ● Fab:Fragment, antigen bindingの頭文字をとったもの。 ● Fc:Fragment, crystallizableの頭文字をとったもの。 ● 抗体の構造 抗体(免疫グロブリン:Immunoglobulin=Ig)は、抗原(生体に対する有害物質)が検出された際、体内の免疫系により産生される蛋白質の一種である。すべての抗体分子は、2本の重鎖と2本の軽鎖の計4本のポリペプチド鎖を基本構造としています。抗体分子は、免疫を担う細胞や他の蛋白質と結合するFc、抗体に結合する部分を含むFabで構成されています。 Eikelboom JW, et al. Circulation 2015; 132:

110 健康成人におけるイダルシズマブ投与後の ダビガトランの再開(海外第Ⅰ相試験)
ダビガトラン再開時点 n=6 平均値+SD 48 72 74 36 60 26 −2 24 20 16 12 8 4 dTT(希釈トロンビン時間) ダビガトラン定常状態※+イダルシズマブ5g ダビガトラン定常状態※+プラセボ 基準値上限 35.5秒 30 35 40 45 50 55 65 70 75 80 (秒) ピーク トラフ イダルシズマブまたはプラセボの投与完了直後 2 6 10 14 18 22 イダルシズマブ投与後の経過時間 (時間) ベースライン平均値 32.1秒 ※:1~3日目にダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日投与、4日目に220mg×1回/日投与。    ダビガトランエテキシラートとして220mg×2回/日ならびに220mg×1回/日投与は国内未承認の用法・用量。 <詳細コメント> ・外国人健康成人において、イダルシズマブ投与24時間後のダビガトランの再開により、抗凝固作用が回復しました。 45~64歳の外国人健康成人6例に、ダビガトラン220mg×2回/日を3.5日投与してダビガトラン定常状態にした後、イダルシズマブ5gまたはプラセボを静脈内投与しました。その投与24時間後にダビガトランを再開し、ダビガトランの正常な抗凝固作用が得られるかを検討しました。 その結果、ダビガトラン再開後のdTTはイダルシズマブ投与前と同程度まで回復しました。このことから、イダルシズマブ投与完了24時間後には、ダビガトランの再開が可能と考えられます。 対象: 45~64歳の外国人健康成人6例 方法: ダビガトラン定常状態※においてイダルシズマブ5gを静脈内投与し、その投与24時間後にダビガトランを再開し、ダビガトランの正常な抗凝固作用を得られるかを検討した 承認時評価資料

111 健康成人における内因性トロンビン産生能に対する イダルシズマブの影響(海外第Ⅰ相試験)
イダルシズマブ4g、5分間急速投与 イダルシズマブ8g、1時間持続投与 ベースライン (n=6) イダルシズマブ 投与15分後 (n=5) ETP(内因性トロンビン産生能) 400 800 1,200 1,600 2,000 (nmol・min/L) <詳細コメント> こちらは、イダルシズマブの特徴でもある凝固促進作用が無いことを示したスライドです。 外国人健康成人男性に、イダルシズマブ8g(1時間点滴静注、n=6)または4g(5分間急速静注、n=6)を投与し、ベースライン時(投与前)および投与完了15分後に、内因性トロンビン産生能(ETP)を測定しました。その結果、ETPに対するイダルシズマブの影響は認められませんでした。このことから、イダルシズマブには血栓形成促進作用がないことが示されました。 ● 内因性トロンビン産生能(Endogenous Thrombin Potential;ETP):凝固反応中の血漿内のトロンビン濃度を時間積分した値で、血液凝固能を表します。 対      象: 外国人健康成人男性(18~45歳、BMI18.5~29.9kg/m2)12例 方      法: イダルシズマブ8g(1時間点滴静注)または4g(5分間急速静注)を投与し、ベースライン時(投与前)および投与完了15分後に、ETPを検討した。 主要評価項目: 薬物動態、忍容性、安全性 ※ イダルシズマブとして8gならびに4gの投与は国内未承認の用法・用量。 Glund S, et al. Thromb Haemost 2015; 113:

