大災害と情報通信 広島修道大学 廣光清次郎 第4x回 xx 学会全国大会
前置きのようなスライドを2枚置いている。 第33回全国大会 ( 法政大学)
東日本大震災 2011年3月11日午後2時46分 震源地:三陸沖、マグニチュード 9.0
発表の内容の説明 目 次 1 はじめに 2 東日本大震災の被害と情報通信 経済被害/通信インフラへの被害 3 災害時の情報通信の利用 被災地域/近隣地域の情報行動と ICT 4 災害時対応情報通信技術 安否確認と被災地情報の発信/緊急時ホームページ 5 情報通信システムの災害対策 データバックアップ/停電対策/情報環境の確保/ データセンター/クラウド 6 情報通信と事業継続 7 災害時の情報セキュリティ ― 個人情報保護
1 はじめに 日本-「先進国型」の災害大国 狭い国土面積 世界の陸地面積の0.25% 大地震( M6 超)の発生 20.5%(2000年 ~2009年) 活火山 世界の活火山(1,548)のうち、7% ⇒ 環太平洋火山帯(世界の活・休火山の7 5%) ⇒ 火山・地震大国 ⇒ 災害大国 災害死者数 0.3%(1979年~2008年) 経済被害額 11.9%(同上) ⇒ 先進国型の災害大国 (出典)林俊彦、「大災害の経済学」、他
2 東日本大震災の被害と情報通信 2.1 経済被害 阪神・淡路大震災(1995年1月17日) 死者・行方不明者数 6,437人 経済被害額 直接被害 約10兆円 豊田らによる推計:直接13.3+間接7.2=20. 5兆円 東日本大震災(2011年3月11日) 死者・行方不明者数 23,769人(5月30日、平成23年度防災白書) 経済被害 直接的被害 ( ストック) 16~25兆円( 2011 年3月23日、 総理府) 経済被害=(直接+間接+人的)被害=34兆円(林俊彦)
2.1 経済被害 ― 情報通信への経済被害 産業別実質 GDP に占める情報通信( ICT) 産業:約1 0% 【試算1】直接的被害 ( ストック) 16~25兆円 × 10%=1.6~2.5兆円 東日本の産業特性:世界シェアの高い ICT 産業が集積 東北地方における ICT 産業の GDP 割合:28% [4] 【試算2】 16~25兆円 × 28%=4.5~7兆円
2.2 通信インフラへの被害 [5] 固定通信(固定電話+ FTTH) 190 万回線が被災 移動通信 29,000 局の基地局が停止 いずれも一部エリアを除き 2011 年 4 月末までに復旧 通信規制の実施 固定電話 最大80~90%の発信規制 移動電話 音声:70~95%の発信規制 パケット:30%の発信規制 (ドコモ) NTT 東 KDDI ソフトバンク 78.9%19.5%1.6% Docomoau ソフトバンクイー・モバイ ル ウイルコ ム 22%13%14%2%49%
携帯電話基地局の停波局数の推移 [5]
ネットワーク基幹回線への被害 NTT コミュニケーションズ ( 株 ) 編:「東日本大震災への対応状況につ いて」
3 災害時の情報通信の利用 [2] 災害時の情報通信の利用目的 地震および津波情報の入手 安否確認 行政情報の入手 ソーシャルメディア「 Twitter 」の利用 従来のメディア:ピラミッド型情報網 ソーシャルメディア:ネットワーク型情報網⇒コラボ レーション エピソード
3 災害時の情報通信の利用 [2] 3.1 被災地域の情報行動と ICT ①震災発生時:放送(ラジオ,テレビ),携帯メール, 防災無線の評価が高い。 ②情報収集:放送(テレビ) ③ソーシャルメディア:利用率は言われるほど高くなく, 先進ユーザに限定 ④その他:携帯電話が長時間使用不能 3.2 近隣地域の情報行動と ICT ①震災発生時:放送(テレビ)の評価が高い。 ②情報収集:放送(テレビ),ニュースサイト,ワンセ グの評価が 高い。 ③ソーシャルメディア:利用率は低い ④その他:インターネットアクセス性は維持
4 災害時対応情報通信技術 4.1 安否確認と被災地情報の発信 ①災害用伝言サービス 各キャリアでは,通信の輻輳を軽減しながらスムーズな安否 確認を行うため,固定電話,携帯電話,インターネットによる 災害用伝言ダイヤル (171 、 Web171) の提供を行った。 ②ソーシャルメディアの活用 1) 被災直後から被災地情報を発信 2)Twitter による救援要請 3) 国・自治体が公式な情報発信手段の一つとして採用 4) 被災地の地元紙が地域情報を配信 ③ Google パーソンファインダー 1) 安否確認, NHK の安否情報との一括検索 2) 避難者名簿共有サービス 3)Google は自動車通行実績情報マップ提供
4.2 緊急時ホームページ
①ホームページの軽量化 ( 2012年8 月25日調査) 組織名本体容量画像容量 岩手大学 30kB405kB 東北大学 27kB 東北大学(緊急時) 2011/06/17 20kB41kB 福島大学 18kB157kB 広島修道大学 22kB391kB 広島大学 24kB105kB ANA3,491kB JAL157kB2,790kB whitehouse2,164kB kantei1,519kB
