教職員の働き方・労働時間の 実態に関する調査【速報】 「教員の働き方」と「時間管理のあり方」を問う! (公財)連合総合生活開発研究所 2016年2月2日(火) 於:ベルサール神保町
内 容 教員の働き方・生活の実態―過去の調査・他職種との比較 労働時間(平日・休日) 出退勤時刻管理 年次有給休暇取得日数 生活満足度、家庭・地域での過ごし方 多岐にわたる教員業務に、教員自身はどのような意識 を持っているのか? 負担感の強い業務は何か? 教員が考える「教員の本務」とは何か? 調整休暇制に対する教員の意識 2
調査概要 調査対象:全国の公立小・中学校・高等学校・特 別支援学校教諭5,000名 調査時期:2015年12月 回収数・率(2016年1月8日時点) …2,489件(49.8%) 3
教員の働き方・生活の実態(Ⅰ) ―出・退勤時刻・学校にいる時間(勤務日1日)― 4 学校にいる時間は、 5年前の既存調査と大きな変化なし 教員は、労働者全般と比べると、 職場にいる時間が長い (注)「ベネッセ10年調査」については、ベネッセコーポレーション『第5回学習指導基本調査報告書』をもとに、 「連合総研07年調査」については、『生活時間の国際比較―日・米・仏・韓のカップル調査』をもとに作成。 +学校外で1時間9分 の労働 +学校外で1時間6分 の労働
教員の働き方・生活の実態(Ⅱ) ―出・退勤時刻管理の現状― 小学校(N=2,489) 中学校(N=819) 小学校の全体16.8%が管理職が 出・退勤時刻の把握をしていない 中学校の全体20.9%が管理職が 出・退勤時刻の把握をしていない 5 東京都産業労働局の「平成20年度中小企業等労働条件実態調査」では、 タイムカード・ICカードによる時間管理は17.6% ➡客観的に労働時間を把握する取り組みが、学校では低調
6 教員の働き方・生活の実態(Ⅲ) ―管理職の教諭に対するマネジメント状況― 民間労働者よりも、小・中学校教諭は管理職が自身の健康に気を遣っていると 考えている 「勤務時間の把握・業務量の調整はできていない」という認識は、民間 労働者よりも小・中学校教諭の方が強い (注)民間労働者全般については、連合総研『勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート 2014 年 10 月』をもと に作成。
教員の働き方・生活の実態(Ⅲ) ―所定勤務時間に対する正しい認識― 7 さらに「知っている」 という教諭に所定勤務 時間を書いてもらった ところ … 所定勤務時間を「知らない」という のが小・中学校ともに約半数 正解の38時間45分を大きく 下回る回答=勤務時間を正しく 理解している教員は少数派
教員の働き方・生活の実態(Ⅳ) ―休日1日あたりの労働時間― 8 連合総研 15 年調 査 文科省 06 年調査(第6期: 12 月) 労働時間の測定方法が違うので、厳密な比較はできない ➡ただ、小・中学校ともに休日も学校に出勤するようになった傾向が推察
教員の働き方・生活の実態(Ⅴ) ―年次有給休暇の取得状況― 9 連合総研 15 年調査 (注)国家公務員については、人事院「国家公務員の年次休暇の使用実態(平成26年)」を、地方公務員 については、総務省「平成25年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」を、民間については、 厚生労働省「平成26年度就労条件総合調査」を参照。 中学校教諭の平均有給休暇取得日が、他の職種のいずれを下回っていた
教員の働き方・生活の実態(Ⅵ) ―生活満足度― 10 (注)労働者全般については、連合総研『生活時間の国際比較 ― 日・米・仏・韓のカッ プル 調査』をもとに作成。 小学校教諭・中学校 教諭ともに労働者 全般よりも生活満足 度がわずかに低い。
教員の働き方・生活の実態(Ⅶ) ―家族と一緒に食事をする頻度― 11 (注)労働者全般については、連合総研『生活時間の国際比較 ― 日・米・仏・韓のカッ プル 調査』をもとに作成。 労働者全般の方が、「必ず毎日と る」という割合が高い しかし「だいたい毎日とる」を含める と、小・中学校教諭の割合の方が高い
教員の働き方・生活の実態(Ⅷ) ―ボランティア・地域活動への参加― 12 教諭の方がボランティア・地域活動に参加している (注)労働者全般については、連合総研『生活時間の国際比較 ― 日・米・仏・韓のカッ プル 調査』をもとに作成。
13 教員の働き方・生活の実態(Ⅹ) ―睡眠時間(勤務日・休日1日平均)― 睡眠時間は、勤務日1日・休日1日あたりともに、小・中学校教諭の方が、 労働者全般よりも短い 勤務日1日平均 休日1日平均 (注)労働者全般については、連合総研『生活時間の国際比較 ― 日・米・仏・韓のカッ プル 調査』をもとに作成。