112 様々なトロンビン基質に対するイダルシズマブの 結合特性に関する検討(in vitro)
Plasma 10% 100 (%) ダビガトラン S-2238 Pep FVⅢ Pep PAR1 Pep Fib A Pep ProtC Pep FV-2 Pep FV-1 Pep FXⅢ vWF ProtC FⅩⅢ FⅤ 50 補正結合率 <詳細コメント> こちらは、イダルシズマブの特徴でもある抗凝固作用が無いことを示したスライドです。 イダルシズマブとトロンビンには複数の構造的類似性があることから、様々なトロンビン基質に対するイダルシズマブの結合能を表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて測定し、イダルシズマブにトロンビンと類似した結合特性があるかを検討しました。 その結果、イダルシズマブはダビガトランを除いて、これらのトロンビン基質に結合しなかった。このことから、イダルシズマブには抗凝固活性作用がないことが示されました。 ● 表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)法:物質間の結合特異性や結合親和性の解析に用いられる研究手法のこと。 ● 補正結合率:基質の分子量で補正した結合率のこと。 FⅤ:第Ⅴ因子、FⅩⅢ:第ⅩⅢ因子、ProtC:プロテインC、vWF:フォン・ヴィレブランド因子、Pep FXⅢ:活性化ペプチド第XⅢ因子、 Pep FV-1:活性化ペプチド第Ⅴ-1因子、Pep FV-2:活性化ペプチド第Ⅴ-2因子、Pep ProtC:活性化ペプチドプロテインC、 Pep Fib A:活性化ペプチドフィブリノゲンA、Pep PAR1:活性化ペプチドプロテアーゼ活性化受容体1、Pep FVⅢ:活性化ペプチド第VⅢ因子、 S-2238:トロンビンの特異的基質、Plasma 10%:10%血漿プール 承認時評価資料

113 イダルシズマブの中和効果に対する凝固因子濃縮 製剤(rFVIIa、aPCC)の影響(in vitro)
ダビガトラン添加濃度 ダビガトラン ダビガトラン+ノボセブン100nM +イダルシズマブ3.0mg/mL n=3 平均値±SD 200 400 600 800 1,000(ng/mL) 180 150 120 90 60 30 rFⅦa (秒) dTT ダビガトラン ダビガトラン+ファイバ1U/mL +イダルシズマブ3.0mg/mL n=3 平均値±SD ダビガトラン添加濃度 200 400 600 800 1,000(ng/mL) 180 150 120 90 60 30 aPCC (秒) dTT <詳細コメント> ・ In vitroの検討において、活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤(aPCC)、遺伝子組換え活性型第Ⅶ因子製剤(rFⅦa)添加時においても、イダルシズマブの中和効果に影響は認められませんでした。 aPCC(1U/mL)またはrFⅦa(100nM)を含むヒト血漿に複数濃度のダビガトランを添加し、これらの凝固因子濃縮製剤存在下におけるダビガトランの抗凝固作用への影響を検討しました。さらにイダルシズマブ(3mg/mL)を加え、aPCCおよびrFⅦaの凝固作用への影響を検討しました。 その結果、いずれの凝固因子濃縮製剤もダビガトランによるdTT延長作用に影響を及ぼしませんでした。また、凝固因子濃縮製剤の存在下においても、ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果に影響は認められませんでした。 ● 日本で発売されている凝固因子濃縮製剤 aPCC:ファイバ静注用、バイクロット配合静注用、rFⅦa:ノボセブンHI静注用 rFⅦa:遺伝子組換え活性型第Ⅶ因子製剤                     aPCC:活性型プロトロンビン複合体濃縮製剤 対象・方法:ダビガトランを含むヒト血漿にイダルシズマブ3mg/mLを添加し、イダルシズマブの中和効果に対するrFⅦaおよびaPCCの影響について検討した。 承認時評価資料