②緊急時ホームページの仕様例(小平市を参考) 【主な掲載内容等】 1) 被災状況 2) 避難所・避難場所情報 3) 医療情報 4) 地震・気象・その他ライフライン情報等 5) 安否確認窓口 6) ソーシャルメディアへのポータル 【ホームページ切り替えの目安】 災害対策本部が設置される事態(震度5強以上の地震・大規模 事故)、新型ウイルス感染など緊急事態が市内に発生した場合 CIO (最高情報責任者)の判断 【災害時緊急ホームページの運用(案)】 1) サーバーが被災またはライフラインが喪失している場合は サーバーの仮設立上げ,移転が必要になる。 2) ホームページの維持・更新が最小のハード・ソフトで実施 可能であること。 3) 画像・動画等の大型データは避け,どうしても必要な場合 は最小のものとする。 4) 緊急時を想定した手順の構築と訓練が不可欠である。 5) 各ページは 100kB 以下とし、リンクは最大 3 程度までとする。
5 情報通信システムの災害対策 5.1 データバックアップ フルバックアップと差分バックアップがある。 5.2 停電対策 自家発電の導入,省電力機器の導入など、サーバー移転 またはクラウドの利用 5.3 情報環境の確保 パソコン確保,インターネット接続性,バックアップ電 源(電池)の確保災害時の在宅勤務を含めた情報環境対応 も検討 5.4 データーセンター サーバー,ストレージ,ネットワーク機器などを収容す るための社外の専用施設 5.5 クラウド 震災後,自治体の約 8 割がクラウドの導入を検討,大企 業では 45 %,一方,中小企業では約 6 割が導入に消極的
6 情報通信と事業継続 6.1 「防災」の考え方の変遷 過去のアプローチ (1970 年頃 ) 伊勢湾台風 (1959 年 ) 、新潟地震 (1964 年)、宮城県沖地震 (1978 年 ) 防災=消火+水防 現在のアプローチ (2000 年頃 ) 阪神・淡路大震災 (1995 年 ) ⇒ 予防力 (Robustness) 新しいアプローチ 同時多発テロ (2001 年 9 月 11 日 ) スマトラ島沖地震 (2004 年 12 月 26 日、 M9.1) 新型インフルエンザ (2009 年 ) ⇒ 再生力 (Resilience) を持った「災害に負けない社会」 =予防力と回復力の向上 ⇒ 事業継続 (BCP/M)
6.2 災害復興サイクルと情報セキュリティ 出典:「事業継続ガイドライン第 1 版」、中央防災会議、 2005 年 8 月
復旧曲線 (固定電話の不通回線数のグラフより)
NTT-C コールセンターの応答率(復旧率) [ 出典 ]NTT コム チェオ
6.3 災害復興サイクルと情報セキュリティ 機密性 (C) 完全性 (I) 可用性 (A) セキュリティの順序 正常時 C→I→A 緊急時 A→C→I パラダイム変化 [12] 災害発生(発災) 緊急対応(救援) 復旧 復興 予防 ( 防災) 豊田 [13] 、他
7 災害時の情報セキュリティ ― 個人情報保護 ― 個人情報の保護に関する法律(平成15年5月30 日) (第三者提供の制限)第二十三条 個人情報取扱事業者は,次に掲げる場合を除くほか, あらかじめ本人の同意を得ないで,個人データを第三者 に提供してはならない。 一 法令に基づく場合 二 人の生命,身体又は財産の保護のために必要がある 場合であって,本人の同意を得ることが困難であるとき。 三(以下略) 個人情報を出さないことの問題 開示された個人情報が垂れ流し
総務省アンケート要約 [2] 災害地域における個人情報の取扱いについて, 87 %の住民が特 に問題と感じていない。 具体的な内容例: 「親戚の安否を市に問い合わせたが,個人情報の関係もあったのか教え てもらえなかった」 ( 住民 ) , 「病院の入院患者の情報は病院が開示してくれず … 」(自治体) ⇒ 「個人情報を出さないことが問題だった」 考え方: 「大規模災害時等の特別ルールに従うことにした。一定期間後は,通常 のルールに戻した」(自治体) 「 45 %が個人情報の収集や開示等の具体的な運用で苦労した」(自治 体) 課題: 震災等の緊急時の個人情報の取扱いに関して,国・自治体等の基準等の整備 が求められると同時に,各組織独自の対応が必要になる。
8 まとめー大震災と情報通信ー 東日本大震災の被害と情報通信 経済被害/通信インフラへの被害 災害時の情報通信の利用 被災地域/近隣地域の情報行動と ICT ソーシャルメディアの可能性と限界 災害時対応情報通信技術 安否確認と被災地情報の発信/緊急時ホームページの提案 情報通信システムの災害対策 情報通信と事業継続 特殊な復旧曲線とそのモデル化の必要性 災害時の情報セキュリティ ― 個人情報保護 ―