日本近海におけるホシササノハベラの 遺伝的分化の解析 保全生態学研究室 14118629 川瀬 渡 2006 年 2 月 21 日 -日本沿岸域の環境保全のために-

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日本近海におけるホシササノハベラの 遺伝的分化の解析 保全生態学研究室 川瀬 渡 2006 年 2 月 21 日 -日本沿岸域の環境保全のために-

Ⅰ.研究材料 ベラ科 ホシササノハベ ラ ( Pseudolabrus sieboldi) ホシササノハベラ:性転換後の形態(オス) ホシササノハベラ:性転換前の形態(メス) 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

Ⅱ.研究背景 1.沿岸域の環境的状況 2.遺伝的多様性の必要性 3.ベラ科魚類の繁殖システム 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 海洋汚染,護岸・港湾開発,過剰な漁獲 → 生息地の減 少 環境適応能力の維持・向上 一夫多妻型の繁殖システム → 近親交配が多くなる → 集団分化が起こりやすい? 沿岸域開発を行う上での環境保全的指標を見出す

日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 Ⅳ.採集場所 山口県 仙崎湾 島根県 美保湾 三重県 田曽 浦 宮崎県 延岡 港 長崎県 瀬戸港 神奈川県 宮川 湾 本州太平洋群 日本海群瀬戸内海群

日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 Ⅴ.実験方法 酵素の抽出 デンプンゲル電気泳動 酵素染色 ゲルの観察 デンプンゲル電気泳動法の解析結果( MDH ) mdh-2 mdh-3 mdh-4 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - mdh-1

Ⅵ.結果と考察 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 1.近交係数について 三重・神奈川(本州太平洋群) ・有効集団サイズが小さい 近交係数 F 集団が小さく, 近親交配が 頻繁に行われている

2.遺伝的多様性について Ⅵ.結果と考察 H I :個体群内での平均ヘテロ接合 体 頻度(遺伝子多様度) 三重・神奈川(本州太平洋群) ・本来持っているはずの多様 度の約 4 分の1から 6 分の 1 H I の値からも,三重・神奈川 で 近親交配が頻繁に行われて いる可能性が示された 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

Ⅵ.結果と考察 3 .群間の多様性につい て G ST :群間の遺伝的分化の程度 を測る尺度 日本海側のホシササノハベラは孵化した稚魚が一度離岸して繁殖期にまた 沿岸に戻ってくる際に,多くの個体が元の場所に戻っているため遺伝的な固 定が起こり遺伝的分化が進んでいるものと思われる 集団分化が進んでいることによ り遺伝的多様性が高くなってい る 日本海群 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

海水温分布の違いに着目 日本海側 水温は北上するにつれ徐々に低下する 太平洋側 黒潮の蛇行の影響を受けるため海水温分布に毎年変化が ある → 必ずしも北に行くほど水温が低くなるわけではな い Ⅵ.結果と考察 日本海側 産卵時に沿岸に戻る際,多くの個体がもといた場所に戻 っている → 遺伝子交流が少なく,分化が進んでいる 太平洋側 産卵時に鉛直的な移動だけではなく,水温変化により水 平的な移動もしている → 遺伝子交流が多く,分化は進ん でいない 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 三重 神奈川

日本海側 近親交配 → 少ない 集団分化 → 進んでいる → 遺伝的多様性が高い 太平洋側 近親交配 → 多い 集団分化 → 進んでいない 太平洋側と日本海側の集団では開発による影響が全く違う Ⅶ.まとめ 生息環境が悪化すると・・・ 日本海側 種の遺伝的多様性の低下に直結! 太平洋側 近親交配が多く行なわれているので近交弱 勢 による環境適応能力の低下が懸念される 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

Ⅷ.沿岸域開発における課題 無差別な沿岸域の開発が行われると・・・ 沿岸開発 生息環境の悪化 生息地の分断化 個体数の減少 遺伝子交流の減少 近親交配の割合の上昇 多様性の低下 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

Ⅷ.沿岸域開発における課 題 個体数が十分でない地域や特殊な遺伝子多様性を 保持している地域における沿岸域開発は避ける 沿岸域には多くの生物種が生息・複雑な生態系 ↓ さらに細かい配慮 沿岸域の開発には十分な注意が必要! 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析

ご静聴ありがとう ございました 保全生態学研究室 川瀬 渡 日本近海におけるホシササノハベラの遺伝的分化の解析 -日本沿岸域の環境保全のために-