114 イダルシズマブの中和効果に対する 補液療法の影響(ブタ)
投与前 1,000 (ng/mL) -150 -60 対照 赤血球輸血 4%ゼラチン 6%HES200/0.5 6%HES130/0.4 リンゲル 120 240 360 12 24(時間) 時間 ダビガトラン静脈内持続投与 血液希釈(1時間) 補液療法下におけるダビガトラン血漿中濃度 時間0(点線):イダルシズマブ投与 200 400 600 800 ダビガトラン血漿中濃度 n=5 平均値±SD <詳細コメント> ・通常使用される様々な補液療法下において、ダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果に影響は認められませんでした。 雄ブタにダビガトランエテキシラート30mg/kg×2回/日を3日間経口投与し、さらに静脈内持続投与(0.77mg/kg/hで30分+0.26mg/kg/hで60分)し、続いて、全血液量の約50%を採取して出血性ショックに似た状態にしました。その後、晶質液、6%ヒドロキシエチルデンプン(HES)130/0.4、6%HES200/0.5、4%ゼラチン、洗浄赤血球(RBC)輸血または対照溶媒により血液を希釈しました。血液希釈直後にイダルシズマブ30mg/kgを静脈内投与し、重度出血および出血性ショック下で様々な補液療法を併用しながらイダルシズマブを使用したとき、イダルシズマブのダビガトランへの結合に影響が生じるかどうかを検討しました。 対照溶媒を投与した群(対照群)ではダビガトラン血漿中濃度は、初期濃度634±…65.4ng/mLから、イダルシズマブ投与後5分以内に44±85ng/mLに低下しました。イダルシズマブ投与15分後に再び血漿中ダビガトランが測定可能な濃度となり、30分後に最高値(242±95ng/mL)に達しました。その後、ダビガトラン血漿中濃度は再び低下し、イダルシズマブ投与24時間後には、27±48ng/mLとなりました。イダルシズマブ投与後24時間にわたり、種々の補液療法間でダビガトラン血漿中濃度に有意差は認められなかった(ANOVA、Bonferroniの多重比較検定)ことから、通常使用される様々な補液療法による50%血液希釈において、イダルシズマブによるダビガトランの抗凝固作用の中和に影響が生じることはないことが示されました。 ● 補液療法 通常、重度の出血患者に対しては、血液量を回復させ、組織潅流を維持するための補液療法が行われます。血液量の回復には、晶質液(リンゲル液)、膠質液(デンプン配合剤またはゼラチン)および自己回収術(術中に出血した血液を回収)による赤血球輸血などが行われます。 HES:ヒドロキシエチルデンプン 対照:補液療法なし 承認時評価資料

115 経口または非経口抗凝固薬の抗凝固作用に対する イダルシズマブの影響(in vitro・ex vivo)
血漿中濃度 2.0 アピキサバン 第Ⅹa因子活性 +溶媒(イダルシズマブ非添加) +イダルシズマブ3.0mg/mL n=3 平均値±SEM 1.5 1.0 0.5 100 200 300 400 500(ng/mL) リバーロキサバン -5 150 50 ワルファリン (秒) PT +溶媒(イダルシズマブ非投与) +イダルシズマブ0.7μmol/kg 対照 (ワルファリン非投与・イダルシズマブ非投与) n=4~5(ラット)   :イダルシズマブ投与 30 60 90 120(分) イダルシズマブ投与後の経過時間 0.0 1 0.0625 ヘパリン 0.25 0.125 2.0(U/mL) <詳細コメント> ・In vitroおよびex vivoの検討において、イダルシズマブは、ダビガトラン以外の抗凝固薬の抗凝固作用に影響を及ぼさないことが示されました。 複数濃度のリバーロキサバン、アピキサバン、ヘパリンを含有するヒト血漿にイダルシズマブ3mg/mLを添加し、また、ワルファリン(0.5mg/kg)を3日間経口投与したラットにイダルシズマブ0.7μmol/kgを静脈内投与しました。第Xa因子阻害剤およびヘパリンでは発色アッセイ(第Xa因子活性)による光学濃度、ワルファリンではプロトロンビン時間(PT)を測定し、プラザキサ以外の抗凝固剤による抗凝固作用へのイダルシズマブの影響を検討しました。イダルシズマブは、ダビガトランと構造の異なる他の抗凝固剤(ビタミンK拮抗剤、第Ⅹa因子阻害剤、ヘパリンなど)による抗凝固作用に対して影響を及ぼさないことが示されました。 ● 第Ⅹa因子活性(光学濃度):この実験では、chromogenic assay(発色アッセイ)を用いて、第Ⅹa因子の抗凝固作用を評価する。光学濃度は、抗凝固薬に阻害されなかった第Ⅹa因子を表し、抗凝固薬の血漿中濃度と負の相関を示します。 ● プロトロンビン時間(Prothrombin Time;PT):凝固カスケードの外因系経路を評価し、ワルファリンの抗凝固作用の評価に用いられます。 承認時評価資料

