いのちが産まれる場所 Ⅰ.いのちはどこで産まれる? Ⅱ.日本の周産期事情 Ⅲ.長崎の事情と対策 長崎大学医学部産婦人科 増崎英明
朝日新聞
産科崩壊の背景(悪循環の構図) 分娩取り扱い病院の減少 分娩取り扱い有床診療所の減 少 地域の産科救急システム崩壊 高い訴訟リスクによる 開業医のお産からの撤 退 ハイリスク ローリターン の劣悪な勤務医の労働環境 勤務医の疲弊による地域周産期中 核病院からの離脱 新規研修医制度による産 婦人科志望者の激減 女性医師の増加に見合う育 児支援体制の欠如 分娩を取り扱う医師数の絶対的不足
産婦人科医師不足の悪循環を断ち切るために(1) 高い訴訟リスク 無過失補償制度 医療関連死原因究明の 第三者機関の設立 ハイリスク ローリター ンの勤務医の労働環境 勤務医の疲弊による周産 期中核病院からの離脱 勤務医の報酬の見直し (分娩費値上げ,夜勤 手当増額など) 地域周産期施設の集約 化と勤務環境改善 長崎市民病院と原爆病院の合併
日本産科婦人科学会会員の年齢別男女比( 2004 年) 年齢 日産婦学会員数 女性( 3,514 ) 男性( 12,377 ) 日本産科婦人科学会会員の年齢別男女比( 2004 年) 産婦人科における女性医師の増加 -20代産婦人科医師の 75% が女性である- -30代産婦人科医師の 50% が女性である-
女性医師の増加に見合 う育児支援体制の欠如 子育て中医師のためのポス ト増設,継続就労支援体制 院内保育所の整備 新規研修医制度によ る産婦人科志望者の 激減 学生・研修医への産婦人科の 魅力を伝えるポジティブ キャ ンペーン ● 日本産科婦人科学会「女性医師の継続的就労支援のため の委員会」設置. ● 厚生労働省医政局長より「医師に対する出産・育児等と診 療の両立の支援について」の通達 産婦人科医師不足の悪循環を断ち切るため(2)
分娩実施率 - 男女別、経験年数別 女性医師の平均分娩実施率は 66.0% ( 男性医師は 82.6 % ) 女性医師の分娩実施率は経験年数 11 年目で 45.6 %まで落ち込む 分娩実施率‐経験年数別、女性 (n=1,993) 85.2% 78.2% 75.1% 69.3% 67.1% 64.3% 48.9% 52.6% 56.8% 48.7% 57.1% 53.2% 67.6% 45.6% 92.2% 66.0% 0% 50% 100% 合計 (n=1,993) 2 年目 (n=102) 3 年目 (n=209) 4 年目 (n=174) 5 年目 (n=185) 6 年目 (n=176) 7 年目 (n=173) 8 年目 (n=126) 9 年目 (n=135) 10 年目 (n=137) 11 年目 (n=103) 12 年目 (n=132) 13 年目 (n=113) 14 年目 (n=77) 15 年目 (n=77) 16 年目 (n=74) 分娩実施率‐経験年数別、男性 (n=2,467) 96.5% 92.2% 85.4% 87.3%87.2% 82.1% 78.6% 81.4%81.6% 77.6% 81.1% 79.7% 82.6% 78.3% 82.0%82.6% 0% 50% 100% 合計 (n=2,467) 2 年目 (n=57) 3 年目 (n=129) 4 年目 (n=130) 5 年目 (n=150) 6 年目 (n=149) 7 年目 (n=134) 8 年目 (n=182) 9 年目 (n=183) 10 年目 (n=185) 11 年目 (n=170) 12 年目 (n=206) 13 年目 (n=202) 14 年目 (n=201) 15 年目 (n=184) 16 年目 (n=205)
労働環境整備に関する提言 産婦人科医師の長時間労働を改善し、より柔軟な働き 方を早急に確立すること。 妊娠、分娩、授乳、育児等の期間に対しての代替要員 を確保し、勤務医定数の柔軟な体制を確立すること。 病院に近接する保育施設を質、量ともに確保し、医師 の子弟を保育できるような体制を整えること。 これらの提言は、病院設置者、医療・行政関係者ならびに 一般国民に対して行い、男女共同参画社会の実現を産婦人 科から呼びかけるものである。(日本産科婦人科学会) 更なる状況の改善には, 一般市民,患者,マスコミ関 係者, そして医学生,初期研修医の意識の変化が不可欠.
長崎新聞
平成 20 年 6 月 19 日(木)
方策
産婦人科の3K きつい、汚い、危険 → 産婦人科医は絶滅危惧種? (過酷、休暇なし、苦しい、拘束される、告訴が多い) 1.感動溢れた産婦人科(懐妊の喜び、家族の味方、感謝される喜 び) 2.興味の尽きない産婦人科(研究の宝庫、子供の誕生、協力・協 調) 3.心のこもった産婦人科(開腹せず、回復早く、患者に優しい医 療)
清聴に深謝します 産婦人科医は唯一、 いのちの産まれる場所 で 働くことのできる医師なのです。