14 教員の働き方・生活の実態(Ⅺ) ―読書時間(勤務日・休日1日平均)― 勤務日1日平均 休日1日平均 (注)・労働者全般については、連合総研『生活時間の国際比較 ― 日・米・仏・韓の カップル 調査』をもとに作成。 ・労働者全般の質問項目は、「読書をする、映画を観たり、音楽を聴く時間」で ある。 厳密な比較はできないが、小・中学校教諭の読書時間は、他の労働者より も少ない可能性
小学校( N=1,438 )中学校( N=819 ) 1位1位 保護者・地域からの要望 等への対応 83.2 保護者・地域からの要望 等への対応 位2位 国や教育委員会からの調 査対応 80.5 国や教育委員会からの調 査対応 位3位 成績一覧表・通知表の作 成 77.7 児童・生徒の問題行動へ の対応 位4位 児童・生徒の問題行動へ の対応 76.8 クラブ活動・部活動指導 位5位 学期末の成績・統計・評 定処理 75.5 成績一覧表・通知表の作 成 教員業務に対する意識(Ⅰ) ―負担感を感じる業務(上位5つ)―
16 教員業務に対する意識(Ⅱ) ―本務だと思うもの(上位5つ)― 小学校( N=1,438 )中学校( N=819 ) 1位1位 学期末の成績・統計・評 定処理 93.8 学期末の成績・統計・評 定処理 位2位 成績一覧表・通知表の作 成など 92.6 テストの問題の作成・採 点 位3位 学年・学級通信の作成な ど 92.5 学年・学級通信の作成な ど 位4位 テストの問題の作成・採 点 86.2 成績一覧表・通知表の作 成など 位5位 特別な支援が必要な児童 への対応 83.6 進学・入試に関する業務 80.8
17 教員業務に対する意識(Ⅲ) ―他の職員・スタッフに移行すべきもの(上位5つ)― 小学校( N=1,438 )中学校( N=819 ) 1位1位 学校徴収金未納者への 対応 学校徴収金未納者へ の対応 位2位 国や教育委員会からの 調査対応 国や教育委員会から の調査対応 位3位 児童・生徒・保護者ア ンケ ― ト実施 児童・生徒・保護者 アンケ ― ト実施 位4位 地域との連携に関する 業務 地域との連携に関す る業務 位5位 クラブ活動・部活動指 導 クラブ活動・部活動 指導 50. 7
教員の多忙解消に際しては、 「教員の本務」自体の負担も 考える必要がある! 負担が大きく、教員の本務とは思えないので、他職 種への移行を望むもの 国や教育委員会からの調査対応 負担は大きいが、教員の本務なので、教員が行わ ざるを得ない 児童・生徒の問題行動への対応 成績処理 18 教員業務に対する意識(Ⅳ) ―負担に感じる業務のタイプは2種類― これまでの教育政策・教育学の関心の中心
教員の労働時間=勤務日1日平均13時間 他職に比べて労働時間が長い 長時間労働が、教員の読書時間・睡眠時間の少なさに影響し ている可能性 ➡健康悪化・修養を積む機会の確保困難 ➡ひいては教育の質の低下につながるおそれ 教員の長時間労働の背景 勤務・労働時間に対する教員自身の理解不足 管理職のタイム・マネジメント意識の欠如 多岐にわたる教員の業務 教員の本務とはいえず、かつ負担感の伴う業務 負担を感じるが、教員の本務なので遂行せざるを得ない業務 19 ここまでのまとめ
教員の働き方を見直すために必要なこと 教育の質を確保するための、教員の労働時間縮減 仕事以外の教員の時間(=生活時間)を確保 ※ 厳しい財政状況から教員の増員が見込めない現在 ➡「今いる教員の健康と資質を向上させるか」というマネジメント が重要 教員の業務の見直し 教員がやる必要はない業務は、他職種に移行 業務を他職種に移行するだけでなく、教員の本務とされる 業務についても、見直し・負担軽減が必要 他職種(スクールカウンセラー・ソーシャルワーカーなど)との連携を模索 教員が新たな教育課題に対応できるスキルを習得する機会 「学校教育とは何か」について向き合うこと 20 本研究会はここに注目
21 本研究会が注目する調整休暇制度 ―調整休暇制度導入に対する教員の意識― 超過勤務分は、休暇を取得できるようにする制度 小・中学校教諭の50%が導入の検討に前向き
22 調整休暇制度導入に向けて(Ⅰ) ―調整期間設定に対する教員の意識― 調整休暇制の導入に対して前向きな小学校教諭では、6カ月単位で休暇 調整する方法が望ましいという意見が最多 調整休暇制の導入に対して前向きな中学校教諭では、3ヵ月単位で休暇 調整する方法が望ましいという意見が最多
23 調整休暇制度導入に向けて(Ⅱ) ―導入の課題に対する教員の意識― 調整休暇制の導入の課題として、前提となる労働時間数の把握が最も重要 という意識