116 出血時間に対するイダルシズマブの影響(ラット)
イダルシズマブ投与後の経過時間 450 (秒) 30 出血時間※ 60 90 120(分) イダルシズマブ投与 400 350 300 250 200 150 100 ダビガトラン30mg/kg経口 +イダルシズマブ33mg/kg(0.69μmol/kg) 対照 n=6~8 平均値±SEM <詳細コメント> ・イダルシズマブは、投与5分以内にタビガトランによって延長した出血時間を短縮させ、イダルシズマブ投与後15分、30分、120分いずれの時点においても、中和効果が維持されました。 ラットにダビガトランエテキシラート30mg/kgを経口投与し、ダビガトラン血漿中濃度が最高値に達する時間に近い45分後に、イダルシズマブ33mg/kg(0.69μmol/kg)を単回静脈内投与しました。イダルシズマブ投与5、15、30、120分後に尾部に標準的切開処置を行い、止血に要する時間を測定しました。 その結果、イダルシズマブの投与5分後には出血時間がダビガトランエテキシラートの投与を行っていない対照群と同程度まで短縮され、投与15、30、120分後の時点においても中和効果が維持されました。 対照:無処置 ※:止血に要する時間を測定することにより、出血時間を測定した。 承認時評価資料

117 ダビガトラン過量投与下における出血量・生存率に 対するイダルシズマブの影響(ブタ)
対照 ダビガトラン+イダルシズマブ30mg/kg ダビガトラン(イダルシズマブ非投与) ダビガトラン+イダルシズマブ60mg/kg ダビガトラン+イダルシズマブ120mg/kg 外傷 外傷後の時間 イダルシズマブまたは溶媒投与 60 90 120 150 180 210 240(分) n=6 平均値±SD 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 出血量 (mL) *P<0.001 vs. イダルシズマブ †P<0.01 vs. 対照 30 *P<0.0001 vs. イダルシズマブ非投与 イダルシズマブ60mg/kg* 100 (%) 20 40 80 イダルシズマブ30mg/kg* イダルシズマブ 120mg/kg* イダルシズマブ非投与 生存率 <詳細コメント> ・重度のブタ鈍的外傷モデルにおいて、イダルシズマブは速やかにダビガトラン過量投与下における出血量の有意な減少および生存率を有意に改善しました。 ブタにダビガトランエテキシラート30mg/kgを1日2回3日間経口投与した後、4日目に90分間の静脈内持続投与(0.77mg/kg/hで30分間、0.52mg/kg/hで60分間、 総静脈内投与量0.905mg/kg)して、治療域を超える濃度としました。その後、標準的な鈍的肝外傷を誘起し、外傷性出血に及ぼすダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果について検討しました。ダビガトランを投与した動物では、イダルシズマブ投与後15分以内に止血が誘起されました。 また、生存率を検討したところ、すべてのイダルシズマブ投与群で生存期間が有意に改善され(P<0.0001、Log-rank検定)、生存率はイダルシズマブ60、120mg/kg投与群で100%、30mg/kg投与群で83%でした。 対照:ダビガトラン非投与、イダルシズマブ非投与(溶媒投与) 承認時評価資料

118 頭蓋内出血モデルにおける血腫容積に対する イダルシズマブの影響(マウス)
ダビガトラン 9mg/kg (14.3μmol/kg) +イダルシズマブ 764mg/kg (16μmol/kg)群 (n=13) (14.3μmol/kg)群 (n=20) 対照群 40 (mm3) 30 20 10 血腫容積 平均値±SD *P<0.05 <詳細コメント> ・マウス頭蓋内出血モデルにおいて、ダビガトランと等モル濃度のイダルシズマブ投与により、血腫容積の拡大が抑制されました。 マウスにダビガトランエテキシラート9mg/kg(14.3μmol/kg)を腹腔内投与し、ダビガトラン血漿中濃度を2,800ng/mL(5,936nM)としました。その後、頭蓋内出血を誘起し、イダルシズマブ764mg/kg(16μmol/kg)または生理食塩液を尾静脈に注入し、血腫容積を測定しました。 その結果、ダビガトランエテキシラート9mg/kg(14.3μmol/kg)の投与とほぼ等モル用量のイダルシズマブ764mg/kg(16μmol/kg)投与により、血腫容積が抗凝固療法を行っていない動物(対照群)と同等のレベルまで有意(P<0.05、ANOVA、Tukeyの多重比較検定)に減少しました。 ● 等モル濃度(mol/kg溶媒):溶媒1kg中に含まれる溶質のモル数(物質量)が同等であること。ダビガトランの分子量は471.5であるのに対して、イダルシズマブの分子量は47,782とほぼ100倍の差があります。 対照:ダビガトラン非投与、イダルシズマブ非投与 承認時評価資料

