Journal Club 健常人ボランティアおよび抗血小板 剤療法を毎日受けるドナーにおける、 5 つの血小板機能検査の精度および信 頼度 B.S. Karon, N.V. Tolan, C.D. Koch, A.M. Wockenfus, R.S. Miller, R.K. Lingineni, R.K. Pruthi, D. Chen, and A.S. Jaffe December © Copyright 2014 by the American Association for Clinical Chemistry
はじめに 機械的循環補助 (MCS) 法は、臨床検査による抗血小板薬の用量の 決定を必要とする MCS 法 は、心臓移植への橋渡しとして広く使われている。 出血及び血栓塞栓症は、周術期に良く見られる。 出血と血栓塞栓症のリスクとのバランスを取るために、 MCS 法において血 小板機能の検査を用いて、周術期における抗血小板薬の投与および用量決 定を必要とする。 短時間で抗血小板薬の用量を決定することが出来るほど、血小板 機能検査が正確でかつ信頼のおける検査法はない。 アラキドン酸によって誘導される (AA) 血小板機能は、アスピリン治療の用 量決定に使用される。 ADP によって誘導される血小板機能は、クロピドグレルもしくはジピリダ モールの用量決定に使用される。 血小板機能を測定するための参考となる手法やゴールドスタンダードはな いので、正確性の評価が難しい。 私たちは、どの血小板機能検査が、短期間で抗血小板薬のモニタリング及 び用量の決定に最適であるかを決定する手段として、検査内および検査間 精度や信頼係数を測定することを選らんだ。 2
3 クエスチョン どの血小板機能検査測定法が、短期間で抗血小板 薬の用量を決定するために適しているか?
方法 5 つの血小板機能検査法が、健常人ボランティアおよび 毎日アスピリンもしくは、クロピドグリルを服用して いるドナーで比較された。 透過凝集測定法 (LTA) 、マルチプレート全血インピーダンス 血小板凝集計 (Multiplate, Verum Diagnostica) 、 VerifyNow 全 血血小板凝集計 (VerifyNow, Accumetrics), TEG 血小板マッピ ング (TEG PM) が、健常人ボランティアおよびアスピリン服 用ドナー (AA 誘導のみ ) 、もしくはクロピドグレル服用ド ナー (ADP 誘導のみ ) において、 AA- および ADP によって誘導 される血小板機能を評価するために用いられた。 VASP フローサイトメトリは、健常人ボランティアおよび毎 日クロピドグレルを服用する患者における、 ADP によって 誘導される血小板機能を評価するために用いられた。 4
方法 検査は以下の項目で比較された : 健常人ボランティアおよびアスピリンもしくはクロピドグレ ル治療中のドナーの平均 (SD) 値 検査内精度 ( 同一血液サンプルから繰り返し 2 回分析を行う ことに基づく ) 検査間精度 (24-48 時間以内に 2 回採取された血液サンプルの 検査結果 ) 信頼係数 : 個人の偏差と全体の偏差 ( 個人間 + 個人内 ) の比で あり、級内係数として解釈する。 5
6 質問 個人内、個人間および生物学的変動は、 MCS 後 に投薬される抗血小板薬の用量決定に用いられる 血小板機能検査の結果にどのような影響を持つの か?
結果 マルチプレート全血凝集法は、健常人ボランティアに おける AA によって誘導される血小板機能結果を、毎日 アスピリンを服用するドナーのグループから最もよく 乖離した。 AA によって誘導される血小板機能の平均値は、 LTA 、 TEG PM やマルチプレートにおいて 、 ( アスピリン服用ドナーに 比べ ) 健常人ボランティアで 5 倍ほど高かった (Fig. 1) AA によって誘導される血小板機能の平均値は、 VerifyNow において健常人ボランティアでは、 2 倍弱高かった (Fig 1) 。 検査内および検査間精度は、 VerifyNow が最もよく、マルチ プレートで許容できる範囲であり、 LTA および TEG PM でか なり高かった (Table 1) 。 信頼係数は、マルチプレートのみ、健常人ボランティアおよ びアスピリン服用ドナー両方で ≥ 0.40 だった。 7
結果 TEG PM を除くすべての検査法で、健常人ボランティア と毎日クロピドグレルを服用するドナー間の、 ADP に よって誘導される血小板機能を区別した。 LTA 、マルチプレートおよび VerifyNow で測定される、 ADP に よって誘導される血小板機能において健常人ボランティアの 平均値は、クロピドグレル服用ドナーに比べ ~2 倍高かった (Fig 2) 。 Mean TEG PM は、健常人ボランティアとクロピドグレル服用ド ナー間の、 ADP によって誘導される血小板機能の差が最も小 さかった (Fig 2) 。 検査内および検査間精度は、 VerifyNow で最もよかったが、 TEG PM 、マルチプレートおよび LTA でも許容範囲内であった。 VASP フローサイトメトリは、クロピドグレル服用ドナーに おいてわずかに高い検査間精度を示した (Table 2) 。 信頼係数は、健常人ボランティアおよびクロピドグレル服用 ドナー両方において、健常ボランティアの TEG PM (R = 0.35) 以外の全ての検査法で許容できる範囲内 (≥ 0.40) であっ た。 8
検査法 健常人ボランティア アスピリン服用ドナー 検査内 CV (%) N 検査間 CV (%) N 検査内 CV (%) N 検査間 CV (%) N VerifyNow1.4%1202.4%223.7%244.8%10 マルチプレート 5.2%1289.7%2416.3%2624.7%12 LTA2.7%1287.2%2410.1%2637.6%12 TEG PM3.4%1246.4%2395.3%26104%13 9 Table 1. 健常人ボランティアおよび毎日アスピリンを服用す るドナーにおける、アラキドン酸により誘導される血小板機 能の検査の検査内および検査間精度 LTA = 光透過凝集法, TEG PM = トロンボエラストグラフィーによ る血小板マッピング
検査法 健常人ボランティア クロピドグレル服用ドナー 検査内 CV (%) N 検査間 CV (%) N 検査内 CV (%)N 検査間 CV (%) N VASP1.9%1204.7%215.0%2026.2%10 VerifyNow4.4%1185.2%227.3%1912.9%9 マルチプレー ト 4.3%1288.2%248.2%2014.2%10 LTA3.3%1286.2%245.7%2011.2%10 TEG PM6.7%1229.6%235.5%197.3%9 10 Table 2. 健常人ボランティアおよび毎日クロピドグレルを服 用するドナーにおける、 ADP により誘導される血小板機能の 検査の検査内および検査間精度 VASP = 血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質のフローサイトメトリ, LTA = 光透過凝集法、 TEG PM = トロンボエラストグラフィーによる血 小板マッピング
11 Figure 1. 健常人ボランティア () および毎日アスピリンを服用 するドナー (×) における、アラキドン酸により惹起される血小 板機能の散布図 図の下で平均 (SD) を示す。
12 Figure 2. 健常人ボランティア () および毎日クロピドグレルを 服用するドナー (×) における ADP により惹起される血小板機能 の散布図 図の下で平均 (SD) を示す。
13 クエスチョン ゴールは、 MCS 施術後数日間の抗血小板薬のモ ニターおよび用量決定することであり、どの検査 法が、この目的の達成のために用いられるべきで あるか?
結論 TEG PM は、短時間に抗血小板薬の影響をモニターする ためには、最も適していない方法である。 アスピリン服用ドナー (AA 誘導血小板機能 ) における検査内 および検査間 CV は高く、低い信頼係数と関連する。 健常人ボランティアと毎日クロピドグレルを服用するドナー 間での ADP 誘導血小板機能の平均値の差がほとんどない。 マルチプレートが、アスピリンの短時間作用をモニ ターするために最も適している。 健常人ボランティアおよび毎日アスピリンを服用するドナー において、許容できる信頼係数を示した唯一の検査法。 VerifyNow は、 AA 誘導血小板機能において最も優れた検査内 および検査間精度を示したが、マルチプレートのように健常 人ボランティアとアスピリン服用ドナーを区別しえなかった。 14
結論 マルチプレート、 VerifyNow 、 LTA および VASP フローサイトメト リーは、短時間で ADP 阻害剤による血小板機能への影響をモニ ターすることに適している。 15
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