119 イダルシズマブの薬物動態 <詳細コメント> イダルシズマブの薬物動態について紹介します。

120 薬物動態:血中濃度 【薬物動態】 ダビガトランの定常状態(ダビガトランエテキシラートとして220mgを1日2回投与)にある日本人健康成人男性9例に本剤5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内投与したときのイダルシズマブの血漿中濃度時間推移及び薬物動態パラメータを以下に示す。イダルシズマブの血漿中濃度は約4時間でCmaxの5%未満に低下した。ダビガトラン非存在下で本剤1~8gを単回投与したとき、AUC0-∞は用量に比例して増加した。 40,000 (nmol/L) 投与後時間[h] 30,000 20,000 10,000 イダルシズマブ血漿中濃度 1 4 8 12 16 20 24(時間) *:gCVは幾何変動係数を表す ダビガトラン220mg +イダルシズマブ5g(2.5g×2回) n=9 平均値+SD 薬物動態パラメータ イダルシズマブ5g (n=9) 幾何平均値 (%gCV)* AUC0-∞[nmol・h/L] 43,300 (8.25) Cmax[nmol/L] 30,100 (11.5) t1/2[時間] 7.91 (9.33) Vss[L] 6.53 (10.2) CL[mL/分] 40.2 <詳細コメント> 日本人健康成人男性9例に、ダビガトラン定常状態においてイダルシズマブ5gを15分間隔で2回に分けて5分間急速静脈内投与したところ、 イダルシズマブ血漿中濃度は速やかに上昇し、tmaxの中央値は0.417時間でした。ダビガトラン定常状態におけるイダルシズマブの分布容積(Vss)は6.53L(幾何変動係数10.2%)、総クリアランスは40.2mL/min(幾何変動係数8.25%)でした。 血漿中イダルシズマブ濃度時間推移(算術平均+SD) 添付文書

121 薬物動態:腎機能障害患者 【薬物動態】 183例の患者から得られた結果より、正常の腎機能患者(クレアチニンクリアランス(CrCL)80mL/min超、CmaxはN=53、 AUC0-24はN=44)に比べて、軽度の腎機能障害患者(CrCL50mL/min超80mL/min以下)、中等度の腎機能障害患者(CrCL30mL/min超50mL/min以下)、高度の腎機能障害患者(CrCL 30mL/min以下)のCmax及びAUC0-24は、それぞれ12%、21%、28%(N=65、54、51)及び28%、79%、152%(N=58、45、36)上昇した。 <詳細コメント> 腎機能障害患者の薬物動態は、正常な腎機能の患者に比べてCmax、AUCが上昇することが示されましたが、腎機能障害患者に対してもイダルシズマブ投与量の調整は必要ありません。 添付文書

122 薬物動態:年齢及び性別 【薬物動態】 母集団薬物動態解析の結果、イダルシズマブの薬物動態は、 年齢及び性別による有意な影響を受けなかった。
<詳細コメント> イダルシズマブの薬物動態は、年齢及び性別による有意な影響を受けません。 添付文書

123 その他添付文書

124 禁忌/組成・性状 【禁忌(次の患者には投与しないこと)】 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 【組成・性状】
本剤は、チャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて製造される。 販売名 プリズバインド静注液2.5g 成分・含量(1バイアル50mL中) 有効成分 イダルシズマブ(遺伝子組換え) 2.5g 添加物 氷酢酸 mg ポリソルベート mg 酢酸ナトリウム水和物 mg D-ソルビトール mg 性状・剤形 無色~微黄色の澄明又はわずかに乳白光を呈する液(注射剤) pH 5.3~5.7 浸透圧 270~330mOsm/kg <詳細コメント> イダルシズマブは、過敏症の既往歴のある患者さんには禁忌です。 イダルシズマブは、1箱に2バイアル封入されています。1バイアルにイダルシズマブ2.5gが含まれており、性状は50mLの無色~微黄色の澄明又はわずかに乳白光を呈する液が充填されています。 添付文書

125 使用上の注意:慎重投与/重要な基本的注意
【使用上の注意】 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること) 遺伝性フルクトース不耐症の患者 [本剤は添加物としてソルビトールを含有する。本剤投与による治療上の有益性が危険性 を上回ると判断された場合にのみ投与すること。「その他の注意」の項参照] 2.重要な基本的注意 (1)本剤は、医学的に適切と判断される標準的対症療法の実施とともに使用すること。 (2)ダビガトランの抗凝固作用を中和することにより血栓症のリスクが増加するため、止血 後は、速やかに適切な抗凝固療法の再開を考慮すること。なお、ダビガトランエテキシ ラートメタンスルホン酸塩の投与は本剤の投与から24時間後に再開可能であり、他 の抗凝固剤の投与は本剤投与後いつでも再開可能である。 <詳細コメント> 本薬剤は添加物としてソルビトールを含有するため、遺伝性フルクトース不耐症の患者さんは慎重投与となっています。 遺伝性フルクトース不耐症とは 果糖・蔗糖等を含む食品を摂取後、短時間で出現する低血糖を特徴とする疾患で、欧米白人での患者頻度は2万〜3万人に1人程度と推定されていますが、日本人症例は1990年までに3家系5例が報告されているのみで、以後の文献的報告がないため、本邦では極めて稀な疾患と考えられています。 そのような患者さんにおいては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与していただくようにして下さい。 イダルシズマブは患者の状態に応じて血液凝固因子を補充又は凝固カスケードを活性化させることができる血液製剤などの既存の治療法に上乗せで使用できます。 抗凝固療法を行わないことは,患者を基礎疾患又は症状による血栓性リスクにさらすことになります。 イダルシズマブ投与により患者が臨床的に安定し,かつ十分な止血が達成された場合,以下の点に留意して適切な抗凝固療法を再開することができます。 ● ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は,本剤投与から24時間後に再開可能です。 ● 他の抗凝固剤は,本剤投与後いつでも開始可能です。 添付文書

126 使用上の注意:副作用 【使用上の注意】 3.副作用
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩投与中に生命を脅かす又は止血困難な出血が認められた患者、あるいは緊急を要する手術又は処置が必要となった患者を対象とした国際共同第Ⅲ相症例集積試験(中間集計)において、日本人4例を含む243例に本剤が投与された。243例中、副作用が報告された症例は13例(5.3%)であった。 (承認時) <詳細コメント> 副作用の欄には国際共同第Ⅲ層症例集積試験RE-VERSE ADの中間集計243例での結果が記載されており、243例中、副作用が報告された症例は13例(5.3%)でした。 添付文書

127 使用上の注意:重大な副作用/その他の副作用
【使用上の注意】 副作用 (1)重大な副作用  ショック、アナフィラキシー(頻度不明注)):ショック、アナフィラキシーを含む過敏症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には速やかに投与を中止し、適切な処置を行うこと。 (2)その他の副作用 以下のような副作用があらわれた場合には、症状に応じて適切な処置を行うこと。 1%未満 血液及びリンパ系障害 血小板減少症 神経系障害 脳血管発作、頭痛 心臓障害 心停止、心房血栓症、徐脈、上室性頻脈 血管障害 深部静脈血栓症、低血圧 呼吸器、胸郭及び縦隔障害 肺塞栓症 胃腸障害 下痢、びらん性胃炎 皮膚及び皮下組織障害 発疹 筋骨格系及び結合組織障害 四肢痛 一般・全身障害及び投与部位の状態 溢出、注入部位疼痛 <詳細コメント> 重大な副作用としてショックやアナフィラキシーが頻度不明で記載されてており、投与時には観察を十分に行い、異常が認められた場合には速やかに投与を中止し、適切な処置を行うよう注意喚起しています。 注)国際共同第Ⅲ相症例集積試験の中間集計以降に海外において認められている副作用のため頻度不明 添付文書

128 使用上の注意: 妊婦、産婦、授乳婦等への投与/小児等への投与
【使用上の注意】 4.妊婦、産婦、授乳婦等への投与 (1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。    [妊婦及び授乳婦における使用経験はない。] (2)授乳中の婦人に投与する場合は授乳を中止させること。    [イダルシズマブがヒト母乳中へ移行するかどうかは不明である。] 5.小児等への投与 小児等に対する安全性及び有効性は確立していない。 [使用経験がない。] <詳細コメント> 本薬剤は妊婦及び授乳婦における使用経験はありません。 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与し、授乳中の婦人に投与する場合は授乳を中止させるよう記載しています。 また、小児における使用経験もないため、小児等に対する安全性及び有効性は確立していません。 添付文書

129 使用上の注意:適用上の注意 【使用上の注意】 6.適用上の注意 (1)投与前
1)目視による確認を行い、注射液に微粒子又は変色が認められる場合には使用しないこと。 2)本剤は防腐剤を含有していないため、バイアルは1回限りの使用とし、開封後は速やかに使用すること。 (2)投与時 1)本剤を他の薬剤と混合しないこと。 2)本剤投与時に既存の静脈ラインを使用する場合は、他の薬剤との混合を避けるため、本剤の注入前後にラインを日局生理食塩液でフラッシュすること。 3)同じ点滴ルートを介して、同時に他の薬剤の投与を行わないこと。 (3)保存時  凍結を避け、2~8℃で、遮光のため外箱に入れた状態で保存すること。 <詳細コメント> 適用上の注意は投与前、投与時、保存時の三つに分かれています。 投与前の注意として、目視による確認を行っていただき、注射液に微粒子又は変色が認められる場合には使用しないこと。本剤は防腐剤を含有していないため、バイアルは1 回限りの使用とし、開封後は速やかに使用すること。 投与時の注意として、他の薬剤と混合しないこと、薬剤投与時に既存の静脈ラインを使用する場合は、他の薬剤との混合を避けるため、本剤の注入前後にラインを日局生理食塩液でフラッシュすること。また、同じ点滴ルートを介して、同時に他の薬剤の投与を行わないでください。 保存時の注意として、凍結を避け、2 ~ 8 ℃で、遮光のため外箱に入れた状態で保存してください。 添付文書

130 使用上の注意:その他の注意 【使用上の注意】 7.その他の注意
(1)第Ⅰ相試験でイダルシズマブが投与された被験者の8.5%(224例中19例)で、抗イダルシズマブ抗体反応が認められた。 (2)遺伝性フルクトース不耐症の患者に対する本剤の投与経験はないが、当該患者への ソルビトール非経口投与に関連して、低血糖、低リン酸血症、代謝性アシドーシス、 尿酸増加、排泄及び合成能の低下に伴う急性肝不全及び死亡が報告されている1,2)。 <詳細コメント> その他の注意には、 (1)第Ⅰ相試験でイダルシズマブが投与された被験者の8.5%(224例中19例)で、抗イダルシズマブ抗体反応が認められています。 (2)遺伝性フルクトース不耐症の患者に対する本剤の投与経験はないが、当該患者へのソルビトール非経口投与に関連して、低血糖、低リン酸血症、代謝性アシドーシス、尿酸増加、排泄及び合成能の低下に伴う急性肝不全及び死亡が報告されています。 添付文書 1)Ali M. et al.:J Med Genet 1998;35: 2)Yasawy MI. et al.:World J Gastroenterol 2009;15(19):

131 臨床成績 【臨床成績】 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩で治療中の患者を対象とした日本人を含む国際共同第Ⅲ相症例集積試験4)
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩による治療中の患者で生命を脅かす又は止血困難な出血を発現した患者(グループA)若しくは緊急手術又は処置を要する患者(グループB)を対象として、本剤1バイアルを15分以内の間隔で2回計5gを静脈内投与し、ダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の中和効果及び安全性の検討を目的とした日本人を含む国際共同第Ⅲ相症例集積試験における中間集計では患者243例(うち、日本人4例)を対象とした。主要評価項目として、本剤投与完了後4時間以内のダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の最大の中和効果を、中央検査機関で測定したdTT(希釈トロンビン時間)及びECT(エカリン凝固時間)の値を用い、それぞれの110%基準値上限(ULN)に基づいて評価した。その結果、以下の成績が得られた。 中央検査機関で測定したdTT及びECTを用いて評価した中和効果の要約 グループA グループB 合計 dTT 評価対象となった患者数 本剤投与完了後4時間以内の最大の中和効果の中央値 (95%信頼区間) 最大の中和効果が100%であった患者の割合[N(%)] 96 100 (100、100) 94(97.9) 60 58(96.7) 156 152(97.4) ECT 125 120(96.0) 91 85(93.4) 216 205(94.9) <詳細コメント> 臨床成績の項目には、国際共同第Ⅲ相症例集積試験RE-VERSE AD試験の患者243例の中間集計結果が掲載されています。 主要評価項目である、イダルシズマブ投与完了後4 時間以内のダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の最大の中和効果は、dTT(希釈トロンビン時間)及びECT(エカリン凝固時間)ともに中央値100でした。また、日本人患者においても、評価対象としたすべての患者でdTT( 2例)及びECT( 3 例)のいずれにおいても最大の中和効果は100%でした。しかしながら、一部の患者ではイダルシズマブ投与12時間以上経過後に末梢からのダビガトランの再分布によると考えられる非結合型総ダビガトラン濃度、血液凝固マーカー値の上昇が認められています。 中和効果の評価は、イダルシズマブ投与後に1回以上血液凝固検査値が得られ、かつ、投与前の値が110%ULNを超える患者を対象とした。 中和効果は下記の式により算出した。算出した値が100%以上の場合、100%と示した。 中和効果の計算式:{(投与前の血液凝固検査値−投与後の血液凝固検査値)/(投与前の血液凝固検査値−110%ULN)}×100% 日本人患者(4例)については評価対象としたすべての患者でdTT(2例)及びECT(3例)のいずれにおいても最大の中和効果は100%であった。 本試験では、ほとんどの患者では、血漿中ダビガトランは本剤投与終了後から持続的に中和されたが、一部の患者では主に本剤投与 12時間以上経過後に末梢からのダビガトランの再分布によると考えられる、非結合型総ダビガトラン濃度、血液凝固マーカー値の上昇が 認められた。 4)承認時評価資料 添付文書

132 薬効薬理:作用機序 【薬効薬理】 1.作用機序
イダルシズマブは、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物と高い親和性で特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメント(Fab)であり、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物の抗凝固作用を中和する6)。In vitro試験により、イダルシズマブとダビガトランが複合体を形成する際の会合速度は速く、解離速度は遅いため、複合体は安定であることが示されている6,7)。 <詳細コメント> 薬効薬理の作用機序の項目には、イダルシズマブは、ダビガトランに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメントです。イダルシズマブとダビガトランが複合体を形成する際の会合速度は速く、解離速度は遅いことが示されています。 添付文書 6)Schiele F. et al.:Blood. 2013;121(18): 7)承認時評価資料

133 薬効薬理:薬理作用 【薬効薬理】 2.薬理作用 イダルシズマブによるダビガトランの中和効果
(1)ヒトの治療域を超える血漿中濃度を達成するようダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(経口)及びダビガトラン(静脈内)を投与したブタに鈍的肝外傷を誘起し、外傷性出血に及ぼすダビガトランの抗凝固作用に対するイダルシズマブの中和効果について検討したところ、イダルシズマブ注射後5分以内にdTT、ECT及びaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)はベースライン値に戻り、15分以内に止血が誘起された8)。 (2)ダビガトランの定常状態にある(ダビガトランエテキシラートとして220mgを1日2回 投与)日本人健康成人男性9例に本剤5gを15分間隔で2回に分けて5分間静脈内 投与したときの血漿中非結合型総ダビガトラン濃度時間推移及び血液凝固マーカー (dTT、ECT及びaPTT)の平均作用-時間推移を以下に示す(各推移の0時間 時点はイダルシズマブ又はプラセボの1回目の投与終了に該当)。なお、日本人を 対象とした第Ⅰ相試験のベースライン値から算出した「平均値+2×SD」を血液凝固 マーカーの基準値上限とした3)。 <詳細コメント> イダルシズマブの薬理作用として、ブタとヒトで中和効果が検証されています。ブタにおいて、イダルシズマブ注射後5 分以内にdTT、ECT及びaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)はベースライン値に戻り、15分以内に止血が誘起されたとの記載があり、ヒトにおいては血漿中非結合型総ダビガトラン濃度時間推移及び血液凝固マーカーのデータがあります。 添付文書 3),8)承認時評価資料

134 有効成分に関する理化学的知見 【有効成分に関する理化学的知見】 一般名:イダルシズマブ(遺伝子組換え)(JAN)
Idarucizumab(Genetical Recombination)(JAN) 分子量:47,782.03 本 質:イダルシズマブは、遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体のFab断片であり、 マウス抗ダビガトラン抗体の相補性決定部、並びにヒトIgG1のフレームワーク部 及び定常部からなる。イダルシズマブは、225個のアミノ酸残基からなるH鎖 (γ1鎖)断片及び219個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)から構成される タンパク質である。 <詳細コメント> 有効成分に関する理化学的知見はスライドの通りです。 添付文書

135 承認条件 【承認条件】 1.医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
2.日本人での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の 症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施 することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。 <詳細コメント> イダルシズマブは全例調査の対象の薬剤です。 添付文書


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